転生とらぶる   作:青竹(移住)

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日本国召喚編、完結です。
グラ・バルカス編はもうちょっとしっかりと書きたかったんですが、そうなると20話くらいになりそうだったので。

明日から、ダンバイン編に戻ります。


番外編123話 if 日本国召喚編 第06話

「先進11ヶ国会議? ……俺達がか?」

 

 パーパルディアの一件が片付いてから暫く、不意にそんな要請が日本政府を通して神聖ミリシアル帝国というところから要請された。

 既に日本はシャドウミラーとの貿易を始めている。

 その件で日本国内のシャドウミラーへの対応が悪いようだからと、そう告げたところ、何人かの有識者が即座に掌を返し、あるいはTVに姿を現さなくなり……といった感じになった。

 ちなみに野党は未だにシャドウミラーのような国との貿易はしない方がいいといったように言っていたが、政府からなら足りない物資……クワ・トイネやクイラからも入手出来ない物資の類をどうするのかと言われると、対案はなかったしい。

 まぁ、あの光景は一部の連中には反響が高かったようだが。

 ともあれ、そっちの件はいいとして、先進11ヶ国会議だ。

 パーパルディアを滅ぼした国として、シャドウミラーに参加して欲しいという要請があったのだ。

 とはいえ、パーパルディアは別に滅んだ訳ではない。

 従属国の全てが独立して国土も狭くなったものの、パーパルディア劣等国として現在もきちんと存在している。

 既に列強と呼ぶ事は出来なくなったし、被害も非常に大きいが。

 

「はい、どうします? もし出るのなら、こちらからは私が行きたいと思うのですが」

「分かった。なら、レオンに任せる」

 

 こうして、先進11ヶ国会議にシャドウミラーも参加する事になるのだった。

 

 

 

 

 

「随分と、騒いでるみたいだな」

 

 映像モニタに表示されている光景を見て呟くと、俺の隣にいたエリナが呆れたように言う。

 

「当然でしょう。見てみなさいよ、他の国の軍艦を。どれも海上艦が精々なのよ? そんな場所にニヴルヘイムで乗り込んできたんだから、それで驚くなという方が無理でしょ」

「けど、慣例的にこの場合はしっかりと周囲に自分達の戦力がこういうのだというのを見せつける必要があるんだろ? なら、一番手っ取り早いだろ」

 

 ニヴルヘイムは、ギアス世界で開発されたダモクレスをベースに発展させる形で建造された機動要塞だ。

 ブレイズルミナスによって鉄壁の防御力を誇り、大量の機動兵器を運用出来る空母的な存在でもある。

 また……奥の手としては、フレイヤを発射する事も可能だ。

 シャドウミラーには色々とこの世界では信じられないような武器があるが、視覚的な意味で相手に畏怖や恐怖を与えるとなると、ニヴルヘイムが相応しいだろう。

 カトンボとかを持ってきてもよかったんだが、カトンボは結局のところ空を飛ぶ軍艦といった様子なのは間違いない。

 それに比べると、ニヴルヘイムは空を飛ぶ城という意味で相手に与える印象はかなり強い。

 

『アクセル君、何だか私達がラヴァーナル帝国って国じゃないかって言われてるんだけど……どうする?』

 

 円が通信でそんな事を言ってくる。

 ラヴァーナル帝国? 何だそれは?

 

「向こうが何を言ってるのかは分からないが、違うと言ってやれ。俺達はシャドウミラーだ」

『分かったわ』

 

 そう言い、通信が切れる。

 

「それで、ラヴァーナル帝国って一体なんだと思う?」

「さぁ? でも、そうね。円が聞いた話から考えると、敵だと思って間違いないと思うわよ?」

「それはそれで、色々と得るものが多そうだな」

 

 そう言いながら、俺はエリナとイチャつきながらゆっくりとした時間をすごすのだった。

 

 

 

 

 

「へぇ、俺達にも宣戦布告を? また、随分と面白い真似をしてくれるな」

 

 レオンからの報告に、俺は驚きつつも笑みを浮かべる。

 何しろ、先進11ヶ国会議においてグラ・バルカス帝国とやらが全ての国々に宣戦布告をしたらしい。

 そして、現在会議をやっているここに向かって戦力が迫っているとか。

 

『どうしましょう?』

「そうだな。まずは俺達だけで出撃する。他の国の連中には映像を流すから、それで我慢させろ」

『また、難しい事を……ですが、了解しました。こちらの戦力を考えれば、問題はないでしょうし』

 

 この世界に来てから、当然ながら技術班はこの世界の技術……特に魔法関係に関して研究しており、この世界のTV的なものであっても普通に使えるようになっている。

 それどころか、電波ジャック――という表現が正しいのかどうかは微妙だが――をして、こちらの映像を強制的に見せるといった真似すら可能となっていた。

 もっとも、今回使うのは素直に映像を中継するといった形だが。

 その後、何人かがニヴルヘイムに乗りたいと希望してきた者達がいたが、軍事機密という事で拒否しておく。

 実際、ニヴルヘイムはシャドウミラーにとって軍事機密の固まりであるのは間違いないのだから、全くの出鱈目という訳でもない。

 そうして海を進むと……

 

「レーダーに反応、グラ・バルカスと思われる海軍を発見しました」

「わかった。……敵の映像はきちんと送られているか?」

「はい、問題なく」

 

 量産型Wのその言葉に頷き、指示を下す。

 

「主砲エーリヴァーガルを発射しろ」

「了解。主砲、エーリヴァーガルを発射します。仮想砲身展開。全ブラックホールエンジン最大駆動……発射準備、完了。いつでも発射出来ます」

「発射しろ」

 

 その言葉と共にトリガーが引かれ、ニヴルヘイムの底部に生み出された仮想砲身から放たれた強力な重力波砲は、次の瞬間にはグラ・バルカスの海軍を纏めて消滅させた。

 

「敵、全滅です。生き残りは1人もいません」

「そうか、分かった。では次はグラ・バルカス本国に向かう。フレイヤの準備をしておけ」

「了解です」

 

 量産型Wが返事をしたのを確認し、レオンに向かって再度通信を送る。

 

「レオン、そちらはどうなっている?」

『最初は何が起きたのか分からなかったようですが、今となっては皆が騒いでいますよ』

「だろうな。まぁ、それはいい。グラ・バルカスからは俺達も宣戦布告を受けた以上、反撃する権利がある。だからこそ、俺達はこれからグラ・バルカスの本拠地に攻撃を仕掛ける」

 

 この世界に来て、偵察衛星は既に打ち上げている。

 そもそも、シャドウミラーは宇宙空間で動くのが多いのだから、宇宙技術という点では日本よりも上だ。

 そんな日本も、偵察衛星を打ち上げているらしいのだから、俺達にそんな真似が出来ない筈もない。

 そんな訳で、当然だがグラ・バルカスがどこにあるのかといった事は情報として知っていた。

 

『ちょっと待て!』

 

 と、不意にそんな声が聞こえてくる。

 その声は当然ながらレオンの声ではなく、聞き覚えのない男の声だ。

 とはいえ、そんな言葉に俺が従う必要などもある筈がなく……通信装置はあっさりと切れる。

 ニヴルヘイムは、グラ・バルカスの首都目指して進む。

 途中で戦闘機……ただし、それこそ現在の日本の戦闘機よりも圧倒的に性能の低い戦闘機が襲ってきたものの、向こうの攻撃はブレイズルナミスによってあっさりと弾かれ、対空砲として用意されたビームバルカンによってあっさりと撃破されていく。

 その様子は、まるで濡れた新聞紙か何かではないかと思える程に防御力が弱い。

 そうして進み……やがて、グラ・バルカスの領土内に入る。

 ちなみにここに来るまでの間にも幾つかの村や街、都市といった場所があったが、そこにはメギロートとバッタを出撃させて潰している。

 

「アクセル様、首都……ラグナという名前のようですが、そこから通信が入っています」

「そうか、繋げろ。この状況で向こうがどういう反応をするのか、是非聞かせて貰いたい」

 

 グラ・バルカスにしてみれば、先進11ヶ国会議において宣戦布告するのは、予定通りだったのだろう。

 だが、その結果が現在の状況だ。

 こちらが集めた情報によると、グラ・バルカスは日本と同じ転移国家で、この世界にやってきた時、最初に遭遇した文明国を倒した。

 それによって、この世界の国はどこも弱いと判断してこのような行動に出たのだろう。

 シャドウミラーがいなければ、日本が戦ったのかもしれないが……もしそうなったとしても、日本はやはりグダグダしていて、結局戦力を派遣するのは難しかっただろうが。

 

『私はグラ・バルカス帝国帝王政府長官のカーツという』

 

 帝王政府長官、ね。

 具体的には、一体どういう地位なんだろうな。

 官房長官的な存在か?

 自国の首都からそう遠くない場所までニヴルヘイムが近付いているのだ。

 そういう意味では、お偉いさんが通信に出て来るのは分からないでもない。

 だが……この状況においては、それこそ皇帝や国王といったような一番偉い人物が姿を現してもいいんじゃないか?

 

「俺はアクセル・アルマー。シャドウミラーという国の王だ」

『そなた……いえ、貴公が?』

 

 カーツの顔が驚きに歪む。

 今の状況を思えば、無理もない。

 一国の王が俺のように若い外見なのだから。

 現在はそれでもまだ20代の姿だが、これで10代半ば……もしくは10歳くらいの外見になったら、一体どういう反応をするのやら。

 

「そうだ。お前達が先進11ヶ国会議において自分達に従えと、宣戦布告をした国のうちの1つだな。そんな俺達が、こうして首都の近くまでやってきたんだ。それに、ここに来るまでにあった村や街、都市といった場所は大きな被害を受けている。これらが何を意味しているのかは、考えるまでもないと思うが?」

『ぐぬ……』

 

 カールは言葉に詰まる。

 実際に先進11ヶ国会議で宣戦布告をしたのが事実である以上、現在のこの状況では、何も反論出来ないのだろう。

 グラ・バルカス最大のミスは、最初に倒した国だけで、この世界に存在する国全ての戦力がどういうものなのかを分かった気になってしまった事だろう。

 自分達が転移してきた国である以上、同じように他の国が転移してくると……そして、自分達よりも高い技術力を持っている国が転移してくるというのを、予想出来なかったのは、致命的だった。

 

「さて、宣戦布告された以上、現在シャドウミラーとグラ・バルカスは戦争状態になっている訳だ。そして、俺達はニヴルヘイム……この、空飛ぶ城を使って、いつでもお前達を攻撃出来る。そして報告があるのかどうかは分からないが、この城にお前達の攻撃は通用しない。この状況で勝ち目はあると思うか? 大人しく降伏するのなら、それを認めてやってもいい」

 

 パーパルディアの時とは違い、まだこちらに被害らしい被害は出ていない。

 その上で、殲滅戦を宣言したりといったような真似はしていない。……まぁ、宣戦布告はされたが。

 そうである以上、グラ・バルカスに対してはパーパルディアのような苛烈な対応はしなくてもいいというのが俺の考えだった。

 とはいえ、こう言ったところで素直に降伏するのは難しいか。なら……

 

「これから10分後、お前達の首都からそう離れていない場所を攻撃する。その攻撃を見て、それでもまだ俺達と戦う気があるのなら、それでもいい。取りあえず、10分の間にお前達の首都から東方面がどのような事になるのか、見ておくんだな。話はそれからだ」

 

 そう言い、通信を切る。

 向こうの返事を聞くような事はなかったが、恐らく今頃はすぐに俺の指定した場所で何があるのかどうかを確認する為に動いているのは間違いない。

 そうして10分が経過し……

 

「フレイヤ、発射しろ。ただし、グラ・バルカスの首都に大きな被害はないようにしろよ」

「了解しました」

 

 その言葉と共に、ニヴルヘイムからフレイヤが発射され……そして地面に着弾した瞬間にフレイヤが発動、サクラダイト由来の桃色の光が球形に発生し、地面を抉り……数秒後には、その空間に周囲の空気が流入し始める。

 何気にこの二次被害は洒落にならない破壊を周囲にもたらす。

 そうして空気の流入が終わると……そこにあったのは、円球状に抉られた地面のみ。

 綺麗に抉られたその光景は、今回使われたのが首都の外の何もない場所だったからよかったが、もしそれが首都に使われればどうなるか……考えるまでもないだろう。

 そしてフレイヤを使用してから少しして、再び通信が入ってきた。

 

『アクセル王……あれは……あれは一体……』

「俺達の国で開発した兵器だ」

 

 実際にはギアス世界で開発された兵器なのだが、取りあえずその辺についてはわざわざ言わなくてもいいだろう。

 

「で、どうする? このまま戦いを続けるというのなら、次はそっちの首都が壊滅する事になるが」

 

 その一言により、グラ・バルカスはシャドウミラーに降伏する事になる。

 尚、グラ・バルカスの皇帝グラルークスが俺の前で膝を突き頭を下げている映像は、グラ・バルカスだけではなく、この世界の全てに流れる事になった。

 こうして、グラ・バルカスはシャドウミラーの属国としての道を歩み始め……その後、古の魔法帝国と呼ばれるラヴァーナル帝国が転移してきて戦争になったりしたものの、戦力的にシャドウミラーに勝てる筈がなく、グラ・バルカスと同じように無条件降伏する事になる。

 ラヴァーナルの持つ魔法技術は、シャドウミラーにとっても興味深いものが多く……それにより、シャドウミラーの魔法技術は格段に進歩するのだった。 


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