エレと出会ってから数日……ようやくピネガンが反乱軍の説得に応じる事になった。
とはいえ、正確にはピネガンが説得に応じるといった事は既に決まっており、こうして時間が掛かったのは、その条件についての話し合いが難航していたから、らしい。
具体的には、ピネガンがミの国から追放される際に、どのくらいの財産を持ち出すか。
それ以外にも、ナムワンやダーナ・オシーといった戦力をどれだけ持ち出すか。
また、ピネガンに対して忠誠を誓っており、ドレイクの支配するミの国には残りたくないと思っている者達をどれだけ連れていくか。
……とはいえ、一番最後のピネガンを慕っている連中については、反乱軍……というよりも、その後ろ盾となっているドレイクから無条件に全員がピネガンと一緒に行く事が許可されたのだが。
いや、正確には許可というよりも、寧ろ積極的に勧めているくらいだった。
ドレイクがそう命令した理由については、俺にも十分に理解出来る。
ピネガンに忠誠を誓っているような者達が国内に残っていた場合、最悪テロを起こしたり、新たな反乱軍を作ったりといったようなことをしてもおかしくはない。
あるいは、そこまで大規模に動かなくても、物資の類を横流ししたり、情報を漏らしたりといったような事をしてもおかしくはなかった。
ましてや、恐らくではあるが、ピネガンはフラオンと共にラウの国に向かう筈だ。
そうしてドレイクは、ラウの国を侵略するということを既に決めている。
そうなった時に、国内にピネガンと内応している人材がいれば、厄介なのは間違いない。
「で、ピネガンはともかく、フラオンはラウの国に行ったのを確認出来たのか?」
「さぁ?」
トッドの言葉に、俺は首を横に振る。
そもそも、俺がドレイクと一緒にここまでやってきているのは、あくまでもついでというのが大きい。
基本的にこの戦いはドレイクの戦いで、俺が戦うべきではないのだ。
あるいは、ドレイクから何らかの依頼があれば、俺もまた何らかの行動をしてもよかったのだが、生憎と俺はドレイクからそんな依頼を受けてはいない。
「分かんねえのかよ」
「別にドレイクにその辺を頼まれてる訳じゃないしな。……ただ、フラオンがこの状況で行ける場所は、クの国とラウの国だ。そしてクの国はドレイクと友好関係にある。そうなれば、行ける場所はラウの国しかないと思うけどな」
そう言えば、エレはどうしたんだろうな。
両親はピネガンに忠誠を誓ってるみたいなことを言っていたから、そうなるとピネガンと一緒に国を出たのか。
せいぜい、フラオンと一緒に行動していない事を祈るとしよう。
「……だよな。まさか、ミの国に残っているって事はないよな?」
そう心配そうにしているのは、やはりミの国がトッドに領地として与えられる事になったからか。
その辺はまだはっきりと聞いてはいないのだが、トッドの様子を見る限りではそのようになったとしてもおかしくはない。
だからこそ、ピネガンには早くミの国からいなくなって欲しいと思っているのだろう。
……フラオンの性格を考えれば、それこそラウの国ではなくクの国に逃げ込むという可能性も否定は出来ないのだが。
ギブン家の面々がいるので、クの国に逃げるといったような真似をしようとすれば、恐らくは止めるだろうが。
ただ、問題なのはフラオンが止められたからといって、素直にそれに従うかどうかだよな。
フラオンの性格を考えれば、余程上手く止めない限りは、寧ろムキになって意地でもクの国に行こうとしても、おかしくはない。
……そうなったら、何気にフラオンをラウの国に行かせて、戦いの切っ掛けを作るというドレイクの計画が破綻するという事になるのか。
そういう意味では、ドレイクの意表を突けるな。
もっとも、その場合はクの国に捕らえられてドレイクに対する取引材料に使われそうな気がするが。
「さすがにミの国に残るって選択肢はないだろ。今までは、正規軍と反乱軍がいたから、フラオン軍がいてもそちらに攻撃を集中するといったような真似は出来なかったけど、今はもうドレイク軍がミの国を占拠したんだ。そんな中でフラオン軍がミの国の内部にいれば、間違いなく集中攻撃されるぞ」
あるいは、俺達が攻撃しなくてもミの国の住人に攻撃される可能性がある。
フラオンは自分が贅沢をしたいが為に、多くの村や街を襲って略奪していたみたいだしな。
ドレイクや俺を悪しきオーラ力の持ち主とか言っていたリムルが、フラオンのそんな行動を知って、しかも自分達がそういう略奪をする奴の部下になってるのをどう思っているのか、聞いてみたい気がするけどな。
ショウも聖戦士だ何だと煽てられて、やってる事は結局ガロウ・ランの盗賊と同じような事だし。
いやまぁ、ショウはその辺については知らなかったんだろうが。
「それで、ミの国の一件が片付いたら、ラウの国を攻めるまでにそれなりに時間はあるだろうし、その間トッドはここにいるのか? 仮にも領主という立場になるんだし」
トッドの領主というのは、ドレイクが国王になったことによる象徴的なものだ。……悪く言えば、お飾りだが。
ともあれ、そんな訳で実際に領地の運営をするのはトッドではなく、ドレイクの派遣した部下になる可能性が高い。
であれば、トッドがここにいてもやるべき仕事はない。
ないのだが、象徴的な存在である以上、その象徴がいなくなるというのは色々と不味いのも事実。
トッドもそれを分かっているのか、はぁ、と大きく息を吐く。
「そうなるのは間違いないだろうな。俺としては、オーラバトラーの操縦訓練をしたいんだが」
「別にここで操縦訓練は出来るだろ? そもそも、聖戦士筆頭ということでトッドはここの領主になるんだ。それを思えば、オーラバトラーの訓練をするというのは、聖戦士のトッドがここにいるというのを示す為にも、悪くないと思うけど」
「……そうだな。そういう意味では、訓練をする時間には困らないだろうよ。けど、問題なのは訓練するべき相手がどこにもいないって事なんだよ。アクセルやマーベルみたいに強い奴がいればともかく、そういう奴がいないんだぞ? どうしたって満足出来る訓練は出来ねえよ」
なるほど。
まぁ、その意見は理解出来る。
トッドがここで一般的な技量しかない相手と訓練をしている間、アレンを始めとした他の者達は他の聖戦士や……場合によっては、俺やマーベルと訓練を行う事が出来る。
その訓練の質は、強者と戦えない訓練をしているトッドと比べると圧倒的に高い。
つまり、下手をすればトッドがここで訓練をしている間に、アレン達の技量がどんどん上がっていき、場合によってはアレンがトッドを抜くという可能性も否定する事は出来ない。
そうなると、トッドにとっては色々と不味い。
特に大きいのは、やはりトッドがアレンに劣等感を抱いている事だろう。
自分の方が技量が上になり、ミの国という領土を与えられ、名実ともに聖戦士筆頭という地位まで駆け上がった。
しかし、素早く駆け上がった地位は維持するのが大変でもある。
トッドとしては、その辺りについて心配しているのだろう。
「その辺は、しょうがないだろ。それに、少し時間が経てばラウの国との戦争だ。そうなればトッドも最前線で戦うといったような事になるだろうから、訓練についてはそこまで心配しなくてもいいと思うけどな」
ミの国との戦いは、何気にドレイク軍の消費はあまりない。
その気になれば、それこそすぐにでもラウの国と戦える。
だが、フラオンをラウの国に送り込む以上、ミの国と同じ……とまではちょっと難しいかもしれないが、それでも混乱を巻き起こす可能性は高い。
ただし、フラオンに負い目……正確にはフォイゾンとの間を取り持って貰うといったつもりだったピネガンと違い、フォイゾンにはフラオンに遠慮すべき理由はない。
無理矢理その理由を見つけるとすれば、それはフラオンがアの国の王族の血筋であるという事だけだろう。
フォイゾンはそういう血筋や伝統を重要視している以上、すぐにフラオンをどうにかするといった事は考えにくい。
だとすれば、やっぱりある程度時間が経過し……フォイゾンがフラオンの存在に我慢出来なくなり、内乱が起きたところで攻め込むというのは最善なのは間違いない。
とはいえ、そんな簡単にミの国と同じような流れに持っていけるかと言えば、微妙なところではあるが。
「ラウの国か。……高い国力を持ってるんだよな?」
「ああ、ドレイクとの取引もやっていたから、オーラマシンに関しての開発も進んでいる可能性が高い」
「……なるほど。だとすれば、アクセルにとっては嬉しい話じゃないか?」
トッドが言ってるのは、ラウの国独自のオーラバトラーが開発されているかもしれないという意味だろう。
俺がオーラバトラーを集めているとというのは、当然だがトッドも知っている。
そういう意味では、ラウの国と戦うというドレイクの判断は俺にとって決して悪いものではなかった。
「そうだな、その言葉は俺にとっても否定のしようがない事実ではある。ただまぁ、どうしてもラウの国が独自開発しているオーラバトラーが欲しいのなら、俺の場合は別に戦争とかを考えなくてもいいしな」
その場合、俺は単純に影のゲートと気配遮断、空間倉庫を使ってラウの国に侵入すればいいだけなのだから。
そのついでに、ラウの国が戦闘準備をしているかどうかとか、フラオンをどう扱っているのかとか、ドレイク率いるアの国をどのように思っているのかとか、そんな事を色々と調べられるだろう。
ドレイクにしてみれば、それは決して悪い話ではない筈だ。
ラウの国の住人……特に国境近くに住んでいる者達にしてみれば、ミの国がアの国に占領され、いきなり大国が隣接する事になったのだから、気にするなという方が無理だった。
ああ、そういう意味ではミの国ってのはクの国やアの国というそれなりに国力の高い国との緩衝地帯という意味で、意味があったんだろうな。
それもピネガンとパットフットの駆け落ち騒ぎで、国交断絶状態になって、もう意味はなくなってしまったが。
国交断絶状態であっても、緩衝地帯として使えない訳ではないのだろうが……それでも、ミの国が危険になった時、戦力を送るといったような真似が出来なくなってしまったのは、実はラウの国にとってもそれなりに痛かったのかもしれないな。
だとすると、やはりピネガンを受け入れて戦力として使うといったような真似はするか?
だが、俺のところに入っているフォイゾンの性格を考えると、頑固という点が大きいんだよな。
頑固というのは、決して悪い事ではない。
いや、悪い事だが国王として見た場合はまた少し話が違ってくる。
それはつまり、国王が目的を見据えてそこから視線を逸らすといったような真似はしないとも言えるのだから。
「魔法か。……いいよな、それ」
「そんなに羨ましいのなら、お前も習えばよかったものを」
「でも、習得するまで結構な時間が掛かるんだろ?」
「ああ。けど、覚えておいて損はない。実際。ガラリアは魔法を習っていたおかげで、何とか生きてバイストン・ウェルに戻ってきた訳だし」
エ・フェラリオの開いたオーラロードではなく、バストールの新型オーラ増幅器のおかげでオーラロードを開いた場合、その衝撃はかなり厳しかったのだろう。
「けどなぁ……」
不満そうな様子を見せるトッド。
そこまで面倒な事をしたくないと、そう思っているのだろう。
これ、多分アレンの件を言っても魔法の訓練をしたりはしなさそうだな。
反乱軍の件の時は、アレンの名前を出したら即座に引き受けたのだが。
「無理にとは言わないけどな。ただ、もし地上に出て再びバイストン・ウェルに戻ってくるなんて事になったりした場合、ガラリアと違って魔法を習得していないと、死ぬぞ」
正確には、ガラリアも魔法を習得した訳ではないのだが。
オーラロードでバイストン・ウェルに戻ってこようとした時、それこそ死の淵に立たされた事により、火事場の馬鹿力的な意味で魔法を使う事にしたのだ。
実際、今となっては魔法を使えるとは思えないと言っていたし。
……それでも、魔法発動体の杖もなしで魔法を発動したというのは、素直に凄いと思う。
この辺りは、バイストン・ウェルの人間……いや、オーラ力が関係しているような気がしないでもない。
「ともあれ、トッドはミの国の領主になるんだから、急いで魔法を習得したりする必要もないか」
そう言うと、トッドは何だか微妙な表情を浮かべる。
習えと言えば気が進まないといった様子を見せるのだが、ならやらなくてもいいと言えば、不満そうな様子を見せる。
何ともトッドらしいと言えばトッドらしい。
そんな風に思いつつも、取りあえずバストールのオーラ増幅器はビランビーに採用されている通常型の物に変わったのだから、地上に出る心配はしなくてもいいのか? と、そう思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680