転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2920話

 ラウの国を進み始めて数日……未だに、ラウの国の戦力が出て来る事はない。

 ピネガン軍と思われる連中の夜襲が1度あっただけで、それ以外は全く関係なく進んでいた。

 模擬戦に関しても、マーベルだけではなく、時にはドレイク軍や……場合によっては聖戦士といった連中までもが参加して行われ、それは結果としてビショットの部下達の練度を上げる事になる。

 そうして進み続け……やがて、タータラ城と呼ばれる城が見えてきた。

 正確には城ではなく、城塞都市とでも呼ぶべき場所。

 アの国におけるドレイク城と同じような感じだな。

 

「厄介だな」

「そうね」

 

 ナムワンのブリッジにおいて、俺が呟くとマーベルもそれに同意する。

 当然ながらキブツも俺達が何に対して厄介なのかといったのを理解しているのか、頷いている。

 タータラ城は城塞都市で、防御力に優れている。

 とはいえ、それはあくまでも恐獣やガロウ・ランに対してのものであり、地上を移動するしかない者であればまだしも、空を飛ぶオーラバトラーやドロ、タンギーといったオーラボムが今となっては主戦力だ。

 それだけに、タータラ城の持つ防御力も決して完全に発揮されるといったような事はない。

 当然だが、フォイゾンもそれを知っている筈だ。

 にも関わらず、こうして籠城をするという事は……

 

「今のラウの国に援軍を送れるだけの余裕のある国があるのか?」

「どうでしょう。ちょっと思いつきませんが。……ただ、どうしても可能性があるとすれば、やはりナの国ではないかと」

 

 キブツのその言葉に、だろうなと納得する。

 そもそも、現状でドレイクがアの国とミの国を支配し、クの国はこうして俺達と行動を共にしている。

 そんな中でラウの国に協力する……いや、協力出来る国となれば、可能性があるのはリ、ケム、ハワの3国とレンの海を挟んだ反対側にある大国のナの国だけとなる。

 リの国は、恐獣が多数存在するという事で、アの国やクの国は重要な取引国であり、ドレイクやビショットも征服するよりは友好関係を築いた方がいいと判断して、色々と優遇している。

 何しろ、占領するとなれば戦いになり、当然のように向こうには死人が出る。

 ただでさえオーラバトラーの開発が活発になっている現在、リの国という恐獣の素材を輸出する国の人材は出来るだけ消耗させたくないだろうし、リの国の人間に敵対心を持たれるのも避けたい。

 敵対心を持たれた場合、恐獣の素材の品質にも影響してくる可能性があるし。

 そういう意味で、ドレイクやビショットはリの国を占領するつもりはなく、それどころかかなり優遇していると言ってもいい。

 そして、ケムとハワの国……この2つの国は、一応ドレイクからオーラバトラーを購入しているので取引があるし、それ以外にも元々がミの国より若干マシといった程度の小国でしかない。

 ……何より、地図上で確認するとケムとハワというのは、アの国の真下にある国だ。

 そんな国がラウの国に協力するとなると、戦力を送る以前にアの国とミの国を突破する必要がある。

 あるいは、国に入らないでレンの海を通って移動するというのもあるが……それもまた、簡単に出来る事ではない。

 

「となると、やっぱり一番可能性が高いのは、キブツが言う通りナの国か」

 

 あるいは、もしかしたら……本当に万が一の可能性だが、ラウの国の外側、地図でいうと上のどこの国の領土でもない場所に、実は俺達が知らないだけで国があり、その国から援軍が派遣されてくるといった可能性も、ない訳ではない。

 可能性だけで考えるのなら、それこそ新たな聖戦士が召喚されたといった可能性すらあるのだ。

 それでも、やはり一番現実的なのはナの国がラウの国に援軍を送るといったものだろうが。

 フォイゾン達が籠城する以上、まさか何の意味もなく籠城しているといったような可能性はないだろう。

 籠城というのは、援軍が来るのを前提として行われるものなのだから。

 あるいは、攻めている方が食料不足やそれ以外にも何らかの理由で急いで結果を出すといったような時には、有用な戦術でもある。

 とはいえ、ナの国がわざわざこっちの戦いに関与してくるかと言われれば、素直に頷く事も出来ない。

 レンの海を挟んで反対側にある大国だ。

 一応アの国とも多少なりともオーラバトラーの取引があるようだが、関わりとなると、その程度のものでしかない。

 だからこそ、ナの国がこちらに干渉してくる意味が理解出来なかった。

 

「はい。ですが、私が知ってる限りでは、ナの国に接触している気配はありませんでした」

 

 キブツがそう告げる以上、それは嘘ではないだろう。

 だが、ナの国に接触するのは、普通に考えればフラオンではなくフォイゾンだろう。

 そんなフォイゾンが、フラオンのような無能にナの国について説明しているとは思えない。

 ……ギブン家には説明している可能性はあったが。

 ギブン家にしても、フラオンを神輿として担いではいるが、その能力に関しては全く信じていない筈だ。

 そうである以上、もしナの国に援軍を希望する使者を送っていても、それを知らせるとは思えない。

 

「ともあれ、ナの国が攻めてくるのなら、その援軍が到着するよりも前にラウの国を占領してしまえばいいだけだがな」

 

 そろそろヨルムンガンドが完成するので、その運用をこの戦いでやりたいという思いがある。

 ドレイクのウィル・ウィプスや、ビショットのゲア・ガリングもまた、そういう意味でラウの国にやって来たのだろうし。

 

「アクセル王、ドレイク王とビショット王から、会談の要請が来ています」

「分かった。場所はどこだ?」

 

 ドレイクとビショットから会談の要請が来る事に関しては、そんなにおかしな話ではない。

 アの国とクの国の国王に対して、俺もまたシャドウミラーの王なのだから。

 まぁ、例え俺がシャドウミラーの王であっても、力のない弱小国という扱いであれば、わざわざドレイクとビショットが呼んだりはしないだろうが。

 国の勢力という意味では、現在のシャドウミラーは弱小国も弱小国。それこそ国どころか領主と比べても戦力は低いだろう。

 だが、俺が持つ突出した個の能力。これが、現在のシャドウミラーをアの国やクの国のように大国と呼ぶに相応しい国の国王が配慮する理由となっている。

 

「場所は、ウィル・ウィプスでとの事です」

「分かった」

 

 会談の場所がウィル・ウィプスだというのも、また納得出来る理由ではある。

 この軍勢……3国の連合軍の中で、一番勢力が大きいのはドレイクだし、元々ラウの国との戦いを始めたのもドレイクである以上、当然のようにこういう時の主導権はドレイクにあってもおかしくはない。

 

「マーベル、どうする?」

「私も行くわ。何かあった時、アクセル1人だと手が足りないでしょ?」

 

 危険だといったような事ではなく、手が足りないと表現するところに、マーベルが俺をどう思っているのかといった風に如実に現れているな。

 とはいえ、実際に何かあった時に手が足りないというのは事実である以上、俺としてはマーベルのその意見に反対を口にするつもりはない。

 

「キブツ、そういう訳で俺とマーベルはウィル・ウィプスに行ってくるから、お前はナムワンを頼む。もし俺達がいない間にラウの国、もしくはフラオン軍やピネガン軍から攻撃があったら、それに対処してもいい」

「分かりました。アクセル王、お気を付けて」

 

 キブツはそう言い、俺とマーベルを送り出す。

 キブツにしてみれば、俺とマーベルが揃っていれば何があっても対処可能だと、そんな風に思っているのだろう。

 実際、その判断はそう間違ってはいないし。

 もし何があっても……少なくても、俺とマーベルの安全だけは確保出来る自信があるのは、間違いなかった。

 そんな風に思いつつ、俺とマーベルはウィル・ウィプスに向かうのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル王、ビショット王、よく来てくれた」

 

 ウィル・ウィプスの中にある一室……これは公式の場だという事を示す為か、会談はドレイクの執務室ではなく、ウィル・ウィプスにある会議室の一室で行われた。

 この会議室にいるのは、俺、ドレイク、ビショットの3人以外にもマーベル、ガラリア、それとビショットが連れて来た見覚えのない騎士の合計6人での会談となっている。

 ただし、暗黙の了解としてこの会談で発言出来るのは、国王3人だけとなっていた。

 それ以外の付き添いで来た3人は、俺達から何か聞かれた時にだけ発言してもいいといった扱いだ。

 

「いや、まさかラウの国が籠城するとは思わなかったからな。これは俺にとっても意外だった」

 

 これは大袈裟でも何でもなく、俺が素直に思っている事だ。

 今のこの状況において、ラウの国が籠城をするとは思わなかった。

 

「そうですな。とはいえ、元々向こうの狙いはこちらをラウの国の奥深くまで引き込む事と予想していた筈。そう考えると、この状況もそうおかしくはないのかもしれませんが」

 

 ビショットの意見にも一理あるのは間違いない。

 俺達の予想としては、元々ラウの国はまともに戦っても勝算が低い……もしくは大きな被害を受けるという事から、内部に俺達を引き込んでから集中攻撃をする予定だと思っていた。

 それを示すように、国境を越えてから村や街といった場所を通りすぎたものの、そこには人の姿が存在しなかった。

 これだけの人数を纏めて移動させるというのは、当然ながらかなりの労力を必要とする。

 恐らくは、以前ミの国とラウの国の国境付近で戦いが起きたあの一件よりも前から、既にラウの国は戦いの準備を行っていたのだろう。

 まぁ、フラオンやピネガンを受け入れていたのを思えば、ドレイクと戦いになると考えるのは当然かもしれなかったが。

 

「けど、引き込むにしても王都のタータラ城まで引き込むというのは……向こうにしても、少しやりすぎだとは思うけど」

「それは否定出来ませんな。だが、他に我々の軍を前に耐えられるような場所がなかったのでは? それに、警戒も厳重にやっていたので、もしかしたら襲撃をしようとしても出来なかった可能性もある」

 

 ビショットのその言葉に、ドレイクが頷く。

 

「うむ。ビショット王の意見ももっともだ。最初の村で夜襲を受けてからは、より一層野営の時の警戒は厳重にしている。だが……あるいは、最初から向こうもそれを承知の上であのような真似をしたのかもしれんな」

「何の為にだ? 夜襲をすれば、最初の一度は大きな効果を期待出来るが、あの程度の戦力では殆ど意味がない。それこそ、ラウの国全軍で……とまでは言わないが、それに近い戦力を投入すれば、こっちも相応の被害を受けただろうが。そんな真似をして、こっちに警戒心を抱かせる必要があるか?」

 

 こっちの人数が少ないのなら、夜の警戒で疲れさせて消耗させるといったような事も考えられるが、ドレイク軍の人数は多い。

 また、野営をした者は移動中にオーラシップの中でゆっくりと眠って疲れを取る事も出来る。

 そんな風にやっている以上、兵士達を疲労させるというのはまず無理だ。

 

「ふむ……そうなると、やはりフォイゾンが何を考えているのかが気になるな」

「やっぱりナの国じゃないのか? 現在ラウの国に援軍を送れるような国となると、もうナの国しかないだろ?」

 

 そんな俺の言葉は、やはりドレイクやビショットも考えてはいたのだろう。

 反論を口にしたりはせず、お互いに視線を合わせて頷いてみせる。

 

「やはりその可能性が一番高いか」

「そうなると、やはりナの国が援軍を送ってくるまでにラウの国を倒すしかないでしょうな」

 

 ドレイクとビショットが会話をしているのを眺めつつ、俺はふと思い浮かんだ内容を口にする。

 

「一応、ドレイクは小規模だがナの国と取引をした事があるんだろう? なら、ナの国に伝手があるんだろうし、その辺りからナの国にラウの国に対して部隊を派遣しないように頼んでみたらどうだ? 勿論、それを素直に聞くといったような事はしないだろうが、それでも多少は向こうに考える余地を与えられるんじゃないか?」

 

 これで、ドレイクと大規模な取引を行っており、戦力の補充……オーラバトラーの補修に関してドレイクに頼り切っているような相手であれば、これ以上の取引を中止するといったような事も出来るんだろうが……残念ながら、ナの国との取引は小規模である以上。そんな真似は出来ないんだよな。

 寧ろここでそのような真似をした場合、ナの国は脅してきたという事に腹立たしい思いをして、それでアの国やクの国への対抗心から援軍を派遣するといったような真似をしても、おかしくはない。

 ナの国はラウの国を上回る大国であり、ドレイクとの取引でオーラバトラーも購入している。

 そうである以上、独自のオーラバトラーを開発していてもおかしくはない。

 もしくは、こちらに人を派遣して色々と情報を集めているといった可能性もある。

 

「ふむ。……そうだな、アクセル王。よければナの国へ儂やビショット王の代理として、行ってみては貰えんか?」

「……は?」

 

 唐突に出て来たドレイクの言葉に、俺の口からはそんな間の抜けた言葉が漏れるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1680

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