転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2921話

 唐突にドレイクの口から出た、ナの国に俺を派遣したいという言葉は、俺を驚かせるには十分だった。

 

「本気か?」

 

 正気か? と聞かなかった自分を褒めてやりたくなりながらも、ドレイクに向かってそう尋ねる。

 だが、ドレイクはそんな俺の言葉に対し、真剣な表情のまま頷く。

 

「勿論だ。アクセル王であれば、使者の格としても問題ない。それに……使者となれば、こちらからは少数で向かうしかない。そう考えれば、やはりアクセル王が適任なのだよ」

「そう言われてもな。国王ではあっても、俺はこのバイストン・ウェルの国王って訳じゃないんだぞ? だとすれば、俺が使者として派遣されても向こうは信用しないんじゃないか?」

 

 当然ながら、シャドウミラーという国はバイストン・ウェルには存在しない。

 そんな存在しない国の王だと名乗っても、ナの国がとてもではないが信じるとは思えなかった。

 勿論、俺が魔法を見せたりすれば、多少なりとも信じるかもしれないが、それでもどうせなら俺ではなく、もっとしっかりと身分を証明出来る者が行った方がいい。

 

「それに、こう言ってはなんだけど、俺のナムワンで向かっても侮られるだけだと思わないか?」

「その心配はいらない。アクセル王のオーラバトルシップ、ヨルムンガンドが完成したという報告が入っている。数日中に届くだろう。その運用を試すという意味でも、いいのではないか?」

「……完成してたのか? 俺は初耳だが」

「うむ。実はアクセル王にいきなり見せて驚かせようと思ってな」

 

 それは、同盟を組んでいる国王としてどうなんだ?

 そう思わないでもなかったが、今回の件に関して助かったのは間違いない。

 ドレイクの言う通り、レンの海を通ってナの国に向かうというのは、特に敵らしい敵もいない――恐獣に襲われる可能性はあるが――ので、ヨルムンガンドの操縦訓練として考えた場合、決して悪い話ではなかった。

 ヨルムンガンドは運用のかなりの部分を自動化されている。

 それはナムワンと同じだが、それでもオーラシップのナムワンとでは、その大きさが違いすぎる。

 当然の話だが、30人程しか存在しないキッス家の面々では人数が足りず、ドレイクから兵士を借りる事になっていた。

 そういう意味でも、これは丁度いい感じではあるんだよな。

 今までキッス家は自分達だけでナムワンに乗り込んでいた。

 最初に自動化されているナムワンをどう動かしたらいいのかといった引き継ぎを行う際に、以前ナムワンを使っていた兵士達と話したが、言ってみればそれだけだ。

 ……まぁ、それでも敵との戦いにおいてはドレイク軍と協力して行動していたりもしたので、全く関わりがない訳でもないんだが。

 それでも関わりは決して多くはない。

 これは、キブツがドレイク軍の兵士と揉めて問題になるのを避けていた、という一面もある。

 何だかんだと、キッス家は今まで仕えていたギブン家を裏切って俺に降伏したのだ。

 周囲からの目は、決して優しいものだけではない。

 それこそ、俺に降伏してきたからこそ、その程度で済んでいると言ってもいい。

 もし俺がいなくてドレイク軍に降伏していた場合、一体どうなったのか……色々と想像出来る未来はあるが、そのどれもがろくな未来でないのは事実だ。

 そんな諸々を考えると、いきなりラウの国との戦闘に参加するのではなく、敵のいないレイの海を通ってナの国に使者として出向くというのは、悪い話ではない、か?

 とはいえ、ヨルムンガンドは基本的に後方で待機している空母的な存在だけに、実際に戦闘に参加するとなっても、砲火を交えるといったようなことは基本的にないのだが。

 まぁ、ゼラーナ隊がこちらに攻撃をしてくるといった可能性も否定は出来ない以上、ナの国に向かった方が安心なのは間違いないが。

 ただし、その話を受ける前に色々と確認しておく事がある。

 

「話は分かった。だが、今回の俺はビショットと一緒に行動するといったような事になっている筈だ。その件はどうする?」

 

 視線をビショットに向けて尋ねると、そのビショットは何も問題はないといった様子で口を開く。

 

「その点に関しては、構わないよ。私もナの国に向かわせるべき人材となると、アクセル王くらいしか思いつかないのでね」

 

 どうやらビショット的には問題ないらしい。

 そうなると、残る問題は1つ。

 

「報酬はどうなる?」

 

 そう、それが問題だった。

 ナの国という……それこそ、この周辺においては最大の大国。

 そんな国に向かい、ラウの国に援軍を出さないように交渉するのだ。

 勿論、ナの国がラウの国に援軍を出すというのは、あくまでも俺やドレイク、ビショットの予想でしかなく、ラウの国の現状から考えた結果でしかない。

 そうである以上、もしかしたら……本当にもしかしたら、援軍を出す事を考えていないという可能性も否定は出来なかった。

 とはいえ、それはあくまでも予想でしかない。

 実際にはナの国がラウの国に援軍を出す可能性が高いのも事実。

 それを防ぐ為に、こうして向かうのだ。

 そうである以上、相応の報酬を貰う必要があるのは間違いなかった。

 俺はドレイクと同盟関係を結び、ビショットと友好的な関係を築いてはいるが、それでも今回の戦いに関しては、あくまでも傭兵的な立場での参戦となっている。

 これが、俺とマーベルだけであれば、報酬に関してそこまで気にする必要もなかったのだろうが、今となってはキッス家の面々を部下にしている身だ。

 そうである以上、キッス家の面々の衣食住の面倒をしっかりと見る必要がある。

 ……ホワイトスターと繋がっていれば、その辺についてはそこまで心配する必要もないんだが。

 しかし、今はないものねだりをしても意味はない。

 そういう訳で、報酬はしっかりと貰う必要があった。

 

「ふむ。そうだな。現在アの国とクの国で共同開発しているオーラバトラーがある。その完成品を1機……それと、共同開発をしている機体以外に、現在までに開発されたオーラバトラーの技術の粋を込めて開発している……いわば、オーラバトラーの最終形とも呼ぶべき機体も1機報酬として支払おう。どちらも開発が完了してからの話となるがな」

「ほう、ドレイク王がそこまで出すのであれば、クの国からも出す物を出さなければならないでしょうな。では、共同開発の機体を私の方からも1機。それと、ビアレスをもう2機に、タンギーを10機といったところでどうでしょう?」

 

 ふむ、合計するとアの国とクの国で共同開発をしている新型を2機に、それとは別にアの国で開発しているオーラバトラーの最終形態が1機、そしてビアレスが2機にタンギーが10機か。

 ドレイクの方は、双方共に新型機。

 つまり、質で勝負してきた訳だ。

 それに対して、ビショットの方は共同開発機を1機渡すのは当然の事だが、それ以外に出せる新型がない以上、俺にプレゼントとして渡してきた、ビアレスとタンギーを更に増やした訳か。

 さて、どうするべきか。

 個人的には、キッス家を養う為の金とかも欲しかったのだが、新型のオーラバトラーを欲しているという、俺の弱点を突いてきた形か。

 実際、新型機を3機――そのうちの2機は同一機種だが――も入手出来るというのは、俺にとって非常にありがたいのは間違いない。

 だとすれば……

 マーベルの方に視線を向け、追加の報酬を決めて口を開く。

 

「そうだな。それだけの報酬が貰えるのなら、引き受けてもいい。ただ、追加でもう1つ報酬が欲しい」

「ほう? それは一体、どのような報酬だ?」

 

 ドレイクにしてみれば、俺がナの国まで行くのは半ば決定事項なのだろう。

 恐らく、ドレイクが受け入れる事が出来る報酬であれば、どのようは報酬であっても受け入れるのだろうと思われた。

 とはいえ、俺がドレイクに追加の報酬として望むのは、そこまで大きなものではない。

 

「マーベルの使っているダンバインの強化をして欲しい。武器とかそういう意味での強化ではなく、機体性能そのものを底上げさせるような、そんな強化で」

「アクセル!?」

 

 マーベルは、まさか俺がそんな事を言うとは思っていなかったのか、驚きの表情をこちらに向けてくる。

 とはいえ、この場での発言権は基本的に意見を求められた時だけだというのを思い出したのか、それ以上は特に何かを言うような事もなかったが。

 

「知っての通り、マーベルは腕の立つ聖戦士だ」

 

 これは間違いではない。

 実戦経験を積んで腕を上げたショウには追い抜かれてしまったものの、それ以外の聖戦士と比べれば腕は上だ。

 ……トッドがずっと訓練をしていれば、あるいはマーベルを追い抜くか、同等の技量を持てたかもしれないが、トッドはミの国の領主としての仕事もあり、思うように訓練時間を取れておらず、未だにマーベルの方が上だ。

 アレン達は、どうしてもまだ訓練時間が足りないので、マーベルには及ばない。

 特にジェリルとフェイの2人はレプラカーンに乗り換えた事も影響している。

 レプラカーンは武器が多い……いや、多すぎるので、適切な武器を選ぶというのが難しい。

 シンプルに射撃武器はオーラショットのみといったようなダンバインなら、そういうのを気にする必要もないのだが、多数の武器を持つレプラカーンの場合は、どの武器を使うのかといった事をパイロットが選択する必要があった。

 そういう意味では、ジェリルやフェイよりもビランビーという使い慣れているオーラバトラーを使っているアレンの方が上だな。

 ちなみに、トカマクは……レプラカーンをジェリル達よりも使いこなせているのが影響しているが、こっちは完全に援護射撃専門になってしまっているしな。

 そういう意味では、数に入れるのは難しいだろう。

 

「ダンバインが幾ら聖戦士用に開発されたオーラバトラーだとしても、マーベルの成長はその性能を追い越しつつある。今はまだ問題ないが、そう遠くないうちに機体側の問題でマーベルの操縦に追いつけなくなる可能性がある」

 

 正直なところ、フラオン軍のショウはこの辺りをどうしたんだろうという疑問がある。

 ショウは、今やマーベルよりも操縦技術やオーラ力で勝っている。

 だが、ショウのダンバインはそんなショウの操縦に全く問題なくついていけているのだ。

 可能性としては、ショウのダンバインも俺が今回提案したみたいに改修されてるんだろうな。

 ギブン家に亡命した技術者は、ダンバインの開発にも関わっていたのだ。

 そうである以上、ダンバインを改修するといったような真似をしても、おかしくはない。

 動力源であるオーラコンバータや、オーラバトラーの筋肉であるオーラマルス、それ以外にも、様々な場所を改修しようと思えば出来るだろう。

 そしてショウはフラオン軍にとっての最高戦力だ。

 それに比べると、既にドレイク軍――正確にはシャドウミラーだが――でダンバインに乗っているのはマーベルだけであり、フラオン軍と状況が色々と違うのは事実だ。

 だからこそ、この機会にマーベルのダンバインを改修しておきたい。

 そう思っての俺の言葉に、ドレイクとビショットは意表を突かれたといった様子を見せる。

 まさか、俺の口から出てくるのがそんな言葉だとは、思いもしなかったのだろう。

 

「どうだ? マーベルが強くなれば、そっちにとっても悪い話じゃないと思うけど。ミの国と戦った時も、マーベルがいたからこそ、ショウの奇襲を防げたんだし」

 

 前後からの挟撃をして戦力を動かし、そして戦力が薄くなったところで上空から奇襲……ただしそれは囮で、地上から上昇してきてドレイクの首を狙ったショウを止めたのは、マーベルだった。

 ただし、その時はショウが腕を上げているという事もあり、マーベルはショウを食い止めるのが精一杯で、俺が駆けつけるのが遅れていれば負けていた可能性が高かったが。

 今後も、そういう事にならないとは限らない。

 そして俺達は傭兵的な感じで行動している以上、マーベルの機体が強化されるというのは、ドレイクやビショットにとっても悪い話ではないだろう。

 

「ふむ、なるほど。……だが、それならダンバインではなく、別の機体に乗るというのはどうだ? アクセル王にはビランビーやレプラカーン、それにビショット王の開発したビアレスといったオーラバトラーがある。それを思えば、ダンバインを強化するより、単純に乗り換えた方がいいのではないか?」

「それも考えたんだが、ダンバインはマーベルが乗っている事で、聖戦士の象徴的な機体となっている」

 

 まぁ、それを言うのなら俺のサーバインもダンバインと似てるので、詳しい情報が分からない奴にしてみれば、サーバインもダンバインと同じように思えてもおかしくはないのだが。

 

「それに、もしこれでマーベルがダンバインから降りるようなことがあれば、ダンバインに乗ってるのはショウだけになる。これは、色々と不味いんじゃないか?」

「ぬぅ……」

 

 ドレイクは言葉に詰まる。

 そんなドレイクに対し、ビショットは少し考えた後で口を開く。

 

「ふむ、私はアクセル王が要望する追加の報酬を受けてもいいと思いますが……どうです?」

 

 そんなビショットの言葉に、ドレイクもまた頷くのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1680

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