ミの国を滅ぼしてから少し時間が経過し、ドレイク軍の方でもようやく落ち着いたのか、戦勝パーティが開かれる事になった。
ミの国が滅んだ後、正直なところ俺がやるべき事は殆どなかったので暇を持て余していたが、ドレイクの方はそれこそ寝る時間を削ってでもミの国を治める準備をしていたのだ。
当然だろう。ミの国の中でも、ピネガンに近い人材の多くはピネガンと共に国外に脱出したのだから。
それはつまり、国家を運営する者の多くがいなくなったという事を意味している。
勿論、そのような人員全てがピネガンと一緒に出ていった訳ではない。
中にはピネガンと一緒に行動しても自分達にとっては不利益しかないと判断したり、家族や恋人、友人をミの国に置いていけないと判断して、残った者達もいる。
ドレイクにしてみれば、そのような相手であっても利用するしかない。
有能な人材というのは、どうしたって数は限られているのだから当然だろう。
それでも、ミの国がそのままアの国の領地となり、そこに聖戦士筆頭のトッドが領主として送られる事になる以上、ドレイクとしてもそこそこ有能な人材を送る必要はあった。
ドレイクにしてみれば、本当に色々と思うところはあるのかもしれないが……この辺りはしょうがない。
「アクセル、行きましょう」
「ああ。……そのドレス、新しい奴だな」
マーベルに言われ、改めてマーベルの姿を見て、そう呟く。
今までにも何度かこの手のパーティには参加する事があったのだが、マーベルの着ているパーティドレスはいつも違う。
ふとその事が気になって尋ねたのだが、マーベルはそんな俺の言葉に若干の呆れを見せつつも……それでも笑みを浮かべて口を開く。
「そうよ。この手のドレスは作るのにもそれなりの金額が必要なんだけど、仕事を作るという意味では、有効なのよね。……まぁ、私の趣味が多少入ってるのは間違いないけど」
そう告げるマーベルの身体を覆っているのは、新緑を思わせるような緑のドレスだ。
どうやってこのような色を出したのかといったような事は少し気になるが、具体的にどのような技術を使ったのかといったことを俺が知っても、理解は出来ないだろう。
それについては理解しているので、別の事を口にする。
「そうか。そのドレス、マーベルによく似合っているな」
「ありがとう」
ドレス姿を褒められたのが嬉しかったのか、マーベルは満面の笑みを浮かべる。
そんなマーベルを見て、このバイストン・ウェルにおいても有数の聖戦士であると理解出来る者は多くないだろう。
そうして、俺はマーベルと腕を組んでパーティ会場に向かうのだった。
ざわり、と。
俺とマーベルがパーティ会場に入ると、周囲にいた者達がざわめく。
俺とマーベルがどのような存在か、多くの者が知っているからだろう。
あるいは、マーベルの美貌に目を奪われたのか。
その辺りの理由はともかく、パーティ会場に入ってきた俺達を見て、真っ先に声を掛けてきた者がいる。
「アクセル王、マーベル」
「ガラリア!?」
近付いてきた相手を見て、驚きの声を上げるマーベル。
当然だろう。地上から戻ってきた時の怪我は結構な重傷だった。
……まぁ、それでも魔法をどうにかして発動していなかったら、間違いなく死んでいた可能性が高いのだから、それを考えると生きていたという事は、十分大きな意味を持つ。
そうである以上、重傷であっても生きているだけ儲けものといった感じか。
とはいえ、だからといって重傷を押して無理にパーティに参加するのは、俺もどうかと思うが。
ただ、今のガラリアは多少包帯とかを巻いてはいるものの、見た感じでは重傷といった印象はない。
ガラリアがバイストン・ウェルに戻ってきてからそれなりに時間が経っているので、ある程度怪我が回復したとしても、それはおかしくないのかもしれないが。
そんな風に考えつつ、俺もガラリアに声を掛ける。
「怪我の方はいいのか? 見たところ、そんなに無理はしていないように見えるけど」
その言葉通り、実際にガラリアはそこまで無理をしているといったようには思えない。
それはつまり、怪我も大分回復してきているという事を意味していた。
「はい。これもアクセル王のおかげです」
「……俺の?」
一体、何故そんな風に言われるのかが、俺には分からない。
俺は別にガラリアに魔法薬の類を渡した訳でもない。
そうである以上、ここでガラリアが俺のおかげだと言っても、その理由に納得出来るところがないのだから当然だろう。
「はい。魔法は使えませんが、魔力を身体に流して循環させていると、治りが早いようで……」
そうなのか? と若干半信半疑だったが、実際にガラリアはこうしてもう歩き回れるくらいに回復してるのだ。
それを思えば、ガラリアの言葉が嘘だとは到底思えないだろう。
とはいえ、魔力を循環させる事によって治癒力を高める?
そんな話は聞いた事がない。
可能性があるとすれば、魔力とオーラ力が何らかの相互作用を引き起こしてるといったところか。
オーラ力というのは、その性質から考えて気に近い性質を持っている。
そしてガラリアは魔力を使って……おい、待て、気と魔力? もしかしてそれって咸卦法とか言わないよな?
本来、気と魔力というのは相反する性質を持っている。
だが、それを融合させるという、ネギま世界において開発された超難易度技法。
それこそネギま世界においては究極技法とまで呼ばれるような、そんな技術だ。
使い手としては、麻帆良で魔法先生をやっている高畑が有名だろう。
魔力に特化している俺は、とてもではないが使えない技術だな。
……実は、あまり知られていないものの、何気に明日菜も咸卦法を普通に使っていたりするんだが。
それは置いておくとして。
ともあれ、オーラ力が気に近い性質を持っている以上、魔法の訓練をする事によって咸卦法を使えるようになったとしても、それは理解出来ない訳でもない……か?
その辺は、それこそエヴァ辺りにでも聞いてみないと分からないから、今は気にする必要もないか。
もしバイストン・ウェルの人間が魔法を習得出来るだけで咸卦法を使えるようになるとしたら、かなり驚くべき事だよな。
いや、オーラ力が理由だとすれば、別にバイストン・ウェルの人間だけではなくマーベルを始めとした聖戦士も咸卦法を習得出来る事になる。
特にマーベルは、ガラリアと同様に魔法の訓練を積んでいるのだ。
それこそ俺の予想が当たっていた場合、マーベルも咸卦法を使えるようになってもおかしくはない。
「ガラリア、怪我が治って身体能力が上がってると感じた事はあるか?」
「え? いえ。そのような事はありませんが」
特に躊躇するでもなく、あっさりとそう言ってくるガラリア。
その様子を見れば、隠してるといったような様子ではない。
だとすれば、本当に気が付いていないのか、もしくは咸卦法は咸卦法でも、俺の知っている咸卦法とは違うのか。
そもそも、気と魔力の合一ではなく、オーラ力と魔力の合一といった感じで咸卦法を発動している――可能性が高い――以上、俺が知らない咸卦法でもおかしくはない。
「そうか。ともあれ、傷はまだ完全に回復したって訳じゃないんだ。あまり無理をしてゼットに心配をさせるなよ」
「はい」
素直に頷くガラリアだったが、その性格を考えれば、戦いになったら真っ先に突っ込むのは変わらないと思う。
ゼットが心配をするのは、止まらないだろうな。
そんな風に会話をしていると、このパーティの主役とも呼ぶべき、ドレイクが姿を現す。
ルーザを連れているが、そのルーザはこちらを一瞥すると、不愉快そうな表情を浮かべて視線を逸らす。
久しぶりにルーザを見たが、こっちを嫌っているという態度は変わらないな。
ともあれ、ドレイクがパーティ会場に入ってきた事により、皆の意識がそちらに集中する。
また、メイドや下働きの者達がそれぞれに飲み物を配っていく。
当然だが、俺は酒を飲めないので、それ以外……果実水を頼む。
ジュースとかそういうのって、何気にそれなりに贅沢だったりするんだよな。
バイストン・ウェルにおいて、作物の類は豊富に採れる。
だが、畑を作るにしても、迂闊な場所に作れば恐獣に襲われる可能性がある。
その為に、恐獣のいない場所……ましてや、ガロウ・ランのいないような場所に注意して、畑を作る必要がある以上、どうしても場所は限られてしまう。
まぁ、ドレイクがアの国の国王になった以上、アの国はどこもルフト領と同じようにガロウ・ラン退治が積極的に行われる事にはなるだろうが。
ともあれ、そんな訳で砂糖を作る為の作物というのは、どうしてもそれなりに貴重になってしまう。
そういう意味では、果汁の他に砂糖も入っているこの果実水は、何気に下手な酒よりも高価だったりする。
とはいえ、アの国の国王となったドレイクが開くパーティだ。
そこで出て来る酒は、当然のように一級品が揃っているんだろうが。
高価な酒……何かで誰かに聞いた覚えがあるが、日本円にして1本で1億円とか2億円の酒とかあるらしい。
まぁ、そういう酒は酒の味だけじゃなくて、資産という一面もあるらしいが。
ともあれ、ここで用意された酒は高級な酒ではあっても、さすがにそこまで高価な酒ではない。
それでもこのパーティに招待されている者にしてみれば、普段飲めないような高級な酒でもあるだろうが。
「諸君、この度はミの国との戦争が無事終わり、そしてミの国を併合する事に成功した。それも、全て諸君の力があっての事だ」
そう言い、ドレイクは演説を行っていく。
そんなドレイクの演説に、パーティに参加している者の多くが耳を向ける。
さすがと言うべきか、ドレイクの演説は話を聞いている者達の多くの心をまとめていく。
「では……アの国の栄光を願って……乾杯!」
『乾杯!』
その声と共に、パーティに参加していた者達は手にしたコップを掲げて乾杯と口にし、酒を飲む。
俺もまた、そんな周囲と合わせるように乾杯と口にし、果実水を飲む。
酸味が少し強いものの、それは嫌な酸味ではなく、後味を爽やかにする酸味。
そんな果実水を飲みながら、周囲の様子を見る。
やはり、当然の事ながら騎士達は自分の活躍を口にしている者が多い。
パーティ会場はドレイク城の中とはいえ、広さはには限度がある。
その為、パーティに参加しているのは、兵士ではなく騎士が多かった。
そして騎士の多くはドラムロに乗って戦いに参加していた以上、酒を飲んで気分が良くなれば、自分がどんな活躍をしたのかといった事を話すのは当然だろう。
「アクセル、楽しんでるか?」
そう言って声を掛けてきたのは、トッド。
トッドもまた上機嫌そうな様子なのは、やはりミの国が自分の領地となるというのが決まっているからだろう。
とはいえ、そこまで酔っ払っている様子はない。
このパーティにおいて、ミの国がトッドの領地になると発表される為だ。
そんな時に領主となるトッドが酔っ払っていれば、みっともない事この上ない。
本人もそれを理解しているからこそ、こうして酒は控えめにしてるのか。
あるいは単純に、出された酒の味が気にくわなかっただけか。
「ああ、楽しんでるよ。そっちは上機嫌だな」
「まあな。それは分かってるだろ?」
「お前がこれまでやってきた事が結果になるんだから、喜ぶのは分かるけどな」
実際、トッドはドレイクの部下としてかなりの活躍を見せている。
考えてみると、最初はトッドの評価が一番低かったんだよな。
ショウは初めて乗ったダンバインで敵を倒すし、トカマクも敵を撃破することは出来なかったものの、それでも戦った。
それに対して、トッドは初めてダンバインに乗ったということで、慎重に活動しており、それがバーンにとっては消極的な態度に見えた。
だが、結果としてトッドはそんなバーンの評価も気にした様子はなく、戦功を重ねていく。
気が付けば、ショウはギブン家に亡命し、トカマクよりも操縦技術では上になっており、聖戦士の筆頭という立場にいた。
アレンという、コンプレックスの相手が召喚された事も、トッドが発奮する理由の1つとなったのだろう。
1つというか、それが一番理由としては大きかったと思うが。
「はっはっは。アクセルにそう言って貰えるのなら、俺としても頑張った甲斐があったってもんだよ」
本当に上機嫌な様子のトッド。
そんなトッドの相手をしていると、少し離れた場所から舌打ちする音が聞こえてきた。
誰だ? とそちらに視線を向けると、そこにいたのはアレン……ではなく、ジェリル。
ジェリルとトッドはそこまで相性が悪くない……というか、それ以前に接触した事そのものがそんなに多くなかったと思うんだが。
ああ、いや……でも最初にオーラバトラーを使った時に、いきなり攻撃してたな。
そう考えると、やっぱりお互いに相性は悪いのか?
あるいは、アレンとはそれなりに友好関係を築いているようだから、そのアレンをライバル視しているトッドが気にくわないのか。
ともあれ、後で面倒な事にならなければいいんだがと、しみじみと思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680