転生とらぶる   作:青竹(移住)

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番外編119話 if 日本国召喚編 第02話

 予想通り、ニシノミヤコを襲ってきたパーパルディアとの戦いは俺達の圧倒的な勝利で終わった。

 最悪、ニーズヘッグを出すといった事も考えていたのだが、パーパルディアの兵士が使ってきたのは、恐ろしく旧式の銃……それこそ火縄銃よりちょっとマシ? といった程度の武器でしかない。

 ワイバーン関係の技術が進んでいるという話だったのだが、生憎と俺達のいた場所にワイバーンは配置されたりはしなかった。

 ……とはいえ、フェンに向かって攻撃をしてきた以上、当然だが全ての被害を塞げた訳ではない。

 それどころか、俺達がいなかった戦場においては旅行に来ていた日本人が捕らえられ、公開処刑する光景をパーパルディアと交渉していた外交官に見せつけたらしい。

 旅行に来ていた者達にとっては不運としか言いようがなかったが、日本という国が自分達の常識が通じると思い込み、この世界の常識を全く理解していないお花畑政府を擁していたのが不運だった。

 とはいえ、日本は民主制だ。

 その政府は国民に選挙で選ばれた与党の国会議員によって結成されている以上、ある意味で自業自得なのは間違いない。

 とはいえ……そうも言っていられない理由もある。

 何しろ、公開処刑された者の中にはシャドウミラーと貿易をしている企業の会長の孫がいたらしい。

 それも会長が目に入れても痛くない程に可愛がっていた孫。

 まだ10歳かそこらの子供であったが、パーパルディアの者達はそんな子供であっても容赦なく殺した。……いや、パーパルディアにしてみれば、自分達に逆らった事の罪を知らしめる為には、寧ろ子供だからこそ公開処刑にはちょうどよかったのだろう。

 だが……それが、パーパルディアにとっての大きな致命傷となる。

 

「私は賛成だ」

 

 コーネリアが冷静にそう告げる。

 冷静ではあるが、その中にあるのは激しい怒り。

 それこそ、パーパルディアそのものを滅ぼしてしまいかねないような、そんな怒り。

 だが、そのような怒りを抱いているのは、コーネリアだけではない。

 俺の恋人達全員が同じだった。

 特に、子供好きな千鶴やあやか、マリュー、ミナトといった面々は見て分かる程に怒っており、普段はそこまで子供が得意ではないスレイ、シェリル、凛、綾子、美鶴といった面々も、そこまで露骨にではないが不愉快な思いを抱いているのは事実だ。

 コーネリアが代表して言った、賛成という言葉。

 それは、俺達と取引のある企業の会長から……それ以外にも、会長と同じく家族、友人、恋人といった面々を公開処刑したパーパルディアに対する復讐の依頼。

 報酬として提示された金額はかなりのものだったが、普通に考えれば国を相手にするには足りない金額。

 本来なら、日本という国がパーパルディアに対して報復するといった事を待つのが筋なのだろうが、相変わらず日本は行動が遅く、野党と与党が国会で下らない言い争いをしているばかりであり、それに業を煮やした会長達が俺達に依頼をしてきたのだ。

 だが、パーパルディアのような国がそのまま存在していると、シャドウミラーにとっても色々と不都合だし……何より、精神衛生上面白くない。

 そういう意味では俺も賛成であり、こうしてシャドウミラーはパーパルディアに対する報復を……あの命令を下した者を同じような目に遭わせて欲しいという依頼を受けるのは、これからの活動を考えれば悪い話ではなかった。

 とはいえ、大々的に……世界中に見せつけるようにして、パーパルディアに報復して欲しいという事である以上、当然のように今までは企業の上層部……それも秘密を守れる10人にも満たない程度しか知らなかった俺達の存在が、今回の依頼を受ければ大々的に知られてしまう。

 何しろ、この世界は基本的にファンタジー世界で魔法が一般的だ。

 一応ムーという国では科学技術が進んでいるらしいが、それも第2次世界大戦とかその辺の技術とそう違わないらしい。

 ……そんな世界に日本が転移したのだから、軍事力という意味では間違いなく他の追随を許さないんだが、憲法9条という呪いだったり、何にでも反対すればいいと思っている野党、そしてマスコミ……いや、マスゴミと呼ばれる者達の存在と、事なかれ主義の政府によって、日本はその軍事力を活かす事が出来ていない。

 企業の会長も、だからこそそんな日本政府に期待する事を止めて俺達に依頼を持ってきたのだろうが……

 

「依頼を受けるのはいいわ。私も賛成よ。けど、そうなると当然だけど日本政府と関わらなければならなくなるけど……そっちはどうするの?」

「そっちも問題なんだよな」

 

 正直、俺の……というか、俺達のあの世界の日本に対しての印象は、悪い。

 最悪とまではいかないが、能力的にも信用するのが難しいくらいだ。

 だが、会長からの依頼を受けるとなれば、どうしても日本と関わる必要があるだろう。

 こっちに接触するつもりがなくても、向こうに接触するつもりがあれば、当然お互いに無関心といったようには出来ないのだから。

 そして現在の日本にとって、シャドウミラーは喉から手が出る程に欲しい相手だろう。

 何しろ、食料や資源の類は日本としても幾らでも欲しいのだから。

 最初に接触したクワ・トイネからは食料を、そのクワ・トイネと友好国であるクイラからは資源を輸入しているものの、それでも万全といった訳ではない。

 また、シャドウミラーの場合はキブツがあり、それを使えばその世界特有の物質でもない限り、何でも作れる。

 そして、ホワイトスターを通して他の世界と友好関係を結ぶ事が出来れば、異世界との間で貿易も出来る。

 そして何より、シャドウミラーの保有する戦力は日本とは次元が違う。

 その辺の事情を考えると、間違いなく面倒な事になる。

 まぁ、そうした場合に面倒を抱えるのは俺ではなく、政治班の面々なのだが。

 政治班が問題ないなら、この話を受けてもいい。

 そう告げると、エリナは千鶴やあやかに視線を向け……そして2人は頷く。

 千鶴やあやかにとって、子供であっても容赦なく殺すパーパルディアは、決して許す事が出来る相手ではないのだろう。

 そして翌日にはエザリアやレオンにも話が通され……シャドウミラーは企業からの依頼を条件付きでだが受ける事にしたのだった。

 

 

 

 

 

「戦力は本当にバッタとメギロートだけでいいんだな?」

「うむ。私が得た情報から考えると、寧ろこれだけで十分すぎる。それに……政治班からの今回の一件を受ける条件がこれなのだろう?」

 

 実働班を仕切るコーネリアの言葉に、俺は頷きを返す。

 コーネリアがそう言うのであれば、この戦いの戦力がこれで十分だというのも間違いないのだろう。

 政治班が出してきた条件……それが、今回の一件において人型機動兵器を使わないという事だった。

 そのような条件を出してきた理由は、幾つかある。

 まだこの世界についての情報が十分に集まっていない以上、今のこの時点でシャドウミラーの全戦力を見せるのは危険だと判断した為。

 あるいは、日本にいるだろうその手の趣味の者達がシャドウミラーの一件を知ると間違いなく大きな騒動になるだろうと考えた点。

 ……他にも色々とあるが、大きくはこの2つ。それもその手の趣味……いわゆるオタクといった面々に人型機動兵器を見せる方が危険だと、そう判断したところが大きかったりする。

 政府にはかなり問題のある日本だが、それとは逆に民間の力は強い。

 それは、俺達シャドウミラーと協力関係を結んでいる企業の件を考えれば明らかだろう。

 そんな訳で、シャドウミラーが人型機動兵器を運用しているというのを知られれば、そのようなオタク達が、そして民間企業がこっちと接触して来ようとするのは間違いない。

 だからこそ、政治班がそんな連中と接するのを面倒だと思ってPTを始めとした人型機動兵器を使わないというのを条件にしたんだが……ぶっちゃけ、メギロートやバッタといった無人兵器でもオタク達を騒がせるには十分だと思う。

 

「メギロート50機、バッタ100機……普通に考えれば、生身でも楽に倒せるといった戦力だが……」

「それが出来るのはアクセルくらいだと思うがな」

 

 そう言うコーネリアだったが、コーネリアもまた生身での実力という点では非常に優れている。

 自分が実働班を率いるという考えから、当然ながらそれだけの実力が必要だと、そう考えているのだろう。

 そう考えるのはともかく、実際にエヴァとの修行を重ねてそれだけの実力を手にした才能と努力も並大抵のものではない。

 エヴァを含め、シャドウミラーには色々と規格外の強さを持つ者もいるので、決してコーネリアがシャドウミラー最強といった訳ではない。

 だが、それでもトップクラスの実力を持っているというのは、間違いのない事実だった。

 それこそ、メギロートの50機やバッタの100機を倒してもおかしくはないと思える程に。

 

「俺以外にも出来る奴はいると思うぞ。……まぁ、それはいいとして、命令の方は問題ないな?」

「うむ。ワイバーン、ワイバーンロード、ワイバーンオーバーロード。これらを可能な限り生け捕りにする事だな」

「ああ。それが今回の依頼を受けた理由の1つなのは、間違いないしな」

 

 この世界において、戦闘機を使っているのは少ないし、その性能も日本の戦闘機よりも圧倒的に劣る程度の物でしかない。

 機械技術という点では、見るべき物はない……訳ではないが、それでもそこまで強い興味はない。

 それに比べると、ワイバーン系は色々な意味で興味深い存在なのは間違いない。

 そしてワイバーンロードというのはワイバーンの上位種で、ワイバーンオーバーロードというのは、更にその上位種といった扱いだ。

 企業の方から回ってきた情報によると、戦闘力という点では日本の戦闘機の方が圧倒的に上で、戦力的に見るべきところは少ないのだが……それでも未知の技術という点で興味深い。

 

「それと、軍事関係の場所を軒並み攻撃ね」

「ああ。依頼してきた連中にしてみれば、首都そのものを更地にして欲しかったらしいが」

 

 個人的にはそれでもいいと思ったのだが、政治班からの意見でそうなると民間人を殺したという事で、シャドウミラー内部にも不満を抱く者が出て来るという事で、却下となった。

 明日菜を始めとして、そういうのを嫌がりそうな連中は多いしな。

 こうして準備が整い……日本が未だに政府内であったり与党と野党であったりで揉めている間に、俺達は動き出すのだった。

 

 

 

 

 

『……』

 

 部屋の中にいる者達は、誰もが言葉を発しない。

 現在この部屋……というか、体育館くらいの大きさの場所には、俺達に依頼をしてきた者達が集まっている。

 それだけではなく、シャドウミラーの技術によって立体映像によって、現在のパーパルディアの首都エストシラントが映し出されていた。

 それこそ、手を伸ばせばそこに本物があるのではないかと思えるような、そんな精緻さの立体映像で。

 これから何が起きるのか……それは考えるまでもなく明らかだろう。

 フェンにて公開処刑された者達の家族、恋人、友人……それらによって依頼された、報復がこれから行われるのだ。

 直接報復を自分の目で見たいと思っている者もいたのだろうが、さすがにそれは無理なので、こうして臨場感たっぷりの光景を用意させて貰った。

 これだけの臨場感があれば、見ている者達も喜ぶだろう。

 ……ちなみに、この映像そのものはメギロートやバッタによる映像を一括して統合し、表示している。

 つまり、出撃したメギロートやバッタの数が多ければ多い程に、精緻な映像となるのだ。

 シャドウ辺りにミラージュコロイドが使える装置を臨時で持たせて、映像を撮るといった真似をしてもよかったのだが、技術班からの意見によって、こういう感じになった。

 そして……

 

『皆さん、ご覧下さい。メギロートとバッタ……私達の戦力が憎いパーパルディアの首都に向かってやってきました』

 

 そう告げたのは、マイクを持った美砂だ。

 何で美砂が司会をやる事になったのかは、俺にも分からない。

 ただまぁ、それなりに様になっているのを見れば、問題ないのだろう。

 そして美砂の言葉通り、映像モニタには複数のメギロートやバッタの姿が表示されていた。

 当然ながら、パーパルディア側でも黙ってそれを見ている訳ではない。

 未知の存在である以上、敵だと判断してワイバーンを始めとした戦力が出撃するが……

 

「おお……これは……」

 

 メギロートの放つサークルレーザーを食らい、一瞬にして背中に乗っている人間共々肉片となり、地上に落ちていく。

 現在は首都のエストシラントの上で戦っている以上、その肉片は首都に向かって降り注ぐ事になる。

 それだけではなく、バッタの放つミサイルによって肉片どころか消滅しているワイバーンも多い。

 そんな光景が多数の場所で見られ、その度にそれを見ている者達の口からは声が上がる。

 嬉しかったり、悲しかったり、興奮していたり……そんな声が。

 そうして空中に上がってきた戦力が全て消滅すると、次に向かうのは軍事施設だ。

 上空からサークルレーザーやミサイルが次々に撃ち込まれ、派手に爆発していく。

 当然だが、エストシラントだけではなく、他の軍事施設に対しても同じように攻撃が行われている。

 こっちは公になってはいなかったが。

 ともあれ、そうして……この日だけで、パーパルディアの拠点や戦力は非常に大きな打撃を受けるのだった。


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