キブツ・キッス。
俺の前に姿を現した男がそう名乗ったのだが、その名前には聞き覚えがあった。
見た感じでは、30代から40代くらいの年齢で、生真面目そうな性格をしているように思える。
「キブツ・キッス? それは確か、ギブン家に仕えているキッス家の当主の名前だった筈だが」
集めた情報や、ガラリア、ドレイクといった面々から聞いた話を思い出しながらそう言うと、キブツは頷く。
「キッス家についてご存じのようで、光栄です。アクセル王が仰る、そのキッス家が私の家で間違いないかと」
どうやら、目の前の人物は本当にキッス家の人物だったらしい。
だが……それならそれで、問題も出て来る。
「ギブン家はフラオンと一緒に行動していたと思うが?」
「その通りです。ですが、私は今のフラオン王と行動を共にする事は出来ないと判断しました。まさか、守るべき民から略奪をするなど……」
キブツのその言葉に、ピンとくるものがあった。
まだミの国が内乱をしていて、トッドが反乱軍に協力をしていた時、反乱軍の村にフラオンの手の者が略奪にやって来たのだ。
幸い、その時は俺とマーベルが偶然トッドに会いにその村に行っていたので、フラオンの手の者は結局死ぬか捕虜となったのだが……どうやら、フラオンはその件以外にも略奪をしていたらしい。
とはいえ、それも当然だろう。
フラオン軍は、領地の類を持たない。
フラオンは殆ど着の身着のままでアの国を追い出されたので、金に関してもギブン家が持ち出しただけの筈だ。
その上、ミの国にいる時は占領していた村や街から食料の類を徴収出来ていたかもしれないが、ミの国がドレイク軍に負けた事によって逃亡を余儀なくされている。
その辺の事情を考えれば、今のフラオン軍がどうやって食料を入手しているのかといった事は……考えるまでもない。
あるいはドレイクの予定通りにラウの国で保護されていたとしても、ミの国からラウの国に保護されるまでの間に、略奪をするといったことは十分に考えられる。
「略奪か。ミの国でもフラオンの命令で略奪をしている連中と遭遇した事があったな」
そう言うと、キブツは苦い表情を浮かべる。
当然の話だが、あの件以外にも略奪は行われていたらしい。
「それで? 結局お前は、フラオンが略奪をしてるのが我慢出来なくて、降伏するなんて言い出したのか?」
「それもあります。キッス家を犯罪者の一族にしたくはありません。それに……何よりも大きいのは、やはりキッス家の存続を考えれば、フラオン王に仕える事は絶望しかありません」
キッス家が仕えているのは、正確にはフラオンではなくギブン家だ。
しかし、ギブン家がフラオンをアの国の旗頭として仕えている以上、当然の話だが上司の上司といった感じでフラオンがキッス家に命令をする事も可能なのだろう。
その辺の事情を考えれば、キブツもフラオンの命令に逆らう事は出来ない。
そして、そんなフラオンと一緒にいれば、キッス家が潰れると、そうキブツは思ったのだろう。
ギブン家に仕えている家ではあるが、キッス家も当然のように一個の家として存在している。
そうである以上、フラオンと一緒に行動してギブン家と一緒に破滅の道へと進むよりも、まずは自分の家を大事にする必要があると、そうキブツが考えてもおかしくはない。
「降伏しようとした理由は分かった。だが……その降伏する相手が、何故俺なんだ? それこそ降伏するのなら、俺じゃなくてドレイクでもいいと思うが」
「そうですね。もしアクセル王の存在がなければ、私もドレイク・ルフト……いえ、ドレイク王に降伏したでしょう。ですが、ギブン家に仕えていた私が降伏したとしても、その場合は使い捨ての駒とされる可能性が高い」
キブツのその言葉には、納得出来るところも大きい。
ドレイクにしてみれば、今までギブン家に仕えていたキブツは、とてもではないが信用出来る相手ではないだろう。
信用出来るかもしれないが、信用出来ないかもしれない。
可能性としては、信用出来ない可能性の方が高い。
それこそ、フラオンやギブン家の命令によって、ドレイク軍に潜入し、何かあったら内部で破壊工作やら、もしくはドレイクを暗殺するとか、そんな風に命令されていてもおかしくはないのだ。
そうである以上、ドレイクとしても信用は出来ないだろう。
……だからといって、俺がキブツを……キッス家を信用出来るかといった事もまた、確証はないのだが。
何しろ、ギブン家に仕えていた家だしな。
そう思えば、寧ろ何かを企んで俺のところに来たという考えは、否定出来ない。
これが、俺だけであれば、それこそ何かあっても問題はないのだが、こっちにはマーベルがいるしな。
始まりの聖戦士と言われているマーベルの存在も、フラオン達にとっては厄介なものだろう。
マーベルは、オーラバトラーに乗っていれば、かなりの強さを持つ。
少なくても、キッス家のパイロットが纏めて掛かってきても対処出来るだけの実力は持っているだろう。
だが、それはあくまでもオーラバトラーに乗っていればの話でしかない。
生身での戦いとなれば、マーベルもガラリアからそれなりに教えて貰ってはいるが、それでも少し前までは地上で大学生をやっていたのだから、どうしても本職には及ばない。
まぁ、家が牧場をやっていた関係で乗馬の類はそれなりに得意で、身体を動かす事に関してはそれなりのレベルだったらしいが……言ってみれば、それなりはそれなりでしかない。
そうである以上、もし生身の戦いでキブツやキッス家の兵士に襲われるような事があった場合、それに対処出来るかどうかは難しい。
あるいは、マーベルが魔法を習得していれば、生身でも相応の実力を持つ事になるだろうが、マーベルは未だに魔法を発動出来ていない。
魔法という点においてだけ考えた場合は、地上から戻ってくる時にまがりなりにも魔法を発動したガラリアの方が上をいってるんだよな。
そんな訳で、生身のマーベルの安全を考えると、キブツを受け入れるといった真似は論外となる。
なるんだが……もしキブツを受け入れた場合、メリットも大きいんだよな。
まず、フラオン軍についての詳細な情報を入手出来る。
そして何より、ドレイクに対してではなく俺に向かって降伏してきたという事は、キブツは……いや、キッス家は俺の部下という事になる。
ゼラーナの操縦をしていたのか、それともナムワンの操縦をしていたのか、その辺りの事情は分からないが……もしくはオーラシップを操縦していないという可能性も否定は出来ない。
出来れば、ナムワンの操縦をして欲しいところだ。
そうすれば、俺のナムワンも操縦を任せる事も出来るし、ヨルムンガンドが完成した時に操縦を任せる事も出来る。
しかし……それは当然の事だが、あくまでもこれが偽りの降伏ではない場合の話だ。
「個人的には、お前達の降伏を受け入れてもいいと思っている」
「おおっ!」
俺の言葉に、キブツは喜びの声を上げる。
しかし、俺はそんなキブツに対して手を出し、落ち着くように言う。
「個人的には、だ。そもそもの話、お前がフラオンやギブンの命令に従って、偽りの降伏をした訳ではないとは限らない」
「それは……」
キブツもそんな俺の言葉に、何も言えなくなる。
実際、裏切っていない証拠を出せと言われても、それはいわゆる魔女の証明に近い。
そうである以上、幾ら言葉で自分は本当に降伏をしにきたのだと言っても、証拠にはならないだろう。
そうである以上、キブツとしては何とかする必要があるのだが……それをどうするのかというのが、問題となる。
さて、そんなキブツではあるが、俺にはそれをどうにかする方法がある。
鵬法璽。
ネギま世界で入手したマジックアイテムで、この鵬法璽を使って誓った事は絶対に破れなくなる。
マクロス世界で野望を持っているレオンが、もう野望を抱くような事はなく、シャドウミラーに忠誠を誓っているというのが、その効果を発揮してるだろう。
勿論、シャドウミラーの政治班ではレオンも中心人物の1人として活動しているというのも、影響してるのかもしれないが。
何しろ、シャドウミラーは他の国や組織ではなく、他の世界と交渉をしたりするのだ。
政治家や外交官的な役割を持っている者にしてみれば、これ以上にやり甲斐のある仕事というのはそうないだろう。
だからこそ、反抗心を抱きようがないのだろう。
もっとも、それ以外にもシャドウミラーの人員はかなり少数で、しかも強い。
そんな相手に何かをしようものなら、それこそレオンがどうしようもなくなるだろう。
……そう考えると、レオンに使った鵬法璽の効果をはっきりとそういうものだとは断言出来ないんだよな。
ともあれ、今まで多くの世界を旅して多数の相手と会ってきた俺にしてみれば、キブツの降伏はフラオンの命令とかではなく、真実だと思う。
そもそも、もし俺が捕らえてドレイクに知らせれば、その時点でキブツは終わりなのだから。
最悪、そこまでしなければ騙せないと思って行動した可能性も、ない訳ではないのだが。
ただ、マーベルの安全を考えると、念には念をいれる必要がある。
これで、マーベルがシャドウミラーの幹部陣のように自分の身を守れる程度の実力を持っていれば、その辺の心配もいらないんだが。
「お前がもし本当に俺に降伏をするというのなら、方法がない事もない」
「本当ですか!?」
深刻に悩んでいたキブツだったが、俺の言葉を聞くと一縷の希望を見つけたかのように顔を上げる。
この様子を見ても、何かを企んでいるようには思えないんだよな。
ガロウ・ランの男は、特に表情を変えないままにこちらの方に視線を向けている。
「俺が魔法を使えるという話は、ショウから聞いてるか?」
「は? ……はぁ、まぁ、一応は」
「その魔法……正確には魔法の道具の1つに、鵬法璽というのがある。これは相手に絶対的な契約を守らせるという代物だ。これを使って裏切りをしないと誓えば、お前達の降伏を認める事は出来る」
キブツの表情が明るくなる。
話の流れから、自分が……キッス家が救われるかもしれないと、そう思ったのだろう。
それは正しい。正しいが……
「安心しているところを悪いが、これは大袈裟でも何でもなく、本当に魔法の道具……マジックアイテムだ。もしこれを使って俺を裏切らないと誓ったにも関わらず、俺を裏切ろうとした場合……一体どうなるかは、分からないぞ?」
もしキブツが鵬法璽の効力を軽く考えているようなら、それこそ鵬法璽を使った後でそれを恨む可能性がある。
鵬法璽というのは、それだけ大きな効果を持つ。
俺の言葉に、キブツは少しだけ驚いた様子を見せる。
だが……それでも俺の言葉に頷く。
「それでも構いません。キッス家が滅亡しないのなら」
「キッス家か。そう言えば、ニー・ギブンの側近にキッス家の者がいた筈だが? それはどうする?」
ギブン家の情報の中に、そんなものがあった筈だ。
以前、俺とマーベルが恐獣のいる森にいた時に遭遇したニー。
そのニーと一緒にいた女が、キッス家の人間だった筈だ。
「私の娘の、キーン・キッスです」
「駄目だろ、それは」
キッス家として降伏したいと言ってきているのに、キブツの娘のキーンがニーの側にいるというのは、問題だろう。
それこそ、キッス家がキーンを通していつまた裏切るかも分からない。
そうである以上、降伏を認める訳にはいかないと判断してもおかしくはない。
「娘ですが、既に縁は切りました」
「縁を切っても、親子なのは変わりがないだろう? ドレイク軍はフラオンと戦う事になる。その時、もしキーンが出て来たらどうするつもりだ?」
「……最悪、この手で討ちます」
そう告げるキブツだったが、馬鹿正直にその言葉を信じるような真似も出来ない。
まぁ、鵬法璽を使えばキブツが裏切るような事にはならないと思うが……
「それだけだと、ちょっと弱いな。言ってる事は立派だが、実際にそれが出来るかどうかは、また別の話だし。……まぁ、鵬法璽を使えば俺達に不利益な真似は出来ないか。ちなみに、他に何か手土産の類はないのか? ドレイクを納得させられるような奴」
「あります」
即座にそう答えるキブツ。
この辺は前もって考えていたのだろう。
まぁ、普通なら自分を信じて貰う手土産の類を持ってくるだろうしな。
「で? 何だ?」
「オーラバトラーを1機、持ってきました」
「……おい、それが手土産になると思ってるのか? 今まで、俺が一体何機のダーナ・オシーを手に入れたと思っている?」
ダーナ・オシーは、それこそ今までで数十機近くを入手している。
そんな状況で、更にダーナ・オシーを持ってこられても、それがどうした? といった風に思ってしまうのは当然だろう。
不満そうな俺の様子に、キブツは慌てた様子で首を横に振る。
「いえ、ダーナ・オシーではありません。ラウの国とギブン家が協力して開発した、新型のオーラバトラー、ボゾンです」
そう、告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680