ドレイクとビショットとの会談を終えた俺は、ヨルムンガンドに戻ってきた。
現在はそのブリッジで、マーベルとキブツという、現在のシャドウミラーの重臣とも呼ぶべき2人に、会談の内容を説明していた。
「つまり、最悪の場合はドレイクと敵対する可能性もあるのね?」
その説明を聞き終わり、マーベルは少し憂鬱そうに言ってる。
当然だろう。マーベルにとって、現在ドレイクの筆頭騎士たるガラリアは親友と言ってもいい間柄だ。
また、同じアメリカ出身という事でトッドとも友好的な関係を築いている。
……同じアメリカ出身でも、アレンとはそこまで親しくはないのだが。
ともあれ、そんな親しい相手と戦いになるかもしれないとなれば、マーベルが憂鬱になるのも理解出来た。
「そうだな。ただ、そうなるのは本当に最悪の場合だけだ。……ドレイクのことだから、最悪の選択はしないと思うが」
もしドレイクが俺達と敵対するといったような事を選択した場合、それこそドレイクはこれから毎日、毎晩……いや、夜だけではなく日中であっても暗殺の心配をする必要が出て来る。
フラオンを追いだし、ギブン家を追い出し、アの国を奪い、ピネガンを追い出し、ミの国を奪い、そして今はラウの国と戦っているのだ。
そう思えば、それこそいつそれらの戦力から暗殺者が送られてきてもおかしくはない。
だが、そのような暗殺者の場合は、それこそまずドレイクのいる場所まで辿り着くのが難しい。
そんな中、俺の場合は影のゲートと気配遮断がある。
ドレイクにしてみれば、暗殺を防ごうにも防げない。
そんな相手に四六時中狙われるのだから、精神的な疲労やストレスは間違いなく大きいだろう。
ドレイクのことだから、そんな愚かな選択はしないと思う。
「キブツにとっては、少し悪い事をしてしまったな」
「いえ」
キブツは自分の家……キッス家の存続の為に、俺に降伏してきたのだ。
だというのに、最悪の場合は俺とドレイクが敵対関係になるかもしれない。
そうなると、キッス家の存続という点でも難しくなってしまう可能性は十分にあった。
まぁ、ヨルムンガンドを拠点としている以上、キッス家が絶滅するといったような事は、基本的にないが。
それに最悪クの国やナの国に亡命するといった手段もある。
個人的には、亡命――という表現がこの場合相応しいのかどうか微妙だが――するのなら、クの国がいいと思う。
とはいえ、この場合問題になるのはクの国とアの国は友好関係にあるという事だろう。
ビショットにしてみれば、ここで俺を受け入れるといったような真似をしてしまった場合、間違いなくドレイクとの関係が悪化する。
そうなると、これからも色々と問題が出て来るのは間違いない。
クの国は、確かに独自にオーラバトラーを開発するだけの技術を持っている。
だが、それでもやはりオーラバトラーという存在を作り上げたアの国と比べると、ショットやゼットといったような専門家がいない分だけ、どうしても技術力では劣ってしまう。
アルダムを開発出来たのは凄いと思うが、それ以後は……ビアレスはビランビーの改修型だし、現在開発しているというのもアの国と共同開発しているのだから。
その辺の事情を考えると、やはりどうしてもアの国に技術で劣ってしまうのだ。
これで、ゼットやショットが俺の配下にいるのなら、ビショットも大人しく受け入れるだろうが、それもまた難しい。
ゼットは、そもそも恋人のガラリアがドレイクの筆頭騎士といった身分になっている。
だとすれば、可能性があるのはショットか。
ただ、ショットの恋人のミュージィも、実はそれなりに名家の出身らしいし。
というか、そういう出身でもなければドレイクの娘のリムルの家庭教師なんて職業にはつけないか。
バイストン・ウェルはファンタジー世界だけに、就職をするとかなると、どうしても縁故採用が多くなる。
特に自分の娘の家庭教師ともなれば、能力もそうだが信頼出来るというのが大きな要因を持つだろう。
そんな訳で、ショットを引き抜くというのも少し難しい。
そうなると、やっぱりナの国か?
取りあえず、ラウの国というのはなしだな。
ラウの国のフォイゾンは、血筋や伝統を重視する性格をしている以上、俺達を受け入れない可能性が高いし、何よりもドレイクに味方をしていたのだから、フラオンやギブン家、ピネガンといった面々が俺を受け入れたりはしないだろう。
リムル曰く、俺は悪しきオーラ力の持ち主らしいし。
……悪しきオーラ力って何なんだろうな?
「ともあれ、最悪の場合は俺達はヨルムンガンドだけで1つの勢力として活動するなんて事になる可能性もあるから、その辺については覚えておいてくれ」
現状を纏めるように言う言葉に、マーベルとキブツはそれぞれ頷く。
まぁ、最終手段としてはやっぱりナの国があるし……あるいは、リの国に向かってもいいかもしれないな。
ケムとハワの国は、双方ともミの国とそう違わない程度の小国だし。
リの国も小国なのは変わらないが、恐獣が大量に棲息しているという点が大きい。
恐獣の素材を大量に確保出来るというのは、ホワイトスターへの土産という事で考えれば、利益が大きいだろうし。
とはいえ、問題なのはナの国と違ってリの国に関しては何の伝手もない事か。
今までリの国と取引をしてきたのは、あくまでもドレイクやビショットといった者達だ。
あるいは、ドレイク軍の中にはリの国と繋がりのある者もいるかもしれないが、生憎と俺達の方は……そう思って、ふとキブツに視線を向ける。
俺とマーベルは、リの国と繋がりはない。
だが、キブツはどうだ?
フラオン軍にいた時……ダーナ・オシーについての開発をする時や、ミの国にいる時に恐獣の素材を確保する為にリの国と関係を持っていてもおかしくはない。
「キブツ、一応聞いておくがお前……あるいはキッス家に、リの国との繋がりがあったりはするか?」
「いえ、アクセル王が何を期待しているのかは分かりますけど、申し訳ありませんがリの国との繋がりはありません」
駄目だったらしい。
まぁ、今回の件はあくまでもそんな風に出来たらいいという思いからのものだったので、それを思えばキブツのこの言葉もある意味で納得は出来たのだが。
「そうか。ギブン家に仕えていた時に、あるいは……と、そんな風に思ったんだけどな」
「申し訳ありません」
「別に謝る必要はない。俺はあくまでもそうだったらいいと思って、聞いてみたんだから」
キッス家がリの国と繋がりがあればラッキー程度の感じで尋ねたにすぎない。
だからこそ、キッス家がリの国と繋がりがなかったとしても、それはそれで俺にとっては何も問題がない。
「繋がりはないけど、リの国に接触してみるってのもいいかもしれないな」
「今からですと、時間が掛かりすぎると思いますが。それに、向こうもアの国と大規模な取引をしている以上、そう簡単にこちらの要望には従えないと思いますし」
キブツとしては、リの国との接触はあまり好ましくはないらしい。
まぁ、時間が掛かると言っているように、それが一番の問題だろう。
リの国としても、自分達の一番のお得意様であるドレイクの不興を買ってまで、俺達と接触することになるのかとなると、正直微妙なところだろうし。
しかし、それを考えた上でも恐獣が豊富にいるリの国との接触は悪くないと思うんだよな。
恐獣が豊富にいるという事は、当然ながらリの国でも恐獣と戦っているという事になる。
素材として他国に売ってる以上、それは当然だろう。
あるいは、もしかしたら家畜のように飼い慣らしているといった可能性も否定は出来ないのだが……大型の恐獣とかを考えると、それはそれで難しいと思う。
また、どういう理由があるのかは分からないが、リの国では未だにオーラバトラーを含むオーラマシンを使用していないらしい。
飼い慣らした一部の恐獣を使って、それで敵と戦っているとか。
「そうなると、惜しいけどリの国との接触は諦めた方がいいのか」
そうして会話をしつつ、俺達はこれからどうなるのかといった事を考える。
そんな中でもやはり優先順位が高かったのは、ナの国だった。
実際にヨルムンガンドでナの国まで行った事があり、それなりに歓迎されたというのが決め手だろう。
模擬戦をやったりする事の、どこに歓迎する要素があるのか、正直なところ俺には分からなかったが。
とにかく、結局のところドレイクがどう判断するかによってその辺は決まるのだ。
今、ここで俺達がどうこう考えても、意味はない。
もしかしたら、本当にもしかしたらの話だが、ドレイクがこちらの要望……ナの国が仲介に入ってのラウの国との停戦を受け入れる可能性も、ないとは言えないのだから。
ドレイクの様子を見ると、難しそうな気はするが。
そうして時間が経ち……その日の夜は暮れていくのだった。
「は? 本気なのか?」
『うむ。元々アクセル王が持ってきた提案であろう? であれば、儂もそれを受け入れるといったことを考える必要があると、そう思ってな』
翌日、ドレイクと物別れになった時の事を考え、もしドレイクが俺達を逃がす訳にはいかないと判断し、攻撃してくるといった可能性すら考え、脱出する準備をしていた。
そんな中で、ドレイクからの通信が入ったという話を聞き、ブリッジに向かったところ……そこでドレイクから聞かされたのは、そんな言葉だった。
昨日の時点では、どのような理由があっても絶対に受け入れないといったような事を言っていたとは、到底思えない。
一体何がドレイクの気持ちをそこまで変えたのだ?
そんな風に思うのは、俺だけではないだろう。
だが、それでも昨日のドレイクの態度を直接見ているのは俺だけなので、やはり今のドレイクの様子を見て疑問を感じるのは、俺が一番強い違和感を抱いている筈だ。
「昨日とは全く話が違うな。あんなに停戦を嫌がっていたのに、何故急に停戦を受け入れるなんて話になったんだ?」
昨日ドレイクに停戦の件を持ち掛けた限り、ドレイクはそれを受け入れるつもりは一切なかった。
だというのに、昨日の今日でこうして意見が180度変わっているのだ。
そんなドレイクの態度に、疑問を抱くなという方が無理だろう。
『うむ。昨日の時点では、儂もラウの国と戦っている現状から、それを受け入れる事は出来ないと思っていた。しかし、そうした場合はアクセル王という盟友を失ってしまいかねない。そうである以上、何を重要視すべきか……それを考えた結果として、非常に渋々ではあるが今回の停戦を受け入れる事になった』
言ってる内容は理解出来る。
理解出来るが、だからといって昨日あれだけ反対したというのに、その意見を引っ繰り返すような真似をするのか? と思えば……生憎と、それを素直に受け入れるといったような真似は出来なかった。
「それだけか?」
『勿論、他にも理由はある。これも昨日アクセル王が言っていたが、もし停戦をした上でラウの国が攻撃を仕掛けてくれば、ナの国もこちらに味方をする可能性が高いという話があったであろう? あの件を深く考えた結果でもある』
「なるほど」
こっちの件は、それなりに説得力がある。
ナの国は、非常に高い国力を持っているのは間違いないのだから。
現状でもラウの国との戦いではアの国とクの国がいるので、かなり有利なのは間違いない。
だが、ラウの国にナの国が協力すると厄介な事になる。
そんな中で、ナの国がラウの国ではなくアの国やクの国に協力するとなると、非常に大きな意味を持つ。
そういう意味では、ドレイクが考えを変えた理由として納得は出来るものの……それでもやはり、昨日のドレイクの態度を見ると、疑問に思ってしまう。
「なら、停戦については受け入れる。そのつもりでいいんだな?」
『勿論だ。とはいえ、無条件でといった訳にはいかない。まず、停戦ではあっても実質的にラウの国が負けた。そういう認識で構わないか?』
「そうだな。ラウの国にしてみれば、俺達を自分達の懐深くまで引き寄せるつもりだったとはいえ、王都近くまで侵入されたのは間違いない。そうである以上、ラウの国が不利な状況なのは間違いない」
これに関しては、ラウの国が何と言おうと現在の状況……タータラ城近くに俺達がいるのが、全てを示している。
幾らラウの国がどうこう言っても、現状を変えるような真似は出来ない。
『つまり、これは停戦であっても向こうの負けであるのは間違いない。そうである以上、賠償金の類が欲しい』
「……なるほど」
ドレイクとしては、表向きでは停戦でも、実際には自分達の勝利であるといったように内外に示したいのだろう。
国としては、そういうのも必要らしい。
とはいえ、問題なのはラウの国がそれを受け入れるかどうかだろう。
客観的に見て負けているような状況であっても、ラウの国としてはそれを受け入れるような真似が出来ないのは間違いない。
大国としての誇りもあるし、国王のフォイゾンの性格から考えても同様だろう。
また、フラオンやピネガンといった者達にとっても、色々とある筈だ。
ドレイクの言葉に納得しながらも、何気にこの後も大変そうだなと、つくづく思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1570
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1682