「その停戦は受け入れられん」
「……本気で言ってるのか? 今の状況はしっかりと話したよな? その上で、まだ戦いを続けるつもりなのか?」
ナの国の停戦を受け入れないというドレイクに、俺はそう言葉を返す。
元々ドレイクがラウの国と戦う事にしたのは、ラウの国王のフォイゾンが血筋や伝統を重視する性格をしており、力があるとはいえ領主の1人でしかなかったドレイクが国王となったのが面白くなく、それを正す為として攻撃をしてくるかもしれないから、というのが理由だった。
だが、ナの国が停戦の間に入って停戦が結ばれた場合、それをラウの国から破れば、ナの国の顔に泥を塗る行為となる。
当然だが、そうなればラウの国とナの国の関係は悪くなり、その状況でドレイクがラウの国を攻めても、それによってナの国がラウの国に味方をするといったようなことにはならない。
いや、ナの国の顔に泥を塗ったという事で、寧ろこちらに味方をしてもおかしくはない。
その辺を考えれば、ドレイクがこの話を受けない理由はないと思うんだが……それでも、ドレイクは首を横に振ったのだ。
「それでもだ。戦いを起こしておいて、例え大国とはいえ、他国からの仲裁で停戦をするというのは、アの国の威厳に関わってくる」
つまり、自分達で戦いを始めた以上、それを止めるのを決めるのは自分達だという事か?
あるいは、ドレイク軍が大きな被害を受けていれば、この話も受け入れた可能性があるが……生憎と、今のところ被害らしい被害は殆ど受けていない。
というか、何だかドレイクは色々と理由を付けてはいるが、どうあっても俺の持ってきたナの国の調停による停戦という提案を受け入れるつもりがないように思えるのは、俺の気のせいか?
「停戦云々の前に、1つ聞かせてくれ。ドレイク、お前はどうあってもラウの国を攻撃したいのか? お前の今の様子を見ると、例え俺がどのような条件を持ってきたとしても、ラウの国と戦うのは絶対に止めようとは思っていないように見えるんだが」
「ば……馬鹿な! そんな訳はない!」
一瞬言葉につまりながらも、そう叫ぶドレイク。
そんな行動までもが怪しく思えるのは、俺がドレイクを疑惑の目で見ているからなのか?
「なら、聞かせろ。どのような条件ならラウの国との戦いを止める?」
「……ラウの国がこちらに無条件降伏をするようならだ」
それは無理だろう。
ドレイクの言葉にそう突っ込みたくなるが、今の様子を見る限りドレイクは本気でそう言っている。
いや、正確にはラウの国と戦うのを止めるというのを防ぐ為、意図的に無茶な条件を口にしている……といった表現の方が正しいか。
「ビショット、お前はどう思う?」
このままドレイクの話を聞いていても平行線だと感じ、ビショットに尋ねてみる。
だが、ビショットはそんな俺の言葉に、困った表情で口を開く。
「そう言われてもね。私がここにいるのは、あくまでもドレイク王の援軍としてだ。……正確にはゲア・ガリングの試験運用という点もあるのだが、それはともかくとして。ラウの国との戦いにおいて、主導権を持っているのはドレイク王だ。そのドレイク王が戦うと言ってるのだから、私はそれに協力するだけだよ」
そう言い切る。
まぁ、実際ビショットにしてみれば、今回の戦いに関してはあくまでも自分は援軍であって、ゲア・ガリングの運用試験的な意味しかないと思っているのだろう。
そういう意味では、ドレイクが戦いを止めるのも続けるのも、どっちでもいいといったところか。
勿論、ゲア・ガリングの試験運用的な意味では、このままラウの国と戦い続けた方がいいのは、間違いないのだろうが。
「なるほど」
ビショットに関しては、ラウの国との戦いは正直なところどうなっても構わないといったスタンスなのは間違いない。
そうなると、やはりこの状況でどうにかするという事は、ドレイクの方をどうにかしないといけないらしい。
とはいえ、今のドレイクの状況を見る限り、俺が何を言っても話を聞くとは思えないしな。
そうなると、ドレイクがラウの国との戦いを止めるという選択肢はない、か。
「そうなると、俺としてもこれ以上ドレイクに協力をするような真似は出来なくなるが、それでも構わないな?」
「ぬぅ」
俺の言葉に、苦々しげな様子を見せるドレイク。
ドレイクにしてみれば、俺とマーベルという存在、それにヨルムンガンドというオーラバトルシップは、自分達の戦力としてかなり期待していたといったところか。
ドレイクにとって何より厄介なのは、やはりショウだろう。
元々の才能もあり、そしてギブン家で唯一の聖戦士として繰り返し戦いを積み重ねた結果、ショウは始まりの聖戦士とも呼ばれるマーベルすら上回る強さを手にした。
今はまだトッド、トカマク、アレン、ジェリル、フェイといったドレイク陣営にいる聖戦士達の力を集中させれば対処出来るが、この先も同じように対処出来るとは限らない。
いや、限らないどころか、恐らくショウの聖戦士としての才能を考えるとすぐに対応出来るようになるかもしれない。
だが、ドレイク陣営の聖戦士達にマーベルが入ればどうなるか。
人数だけを無駄に増やしてもお互いが邪魔になるだけなのだろうが、それでもマーベルが参加するというのは大きな意味を持つのは間違いない。
それに、マーベルは技量の高い聖戦士だが、だからといって我の強いタイプではない。
いや、芯の強い女であるというのは、十分に理解しているが。
ともあれ、マーベルは他の者と戦い方を合わせるといった真似も容易に出来る。
……唯一、気が強くマーベルの存在を疎んじているジェリルと一緒に戦うとなれば、色々と難しいだろうが。
ともあれ、マーベルが入ればショウとの戦いにおいてもかなり有利になるのは間違いない。
そして、ドレイクがマーベル以上に頼りにしているのは、俺だろう。
サーバインという、俺にしか操縦出来ないオーラバトラーはショウと戦っても互角以上に戦えるというのは、今までの経験からしても明らかだ。
ドレイクにしてみれば、いざという時の為に俺という奥の手がなくなるのは困るといったところか。
とはいえ、こちらからの要望……というか提案を断っておきながら、自分の提案だけは受け入れて貰う必要があるというのは、色々な意味で自分勝手だろう。
「もしアクセル王が儂に協力をしないというのであれば、ヨルムンガンドを運用する為に貸し出している人員は、引き上げる事になるか?」
それは、ドレイクが俺に行う事が出来る交渉材料の1つ。
実際、現在のヨルムンガンドの運用において、ドレイクから借りている兵士が大きな役割を果たしているのは事実だ。
だが、それでも今の状況を思えば、惜しいとは思うが絶対に必要という訳ではない。
勿論、ドレイクの兵士がいなければ、今のように万全にヨルムンガンドを運用するといった真似は出来ないだろう。
だが、それでもヨルムンガンドをある程度運用する事が出来るというのは、間違いのない事実だ。
また、ヨルムンガンドは最前線に立って戦うような性質のオーラバトルシップではなく、あくまでも最後尾で動く要塞的な存在としての役割が大きい。
そういう意味では、最前線で戦わなくなくてもいい以上、何かあった時に即座に万全の状態で動かさなくてもいいのは、間違いのない事実だった。
……それでもヨルムンドを万全の状態で運用出来れば、それに越した事がないのは間違いなかったが。
「兵士を引き上げるか。それはそれで構わないが、そうなった場合、俺とドレイクの同盟も消滅すると考えていいな?」
「……」
その言葉に、ドレイクは黙り込む。
当然だろう。
個としての能力はともかく、勢力という点では領主にも……それどころか、俺とマーベルだけ――今はキッス家が加わったが――の2人という勢力に対し、ドレイクが対等の関係で同盟を結んだのは、それだけドレイクにとって俺の能力が危険と判断した為だ。
影のゲートと気配遮断があれば、大抵の場所に忍び込む事は可能だ。
事実、俺が最初にドレイクと接触したのも、城の奥深くにあるドレイクの部屋に俺が忍び込んだからなのだから。
そのような能力を持っている上、俺は生身でも恐獣やオーラバトラーと戦えるだけの実力がある。
俺がその気になれば、それこそいつでもドレイクを暗殺出来るのだ。
それこそ、何をどうやったところでドレイクに俺の暗殺を防ぐ手段はない。
ドレイクもそれが分かっているからこそ、勢力の差が極端に開いているにも関わらず、対等の同盟関係を結んできた。
しかし、今のやり取りでそれの同盟関係が終わるといったような事になれば、どうなるか。
間違いなく、ドレイクにとっては大きな負担になるだろう。
「それは、少し早計ではないか? アクセル王の要望に応えられないからといって、それですぐに同盟を解消するというのは、どうかと思うのだが」
「そう言っても、同盟関係というのは俺とドレイクの間に信頼関係があってこそ、結ばれるものだ。そして今の俺から見れば、ドレイクは本来なら攻めなくてもいいのにラウの国を攻めようとしている。それで俺がお前を信頼しろって方が無理だろ」
「いや、違う。同盟関係に必要なのは、信頼関係もそうだが、お互いの利益だ」
「……まぁ、その気持ちも分からないではない。けど、ドレイクは現在ヨルムンガンドに派遣している兵士を引き上げるんだろ? なら、利益という点でも同盟に相応しくないと思うが」
「それについては撤回しよう」
「撤回されてもな」
俺がドレイクから派遣されてくる兵士を受け入れていたのは、やはりドレイクが信用出来る同盟相手だったから、というのが大きい。
そんな中で、ドレイクと俺の意見が決裂した今、ドレイクの派遣した兵士を完全に信じろというのは、不可能だろう。
それこそ、ドレイクからの命令によって爆薬でも仕掛けるといったような事を考えないといけないし、それ以外であっても俺達が得た情報をドレイクに流すといったような真似もするだろう。
同盟している間なら、本当に隠しておかなければならない情報であればともかく、普通に入手した情報程度なら流しても構わなかったのだが……同盟が解消すれば、そのような真似も出来ない。
「だが、もし同盟を破棄したとして、アクセル王はこれからどうするつもりかね?」
暗に衣食住に関しての事を尋ねられる。
現在の衣食住は、基本的にドレイクの世話になっているのは間違いない。
だが、それに関してはガロウ・ランの盗賊の討伐や恐獣を倒してキッス家を養っているのは間違いない。
俺とマーベルも、今までのように贅沢は出来なくなるが生活出来ない訳でもないだろう。
後は、武器弾薬の類か。
当然だが、オーラバトラーやヨルムンガンドの武器の類は、使えばそれだけ消耗する。
今までその補充は、こちらもドレイク軍に頼りっぱなしだったが……
「アの国と取引が出来るならそれでもいいし……」
俺とドレイクの話の成り行きを見守っているビショットに視線を向ける。
まさか、ここで自分に視線が向けられるとは思わなかったのか、ビショットは不思議そうな表情を浮かべる。
「何なら、クの国に行ってもいいし」
「私の国に?」
俺の言葉に意表を突かれたといった様子を見せるビショットだったが、実際それはそう間違った選択肢ではない。
アルダムやビアレス、そして現在開発中のオーラバトラーやオーラボムのタンギーのように、クの国が持つオーラマシンの技術力は高い。
ゲア・ガリングというオーラバトルシップも建造してるしな。
また、バーンやルーザといったようにこちらを敵視する存在もいない。
……まぁ、今はまだ客人として関わっただけなので、もしかしたら本格的にクの国と関わるようになった場合、もしかしたら俺達を疎ましく思う存在が出て来ないとも限らないが。
「可能性としての話だけどな。それに……ラウの国はともかく、ナの国に行くという選択肢もある」
その言葉に、ドレイクの表情は厳しくなる。
ドレイクにしてみれば、ナの国というのはラウの国と協力しているという意味で、既に敵と認識してるだろう。
そんな状況で、俺がそのナの国に向かうと言えば、最悪俺と敵対する可能性も高い。
それが何を意味するのか、これまで俺に色々と依頼をしたり、それを抜きにしても俺がどのように敵対した勢力に手を出してきたのか知ってるだけに、素直に許容は出来ないだろう。
しかし、それを防ごうとしても俺を殺したり拘束したりといった真似は不可能だ。
……寧ろ、そんな真似をした場合、ドレイクは俺に殺される事になってしまうだろう。
「実際には、まだドレイクとの同盟を解消したらどこの勢力に所属するのかは決めていない。だが……今のままドレイクがラウの国を攻めるというのであれば、こっちも相応の態度をとらないといけなくなる。その辺について十分に理解した上で行動するんだな」
そう、俺はドレイクに告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1570
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1682