ナの国のオーラシップ、グリムリーに案内されてヨルムンガンドは進む。
そうしてナの国の王都に到着したのは、キブツが予想したよりも若干遅く……夕方ではなく、既に夜になっている時間帯だった。
それでもヨルムンガンドの姿は目立つのか、ブリッジの映像モニタでは地上にいる多くの者が空を見上げている。
「随分と豪胆だな」
そう、現在ヨルムンガンドはナの国の王都の真上を飛んでいるのだ。
正直なところ、豪胆ではなく何も考えてないのでは? といったように思わないでもない。
何しろ、もしこの状況で俺達がその気になれば、それこそナの国の王都は大きな被害を受ける。
グリムリーにも当然のようにオーラバトラーは搭載されているのだろうが、それでもオーラバトルシップの……それも後方で空母的な役割を想定して建造されたヨルムンガンドに比べれば、搭載数は少ない筈だ。
その上で、ヨルムンガンドには俺とマーベルの2人がいて、サーバインとダンバインの2機があるのだ。
ラウの国から情報を貰っているのなら、当然だが俺がここにいるという時点でその辺も理解している筈だ。
マーベルがヨルムンガンドに乗っているのかどうかまでは、分からないかもしれない。
だが、現在のシャドウミラーの戦力がヨルムンガンドに集まっているとなると、それを予想するのは難しい話ではないのだろう。
「向こうが強硬な態度を取らず、こちらと平等に接するといった事を表しているのでしょうか?」
「どうだろうな。キブツの考えは正しいかもしれない。けど、もうナの国はラウの国と協力すると決めたんだろう? なら、俺達をこのままにするとは思えないけどな」
「でも、じゃあ……何でこういう態度に?」
マーベルの疑問を感じた視線に少し考え……やがて、1つの可能性に思い至る。
「もしかして、俺達を引き抜こうとするのか?」
「それは……」
キブツは驚き、マーベルは納得する様子を見せる。
実際、考えようによっては俺達を引き抜くというのは悪い話ではない。
シャドウミラーはドレイクと同盟を組んでいるのは間違いないが、それでもこのバイストン・ウェルの世界の国でないのは事実だ。
だからこそ、ここで引き抜けるかもしれないと思った可能性はあった。
勿論、それをこっちが引き受けるかどうかは、また別の話だが。
「アクセル王、着地する場所を指定してきましたが、それに従っても構わないでしょうか?」
「ああ、今は向こうの指示に従え」
王都にまでこっちを呼び寄せるといった真似をしたのだ。
向こうが何もしてないのに、この状況で俺達が動くといった真似をすれば、こっちが不利になるのは間違いない。
ナの国もそれを狙ってこのような真似をしたのだろうし。
そしてヨルムンガンドは向こうの要求に従って移動して、城からそう離れていない場所に着陸する。
当然の話だが、オーラバトルシップが着陸出来るような場所というのはそう簡単に用意出来ない。
それをこうして用意したというのは……偶然このような場所があったのか、あるいはオーラシップとか使う事を想定して作っていたのか。
『アクセル王。この度は不便を掛けさせてしまい、申し訳ありません』
ヨルムンガンドが着陸すると、俺達をここまで案内してきたグリムリーの艦長、ワスラから通信が入ってそう頭を下げてくる。
「気にするな。こっちも約束も何もなく突然やって来たんだ。それで戦闘にならず、こうしてしっかりと案内して貰ったんだから、悪くは思わないよ」
ナの国との国交は細々としたものではあったが、最初に人を派遣しておけばよかったのは事実だ。
だが、ドレイクやビショットには現在そのような戦力的な余裕がある訳でもない。
いやまぁ、ラウの国のフォイゾン達はタータラで籠城してるのだから、無理をすれば前もって約束を取り付けられたのかもしれないが。
『ありがとうございます。面会の方は、明日になるとのことです。そちらで何か足りない物があれば用意するとの事でしたが……』
「いや、足りない物は特にない」
何か足りない物があると言えば、ナの国側ではすぐにそれを用意するのは間違いないだろう。
だが、この状況でそのような真似をすれば、借りになる。
この程度の小さな借りでどうにかなる訳ではないのだが、それでも最終的には何がどうなるかを考えると、出来ればその辺はしっかりとしておいた方がいい。
『そうですか。分かりました』
そうワスラが言うと、やがて通信が切れる。
ワスラにしてみれば、俺に対して貸しを作るといったような事は最初から考えていなかったのだろう。
それでも現在の状況を思えば、向こうに深入りしたくないというのも、また事実。
「さて、そんな訳で今日はヨルムンガンドで一泊だ。……言っておくが、ヨルムンガンドの外に出るような真似はするなよ」
「警戒の方はどうしますか? オーラバトラーでヨルムンガンドの周囲を飛ぶといったような真似は……」
「止めておけ。それがナの国を刺激して、妙な行動に出るかもしれない」
ただでさえ、オーラバトルシップのヨルムンガンドを見せつけているのだ。
その上でオーラバトラーを出すといったような真似をした場合、向こうが過敏に反応しないとも限らない。
出来ればナの国とは友好的な関係を築いて、ラウの国に援軍を出すのを止めて欲しいのだ。
そうである以上、出来ればこちらから刺激するような真似はしたくない。
友好関係を結べれば最善なんだが、正直なところそんなに都合よくいくかどうか……その辺は、明日以降の交渉に掛かっている。
そうして、その日は俺の指示通りにナの国の面々を刺激するような真似はせず、夜がすぎていくのだった。
ナの国に到着した翌日、俺はマーベルと共にナの国から派遣された兵士に案内されて、城に向かう。
本来ならキブツも連れて来たかったところなのだが、ヨルムンガンドの方にも何かあったら対処出来る人材が必要だろうという事で、やって来たのは俺とマーベルの2人だけだ。
マーベルだけの方が、もし何かあった時にも助ける事は出来そうだし。
まぁ、ナの国の上層部が有能なら、そんな真似はしないし。
「随分と立派な城ね」
案内している兵士に聞こえないよう、マーベルが小声で呟く。
その言葉は決して大袈裟ではなく、ナの国の王都にある城はかなり立派な建物だった。
アの国のドレイク城と比べても、間違いなく上だろう。
この辺は、ナの国の周囲に他の国が存在せず、その結果として国力を浪費する事もなく領土を広げることが出来たという点が大きいだろう。
勿論、他国の問題はないが、ガロウ・ランや恐獣の問題はあったのだから、全てが順風満帆といった訳でもなかったのだろうが。
「そうだな。それだけナの国が栄えてるってことの証だろう。それと上が優秀なおかげもある」
もしナの国がこのような立地だったとしても、例えば国を率いるのがフラオンだった場合、どうなるか。
間違いなくここまでの繁栄を得るような真似は出来なかっただろう。
それが出来たのは、あくまでもナの国の上層部が優秀なおかげだ。
……もっとも……
「ナの国が優秀であれば、現在の俺達が歓迎されてないことの証になるけどな」
そう、告げる。
案内に寄越したのが、そもそも兵士だ。
上層部の誰かが来いとまでは言わないが、それでも騎士辺りを寄越してもおかしくはない。
また、こうして城の中を進んでいると何人かの文官と思しき者達とすれ違うが、その多くがこちらと関わり合いになりたくないといった雰囲気を発している。
それでもあからさまな嫌悪感や敵意の視線を向けてこず、軽く頭を下げるといった程度の事が出来るのはさすがと言ってもいいのかもしれないが。
「そうね。でも、それは承知の上でしょう?」
マーベルとそんな言葉を交わしながら城の中を進み……やがて、目的の場所に到着する。
謁見の間に続くと思われる、巨大な扉。
俺達が来るというのは既に知っていた為か、兵士はすぐに扉を開ける。
「シャドウミラー国王、アクセル・アルマー王のお成りです」
その言葉と共に、俺は謁見の間の中に入った。
謁見の間の中には、しっかり準備をしていたのだろう。多くの武官や文官が集まっていた。
その多くが、恐らくは有能な人物なのだろう。
そして玉座には……
「ようこそ、いらっしゃいました。アクセル王」
1人の女がいて、俺に向かってそう告げてくる。
女? ……女王? 王女とかそういう事じゃなくてか?
年齢的には、10代半ば……20代には達していないだろう。
見て分かる程に、清廉な雰囲気を発している。
ただ、何となく……本当に何となくだが、気が強そうな感じがするな。
「あんたがナの国の女王ということでいいのか?」
ざわり、と。
俺の態度が気にくわなかったのか、それを聞いていた者の多くがざわめき、こちらに敵意のある視線を向けてくる者すらいた。
それはつまり、少なくてもこの女が謁見の間にいる者達から慕われているのは間違いないという事だろう。
こうして見ただけでも、一種のカリスマ性があるのは間違いない。
そのカリスマには、顔立ちが整っているというのも関係しているのだろう。
美人と言っても、それに反対する者はまずいないだろうくらいに、顔立ちが整っている。
「ええ。ナの国の女王、シーラ・ラパーナです」
「シーラ様だぞ!」
と、シーラが名乗ったと思った瞬間には、改めてそんな声が周囲に響く。
何だ? と思って改めて声のした方に視線を向けると、シーラの側にはフェラリオの姿があった。
フェラリオというのは、外見的には妖精に近い。
それでも、外見を見ればある程度の年齢は何となく予想出来る。
そういう意味では、声を上げたフェラリオはまだ幼い……それこそ、妖精ではなく幼生という表現が相応しいくらいの年齢に見える。
ギブン家に亡命したショウも、ダンバインの操縦をする時にフェラリオと一緒に乗り込んでいるが、そのフェラリオもそれなりに若いが、俺の視線の先にいるフェラリオは更に若い。
すると、シーラの後ろから更に1人のフェラリオが姿を現し、最初に口を開いたフェラリオを叱りつける。
「こら、ベル。今は黙っていなさいって言っておいたでしょう!」
ポカリ、という擬音が相応しい感じで殴るが、それがベルと呼ばれたフェラリオにとっては痛かったのだろう。外見同様に精神も幼いのか、泣き始める。
「わあああああん、エルがぶった!」
そんなやり取りが行われているが、謁見の間にいる者達は特に気にした様子はない。
それどころか、和むような温かな視線をそんな2人のフェラリオに向けていた。
恐らく、このやり取りがナの国では普通なんだろうな。
実際、マーベルもそんなやり取りを見て、優しそうな笑みを浮かべていたのだから。
「エル、ベル。私はアクセル王と話があります。貴方達は部屋に戻ってなさい」
ベルが泣き止まないと判断したのか、シーラはそう告げる。
それでいながら、シーラもフェラリオ達を怒るのではなく、どこか優しげな様子を見せていた。
シーラもまた、エルやベルといったフェラリオには心を許しているのだろう。
「えー、私はまだここにいたいのに」
「エル」
「ほら、ベル。行くわよ」
エルが部屋に戻るのを嫌がったのだが、シーラの改めて名前を呼ばれると、まだ泣いているベルを引っ張って謁見の間から出ていく。
「失礼しました、アクセル王」
「いや、気にしなくてもいい。けど、シーラ女王はフェラリオに好かれてるんだな」
俺が知っているフェラリオは、まさに悪戯好きの妖精といった感じの者が多い。
中には酒好きでいつも酔っ払っているようなフェラリオもいる。
そういう意味では、フェラリオもそれぞれ個性があるという事なのだろうが。
「彼女達は、私にとっても掛け替えのない友人ですから」
それは、心の底から思っていることなのだろう。
シーラの顔には、作り物ではない笑みが浮かんでいた。
しかし、その笑みはすぐに消え、真面目な表情になる。
「それで、アクセル王。一体何をしにこのナの国へ? 何でも、アの国とクの国の国王からの交渉人としてきたという事ですが?」
随分あっさりと本題に入るな。
まぁ、それならこっちも話が早いから、そう悪い話じゃない。
「交渉に来た理由は1つ。ラウの国に協力するのを止めて欲しい」
ざわり、と。
俺の口から出た言葉に、それを聞いていた武官や文官がざわめく。
ナの国としては、ラウの国に協力するのは既に決定事項なのだろう。
それを急に現れた俺がラウの国に協力しないで欲しいと言われても、納得出来る筈がない。
あるいは、もしかして……本当にもしかしてだが、実はナの国がラウの国に協力しているのをこっちに悟られないと思っていたのか。
いや、まさかな。
現在のラウの国の状況や、ラウの国で開発されたグリムリーを使っているのを見れば、協力関係にあるのは一目瞭然だし。
さて、どう出る?
そんな風に思う俺の視線を向けられ……やがてシーラは口を開く。
「そのような真似は出来ません」
そう、きっぱりと断ってきたのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1570
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1682