「言ってみるもんだな」
俺は目の前にあるボチューン……それも3機を見て、そう呟く。
正直なところ、シーラにボチューンが欲しいと言ったものの、恐らく断られるとばかり思っていた。
何しろ、ボチューンはダーナ・オシー系の最新鋭機だ。
それだけではなく、恐らくはダンバインのオーラコンバータを解析して開発されたと思われる、オーラ力によってオーラソードの攻撃力を高める……といったようなシステムを持っている。
そういう意味では、是非とも入手したかった代物だ。
ただし、単純に1機欲しいといったような事を言った場合は駄目だと言われそうな気がしたので、最初に3機欲しいと言い、それが却下されたら何とか1機貰えれば……といったように思っていた。
だというのに、まさかシーラが3機欲しいといったのをそのまま認めるというのは、予想外だった。
器が大きいというか……
まさか、何も考えずにそんな真似をした訳じゃないよな?
シーラの性格から考えると、間違いなくそんな事はない。
だとすれば、俺に恩を売る為か?
とはいえ、それだけでボチューンを3機も?
「どうしたの? もっと喜んでると思ったら」
俺がボチューンを眺めながらそんなことを考えていると、不意にマーベルが尋ねてくる。
「もしかして、色が違うのを気にしてるとか?」
「それは別にそこまで気にしてない」
マーベルの言葉通り、俺の目の前に並んでいる3機のボチューンは、どれもが赤紫系の色をしている。
模擬戦で戦ったボチューンはマーベルのダンバインと同じく白い機体だったが、あれは恐らく近衛騎士団の専用色なんだろう。
……だとすれば、実は近衛騎士団にとって白のダンバインは面白くなかったのかもしれないな。
「ボチューンを持ってきた技術者達の説明によると、色違いだからといって別に性能の差はないらしいし。ただ、シーラの近衛騎士団であるというのを周囲に示す為に、白に塗っているらしい」
「そう。けど、色じゃないとすると、一体何をそんな風に考えていたの?」
「まさかシーラが本当に3機もボチューンを俺に渡すとは思ってなくてな。1機貰えれば御の字だと思ってたし」
「ああ、なるほど。……そう考えると、確かに不思議よね。ナの国にしてみれば、このボチューンは最新鋭機の筈なのに」
マーベルも俺が何を考えていたのかを理解し、疑問を浮かべる。
「考えられる可能性としては、シーラが俺と繋がりを維持しておきたい為に恩を売ってきたといった感じだな」
「アクセルの力を見た今となっては、その可能性は否定出来ないわね。ヨルムンガンドの件もあるし。……ああ、そうそう。キブツから面白い情報が上がってきたわよ?」
「……何だ?」
「ラウの国だけではなく、ナの国でもオーラバトルシップを開発中らしいわ」
どこからそんな情報を? と思ったが、そう言えばキブツの部下には直属のガロウ・ランが1人いたなと思い出す。
基本的な身体能力が普通の人間よりも高いガロウ・ランは、そういう意味では情報収集役としては最適だった。
勿論、キブツ以外にもガロウ・ランを従えている者はいる。
実際、俺は以前ドレイクに仕えているガロウ・ランと会った事もあるし。
とはいえ、ドレイクはともかくとしてシーラがガロウ・ランを雇っているかとなると……微妙なところだろう。
シーラの様子を見る限り、ガロウ・ランを雇っているようには思えないんだよな。
まぁ、潔癖そうに見えてもナの国を治めているのだ。
清濁併せ呑むといったような事は、出来るのかもしれないが。
ちなみに、本来ならシーラが国を治めているのなら、シーラは女王と呼ばれてもおかしくはない。
だが、その年齢のせいか、聖王女と呼ばれたりする事もあるらしい。
あるいは聖女王とか、聖少女とか……まぁ、色々と。
それも蔑みを込めてではなく、どれも尊敬や敬愛の念を込めてなんだよな。
この辺はシーラのカリスマ性が存分に発揮されている様子だ。
そんな風に考えていると……
「アクセル王、シーラ女王から連絡がありました。何でも、パーティを行いたいとの事です」
こちらに近付いてきた男が、そう告げるのだった。
「何だ? 何か不機嫌そうだな」
「別に、そんな事はないわよ。ただ、出来ればパーティをやるのならもう少し早く教えて貰いたかっただけ」
そう言いながら、緑のドレスを着ているマーベルは男の目を惹き付ける魅力に満ちていた。
もしこの部屋の中に俺以外の男がいれば、恐らく……いや、ほぼ間違いなくマーベルに視線を奪われていただろう。
それだけの、美貌。
もっとも、本人は自分がそんな魅力を振りまいているということに全く無頓着で、気にしている様子はないが。
「ナの国としては、他国の王が自分の国にやって来たんだ。それをもてなすのは当然なんだろ」
「その割には随分と遅いわね」
「最初は敵対に近い状態だったし、しょうがないだろ」
ナの国にしてみれば、ラウの国と手を組んでいる現在は、アの国から派遣されてきた俺達と当初敵対関係にあった。
それこそ、その場ですぐに戦闘になってもおかしくはなかった程に。
そんな状況であっても、上手い具合に面会出来たのは運によるところも大きいだろう。
それ以上に、シーラの有能さに助けられたといった感じだが。
ともあれ、最初はそのような状況……望まぬ客人とでも呼ぶべき俺達だっただけに、パーティを開いて歓迎するよりも前に色々とやっておく事があったのも事実だ。
「その敵対している状態だった人にエスコートを頼むというのは、どうなのかしら?」
「何だ、嫉妬か?」
「馬鹿、そんな訳ないじゃない」
そう言いつつも、若干マーベルの頬が赤く染まっているのを見れば、当たらずといえども遠からずといったところか。
エスコート……そう、俺は今回のパーティにおいて、シーラのエスコートを要求されており、それを断る必要もないんだろうと受け入れていた。
当然だが、そうなるとマーベルのエスコート役も必要になるのだが……その辺は、今日はキブツに任せる事になる。
俺としては、シーラとマーベルの2人をエスコートするといったような事をしても構わなかったのだが、ナの国におけるシーラのカリスマ性を考えると、そのような場合は色々と面倒なことになると判断したのだ。
「出来れば俺もマーベルとシーラというように、両手に花といきたかったんだけどな」
「あのね、そういう事ばかり言ってると、誤解されるわよ?」
「あながち誤解じゃないしな」
「……そうだったわね」
マーベルは俺に10人以上の恋人がいて、その多くと同棲しているという話を思い出したのか、呆れの視線を向けてくる。
そして多く溜息を吐く。
「全く、何でこんな人を……」
「どうした?」
「何でもないわよ。自分の馬鹿さ加減に呆れてるだけ」
「マーベルが馬鹿なら、世の中の大半が馬鹿になると思うけどな」
そんな俺に対し、マーベルが何かを口にしようとしたところで、扉がノックされた。
「アクセル王、よろしいでしょうか? シーラ様の準備が整いましたが」
入ってきたのはメイドの1人。
そして廊下には、キブツもパーティ用の衣装に身を包んで立っている。
ちなみに、俺、マーベル、キブツ。
その全員が着ているパーティ用の衣装は、ナの国側で用意された物だ。
俺のだけなら、一応空間倉庫に収納してあるのだが、マーベルのパーティドレスはアの国にあるし、そもそもキブツは殆ど着の身着のままの状態でやって来た以上、パーティ用の衣装などある筈はない。
そんな訳で、俺も含めて今回はナの国側の配慮に甘えさせて貰う事にした。
「ああ、今いく。……マーベル、またパーティ会場でな」
「ええ。シーラ様に恥を掻かせるような真似をしちゃ駄目よ」
そんな言葉に見送られて。
「へぇ……」
パーティ用の白いドレスに身を包んだシーラを見て、感嘆の声を出す。
まだ年齢が年齢な為か、元々そういう体質なのかは分からないが、女性的な曲線という意味では、まだまだ発展途上……いや、これからようやく発展をし始めるといったような感じだが、そんな女を感じさせない身体付きが、余計に白いドレスと合わせて清楚さを強調していた。
「どうかしましたか?」
「ちょっと、シーラ様に見とれてるとかないでしょうね?」
「しょうね!」
シーラが不思議そうに尋ね、そんなシーラの側ではエルとベルがそれぞれ俺に向かってそんな風に言ってくる。
相変わらずシーラの側にはエルとベルがいるんだな。
「いや、何でもない。そのドレスが似合ってると思ってな」
「そうですか」
シーラにしてみれば、そのカリスマ性や美貌から服が似合ってるといったように言われるのは、慣れているのだろう。
俺の言葉を聞いても、特に動揺した様子はない。
まぁ、別にシーラを喜ばせようと思って言った訳ではなく、単純に俺がそう思ったからこそ、言っただけなのだが。
「シーラ様、アクセル王、そろそろお時間ですので、パーティ会場の方へ」
メイドの1人がそう言い、俺とシーラに促してくる。
もう少しゆっくりしたかったんだが、仕方がないか。
「じゃあ、行くか」
「ええ」
そう言って肘を出すと、シーラはそこに腕を絡めてくる。
こちらもまた、慣れているのか普段通りのまま……いや……
「照れてるのか?」
「……そんな訳ないでしょう。幾ら貴方が大いなる者だからといって、それで私が照れるような事などありません」
「えー、シーラ様照れてるのー?」
「シーラ様、照れてる照れてる」
「エル、ベル、いい加減になさい」
シーラをからかおうとしたエルとベルだったが、シーラのそんな一言によって、あっさりと黙らせられる。
半ば照れ隠しのように思えたのは……多分、俺の気のせいではないだろう。
ともあれ、エレとベルが黙ったという事もあり、俺はシーラと共にパーティ会場に向かう。
「慣れてないのか?」
「そうですね。あまり男の人とこのような事をする機会はありませんので」
腕を組みながら歩くシーラにそう尋ねると、表情を変えないままにそう言ってくる。
とはいえ、先程のやり取りから恐らく単純に照れているだけだろうと、そう判断した。
この辺に触れると、先程のエル達みたいに怒鳴られるかもしれないから、これ以上は特に何も言わないが。
そうしてパーティ会場に入ると……あー、うん。やっぱり。
当然の話だが、パーティ会場には既に大勢の客がおり、俺とシーラが一番最後にやって来たといった形になる。
シーラはナの国の女王で、このパーティの主催者だ。
そして俺はシャドウミラーの国王という形で、このパーティの主賓となる。
そんな2人だけに、一番最後に入ってくる事になるのは当然だったのだろう。
パーティ会場にいる多くの者の視線を集めつつ、マーベルの姿を探す。
あ、やっぱり。
当然と言えば当然の話なのが、マーベルの周囲にはナの国の貴族や実力者と思われる者が多く集まっていた。
マーベルの美貌を考えれば、それも当然の成り行きなのだろうが。
予想外だったのは、キブツの周辺にも女……それも若い女が結構集まっていた事だろう。
まぁ、キブツはヨルムンガンドの艦長をしており、マーベルに続く俺の直属の部下だ。
そういう意味では、お買い得な物件と言ってもいいのだろう。
もっとも、キーンのような娘がいることから考えても、相応の年齢なのだろうが……貴族では、年齢の類は関係ないといったところか。
「皆、今日はシャドウミラーのアクセル王を歓迎する為のパーティです。存分に楽しむように」
シーラのその言葉に、会場の端にいた者達が楽器の演奏を始める。
そうしてダンスの時間になったのだが……当然のように、俺はシーラのエスコート役である以上、シーラのダンスの相手を務めることになる。
「上手いのですね」
「まぁ、ある程度はな」
何だかんだと、俺のような立場であればパーティに参加する事も多い。
そうなれば、パーティによってはこのようにダンスが求められる事も多かった。
とはいえ、当然だが世界が違えば文化も違う。
俺が知ってるダンスは、産まれた世界の士官学校で習ったダンス――必須科目だった――をベースに、音楽系に高い才能を持つシェリルから習ったりしたくらいだ。
幸い、バイストン・ウェルのダンスは俺の知ってるダンスとそう違いはなかったので、シーラと普通に踊れていた。
「その……少し近すぎるのでは?」
「そうか?」
俺との距離感に戸惑ったように呟くシーラ。
女王だなんだと言われても……いや、そういう立場にいるからなのか、男慣れしていないのだろう。
とはいえ、シーラの立場としては男慣れしていないというのは、色々と不味いと思うんだが。
「ええ。その……こういう経験は少ないので……」
そう言いながらも、シーラは女王としての意地からか、そのままの状況を維持している。
何となく、少し悪戯してやりたいような気持ちになったのだが、ここでそのような真似をすればシーラを怒らせる事になりそうだったので、俺はそのままシーラと密着した状態で踊り続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1570
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1682