「うおっ!」
ショウと戦っている最中に光ったと思った瞬間、サーバインは別の場所に転移していた。
かなり激しい勢いで地面に叩き付けられそうになるのを、オーラコンバータを使って体勢を立て直す。
そうして動きが止まったところで、ようやく周囲の状況を見渡せる余裕が出て来るが……
「火星?」
サーバインの映像モニタに表示されているのは、どことなく火星を思わせる場所。
ショウとガラリアの一件があったので、てっきり地上に出るのかと思ったんだが……まさか、地上じゃなくて火星に出たのか?
そう思いつつ、その可能性は少ないだろうと判断し、サーバインのコックピットから出る。
もしここが本当に火星であれば、普通ならこのような行動は命取りになる。
だが……それは、あくまでも普通ならの話だ。
混沌精霊の俺は、それこそ宇宙空間であっても普通に生身で行動出来る。
だからこその行動だったのだが……
「普通に空気があるな」
そう、外見だけは火星に似ているこの場所だったが、こうしている限りではバイストン・ウェルと同じように、普通に空気が存在していた。
それはつまり、ここが火星ではないという事を示していた。
……もしかしたら、この世界の地球では実は宇宙開発技術が進んでおり、火星もテラフォーミングがされているといった可能性もあるが、マーベルを始めとした地上人達と話した限り、そんな様子はない。
あるいは、地球ではなく宇宙人が火星をテラフォーミングしてるとか?
そしてこの世界の原作では、最終的にオーラバトラーで宇宙人と戦う。……ないな。
異世界ファンタジーでの話が、何で最終的には宇宙人と戦うなんて事になるんだ?
まぁ、ガラリアの一件から考えると、地上には出る可能性があるが。
ともあれ、改めて周囲を見回す。
かなり強い風が吹き荒んでおり、それが余計に火星っぽい感じを連想させる。
……別に火星っぽいからって、火星である必要はない。
火星のように思える、地上のどこかに出たといった可能性も否定は出来ない。
「まぁ、取りあえず……」
サーバインのコックピットから飛び降り、改めて周囲の様子を確認する。
土までもが赤い様子からして、やはりここは色々と特殊な場所なのだろう。
赤土というのはあるが、それだってここまで赤くはない。
そうして周囲を見回していると……不意に少し離れた場所で何かが動いたような感じがした。
何だ? と思って視線を向けると、そこにはグライウィングと思しき物に乗って移動するガロウ・ランの姿。
どうやら、ここは地上でも火星でもなく、バイストン・ウェルのどこかだったらしい。
ガラリアとショウの場合は地上に出たのに、俺とショウだとバイストン・ウェルのどこかに出るのか?
それは少し理不尽な気がする。
とはいえ、今の状況ではあのガロウ・ラン達から情報を貰うしかないか。
そう判断し、俺はサーバインを空間倉庫に収納してからガロウ・ラン達の方に向かう。
「おい、ちょっといいか?」
ガロウ・ラン達の側の岩場の上でそう尋ねる。
尋ねるが……ガロウ・ランという種族の性格を思えば、恐らく聞いても素直に情報を教えるとは思えない。
そんな俺の予想は当たり、ガロウ・ラン達はこちらに向かって持っていた銃の銃口を向けてくる。
「あのフェラリオをどこにやった!」
「フェラリオ? そう言われてもな」
「大体、てめえ……どうやってここに来た!」
「ショウ・ザマという聖戦士と戦っている最中に、オーラ力と俺の魔力が変な風に干渉しあったか何かしてだな」
「ふざけるな!」
正直に話したのだが、ガロウ・ラン達にしてみればとてもではないが許容出来ない事だったのだろう。
手にした銃のトリガーを引く。
銃声と共に弾丸が放たれるも、俺はそれを素手で受け止めた。
混沌精霊である以上、別に正直に受け止めるといったような真似をしなくても、俺の身体を通りすぎて何の意味もなかったのだが……この辺は、一種の演出だ。
そして実際、銃弾を素手で受け止められたガロウ・ラン達は信じられないといったような唖然とした様子を見せる。
ガロウ・ランというのは、普通の人間よりも高い身体能力を持っている。
しかし、それでもその身体能力はあくまでも常識の範囲内だ。
少なくても、こうして銃弾を素手で掴んで対処する……といったような真似は、到底出来ない。
それが分かっているからこそ、向こうも一体何が起きたのかが理解出来なかったらしい。
「な……」
そうして言葉も出ない様子のガロウ・ランを前にし、俺は口を開く。
お互いの実力差をしっかりと理解した以上、向こうにしてみればここで俺に逆らうといった真似は、まず出来ないだろう。
「さて、聞かせて貰おうか。ここは……」
一体どこだ?
そう言おうとした瞬間、不意に何かが俺の方に向かって飛び込んでくる。
「アクセル、助けて!」
「は?」
そうして叫んだ相手が一体誰なのか……最初は分からなかった。
しかし、その姿を見た瞬間、それが誰なのかを理解し、相手の名前を呼ぶ。
「エルか!?」
これは、あまりに予想外の出来事だ。
エルはシーラのお付き……という表現が正しいのかどうかは分からないが、ともあれそんなフェラリオの1人だ。
そうである以上、情報収集に関してはエルから聞けばいいだけの話で、このガロウ・ラン達に用はない。
「シーラ様を助けてよ!」
「分かった」
どうやら、この場所には俺やエル、ガロウ・ラン達の他に、シーラの姿もあるらしい。
後は、当然の話だが俺と一緒にここに飛んできただろう、ショウもどこかにいると思う。
……あるいは、何らかの理由で俺はバイストン・ウェルにいたままだが、ショウのダンバインだけが地上に出たといった可能性も否定は出来ないが。
「取りあえず、エルがいるのならお前達にもう用はない。消えろ。それとも死にたいか? それならそれで殺してやってもいいが?」
「ひっ、ひぃっ!」
殺気を込めた視線を向けられ、ガロウ・ラン達は悲鳴を上げる。
盗賊のような仕事をしている以上、当然ながら相手の放つ殺気を感じるといった能力はあるのだろう。
「お、おい、行くぞ!」
「いや、けど……そうしたら……」
ん? てっきり一目散に逃げるのかと思ったが、未だに逃げる様子がないな。
ガロウ・ラン達の態度に疑問を感じつつ、それでもこれ以上は向こうもこちらに対して攻撃をしてくる様子はない。
だとすれば、何か逃げられない理由があるのだろう。
そう思うと、ちょうとタイミングよくこちらに向かってやって来るグライウィングの姿に気が付く。
「お前等、何をやってやがる!」
新たに現れたガロウ・ランの男が、そう叫ぶ。
部下に命令するのに慣れているような口調から考えると、恐らくこの男がガロウ・ラン達の纏め役なのだろう。
「シンドロ様!」
そんな俺の予想を示すかのように、エルを探していた3人のガロウ・ランは、新たにやって来た相手に向かって叫ぶ。
「こんな奴を相手に、何してやがる!」
その言葉と共にグライウィングで降下しつつ、手にした鞭を振るう。
放たれた鞭は、俺から少し離れた場所に命中する。
最初から俺を狙って放ったのではなく、あくまでもこれは自分の力を俺に見せつけ、それによってこちらに降伏させようと、そう思っての行動だろう。
振るわれた鞭は、岩に命中するとその表面を砕き……それだけなら特に問題もなかったのだが、周囲に向かって派手に電撃を撒き散らかす。
俺のサーバインで使っているショットクローのような鞭か。
どうやって鞭に電撃を流しているのかは分からないが、このような武器があるからこそ、このガロウ・ラン……シンドロだったか? 強気な態度を崩さないのだろう。
けど……確かに今の一撃は驚いたが、言ってみればそれだけだ。
このような攻撃が、俺に対して効果がある訳が……いや、俺はともかくエルが危ないな。
そうなると、とっとと片付けた方がいいか。
そう考え、先程の鞭の一撃で砕かれた岩の一部……ちょうど手頃な石を拾い上げる。
「さっさとそのフェラリオを寄越しやがれ!」
そんな叫びと共に、再び振るわれる鞭。
達人が振るう鞭は容易に音速の壁を突破すると言われるが、このシンドロというガロウ・ランは技術はそこまでではなくても、ガロウ・ラン特有の高い身体能力を使って音速の壁を突破する。
とはいえ、シンドロはそんな特殊な鞭の扱いに慣れてはいるのか、鞭の先端はエルには命中しないようにして、俺に向かって飛んでくる。
とはいえ、結局は普通の攻撃である以上、音速を超えるのだろうが何だろうが、俺に効果がある筈はない。
ましてや、シンドロはグライウィングに乗りつつ攻撃してくるのだから、命中率は決して高くはない。
……いや、その状況でもエルには当てずに俺に攻撃を命中させているというのを考えると、寧ろその命中率は褒めるべきなのか?
そんな風に思いつつ、鞭の先端を掴む。……と同時に、俺の身体に触れていたエルを少し離れた場所に飛ばす。
同時に電撃が流されるが、魔力でも気でも何でもない電撃が俺に通じる筈はなく、乱暴に引っ張る。
「なぁっ!?」
まさか、シンドロも自慢の鞭をこうして素手で受け止めるといったような真似をされるとは思わなかったのだろう。
ましてや、シンドロはがっしりとした体格をしており、見るからに力自慢だ。
というか、ガロウ・ランというのは強さこそ全てというような者も多く、そのような者達にしてみれば力自慢というだけで大きな顔を出来る。
その上で、シンドロが鞭捌きもなかなかのものだった。
勿論一流といったところまではいかないが、それでもガロウ・ランの中で実力を見せつけるという意味では問題ないだろう。
それでも、俺の相手をするには足りなかったが。
グライウィングから引きずり下ろされ、地面に落ちたシンドロに向かい、手にした鞭を放り投げる。
「どうする? まだやるか? まだやるなら……」
「くそっ! 寄越せ!」
俺の言葉を最後まで聞く様子もなく、シンドロは鞭を拾い上げると部下のグライウィングを奪い、その場から逃げ出す。
……グライウィングを奪われたガロウ・ランは、走ってシンドロの後を追い、他の面々も自分のグライウィングに乗ってこの場から姿を消した。
「ちょっと、アクセル。大丈夫なの!?」
エルが俺の周囲を飛び回りながら心配してくる。
一瞬、何を心配しているのかは分からなかったが、すぐに先程の電撃についてだと理解し、口を開く。
「あの程度の電撃程度じゃ、俺にダメージを与える事は出来ないからな」
「地上人って……凄いのね」
「正確には、俺は地上人じゃないんだけどな。……それよりも丁度いいところで会った。ここはどこだ? 何でエルがこんな場所にいるんだ?」
「え? それは……あーっ! それより、アクセルが来たんだからシーラ様を助けてよ!」
我に返ったように叫ぶエル。
ここでシーラの名前が出るという事は、この場所にシーラもいるのだろう。
俺としても、ここにシーラがいるのなら助けない理由はない。
もしドレイクとの同盟が切れたら、俺が向かうべき勢力の最有力候補の女王なのだから。
「エルがここにいるから予想してたけど、やっぱりシーラもここにいるのか。……色々と聞きたい事があるけど、まずはシーラと合流する方が先か。シーラはどこにいるんだ?」
「案内するわ。……けど、アクセル、オーラバトラーは? マーベルは一緒じゃないの? ここからだと、結構離れてるわよ?」
マーベルが一緒かどうかというのは、この場合あまり関係ないような気もするんだが。
いや、今の状況を思えばそうでもないのか?
ともあれ、まずはシーラと合流するのが最優先か。
「オーラバトラーは持ってきてるよ。俺は魔法を使えるって話を聞いた事がないか?」
「そう言えば……」
エルはそう言い、何かを思い出そうとする。
実際には空間倉庫は俺の生まれ持った能力の1つで、魔法でも何でもないんだが。
ただ、生まれ持った特殊な能力と言うよりも、魔法を使っていると言った方が分かりやすいのは間違いない。
「そんな訳で、オーラバトラーは持っているから、安心しろ」
「分かったわ。じゃああっちに向かって。あっちの方に森があるから。シーラ様はそこにいるわ」
そんなエルの言葉に頷き、俺は空を飛んで移動を始める。
「え? アクセルも飛べるの!?」
離れないように手の中にいるエルが、驚きの表情で叫ぶ。
まぁ、今の俺の状況だと翼も何もないから、空を飛べるようには思えないか。
「シーラが俺の事を、大いなる存在とか言ってただろ? そういう風に言われるのは伊達じゃ……ん?」
伊達じゃない。
そう言おうとした時、かなり離れた場所……それこそ、先程まで俺がいた場所から何らかの破壊音が聞こえてきた。
一体なんだ? と思って背後を見ると、そこで初めて見る恐獣と思しき存在が暴れていた。
「ルグウよ。動いてる物は何でも食べちゃうんだから。……早めに移動しておいてよかったわね」
「そうか? ……まぁ、そうか」
恐獣なら、倒せばオーラバトラーの素材になるのでは? と思いつつも、今はまずエルをシーラのいる場所まで届けるのが先だと判断し、俺は飛ぶ速度を上げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1570
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1682