敵対認定されたままという言葉に、シーラの美しく整った眉が顰められる。
とはいえ、これは仕方がない。
ドレイクと敵対しているラウの国にナの国が協力しているのは、間違いのない事実なのだ。
そうである以上、ドレイクとしては敵対認定をするのは当然だろう。
とはいえ、俺はそのような状況であってもラウの国とナの国との関係をどうにかするようにして欲しいと言われて、派遣されたのだ。
そうである以上、その辺りもどうにかする必要があった。
「取りあえず、これ以上ナの国がラウの国に協力しないのなら、俺の方からある程度話をすることは出来るが」
「そういう訳にはいきません。ナの国としてラウの国に協力すると決めている以上、ラウの国に何の落ち度もないのにそれを破棄するという真似は出来ませんので」
そう告げるシーラは、そこから1歩も退く気はないように思えた。
とはいえ、こうして俺達を呼んで改めて交渉をしている以上、何らかの考えがあってそのような真似をしてるのは間違いないんだろうが……それは一体なんだ?
「なら、何を考えてこうして改めて交渉を求めてきたんだ? そっちが一切退く気がないのなら、わざわざ俺達を呼ぶ必要はなかったと思うが?」
「……提案があります。ナの国がラウの国とアの国、それとクの国ですか。その戦いの仲裁を行う用意があります。もしドレイク・ルフトが貴方の言うようにバイストン・ウェルの全てを支配するなどといったような野望を持っている訳ではない場合、この提案に乗ってくるのでは?」
「それは……」
なるほど、そう来たか。
確かに考えて見れば、その選択はそれ程悪いものでもない。
ナの国がラウの国と協力体制にあるとはいえ、実際にまだアの国やクの国と戦火を交えた訳ではない以上、その協力体制というのはオーラバトラーの開発についてと、そう考える事は出来る。
ただ……それをドレイクが納得するかどうかとなると、また別の話だろう。
ドレイクにしてみれば、ラウの国……正確には伝統や血筋を重視するフォイゾンという存在は決して許容出来る相手ではない。
それこそ、場合によってはそんな停戦交渉など関係ないといったように攻撃をしてもおかしくはないのだから。
可能性があるとすれば、フォイゾンが国の運営方針を転換させる……いや、それだけでは結局またいつ伝統と血筋を重視するか分からないし、それ以前に長年信じてきたものをそう簡単に変えるといったような真似は出来ない。
なら、国王を変えるか?
そうも思ったが、これもまた難しい。
そもそも、国王を変えると言っても誰が国王になる?
俺が知ってる限りだと、フォイゾンの血を引く者は現在本人以外には娘のパットフットと、孫のエレの2人だけ。
だが、パットフットは既に親子の縁を切られているし、エレにいたっては子供だ。
あるいは、フォイゾンの親戚か何かがいれば話は別だが、生憎とそのような情報は聞いた事がない。
であれば、今の状況ではラウの国で国王を変えるといった真似は出来ないだろう。
……というか、それ以前に自分達が負けた訳でもないのに、国王を変わるというのは伝え聞くフォイゾンの性格を考える限り絶対にないだろうし。
そしてドレイクは、フォイゾンが国王をしている限り安心する事が出来ない。
そもそも、ラウの国を攻めるといった行動をしたのは、今ならラウの国に勝てると判断した為だろう。
そのような状況で、これ以上ラウの国に時間を与えた場合、一体どうなるか。
それこそ、ラウの国ではオーラマシンの技術を発展させ、ボゾンよりも高性能のオーラバトラーを開発させたり、現在開発中だというオーラバトルシップを完成させたりといったような事になっても、おかしくはなかった。
そう考えれば、もしドレイクがこの状況でナの国の停戦を受け入れるというのは、かなり難しい筈だ。
「正直なところを言わせて貰えば、ドレイクがラウの国との停戦を受け入れる可能性はかなり低い」
「……フラオンを引き渡しても、ですか?」
「それは……いや、それでもどうだろうな」
元々、ドレイクがフラオンをラウの国に向かわせるように仕向けたのは、ラウの国との戦いでミの国の時と同じようにラウの国をかき回してくれると、そう期待しての事だ。
そうである以上、この状況でフラオンを返すと言われても、ドレイクとしては正直いらないと言うだろう。
フラオンはともかく、ギブン家の方は話が別かもしれないが。
そもそも、ドレイクとしてはフラオンを返されても困るだろう。
現在の状況でフラオンが戻ってきても、それこそ処刑するしかない。
飼い殺しにするといった選択もあるのだが、フラオンの性格を考えれば贅沢三昧な生活をさせろと言うだろうし。
あるいは、現在アの国にいる領主の中には、ドレイクの治世に不満を持っている者もいる筈だ。
表立って反抗した領主は既に対処したが、表向きはドレイクに従いながらも不満を隠しているような存在。
そんな相手がいた場合、あるいは秘密裏にフラオンに接触するといった可能性も否定は出来なかった。
であれば、そういう意味でもフラオンという存在はドレイクにとって邪魔でしかない。
何しろフラオンは、敵にいれば敵に混乱をもたらせてくれるありがたい存在だが、それだけに味方にいた場合は厄介の種でしかないのだから。
「この提案を受け入れて貰えない場合、こちらとしても相応の対応をするしかなくなりますが、それでも構わないと?」
「ナの国がそういう対応をしなければならないのは分かるが、だからといってドレイクがそっちの言葉に対して素直に従うかとなったら……正直、難しいと思うぞ」
冗談でもなんでもなく、真実の話だ。
何しろ、ドレイクにしてみればこのままタータラ城を包囲していれば、それだけで内部にいる者達はいずれ食糧不足になる。
現在、タータラ城を完全に包囲してる状態である以上、どこか他の場所から食料を持ってくるのは……まぁ、不可能ではないにしろ、大々的にとなると難しい。
タータラ城は、ラウの国という強国の首都だ。
当然のように、何かあった時の為に外に繋がる脱出路の類は存在する筈だ。
しかし、そのような脱出路や隠し通路の類は、当然ながら数人が出入りするように出来ている。
でなければ、敵対する相手に見つけられる可能性があるのだから、当然だろう。
本来なら王族や貴族が脱出する為の通路が、敵の進入口になる。
隠し通路を設計した者も、当然ながらその辺はしっかりと考えている筈だった。
そのような場所を使えば、多少なりとも食料を手に入れる事が出来るだろうが、それはあくまでも多少でしかない。
そしてタータラ城には、恐らく周辺の多くの村や街からの人を受け入れている筈だ。
そんなフォイゾン達に比べて、ドレイク達は補給線がしっかりとしている。
もし補給部隊を狙おうとしても、バーンが率いている以上、ショウ以外の場合は対処出来るだろう。
そう考えると、バーンを補給部隊の隊長にしたというドレイクの判断は、決して間違ってはいなかった事になるのか。
とはいえ、補給部隊という派手な活躍がない部隊に回されたバーンにしてみれば、そんな自分の境遇は決して許容出来ないだろうが。
「フォイゾン王にアの国との間で攻め込まないといったような不戦を誓わせれば、ドレイク・ルフトはラウの国に攻め込まなくてもいいのでは?」
フォイゾンは王と呼び、ドレイクは呼び捨てか。
これは暗に、現在も自分達はラウの国側に立っているということを意味しているのだろう。
今のシーラの立場を考えれば、しょうがないのかもしれないが。
「可能性としてはあるといったところか」
そうシーラに返す。
実際、ドレイクがラウの国に攻め込んだ一番の理由は、フォイゾンがドレイクがアの国の国王になるというのを認めないだろうと判断した為だ。
もしシーラ率いるナの国の仲裁で、永遠に……とはいかないだろうが、ある程度の期間ラウの国がアの国に攻め込まないといったような事を誓うのであれば、ドレイクも素直に停戦する可能性はある。
ただし、その場合は色々と細かい交渉が必要となるが。
ドレイクにしてみれば、自分達は王都まで攻め込んだのだから実質的に自分達の勝利だと主張してもいい。
フォイゾン達にしてみれば、ドレイク達はタータラ城まで攻めてきたのではなく、策略によってラウの国の奥深くまで引き込んだと認識する。
また、クの国が……それも国王のビショットが直々に援軍に来たのだから、そんなビショットに対しても何らかの謝礼を渡す必要がある。
とはいえ、ビショットもゲア・ガリングの運用試験的な意味でやってきたのだから、そこまで謝礼を必要とはしないだろうが。
「では、それをドレイク・ルフトに伝えて貰えませんか? もしそれで引き受けるのであれば、こちらは停戦の為に動きましょう」
「伝えるのはいいが……ドレイクの方はともかく、フォイゾンの方はそれで許容出来るのか?」
まだ直接フォイゾンに会った事はないが、それでも俺が噂で聞いた限りでは、フォイゾンというのは自分の考えをそう簡単に曲げないような性格をしている筈だ。
そんなフォイゾンが、シーラの言葉に従うかどうか。
俺としては、正直なところ難しいと思うんだが。
停戦を受け入れれば、フォイゾンも間接的にではあるが、ドレイクがアの国の国王であると認める事になるのだし。
「そちらに譲歩して貰った以上、フォイゾン王も譲歩する必要はあるでしょう」
「もしそれでもフォイゾンが受け入れない場合は、どうする?」
「その時になってみなければ分かりませんが、こちらからの提案を受け入れないのであれば、こちらとしてもいつまでも協力するといったような訳にはいかないでしょうね」
それは実質的には、フォイゾンと……ラウの国と手を切るという事を意味している。
俺としてはそうなってくれれば助かるのは間違いないが、フォイゾンはどう反応するんだろうな。
この件はドレイクにとっても色々と痛いものの、フォイゾンにとっても痛いものとなる。
そういう意味では、痛み分けといった感じになるのだが。
「分かった。シーラがそう言うのであれば、この話をドレイクに持って帰って進めてみよう」
ドレイクがラウの国を攻めるという理由が俺やマーベルに話したものの場合、この提案は受ける受けないというのは別にしても、検討する価値はある筈だ。
俺からしてみれば、ボゾンのような新型のオーラバトラーやその生産ラインを確保出来ないというのは惜しいのだが、それはそれで後で色々とやればいい。
最悪、俺がラウの国に影のゲートで忍び込み、機械の館から奪ってくるといった方法もある。
あー、でもこのやり方はミの国でやっている以上、ピネガン辺りには把握されている可能性が高いし、そうなればまたアの国が攻撃を仕掛けてきたといったように言われる可能性も否定は出来ないか。
俺とドレイクは同盟を結んではいるものの、実際には全く違う勢力なんだが……今の状況でそう言っても、とても信じるとは思えないし。
「そうですか。では、お願いします」
微かに……本当に微かにだが、安堵した様子を見せるシーラ。
シーラにしてみれば、今回の交渉はかなりギリギリの状況だったのだろう。
顔には出さなかったようだが。
「シーラ様、お疲れさまでした」
「いえ、カワッセにも付き合わせてしまいましたね。……交渉は終わりましたが、これからどうしますか?」
カワッセに感謝の言葉を口にしてから、シーラはこちらに向かって尋ねてくる。
「どうするって言われても、これから何かあるのか?」
「いえ、地上の事について少し聞かせて欲しいと思ったので。構いませんか?」
「シーラにとっても、地上についてはそれなりに興味があるのか?」
それは、少しだけ意外だった。
とはいえ、シーラもバイストン・ウェルの人間だ。
そうである以上、地上について興味を持っていてもおかしくはなかった。
「なら、私が話してもいいですか?」
俺に代わり、マーベルがそう言う。
実際、この世界における地上について詳細に説明するのは、俺では無理だ。
歴史についてそれなりに知っているので、その辺について説明する事は出来る。
しかし、当然ながら俺のそれは知識だけだ。
実際に現在の地上で生活していたマーベルと比べると、情報量はどうしても劣る。
それに、この世界の歴史が俺の知ってる他の世界の歴史とどこまで同じなのかというのは、分からないし。
マブラヴ世界のように、極端に俺の知ってる歴史とは違っているといった可能性はないかもしれないが、それでも小さな違いはあってもおかしくはない。
少なくても、俺が知ってる世界においてバイストン・ウェルという存在はなかったし、ガラリアやショウのようにオーラバトラーで地上に出たといったような事もなかった。
この世界の原作がどのような感じになってるのかは、俺には分からない。
また、女は女同士の方がいいとも思うので、その辺も考えて俺はマーベルにシーラの相手を任せる。
……何故か、シーラがちょくちょく俺の方にも会話を振ってきたので、少し戸惑ったが、それでも特に問題もなく会話は終わるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1570
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1682