シーラとの交渉は、まずシーラが俺を大いなる者といったように認識しているところから始まった。
とはいえ、正直なところそれはそれでどうだ? と思わないでもないのだが。
「それで、俺が大いなる者だからって……ラウの国との協力を止めたりはしないんだろう?」
それで素直に俺の要望を聞いてくれるのなら、俺としても正直嬉しい。
しかし、当然ながらシーラは俺の言葉に頷く。
「当然でしょう。貴方は確かに大いなる者と呼ばれるだけの力がある。ですが、これとそれとは別の話です」
そうきっぱりと俺の要望を断ってきた。
ここまでは、謁見の間で行われた交渉と同じだ。
だが、向こうが態度を変えないのであれば、別に俺をわざわざこのような場所に呼ぶ必要はない。
つまり、何らかの理由があってこうして俺を呼んだ筈なのだ。
「なら、何の為にこうして俺を呼んだんだ? 俺達を呼んだ以上、何か理由があるんだろう?」
「……アクセル、貴方に聞きたい事があるのです」
アクセル王ではなくアクセルと呼ぶという事は、シャドウミラーの国王ではなく俺個人として用事があるという事か。
「具体的には、何を聞きたい? 一応言っておくが、俺にも言える事と言えない事があるぞ?」
シャドウミラーについての一般的な情報であれば、それなりに話してもいい。
シーラがシャドウミラーについての話を理解出来るかどうかは、また別の話だが。
これは別にシーラを馬鹿にしている訳ではなく、バイストン・ウェルというファンタジー世界に生きている者達がシャドウミラーでの常識について理解出来るかどうかというのは、また別の話の為だ。
科学技術とかそういう点に関しては、やはりこの世界でも色々とあるんだろうし。
「アの国の国王、ドレイク・ルフトについてです。私が聞いた話によれば、ドレイク・ルフトという人物は強い野望を持ち、バイストン・ウェルを支配しようとしていると聞きます」
「……なるほど」
シーラにしてみれば、ラウの国の面々からだけではなく、俺達からもしっかりドレイクがどのような人物なのかを聞きたいといったところか。
この辺は公平であると言ってもいいのかもしれないな。
「それで、アクセルから見てドレイク・ルフトというのはどのような人物なのか……聞かせて貰えますか?」
「そうだな。野望があるというのは否定しない」
でなければ、オーラマシンを開発するのはともかく、それを様々な相手……それこそ、このナの国にも売ったりといったような真似はしないだろう。
また、フラオンに対してゲドを送ったりして、自分を信用させるように動いていたというのもある。
そう考えれば、野望がないとは言い切れない。
「だが、それでもドレイクが現在のような状況になっているのは、成り行きというのが大きい。最初は意味もなくギブン家がドレイクを敵視して、頻繁に攻撃を仕掛けてきたのが戦いの原因だし」
そうして、説明を続ける。
ギブン家が何度となくルフト家に攻撃をしてきて、それでも倒せずに追い詰められると、フラオンやミの国を引き込んで騙し討ちをさせた事。
それに対処した後でエルフ城に攻め込み、フラオンを追放した事。
ミの国を攻撃した事。
フラオンがギブン家とミの国で合流し、反乱軍の件もあって内乱が起きた事。
そして内乱が終わったものの、フラオンやピネガンはラウの国に逃げ込み、そして国境線でラウの国との小競り合いが起きて、それが原因でラウの国と戦争になった事。
だが、ラウの国は村や街の人員を移動させ、タータラ城で籠城を行っている事。
そんな感じで、俺達が経験してきた内容をシーラに話す。
シーラにしてみれば、フラオン、ピネガン、フォイゾンといった面々から、その辺の話は聞いている筈だ。
勿論直接話したのではなく、手紙か何か、もしくは人伝の可能性が高いが。
だが、当然向こう側から話を聞いた以上、それは向こうにとって有利になっている筈だ。
実際、俺がシーラにした説明も、ラウの国にいる面々が聞いたら色々と言いたい事があるんだろうし。
「話は分かりました。しかし、疑問が残りますね。ミの国との戦いまでは、まだ納得出来ます。ですが、そのような状況ではラウの国と戦う必要はないのでは? 国境線上で小競り合いがあったという話ですが、その小競り合いを理由として、戦争を起こすというのは、疑問です」
俺の話を聞き終わったシーラは、そう言ってくる。
まぁ……だろうな、というのが、俺の正直なところだ。
実際、俺やマーベルもドレイクがラウの国と戦うといった話を聞いた時、何故? といった疑問を抱いたのは事実だ。
「ラウの国の国王フォイゾンは、歴史と伝統を重視する。つまり、血筋だな。一介の領主でしかなかったドレイクがアの国の国王になっているといった状況は、許されないと思っていた筈だ。そんなフォイゾンが、アの国の元国王たるフラオンを手元に置いている。この意味は分かって貰えると思うが?」
少し無理があるとは、俺も思う。
何よりも、ラウの国にフラオンやピネガンが逃げ込むように仕向けたのは、間違いなくドレイクだ。
その理由としては、やはりフォイゾンが血筋を重視する人物で、もしフラオン達が逃げ込んでいなくても、いずれアの国に向かって攻撃するかもしれないというのだが……可能性としてはあると思うが、それでも『かもしれない』から、先制攻撃をするというのは、少し無理があるとは思う。
とはいえ、ドレイクがアの国の国王として判断したのなら、それは必要なのだろうと、そう思って俺は特に何かを言ったりはしなかった。
「ですが、本当に血筋を理由として戦いを起こすとは限らないのでは?」
「その辺はバイストン・ウェルの人間ではない俺にとっては、あまり詳しくは知らない。だが、フォイゾンは娘の一件でミの国との国交を断絶するといったような激しい処置をした。そんな人物がアの国の国王の血を引くフラオンを国内に匿っている。その上で、新型のオーラバトラーを開発しているんだ。普通に考えて、ドレイクが脅威を抱いてもおかしくはないと思うが?」
「それは否定出来ません。ですが、それならまずは話し合いで解決してもよかったのでは?」
「俺が知る限りだと、フォイゾンはとてもじゃないがドレイクとの話し合いに応じるとは思えなかったな。それに、向こうにしてみればドレイクは王位を簒奪した存在だ。友好的ってのは無理があると思うが?」
「それでも、やってみなければ分かりません。実際に試して駄目であれば、戦いになるのも納得は出来ますが」
「フラオンとピネガンを匿ってる時点で無理なんだけどな。マーベル、お前はどう思う? もしフォイゾンに話し合いを求めたとして、それに向こうが応じると思うか?」
マーベルに話の矛先を向けると、そのマーベルは少し考えてから口を開く。
「話し合いに応じるか応じないかということなら、応じるかもしれないわ。けど、それでこの件が解決するかと言われると、正直難しいでしょうね。それこそフラオンを再びアの国の国王にするといったような条件をつけられる可能性があるわ」
マーベルのその言葉に、シーラは少し考え込む。
俺だけが解決しないと言っているのなら、そこまで信用するような事はなかったかもしれない。
しかし、俺だけではなくマーベルまでもがそのように言ってきたのであれば、話は変わってくる。
それでもマーベルは俺の仲間である以上、その言葉を完全に信じるといったような真似は出来ないだろうが、
「もしこの状況でナの国がラウの国から手を引いた場合、ラウの国はどうなると思いますか?」
「アの国に占領されるだろうな。あるいは、もしかしたらアの国とクの国の分割統治になる可能性も否定は出来ないが」
そう言うものの、ラウの国との戦いでの主力は当然ながらアの国だ。
ビショットは援軍として駆けつけたものの、その戦力は少ない。
……いやまぁ、ゲア・ガリングだけで十分な戦力ではあるのだが。
アの国の場合は、ウィル・ウィプスの他にもブル・ベガーやナムワンを多数運用しているし、少し遅れたが俺のヨルムンガンドまで遣っている。
正確には俺はドレイク軍ではなくシャドウミラーという別の勢力なので、そういう意味では数に入れない方がいいのだろうが。
あ、でもヨルムンガンドの運用にはドレイク軍の兵士もそれなりに派遣して貰っているし、そういう意味では半ドレイク軍といったような感じでも間違いではないか。
「アの国に占領されれば、ラウの国の国民は酷い目に遭うのでは?」
「どうだろうな。少なくてもアの国の場合はドレイクが王になった事によって、多くの領主が喜ぶような結果になったぞ」
オーラバトラーの練度向上であったり、飴と鞭の飴であったりといった具合で、現在アの国のガロウ・ランの盗賊はかなり少なくなっている。
税率も以前より大分軽くなったし。
この場合は、ドレイクが有能なのもあるが、それ以上にフラオンが無能すぎたというのが大きいんだが。
とはいえ、ミの国もまたアの国の領土になった事で喜んでいる者も多い。
ピネガンが多くの者に慕われていたのは事実だが、それでもラウの国と取引をしていた商人達には恨まれていたし、また小国であるが故に国力が低く、国内のガロウ・ランや恐獣の対処が難しかった。
オーラバトラーの技術を得た事によって、その辺は多少なりとも変わったが……フラオンの口車に引っ掛かり、ドレイク軍と戦って大きな被害を受けた。
結果として、もしあの状況でドレイクがミの国を攻めていなければ、内乱とそれに乗じてガロウ・ランの盗賊達が動いていたのは間違いない。
そして現在はドレイクの部下が派遣され、聖戦士筆頭のトッドがミの国の領主となっている。
ミの国の運営はドレイクの部下が行っているが、もしガロウ・ランの盗賊の襲撃があった場合はすぐに聖戦士がビランビーという最新鋭機種に乗ってそこに向かうという事で、安心して生活も出来るようになっている。
勿論、愛国心の強い者にしてみればミの国がアの国の領地の1つになったというのは許容出来ない者が多いだろうが、何気にそういう連中はピネガン達と一緒に国外脱出をしたし。
中には意図的にピネガンの脱出には付き合わず、現在のミの国の情報を流したり、補給物資を用意したりといった者もいるが、そのような者達は決して多くはないし、それを表に出すような真似も基本的にはしない。
そうである以上、現在のミの国の住人は、ドレイクによる統治を歓迎している者も多い。
あるいは何となく面白くないという思いを懐いている者もいるのかもしれないが、それでも以前より暮らしが楽になっているのは間違いなかった。
「……なるほど」
説明している俺の目をじっと見ていたシーラは、やがて納得したように呟く。
もしかして、相手の目を見れば嘘を言ってるかどうか判断出来たりするのか?
いや、まさかな。
さすがにそんな能力はないと思う。
「どうやら納得して貰えたようだな」
「ええ。ですが、一つ聞かせて下さい。もしドレイク・ルフトがラウの国で言われているように、野心を……征服欲を持ち、バイストン・ウェルその全てを支配したいと、そのように思ったらどうするのですか?」
はっ、と。
シーラのその言葉を聞き、俺の隣のマーベルは息を呑む。
実際、今のドレイクであれば、そのような真似をしてもおかしくはないと、そうマーベルには思えたからだろう。
「そうだな。もしそうなったら、多分俺がドレイクを止めるだろうな」
「出来るのですか?」
「出来るかどうかと言われれば、出来る」
元々ドレイクが俺を対等の同盟者として扱っているのは、俺がその気になればいつでもドレイクを殺す事が出来る実力を持っている為だ。
気配遮断と影のゲートがあれば、幾らドレイクが防御を固めたとしても俺の襲撃を防ぐような真似は出来ない。
そういう意味では、俺が本気になった場合ドレイクがこちらの攻撃を止めるといった真似は出来ない。
「そうですか。ですが、私が聞きたいのはやる気があるのかという事ですが?」
「もしドレイクが野望に取り付かれるような事があれば、だがな」
ラウの国を攻める理由が、少しこじつけに思えたのは間違いない。
フラオンを意図的にラウの国に逃したというのも事実。
だが、それでもラウの国を占領してしまえば、それ以上に戦火を広げる事はないだろうと、そう思える。
「私は……いえ、カワッセや他の者もそうですが、ドレイク・ルフトはラウの国を占領した後で、ナの国に攻めてくるのではないかと心配しています」
シーラのその説明は、十分に納得出来るものだ。
実際にドレイクが何故ミの国、ラウの国を攻めるといったような真似をしているのか。
その理由を知らなければ、シーラが……そしてナの国の者達が疑問に思うのも当然だろう。
「その心配は……どうだろうな。ラウの国に協力したのなら、何らかの代償を支払わないと、敵対認定されたままかもしれないな」
そんな俺の言葉に、シーラは鋭い視線をこちらに向けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1570
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1682