「誰だ?」
そう言ったのは、ルフト領にある俺の家から少し離れた場所。
家を出て散歩をしていたのだが、そんな場所で不意に視線を感じて声を出す。
周囲には林の類が生えている場所で、誰かが隠れるには困らない場所だ。
とはいえ、それでも俺から気配を完全に隠す程のものではない。
そんな状況でも即座に気配を感じた方に攻撃しなかったのは、その気配に悪意や殺気の類がなかったからだろう。
これで悪意や殺気の類があれば、フラオンか……もしくはここがアの国の中だと考えると、ルーザ辺りが雇った刺客という可能性もあったのだが、気配の主からすると、そんな様子はない。
あるいは俺に何の関係もなく……ただ、どこかの恋人同士が人目を避けて逢瀬でも楽しんでいるのかという思いがない訳でもなかったが、気配の数は1つだ。
「へへっ、さすがアクセル王ですな」
そして、やがてそんな声と共に1人の男が姿を現す。
その外見は……
「ガロウ・ランか?」
ガロウ・ランというのは、バイストン・ウェルの一般的な人間と違って、浅黒い肌をしている者が多いし、気配も微妙に違う。
まぁ、バイストン・ウェルの人間にしてみれば、普通の人間はコモンで、ガロウ・ランというのは似ているけど別の種族といった認識らしいので、それも当然かもしれないが。
「へい。実は、アクセル王にある御方からの伝言を持ってきました」
ある御方、か。
ガロウ・ランというのは、基本的に粗野で粗暴な奴が多く、実際に今まで何度も盗賊となっているガロウ・ランを殺してきた経験が俺にはある。
だが、そんなガロウ・ランの中でも金で雇った相手に対してはしっかりと働いたり、あるいは特定の人物に忠誠を誓うといったような者がいるのは、知っている。
そういう連中は少数派だけどな。
このガロウ・ランの話し方から考えると、恐らくはそういうタイプなのだろう。
あるいは、そういうタイプに見せ掛けて、俺を嵌めることで暗殺を狙っているとか、そういう可能性も否定は出来ないが……それでも、殺気の類をここまで完全に隠すのは、普通は難しい。
そうである以上、このガロウ・ランは俺を殺そうと思っていないのは間違いない。
それに、伝言を預かっていると言った。
つまり俺をどこかに連れていこうと考えている訳ではないのだ。
……とはいえ、その伝言によってはまた話が違ってくるだろうが。
「分かった。その伝言とやらを言ってみろ」
取りあえずこの男は害意がないので、話を聞く。
すると、ガロウ・ランの男は畏まった表情で口を開く。
「ある御方が、アクセル王に降伏をしたいと、そのような意思を示しております」
「……俺に? 降伏?」
俺に降伏という時点で、それはつまりアの国と敵対している人物の言葉だというのは予想出来る。
だが、同時に何故降伏する先が俺なのか? といった疑問もある。
とはいえ、これだけの情報があれば、このガロウ・ランの仕えている男がどのような立場にいるのかを想像するのは難しくはない。
まず敵対しているという時点で、絞られる。
フラオン軍、ミの国で新たに結成されている可能性の高い反乱軍、それと……まだ正式に交戦状態に入った訳ではないが、ラウの国といったところか。
「はい」
「……ドレイクに降伏する為の間を取り持って欲しいといった訳ではなくか?」
改めて尋ねたその言葉に、ガロウ・ランの男は再度頷く。
その様子を見る限り、俺とドレイクの関係を詳しく知ってる奴らしいな。
だとすれば、ラウの国は抜いてもいいか?
いや、ラウの国は強国である以上、当然だが情報収集能力が高くてもおかしくはない。
だとすれば、俺とドレイクの間にあるのが上下関係ではなく対等な同盟関係であると、その情報を持っていてもおかしくはない。
一応、ドレイクは人前で俺を対等の同盟関係の相手として扱っているが、普通に考えればアの国とミの国を治めているドレイクと、俺とマーベルの2人しかいないシャドウミラー。
その2つの勢力を、対等な関係だとは到底思えないだろう。
それでもドレイクは表向き対等な関係として扱っている。
しかしそれでも、事情を理解出来ない者にしてみれば、俺とマーベルはドレイクのお情けでそのように扱って貰っていると、そのように認識してもおかしくはない。
しかし、実際には気配遮断や影のゲートを使えば、それこそ俺がその気になればいつでもドレイクを殺す事が出来る。
ドレイクもそれを知ってるからこそ、俺に対して過剰なまでに気を遣っている。
事実、本来なら俺とマーベルにラウの国に攻撃するといったような事を話す必要はないのに、前もって話して了承を得ている程の気の遣いようだ。
……もしこれで俺達に何の連絡もないままにラウの国を攻めるといったような事をした場合、俺達に不信感を持たれるのを避けたかったのだろう。
実際、前もって話を通してあってもマーベルは未だに完全に納得した訳ではないし。
俺達に話を通さずにラウの国に攻めるといったような真似をした場合、最悪俺達がドレイクと敵対するといった可能性もある。
そして俺達がドレイクと敵対した場合、ドレイクはいつどこで俺に狙われるのかといった事を考えるしかない。
中途半端に俺の力をよく知っている為、余計に俺という存在を怖がってしまうのだろう。
それこそ、寝ようとしても暗殺を心配して眠れなくなる。
例え護衛を寝室の中に入れておいても、それこそ俺にしてみれば意味はない。
そもそも気配遮断を使っていれば、俺の存在に気が付く事は不可能だし、それ以前に気配遮断を使わずとも、ダーナ・オシーとはいえ、生身でオーラバトラーを倒せる俺に、その辺の奴がどうにか出来る筈もない。
ガロウ・ランの男を通じて話を持ってきた男は、勿論その辺りについて全てを知っている訳ではないだろう。
だが、それでもある程度はこちらの状況を知ってるとなると……一番可能性が高いのは、ギブン家か?
いや、だがギブン家は今までに何度も俺達と戦っているし、ドレイクを悪しきオーラ力の持ち主と判断し、フラオンの下にいる事から、考えにくい。
だとすれば、ピネガン?
ピネガンは明らかにフラオンよりも有能な人物だ。
そうである以上、こっちの情報収集をしてもおかしくはない。
あるいは、エレがピネガンの娘だったという事を考えると、そっちから情報が流れた可能性も否定は出来ないが。
「話は分かった。けど、何で俺に? 普通、こういう時は俺じゃなくてドレイクに降伏するのが筋じゃないか?」
「その辺に関しては、本人から話を聞いて下さい」
その言葉を聞き、ガロウ・ランの男を見る。
特に殺気の類を出している訳ではないが、それでも俺の視線には強烈な圧力があるのは間違いない。
後ろ暗いところがある者なら、それこそ言葉も出なくなるくらいに。
だが、ガロウ・ランの男は俺の視線を真っ直ぐに受け止めつつも、特に反応する様子はない。
これは……もし俺が情報を引き出そうとしても、多分それを喋る事はないだろうな。
それだけ自分の主人に対して強い忠誠心を抱いているのだろう。
となると、直接俺が会いに行くしかないな。
幸いな話、このガロウ・ランの主人は俺の事をよく調べている。
そうである以上、生身で……いや、オーラバトラーを使っても俺をどうにか出来るとは思っていないだろう。
そして俺に危害を加えようとすれば、その時点で向こうもゲームオーバーとなる。
そうである以上、こちらとしてもそれなりに向こうを信じてもいい筈だ。
この件はドレイクに知らせた方がいいか? と一瞬考えるが、下手に横槍を入れられたくはない。
そうである以上、取りあえず向こうの話に付き合ってみた方がいいか。
これで、もし俺がその辺の一般人であれば、1人で向かうといった真似はしなかっただろう。
ドレイク……とまではいかないが、マーベルを呼んで一緒に行くくらいの事はしてもおかしくはなかった。
しかし、俺をどうにか出来る奴がバイストン・ウェルにいるとは思えない。
いやまぁ、エ・フェラリオとかは魔法に似た力を使えるので、そのような連中はともかくとして。
「分かった。それで伝言の返事はどうすればいいんだ? 直接会うのなら、今から行ってもいいぞ」
「……は?」
さすがにその言葉は、ガロウ・ランの男にとっても予想外だったのだろう。
驚きの表情をこちらに向けてくる。
このガロウ・ランの男にしても、まさかこんなにあっさりと俺がそんな事を言うとは思っていなかったのだろう。
「よろしいのですか?」
「ああ、構わない。そっちも元々俺を連れていきたかったんだろう? あるいは、今日は話を持ってきただけかもしれないが」
そう告げると、ガロウ・ランの男は言葉に詰まる。
適当に言った内容だったのだが、どうやら当たりだったらしい。
「幸い、今日は俺にも特に何かやるべき事はないし、暇だ。明日以降だと何らかの仕事が入るかもしれないからな。暇のあるうちに片付けられる事は片付けておきたい」
急に入る仕事となると、それこそオーラバトラーの訓練とかか。
レプラカーンの複合兵装の盾をサーバインに使わせるのは、何度か訓練をして今はもう問題なく使いこなせている。
それを使って模擬戦をやるのは面白そうだが……今、ジェリル、トカマク、フェイの3人は量産されたレプラカーンの慣らしをしていて、俺が関わる暇はないんだよな。
ちなみアレンはビランビーのままで乗り換えないらしい。
アレンが言うには、レプラカーンよりも機動力のあるビランビーの方が使いやすいらしい。
元戦闘機パイロットだという事を考えれば、ビランビーの方がアレンの趣味に合ったという事なのだろう。
トッドも同様の理由でビランビーから乗り換えないらしいし。
ドレイクはクの国からアルダムを数機買ってるんだし、そっちを使ってもいいと思うんだが。もしくはバストールとか。
高機動型のビランビーだが、アルダムも機動力という点ではビランビーに負けていないし。いや、高機動という点だけで考えれば、バストールの方がビランビーよりも上な気もする。
もっとも、ビランビーはショットが開発した機体なのに対し、アルダムはクの国が開発した機体で予備部品の類が潤沢にある訳ではない。
ショットやゼットがいれば、アルダムを分解して予備部品を作るといった事も可能かもしれないが……そこまではやるつもりはないといった事だろう。
バストールは、どうなんだろうな。
オーラ増幅器もビランビーと同型の物になったので、暴走して地上に出るといったような事はないだろうが。
そうなると、験担ぎとかか?
ともあれ、今はこのガロウ・ランの男の主人に会いに行く必要がある。
「で、どうだ? 今すぐに俺を連れていくのは可能か?」
「はい。それは問題ありません。では、行きましょう。アクセル王の乗り物を用意する必要がありますから……」
「ああ、気にしなくてもいい。俺の身体能力はガロウ・ランよりも上だからな。お前達が走る速度であっても、普通についていける」
そんな俺の言葉に、疑問の表情を浮かべる。
バイストン・ウェルにおいては、ガロウ・ランは高い身体能力を持っているというのは一般的な認識だ。
それだけに、ガロウ・ランの自分に俺が身体能力で負けていないと言われても、素直に信じる事は出来ないってところか。
「そんなに不安なら、試してみろ。これで、俺がお前についていけなければ、改めて何か乗り物を用意すればいいだけだ」
「分かりました」
不承不承といった様子ではあったが、ガロウ・ランの男は俺の言葉に頷く。
「では、行きますが……構いませんか?」
「ああ、いいぞ」
そう言うと、ガロウ・ランの男もその場から移動をはじめる。
最初はゆっくりと……そして、俺が問題なくついてきていると知ると、次第に速度を上げていく。
ガロウ・ランの身体能力が高いとはいえ、当然ながらそれは個人差がある。
そんな中でも、こうして1人の人物に仕えているという事は、当然ながら自分の実力に自信があるのだろう。
それだけに、自分のすぐ後ろを俺がついてきているのを見て、驚愕の表情を浮かべていた。
俺の言葉に頷いてはいたものの、まさか本当に自分に追いついてくるとは、思ってもいなかったのだろう。
それでも自分が本気で走っても問題ないと判断すると、そのまま走り続け……やがて、1時間程も走り続けたところで、足を止める。
到着したのは、ラース・ワウからそれなりに離れた森の中。
……もしかして、俺を騙し討ちにする気じゃないだろうな?
一瞬そんな風に思ったが、周囲に俺達以外の気配は1つしか存在しない。
「出て来たらどうだ?」
そう言うと、ガロウ・ランの男は一瞬動きを止め……そして気配のある方に向かって頷く。
すると、近くにあった木の陰から黒髪の中年の男が前に出る。
「アクセル王、私はキブツ・キッスと申します。降伏の件、考えて貰えたでしょうか?」
そう、告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680