ナの国での交渉やパーティを終えると、俺は再びヨルムンガンドでラウの国に戻っていた。
行く時は多島海でゼラーナ隊に襲撃されたものの、今回は特に待ち伏せの類もなかった
……まぁ、あの時の戦いでゼラーナには結構大きなダメージを与えたので、修理するのに精一杯でもおかしくはないが。
そもそも、出掛ける途中で襲撃されるというのが、普通は有り得ないのだが。
ともあれ、今回のナの国の一件は色々と利益が大きかったな。
ボチューン3機を貰えたのが大きい。
とはいえ、交渉そのものは成功とも失敗とも言えないような、微妙な感じになってしまったが。
ナの国の仲裁により、ラウの国とアの国、クの国との停戦。
同時に、双方共に戦いを仕掛けないといったように条約を結ぶ。
正直なところ、これをドレイクが受け入れるかどうかは難しいと思う。
それを受け入れない場合、ドレイクやビショットにとっても色々と面倒な事になると思うが。
いや、面倒になるのはドレイクにとってだけか。
ビショットの方は、今回あくまでも援軍としてやって来たのであり、自国で開発したオーラバトルシップ、ゲア・ガリングの性能試験といった意味合いの方が強い。
そういう意味では、無理にビショットがドレイクに合わせる必要はない。
とはいえ、何だかんだとビショットは押しに弱い一面がある。
ドレイクからの圧力によって、この状況から撤退するというのは……難しい一面もあるだろう。
「アクセル王、ドレイク王から通信が入っています」
「そうか、出してくれ」
ブリッジでこれからの事を考えていると、タイミングよくドレイクから通信が入る。
いやまぁ、ヨルムンガンドが戻ってきたのだから、ドレイクとしては少しでも早く今回のナの国での成果を聞きたいと思ってもおかしくはないのだろうが。
俺の言葉を聞き、ブリッジにある映像モニタにドレイクの顔が表示される。
『アクセル王、無事に戻ったようで何よりだ。特に問題はなかったかな?』
「そうだな。ナの国に向かう途中、多島海でゼラーナに襲撃はされたが、それ以外は特に何もなかったよ。それでこっちは? 相変わらず向こうはタータラ城で籠城の構えか?」
『うむ。時折こちらに奇襲をしてくる者もいたが、言ってみればその程度でしかないな。ただ、向こうの奇襲にゼラーナ隊の姿がないと思っていたのだが、アクセル王の方に向かっていたのか。しかし、何故そのような真似が?』
「それを俺に言われてもな。偶然か、あるいはラウの国がナの国と繋がっているというのをこっちが把握したのを予想して、待ち伏せしていたのか」
あるいは、アの国、クの国に対してスパイが入り込んでいるのか。
何気に言葉にしなかったその可能性が一番高いように思えてしまうんだよな。
未だにギブン家に忠誠を抱いていたり、繋がっていたりする者は多いだろうし、トッドが領主を務めるミの国においても、ピネガンと繋がっている者は多いと思われる。
その辺の事情を考えると、こっちの情報が流れるのは無理もない。
ましてや、オーラバトルシップのヨルムンガンドは、その巨体から決して機動性は高くない。
ヨルムンガンドに比べると、ゼラーナはナムワンの改修型という事もあり、非常に高い機動力を持っている。
俺達がナの国に向かうという情報を得て、それから先回りする……といったような真似も決して難しくはないのだ。
『ナの国の件について、詳しい話を聞きたい。ウィル・ウィプスに来て貰えるか? ビショット王にも来て貰うので、その方が一度で話がすんで楽だろう』
「分かった。なら、今からでいいか? こっちも色々と話しておく必要があると思ったからな」
そんな俺の言葉にドレイクが頷き、こうして話は決まったのだった。
「アクセル王、よく無事で」
ウィル・ウィプスにあるドレイクの私室に入ると、ビショットがそう言って俺に声を掛けてきた。
どうやら俺よりも早くウィル・ウィプスにやって来ていたらしい。
とはいえ、その辺に関しては特に驚くような事でもないのだが。
ビショットもまた、俺がナの国に行ってどのような成果があったのかを聞きたいと思っていたのだろうから。
「ああ、問題なく戻ってくる事が出来たよ。ナの国は色々と興味深い国で、面白かった」
これは冗談でも何でもなく、俺の正直な気持ちだ。
高い国力を持ち、シーラという有能な女王に率いられ、その部下達も……色々と思うところはあるようだったが、それでも無能といった者達の姿はないように思えた。
少なくても、他国の王である俺にあの場で突っかかってくるような奴がいなかったのは、間違いのない事実だ。
それが普通ではあるのだが、フラオンがアの国の国王だった時の事を思うとな。
「そうか。その辺についても聞きたいが……まずは座ってくれ。それなりに長い話になるだろう」
ドレイクにそう言われ、俺はソファに座る。
ドレイクとビショットも同様にソファに座った。
てっきりドレイクは執務机の方にいるのかと思ったが……こうして、連帯感を強めたいのかもしれないな。
そんな風に思っていると、ドレイクが口を開く。
「それで、アクセル王。ナの国との交渉はどうだったのだ?」
「成功したとも失敗したとも言いにくいような……ただ、総合的に見ると成功したと言ってもいいと思う」
「それは一体、どういう意味だ?」
理解出来ないといった様子のドレイクの言葉に、ビショットも興味深そうな視線を向けてくる。
本来なら、こういう時は1人くらいはそれぞれ護衛を連れて来てもいいのだが、現在ここにいるのは俺、ドレイク、ビショットの3人だけで護衛は1人もいない。
それだけ信じているというのを示しているのだろうし、俺が本気になれば護衛が数人いたところで意味はないと、そう理解しているというのも大きいのだろう。
「まず、ラウの国とナの国が協力関係にあるのは確認出来た。それも予想していたよりも強い繋がりみたいだったな。具体的には、ラウの国で開発されていたナムワンの改修型、グリムリー級というらしいが、それが確認出来た。それと、ダーナ・オシー系のオーラバトラーで、ボゾンの後継機のボチューンという機体もあったな」
そんな俺の言葉に、ドレイクとビショットは複雑な表情を浮かべる。
まぁ、その気持ちは分からないでもない。
今まで、ラウの国とナの国が協力関係にあるというのは、あくまでも予想であってしっかりとした証拠はなかった。
だが、ナの国にグリムリーやボチューンというオーラマシンがあるのを見れば、そこでもう話は決まってしまったも同然なのだから。
「やはりラウの国とナの国は協力関係にあったか。それもアクセル王の話を聞く限りでは、かなり強固な関係を築いていると思うべきか。……それで、失敗したと言い切らないという事は、当然ながら何か収穫もあったという事と思ってもいいのか?」
「ああ。けど、その前にまずは大前提となる質問だ。ドレイクがラウの国に攻める事を決めたのは、ラウの国の国王のフォイゾンが、伝統や血筋を重視する性格をしていて、ミの国がアの国の領土となった今となっては、ラウの国がいつ攻めてくるかわからないから。そういう認識でいいのか?」
「うむ。間違いない」
俺の言葉に対し、頷くドレイク。
その様子を見る限り、これならシーラの提案を受け入れられるかもしれないと判断する。
「なら、問題ないかもしれないな」
「……何がだ?」
「俺がシーラから提案されたのは、ラウの国との停戦だ。それだけじゃなくて、お互いに相手を攻撃しないという不戦条約も結ばれる」
ピクリ、と。
俺の言葉を聞いたドレイクは、その眉を動かす。
ドレイクの隣にいるビショットも、意外そうな表情を浮かべていた。
何故そんなに驚くのかが、俺には分からなかったが。
そんな中、沈黙を破ってドレイクが口を開く。
「アクセル王、儂が頼んだのは、あくまでもナの国がラウの国に対して協力しないようにするというものだ。停戦を求めてのものではない」
「それは分かってるが、そもそもラウの国に攻め込んだのは、さっきも言ったようにいずれ向こうから攻めてくるからだろう? なら、ここで停戦を結んでおけば、向こうにも大義名分がなくなるだろ。……それでももしラウの国がアの国に攻め込んでくるような事があった場合、その時はナの国も間違いなくこちらに協力するぞ? だとすれば、全く問題ないと思うが?」
「それは……しかし、ラウの国とは既に戦いになっている。そのような状況で停戦などという事になれば、納得出来ない者もいるだろう」
「それは否定しない」
実際、ドレイク軍の中には、今回の戦いで功績を挙げて出世したり、あるいは褒美を貰うというのを目的にしている者も少なくないのだから。
そのような者達にしてみれば、ラウの国というのはろくに戦うといったような真似もせず、タータラ城に閉じ籠もっているばかりの臆病者だ。
だからこそ、戦えば勝てる。
そして勝てば自分達の手柄となる……といった風に認識している者がいても、おかしくはなかった。
そのような者達にしてみれば、俺が勝手に停戦を纏めてきたといった事を聞けば、不満を露わにするだろう。
とはいえ……
「その辺を何とかするのは、ドレイクの役目だろう?」
俺としては、そう言うしかない。
「それに、もしこのまま戦いを続ければ、どちらにもそれなりに大きな被害が出るのは間違いないぞ。向こうにはゼラーナ隊やショウもいるんだから」
「……ショウ・ザマに関しては、こちらの聖戦士を総動員すれば対処が可能だというのは以前の戦いで分かっている。また、兵士やオーラバトラーを含む平均的な能力においても、こちらの方が有利なのは間違いない。そうである以上、こちらに躊躇う必要はないのだが?」
そう告げるドレイクの様子に、違和感があった。
いや、正確には違和感ではなく疑問と表現した方が正しい。
「ドレイク、1つ聞きたい。お前は出来ればラウの国との戦いは避けたかったんだよな? 自分から望んでラウの国と戦った訳ではない。少なくても俺はそうお前から聞いていた。これは嘘だったのか?」
「嘘ではない。勿論、可能なら戦いは避けたかったのは事実だ。だが、戦端が開かれる前ならともかく、実際にもう戦いは起きてしまっている。そうである以上、こちらとしてはそう簡単に戦いを止めるといった訳にはいかないのだよ。それこそ、ラウの国が全面降伏してくるのであれば、話は別だが」
「それはつまり、ラウの国との停戦には応じられないといったところか?」
「儂個人としてであれば、応じてもいいとは思っている。無条件といった訳ではなく、しっかりと条件をつけての上だがな。しかし、既に戦いは始まっている。儂が停戦をしたいといったところで、軍の動きは止まらんよ」
あるいは、これが現代……もしくは地上の軍であれば、命令系統の類もしっかりとしているし、戦闘を止めると言えばそれなりに簡単に受け入れられたかもしれない。
しかし、ここはバイストン・ウェルというファンタジー世界なのだ。
国王のドレイクが命令を下しても、それを聞かずに暴走する者は間違いなくいるだろう。
「それでもだ。このままラウの国と戦いを続ければ、ドレイクの部下にも少なくない被害が出るのは間違いない。ナの国が協力をするとなれば、余計にな」
俺やマーベルと戦った近衛騎士団の連中は、それなりに高い操縦技術を持っていた。
オーラバトラー同士での戦い――特に模擬戦ではなく実戦――は慣れていないのが問題だったが、それでも平均的なドレイク軍の兵士と比べれば、間違いなく操縦技術は上だろう。
……まぁ、一般兵と近衛騎士の技量が同程度だと、明らかに色々と不味いのだが。
そしてボチューン。
ボゾンはドラムロと同性能か、若干性能が劣るくらいなのに対して、ボチューンはドラムロよりも性能が上なのは間違いない。
高機動型という点では、かなり完成度が高いと思う。
武器がオーラソードとオーラバルカンしかないのが問題だが、その辺は手持ち式の武器を使えば問題はない。
使い切れば捨てる事が出来るのだから、運動性という点でも問題はないだろう。
不幸中の幸いなのは、ボチューンはまだ開発されたばかりで、数がそれ程ないという事か。
ただし、ダーナ・オシーやボゾンの系統であると考えれば、生産性はやはりドレイク軍系のオーラバトラーよりも高いと考えるべきだろう。
つまり、ナの国と戦う事になればそんなボチューンを相手にする必要があり、更には時間が経てば経つ程生産性の高いボチューンの数が増えるという事になる。
そして、極めつけの問題が……
「それと、俺がナの国にいる時に集めた情報によると、ナの国でもオーラバトルシップが建造中らしい」
「何っ!?」
その言葉はドレイクにとっても予想外だったのか、驚きの声を上げる。
とはいえ、アの国でウィル・ウィプスを建造中であるという情報を入手したラウの国で、オーラバトルシップが建造されているのだ。
そのラウの国と協力関係にあるナの国においても、当然その情報は共有される。
いや、オーラバトルシップの建造コストを考えると、ラウの国としては自分達よりも強国のナの国にオーラバトルシップの建造を依頼するのは、当然の流れだったのかもしれないが。
「で、どうする? 俺としては大人しくナの国の停戦を受け入れた方がいいと思うんだが」
そんな俺の言葉に、ドレイクは暫く考え……やがて、首を横に振るのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1570
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1682