転生とらぶる   作:青竹(移住)

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獣人さんのリクエスト、日本国召喚編です。


番外編118話 if 日本国召喚編 第01話

「……え? あれ? 日本?」

 

 周囲の状況を見て、俺の口からはそんな言葉が出る。

 一体何で俺がここにいるのか……そしてここがどこの世界の日本なのかは分からないが、現在俺の周囲にある光景は東京の筈だ。

 色々な世界で東京には行ったが、そんな中でも見覚えのある光景が広がっているのは間違いないのだから。

 ともあれ、また何らかのトラブルに巻き込まれ、どこかの世界の東京に転移させられたのだろうと判断する。

 ペルソナ世界か、ネギま世界か、それとも他の世界か。

 そんな風に思いつつ、俺は通信機を取り出すが……

 

「通じない?」

 

 そう、通信機はホワイトスターと繋がらない。

 それはつまり、この世界にはゲートが設置されていないという事であり、結果としてここは未知の世界という事になる。

 

「東京があって、科学技術的にも特にそこまで発展していないって事は……それはつまり、ロボットとかそっち系の世界じゃないって事か?」

 

 そんな疑問を抱きつつ、取りあえず俺はこの世界の情報を探り、同時にゲートを設置する場所を探す為に行動に移るのだった。

 

『日本が味方をしたクワ・トイネ国が勝利した事は何よりですが、問題なのは自衛隊を戦争に使った事です。これは憲法違反に当たるので、国会で厳しく追及していくつもりです』

 

 少し離れた場所にある街頭TVでそんな事を言っていたので、何となくこの世界の状況も理解は出来たのだが。

 

 

 

 

「ふーん……また、妙な世界に転移したものね」

 

 レモンがどこか呆れたように俺に向かってそう言ってくるものの、その辺を俺に言われてもな。

 レモンがいるのを見れば分かるように、俺は無事に日本からホワイトスターに戻る事に成功していた。

 俺が接触したのは、日本にある企業の中でも大きな影響力を持っている企業グループだ。

 本来なら日本政府に接触しようと思ったのだが、ちょっと調べただけでもこの日本の政府は対応が遅く……正直なところ無能という印象しかなかったので、それなら政府よりは企業の方がいいと判断した。

 実際には無能ではないのかもしれないが、何にしろ対応が遅いというイメージしかなく、それも手続きが重要だからと言うことで……何かをするにも複数の場所をたらい回しにされ、その上で野党にも手を回すといったような事が必要で、本来なら1つの作業工程でどうにかなるような事を、30も40もの作業工程を必要とするのだ。

 そう考えれば、無能ではないのかもしれないが、組む相手としては遠慮したいと思うのは当然だった。

 それに比べると、企業の方は自分達に何か利益があるのなら即座に動くという者も多い。

 勿論、企業の中にも政府と同じような体質のところはあるが、それでも利益が得られるのなら、即座に動くという者達も多い。

 俺はそんな企業と接触した。

 最初こそこちらを怪しんでいたものの、俺が魔法を使ったりしたのを見ると信用する。

 まぁ、俺の要望がどこかの土地を少し貸して欲しいといったような物だったり、適当に空間倉庫の中から取り出した金塊を土地の代金として渡したというのも大きいのだろう。

 そんな訳で、会社から買った土地にゲートを設置して無事にホワイトスターに戻ってきた訳だ。

 

「妙な世界……まぁ、そうだな。情報を集めた限りだと、ファンタジー世界の中に日本が転移したといったような感じになってるし。ファンタジー世界に転移した世界に俺が転移したといったように、意味の分からない感じになってるな。とはいえ……」

「旨みはある、ね。……レオンが張り切ってたわよ?」

「だろうな」

 

 日本そのものに関しては、俺にとっても特に目新しいところはない。

 日本がもといた世界ではトップクラスの軍事力を持っていたのかもしれないが、所詮はその程度でしかない。

 敢えて日本で気になるとすれば、京都とかをエヴァが気にしているだけか。

 だが、日本以外となれば話は別だ。

 ファンタジー世界だけに、モンスターの類も当然いるだろうし、魔法に関しても興味深い。

 未知の技術の習得という点で考えると、今回の俺の転移は決して悪いものではなかった。

 とはいえ、その会社にしても日本が異世界に転移したところに、更に異世界から俺が転移してきた……といった内容を公開すれば問題になるし、重要な事を決めるのは遅い政府に俺達を任せるよりは、自分達が交渉の窓口になった方がスムーズに交渉出来る――勿論、俺達との貿易で利益を欲しいというのもあるのだろうが――という事で、俺達もまたこの世界の日本は当てにならないと判断し、お互いの利益は一致した。

 本来なら、異世界からの転移というのはとてもではないが信じられない事なのだが、何しろ日本そのものが国ごと転移するという経験をしているだけに、その辺はあっさりと信じられた。

 そんな訳で、早速政治班の中でも交渉が得意なレオンが会社との交渉に向かった訳だ。

 

「とにかく、日本がそのまま転移してきたって話だったから、向こうが欲しい物は色々とある筈だ。食料……野菜や穀物の類は、心配いらないらしいけど」

 

 最初に日本が接触した国は、農業大国と呼ぶような国だったらしい。

 その為、穀物や野菜に関しては問題がなくなったらしい。

 魚の方も漁業が行われているので、問題はないが……肉の類はそれなりに売れそうだな。

 地球にいた時も、肉の類は輸入された品が結構あったらしい。

 とはいえ、シャドウミラーの牧場で作られている肉はそこまで多くはないので、マブラヴ世界の合成食とか?

 改良されて、それなりに味も悪くないものになったらしいし。

 ともあれ、こうしてシャドウミラーはこの世界の日本……正確にはその中の企業と取引を始めるのだった。

 

 

 

 

 

「これがフェン王国か」

「ちょっと、アクセル。ほら、見てよあれ」

 

 マリューが興味深そうにフェン王国の首都たるニシノミヤコを見て嬉しそうにしている。

 ニシノミヤコではなく西の都なのでは? と思わないでもなかったが、この世界においてはニシノミヤコと言われてる以上、俺としてもそういう風に表現した方がいい。

 俺達と取引をしている企業から、最近日本の間ではこのフェン王国への旅行が流行っているという話を聞き、こうしてやってきたのだが……その理由も納得出来る。

 ファンタジー風ではあるが、どことなく日本……それも江戸時代やそれよりももっと前の戦国時代を思わせるような場所。

 そんな場所だけに、日本人が興味を抱いてもおかしくはなかった。

 

「でも、この国って最近パーパルディアとかいう国と揉めてるんでしょう? そうなると、安全なの? いえ、私達は安全なんでしょうけど」

 

 政治班の人間らしく、エリナは周囲の様子を眺めつつそんな風に告げる。

 エリナにしてみれば、日本……それも一企業だけではなく、出来れば他の国とも国交を広げたいと思っているのだろう。

 ワイバーンとか、この世界にはかなり興味深い存在も多いし。

 

「日本政府にしてみれば、国民の不満を逸らすのに必要だったんだろうな」

 

 エリナにそう返す。

 実際、クワ・トイネやクイネといった国にも旅行に行けるようにしているみたいだし。

 もっとも、この国の方が人気は高いらしいけど。

 

「日本政府も、まさかこんな事になるとは予想していなかったんでしょうし、そう考えれば頑張っている方だとは思うわよ?」

「レモンの言いたい事も分かるけど、即断即決が出来ないなら一方的にやられるだけだぞ。特にこの世界においては、日本のような平和惚けしている国は餌にしか見えないだろうし」

 

 現場にいる人間は、この世界の脅威を理解しており、どうにか対処する必要があると考えている。

 だが、本来その判断をすべき政府が無能……もしくは判断が遅いとなれば、いざという時に対処は難しい。

 前の世界の常識を引きずっており、自分達が投げ込まれたこの世界の常識を理解せず、自分達のやり方を通すのが正義だと思っているような、勘違い……もしくは頭がお花畑の奴が多いんだろうな。

 一応取引をしている企業から貰ってこの世界……いや、この日本が前にいた世界の歴史も見てみたのだが、BETAが襲ってきたり、マクロスが降ってきたりといったような事は何もない、いたって普通の世界だった。

 そして、そんな世界であっても憲法9条が枷となり、日本は自縄自縛といった状況になっていた。

 前にいた世界……地球であってもそうだったのに、当然ながらこのファンタジー全開のこの世界でも同じような感覚でいれば、それが一体どれだけの被害をもたらすのかは考えるまでもないだろう。

 この辺が日本政府の頭がお花畑と判断している理由だ。

 

「とにかく、宿をとってから観光を始めるとするか。色々と興味深い場所も多そうだし」

「ねえ、アクセル。コンサートとか出来るかしら?」

 

 フェンにやってきて気分が乗ったのか、シェリルがそんな風に言ってくる。

 とはいえ、俺達の存在は公になっていない。

 いや、一応取引をしている企業の伝手を使って問題ないようにはなっているが、それでも本格的にしっかりと調べられれば見つかってしまってもおかしくはないだろう。

 だからこそ、今はまだあまり目立つ真似はしたくなかった。

 そう思うも、シェリルの持つ歌の力はかなりのものだ。

 マクロス世界では銀河の歌姫として名高く、銀河で1日でもシェリルの歌を聴かない日はないと言われてもおかしくはない程に。

 今となっては、シェリルもマクロス世界ではなくシャドウミラーでの活動をしているので、以前程にマクロス世界では影響力はない。

 だが、それでも新曲が出来たらマクロス世界でも売っているし、何よりもシャドウミラーを通じて接触している多くの世界において、シェリルの歌は売れに売れている。

 それこそが、マクロス世界でシェリルの歌が爆発的に流行っていたのは、マクロスギャラクシーのバックアップによるものではなく、実力によってという事の証明だった。

 だからこそ、恐らくはここでシェリルが歌っても大反響なのは間違いないだろうが……いや、そう考えると寧ろここで歌わせた方がいいのか?

 そう思ったのだが、俺が口を開くよりも前に遠くから悲鳴が聞こえてきた。

 

「きゃああああああああ!」

「パーパルディアだ、パーパルディアが攻めて来たぞ! 逃げろ、逃げろ、逃げろぉっ!」

 

 そんな声が響き渡り、周辺にいた多くの者達が即座に逃げ出す。

 パーパルディアが? いやまぁ、フェンがパーパルディアと揉めているのは知っている。

 しかし、日本もその辺はしっかりと考えて……いや、日本政府の事だし、まだ地球にいた頃の頭お花畑の常識を持っているんだろうな。

 こうしてフェンへの旅行が許可されているという事もあり、てっきりいざという時はフェンを助ける為に動いているのだろうと思っていたが……日本政府に期待した俺が間違いだったか。

 とはいえ、この世界の戦力で俺達をどうこう出来る訳がない。

 政治班のエリナや広報担当のシェリル達も、エヴァの訓練によって相応の戦闘力を持っているのだから。

 マリューにいたっては、言うまでもない。

 

「さて、どうやらパーパルディアが攻めて来たらしいけど、どうする?」

 

 ミナトが面白くなってきたといったように笑みを浮かべてそう告げる。

 ミナトは……いや、ミナトを含めて今日俺と一緒にここにいる恋人達は、全員が絶世の美女という表現が相応しい者達だ。

 そんな者達がファンタジー世界の兵士達……それも文明圏外国と呼ばれているフェンを襲撃してきた者達に捕らえられた場合、どうなるのかは考えるまでもない。

 ……もっとも、それはあくまでも負けて捕虜にされた場合に限るが。

 

「そうだな。俺達の安全だけを考えれば、それこそ転移で日本に戻ればいいんだが……それよりは、折角だしこのフェンに恩を売っておいた方がいい。どうだ?」

「そうね。ここで私達の有用性を示せれば、シャドウミラーとしてこの国と接する時に、かなり楽になるわ」

 

 エリナが笑みを浮かべて俺の言葉を肯定する。

 元々、このフェンは日本と友好的な関係を築きたがっていた。

 それはパーパルディアに対しての備えだったのだが、取引先の企業から聞いた話によると、フェンは日本を騙してパーパルディアとの戦いに巻き込んだらしい。

 でなければ、憲法9条という下らない呪いに掛けられている日本が敵を攻撃するといったような事はしないだろうし、そういう考えだとフェンは上手い具合にやったと言える。

 その結果として、こうしてパーパルディアからの襲撃を招いているのは、どうかと思うが。

 ともあれ、日本よりも強力で、更には日本のように下らない手続きをする必要もなく、すぐに戦力を提供出来る俺達シャドウミラーは、フェンにしてみれば非常にありがたい国だろう。

 そして交渉をするのがエリナである以上、その辺の交渉は半ば纏まったも同然と考えていい。

 実際に交渉するよりも前に考えすぎという気もしないではなかったが。

 もっとも、俺達が戦うと決めた以上……その辺りは、どうとでもなる。

 そう判断すると、俺はレモン達を率いてパーパルディア軍のいる方に向かうのだった。


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