ボゾンを空間倉庫に収納すると、取りあえず森でやるべき仕事は終わった。
……いやまぁ、キブツやキッス家の面々を納得させることが出来たのかどうかはともかくとして、今はそういう事として納得して貰う必要があった。
特に大きいのは、やはり俺の部下として活動しつつ、手柄を挙げなければならないのに、俺がキブツ達に求めているのはオーラシップやオーラバトルシップの運用であるという事だろう。
実際、前線に出て自分が戦って敵を倒すオーラバトラーに比べると、オーラシップやオーラバトルシップの運用で手柄を挙げるというのは難しいのも間違いない。
だが、正直なところ前線で直接戦う戦力となると、それこそ俺とマーベルがいれば十分でもある。
基本的にラウの国と戦うのは、アの国……つまりドレイク軍だ。
とはいえ、ラウの国も強国だけあって厄介な相手なのは間違いないだろう。
ボゾンという新型オーラバトラーを開発しているのも、そのいい証拠だ。
……ただしオーラバトラーを開発したショットやゼット、ドレイクと昔から取引をしており、本人も技術者として優秀なビショットといった面々ならともかく、ラウの国がこうも素早く新型のオーラバトラーを開発出来るとは思わない。
だとすれば……多分、本当に多分なのだが、フラオン軍……いや、ギブン家はミの国にいる時からラウの国と接触を持っていたのかもしれないな。
ラウの国が国交断絶しているのは、あくまでもミの国だ。
そのミの国で活動していたギブン家とは、接触しても構わなかったのだろう。
それだけではなく、ラウの国にしてみればアの国の王族の血筋たるフラオンを保護するといった大義名分もあったのだろうし。
そんな事を考えていると、サーバインの映像モニタにドレイク城の姿が見え、少し遅れてドラムロが3機、こちらに向かって近付いてきた。
『アクセル王、護衛させて貰います。お館様がお待ちですので』
ドラムロの1機からの通信。
それは、俺がキブツを連れてキッス家のいる場所……正確にはボゾンのある場所まで移動している時に遭遇したドラムロのパイロットだった。
どうやら俺が頼んだ通り、ドレイクにキブツの件を知らせておいたらしい。
そうである以上、キブツの安全は確保されたようなものだろう。
……あくまでも、今の状態ではの話だが。
もしドレイクと会って、そこでドレイクがキブツをどうしても処理するという事になれば、話はまた違ってくるだろうが。
ただし、その場合は余程の理由がない限り俺を敵にするという事でもある以上、ドレイクはそう簡単にキブツを処理するといった真似は出来ない筈だ。
もっとも、ドレイクとキブツのどちらを選ぶかと言われれば、俺も結局はドレイクを選ぶだろうけど。
「分かった、案内を頼む」
出来ればそういう事態にはなって欲しくないと思いつつも、俺はドラムロに囲まれた状態でドレイク城に向かうのだった。
「アクセル王、また面倒な話を持ち込んでくれたな」
困ったような笑みを浮かべつつ、ドレイクが呟く。
そんなドレイクの横では、ルーザが目を吊り上げて叫ぶ。
「何を言うのです! キッス家といえば、ギブン家の忠臣! そのような者がこうしてやってきたのですから、見せしめに殺せばいいのです! それこそ、連れて来た者が!」
ルーザの言葉は暴論ではあるが、決して間違っている訳ではない。
実際、謁見の間にいる者の中には、そんなルーザの言葉に同意する様子を見せている者もいる。
勿論、そのような人物は少数だが。
これでドレイクがそうするようにと言えば、他の者達もそれに同調するのだろうが、今の状況ではドレイクは困った様子を見せているだけで、キブツを処理しろといったような事は言っていない。
ドレイクも、分かっているのだろう。ここでもしキブツを処理するように言った場合、俺との関係が悪くなる可能性が高いという事が。
「そう言うな。ドレイクにしても色々と助かる事は多いだろう?」
「それは否定出来んな」
実際、キブツ家やその郎党がフラオンを裏切ったというのは、大きな意味を持つ。
単純に向こうの戦力が減ったという事もそうだが、それによってこっちの戦力が増えたのだから。
それ以外にも、ボゾンという新型のオーラバトラーを持ち出したという点や、フラオン軍とラウの国に関する情報を持ってきてもいる。
……同時に、実はフラオンやロムンの命令でこのような真似をしている可能性もあり、それを考えるとキブツが持ってきた情報の全てを信じるといったような真似は出来ないという点もあるのだが。
ただし、それは今だけはということを意味する。
「そんな言葉を信じるのですか!」
俺とドレイクの会話に、ルーザは金切り声を上げて叫ぶ。
「黙れ、ルーザ」
我慢出来なくなったのか、ルーザに対して鋭く叫ぶドレイク。
ルーザはそんなドレイクを忌々しげに睨み付けるが、それでも叫ぶのは止める。
こうしてルーザを見ていると、しみじみと思うんだが……よく、ドレイクはルーザと結婚したよな。
恐らくは恋愛結婚ではなく政略結婚なのだろうが、それであっても俺はこんな相手と結婚をするというのはごめんだ。
ましてや、ドレイクは領主の務めとはいえ、ルーザを抱いてリムルという子供を産ませているのだから、尚更だ。
その辺は人の好みにもよって違うだろうし、領主としての仕事という一面もあるので、特に何かを言うような真似はしないが。
しかし、ルーザが厄介なのは間違いない事実でもある。
こうして毎回のように俺のやる事に文句を言ってくるしな。
「アクセル王、すまんな。だが……これはルーザだけの意見ではないのも事実だ。儂の部下の中には、そのような疑り深い者もいる。そのような者達に対して、どうにか納得させて欲しいのだが……」
「分かっている。それについては問題ない」
そう言い、空間倉庫から鵬法璽を取り出す。
『おお!』
その声は、俺が空間倉庫を使った事によるものか、それとも鵬法璽の放つ存在感に対するものか。
「これは鵬法璽というマジックアイテムだ。これを使って誓った内容は、破る事はまず不可能なくらいのな」
「それは……儂はアクセル王の力を知ってるから信じられるが、アクセル王の力を知らない者に、それを信じろという方が無理なのでは?」
「そうです! その男は嘘を言ってます! もしかして、フラオンと内通している可能性も否定は出来ません!」
そう叫ぶルーザ。
ルーザの言葉に、話を聞いていた周囲の者達も動揺する。
ルーザの言葉が真実なのかどうかは、分からない。
だが、そのルーザがここまで俺を敵視しているというのには、思うところのある者も多いのだろう。
何しろ、ルーザはドレイクの妻だ。
そしてドレイクは現在アの国の国王である以上、ルーザは王妃という事になる。
ルーザが王妃ね。……魅力という点ではどん底の王妃だな。
少なくても、俺ならルーザのような王妃がいる国で暮らしたいとは思わない。
まぁ、その辺はドレイクも分かってはいるのだろうが。
「ルーザ」
短い一言だったが、ルーザを黙らせるには十分な迫力の声。
一応ドレイクはルーザを抑えているように思えるが、ルーザの場合自分の気にくわない相手に対しては、絶対に許容出来ないといったところがあるしな。
そう考えると、やはりここはしっかりと手綱を握っておいた方がいいと思うけど。
まぁ、もしルーザが本気でこっちと敵対したら、こっちも相応の対処をするだけだ。
今の時点でも明らかにこちらを目の敵にはしているものの、刺客を送り込んできたりといったような事はしてないので、取りあえずその辺に関しては様子見となる。
刺客という点では、バーンが俺の動きをこっそりとギブン家に流したという事もあったが……うん、まぁ、あの時は初めてダーナ・オシーを入手出来たので、結果的にはプラスだったんだよな。
「それで、アクセル王。ルーザの言い分はどうかと思うが、儂としても見た事もないマジックアイテムとやらを出されても、信用は出来ない。どうにかして、それを示して貰えないだろうか?」
「そう言われてもな。まぁ、どうしても無理と言うのなら、最悪俺はドレイクとの信頼関係がなくなったと判断してもいいんだが……」
「待て!」
俺がそう言った瞬間、ドレイクは慌てたように言う。
以前……それこそ、俺がルフト領に来た時だけであれば、ルフト領から出るといった選択肢はあまり選びたくない方法だった。
だが、今は違う。
アの国が現在この辺りでは大国であるのは間違いないが、そんなアの国よりも国力は低いものの、オーラバトラーの開発が盛んで、俺の実力を認めている国王が治めている国……クの国がある。
最悪、そんなクの国に行ってもいいし、あるいはラウ……はフラオンやピネガンがいる可能性が高いので難しいが、そうなるとラウの国よりも強国と言われているナの国に行ってみるのも悪くはない。
「アクセル王、待って欲しい。今まで儂とお主との間で築いてきた信頼関係は、この程度の事で崩れてしまうようなものではないだろう?」
ドレイクとしては、絶対に俺を手放す訳にはいかないのだろうが、俺としてはそこまでドレイクに固執する理由もない。
だが、ドレイクは違う。
俺の持つ気配遮断と転移魔法がどれだけ脅威になるのかは、ドレイクもよく知っている。
そんな俺が自分から離れていくのなら、それこそ最悪殺してでも……といったように思うのだろうが、生憎と俺はオーラバトラーを使っていない状態でも強い。
それこそ生身で恐獣やオーラバトラーを相手に出来るくらいには。
だからこそ、ドレイクとしては俺を殺すといったような真似も出来ないし、ましてや自分と敵対するかもしれない勢力に俺達が合流するのも許容出来ない。
結局のところ、俺とドレイクは対等の同盟関係ではあるが、ドレイクは俺を手放すといった選択肢を取ることは出来ず、それ対して俺はドレイク以外の勢力と手を組むといったような真似が出来る。
この差は、大きい。
「そうだな。だが、俺の行動が信じられないのだろう? であれば、どうするのかをしっかりと考えている」
「アクセル王の言いたい事は分かる。だが、こちらとしても何の証拠もなくキッス家の者を受け入れるといった真似は出来ないのだ。それは分かってくれるだろう?」
そう言われると、キブツの件も納得するしかない。
であれば……
「ドレイクの言いたい事も分かった。なら、罪人か捕虜といった中で誰か1人連れてこい。出来れば、何らかの秘密を知っていて、それを話さないような奴の方がいい。そいつに鵬法璽を使って、情報を吐かせてやる。それでどうだ?」
「すぐに準備しよう」
俺の気が変わっては大変だといった様子で、ドレイクが部下に指示をする。
そうして10分も掛からず、1人の人間が連れてこられた。
手が縄で縛られているその男は、何故自分がここに来たのかといったことが理解出来ないように周囲の様子を見ていた。
「では、アクセル王。頼む」
「分かった。……これからお前は俺の言う事をそのまま口にしろ。そうすれば、解放される。本心ではどう思っていてもいいから、とにかく言えばいい」
「え? あんたは……?」
「俺が誰でもいいだろう? とにかく、言え」
「わ、分かった」
俺の様子に、取りあえず言うだけならと判断してから口を開く。
「お前の名前の後に、こう告げろ。自分は最初にガストラと言われた後で質問されれば、その質問に必ず答える事を鵬法璽に誓うと」
そう言うと、男は何が何だが分からない様子ではあったが、捕らえず誓うだけならどうとでも後で出来ると考えたのか、鵬法璽の名前に誓って宣言し……そして、男は鵬法璽の効果について何かを感じたのか、驚愕の表情を浮かべる。
「よし、まずは試してみるか。ガストラ。……お前は何故尋問に答えようとしない?」
そう聞いた瞬間、男は口を開きそうになりながらも、それを我慢し……だが、鵬法璽の力には逆らえず、口を開く。
「俺が喋れば、計画を実行しようとしている仲間に迷惑が掛かるからだ」
『っ!?』
男があっさりと口を割った事に、謁見の間にいた者が全員驚く。
まさかといった感じだったのだろう。
「さて、効果の方は確認出来たな? 鵬法璽を使えば、それに逆らうような真似は出来ない。そうである以上、これを使って俺を裏切らないように誓わせれば、それは確実に達成される」
ドレイクが唾を飲み込む音が、謁見の間に響き渡る。
正直なところ、鵬法璽はあまり使いたくない代物なのだが……同時に、裏切りに対して絶対的な力を発揮するのも、また事実だ。
エヴァからも、これはあまり使うなと言われているのだが、今はこれが必要である以上、しょうがない。
「うむ。アクセル王の言葉を信用しよう。それを使うのなら、キッス家の降伏を認める」
ドレイクが頷き、ルーザは余程悔しかったのか、俺を睨み殺そうとするかのように睨み付けている。
そんなルーザを無視し、俺はキブツに頷く。
キブツは小さく息を吸い……口を開く。
「キブツ・キッスは、アクセル王を裏切らないと鵬法璽に誓う」
その言葉に鵬法璽が発動し……こうして、キブツを含めたキッス家は、俺の部下となるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680