『無事、到着しましたな』
グリムリーからの通信で、カワッセはそう言ってくる。
その言葉通り、ヨルムンガンドの映像モニタには現在ドレイク軍の野営地が映し出されていた。
正確にはゲア・ガリングもいるので、ドレイク軍とビショット軍の野営地と表現するのが正しいのだろうが。
「そうだな。毎回レンの海を渡る時に襲撃されるのは、御免被りたいけどな」
何気に、ラウの国からナの国に向かう途中には、現在襲撃率100%だったりする。
最初はゼラーナ隊に、そして今回はショウに。
まだ2回だから、100%とはいえ、そこまで厳密な数字ではない。
これから3回、4回といったように繰り返しても毎回敵に襲われるようなら、色々と考える必要はあるだろうが。
「ともあれ、こうして無事にラウの国に戻ってきた以上、後はそっちの仕事だ」
『お任せ下さい。この停戦は、ナの国としても重要ですからな』
そう言うカワッセだったが、この場合はドレイクとビショットがどういう風に譲歩を迫ってくるか、なんだよな
ドレイク達に有利すぎると、フォイゾンはそれを受け入れることは出来ない。
フォイゾン側に有利すぎると、ドレイク達はそれを受け入れることは出来ない。
この辺の匙加減が難しい。
とはいえ、俺はあくまでもこの戦争に関しては第三者でしかない。
そうである以上、俺としては成り行きを見守るといったような真似をするしかなかった。
「アクセル王、よく無事で戻ってきてくれた。それで、そちらが?」
「カワッセと申します。ナの国の代表として、今回の停戦の仲介をさせて貰います」
ドレイクの言葉に、カワッセがそう言って一礼する。
国の立場としては、国土も国力もアの国よりもナの国の方が上だ。
とはいえ、ドレイクはアの国の国王であり、カワッセはナの国を代表して来ているとはいえ、シーラの副官的な存在でしかない。
そしてアの国はオーラマシン発祥の地でもあり、技術という点では恐らくバイストン・ウェルの中でも最古の存在だ。
そうなると、やはりカワッセが格下といった扱いになるのは、しょうがない事だった。
「うむ。アクセル王から話は聞いておる。正直なところ、このままラウの国と戦ってもこちらが勝つとは思うのだが……」
「そうですな。私のゲア・ガリングとドレイク王のウィル・ウィプス、そしてアクセル王のヨルムンガンド……オーラバトルシップが3艦もあれば、ラウの国に勝ち目はないでしょう」
そう言ったのはビショット。
当然だが、この会談の場にはビショットの姿もある。
一応今回のラウの国との戦争においては、ドレイクとビショットの連合軍といった形で戦っているのだから、当然だろう。
クの国に関しては、出してきている戦力がゲア・ガリングだけだが。
いや、ゲア・ガリングだけでも十分な戦力ではある。
第二次世界大戦前後の世界において、海軍の持つ戦艦というのは単体の戦力というよりは、戦略兵器的な扱いだった。
色々と細かい違いはあれど、バイストン・ウェルにおけるオーラバトルシップというのも、それと似たような一面があるのは間違いない。
その点で考えると、こちらはそんな戦略兵器が3隻存在するのに対して、ラウの国の持つオーラバトルシップは1隻。
それも、以前俺が聞いた情報によると、まだ完成していなかったらしいし。
とはいえ、俺がその情報を聞いてからそれなりに時間が経っている。
あるいはその間にラウの国のオーラバトルシップが完成しているのかもしれないが、それでも結局のところ1隻でしかない。
……まぁ、オーラバトルシップの中でも、俺のヨルムンガンドは完全に後方での要塞的な存在だし、ゲア・ガリングも前線で戦うというよりは後方での空母的な存在だ。
そういう意味では、最前線で戦えるのはドレイクのウィル・ウィプスだけなんだよな。
もしラウの国で開発しているオーラバトルシップが最前線で戦うような代物である場合、もしかしたら万が一があるかもしれないな。
とはいえ、中衛のゲア・ガリングと後衛のヨルムンガンドがいるとなれば、ウィル・ウィプスに多少の被害が出ても、結局俺達が勝つだろうが。
「そうなるかもしれませんが、そうならないかもしれません。それに、ラウの国がこのまま戦いを続ける場合は、ナの国でも援軍を送るといったようなことになるかもしれませんな」
カワッセがビショットを牽制するように言う。
だが、ビショットもそんなことを言われたくらいでは、特に動揺する様子もない。
笑みすら浮かべて、そうですかとだけ告げる。
ビショットもカワッセが口にした内容が牽制であるというのは理解しているのだろう。
カワッセとしても、出来ればナの国を今回の戦いに参加させるような事はしたくない……そんな風に思っても、おかしくはなかった。
その後もお互いに色々と話をし……やがてカワッセは本題に入る。
「ところで、今回の停戦においてはドレイク王とビショット王は色々とラウの国に対して要求をするとアクセル王から伺いましたが、それは事実でしょうか?」
そう、これこそがカワッセがドレイク達に面会をした、最大の理由。
ドレイク達にしてみれば、ラウの国の王都の側までやって来たのだ。
勿論、それはフォイゾンが意図的に引き込んだというのもあるのだろうが、それでもラウの国の奥深く……心臓とも頭脳とも呼べるタータラ城のすぐ側までやって来たのは、間違いのない事実だ。
それを思えば、今回の停戦において自分達がラウの国側に相応の譲歩を迫るのは当然の事という認識だった。
そして、カワッセの言葉にドレイクとビショットは揃って頷きを返す。
「うむ。この状況での停戦ともなれば、当然だがこちらにとって有利な条件での停戦となると信じておる。正直なところ、儂は元々この停戦には賛成出来なかった。しかし、アクセル王からの要望があったが故に、受け入れる事にしたのだ」
ドレイク王がそこまで告げると、ビショットが後を続けるように口を開く。
「そうですな。アクセル王からの要望である以上、私達もそれを聞かないという選択肢は存在しない。しかし……だからといって、これは戦争です。それも、私達が圧倒的に有利なままでここまで進んだ。そうである以上、停戦をしたからとはいえ、この戦いの勝利の全てをなかった事にする……といったような真似は、許容出来ません」
「では、ドレイク王、ビショット王は何を求めるのですか? ……こちらとしても、停戦の仲介を務める以上、その辺を聞いておきたいのですが」
カワッセにしてみれば、今回の停戦は是が非でも纏める必要があった。
ナの国としては、出来るだけこの戦いに巻き込まれたくはないのだろう。
勿論、一度戦いに参加すると約束した以上、いざとなれば戦いに参加しないといった選択肢はないのだろうが。
「ある程度の領土はこちらに欲しい。勿論領土の全てとは言わん。儂の領土となったミの国とラウの国境を、ラウ側にある程度進める形でいい。それと、賠償金……という言い方をすればフォイゾン王にとっては面白くないので、何らかの別の表現を用いるとして、ここまで活躍した部下達に支払う金額を用意して貰いたい」
「私の方は領地はいりませんので、金と……後は、そうですな。ラウの国が持つオーラバトラーを貰えれば」
ドレイクとビショットがそれぞれの要望を口にする。
それは、思ったよりもかなりラウの国に譲歩した要望だった。
てっきりラウの国の半分を寄越せとか、フォイゾンの首を寄越せとか、あるいはラウの国で建造中のオーラバトルシップを寄越せとか……そんな要望を出すのかとばかり思っていたのだ。
だが、実際に聞いてみれば、それはそこまで難しい案件ではない。
……とはいえ、フォイゾンにそれが受け入れられるかどうかというのは、また別の話だろうが。
「ふむ。妥当と言えば妥当でしょうが……フォイゾン王がそれを受け入れられるかとなると、難しいでしょうな」
カワッセも俺と同様の意見らしく、安堵した様子を見せつつも難しい表情を浮かべる。
カワッセからしてみれば、他国の一件という事もあり、十分受け入れられると思ったのだろう。
だが、フォイゾンにしてみればそれを受け入れるのは難しい。
それが分かっているからこそ、カワッセはこのような表情を浮かべていた。
フォイゾンにしてみれば、多少なりとも領土を渡し、名目こそ違えど実質的に賠償金を支払い、自分達のオーラバトラーを渡すといったようなことになるのだ。
客観的に見た場合は、そこまで大きな被害ではないと思う。
しかし、ラウの国の国王として見た場合、それを受け入れるのは難しい。
とはいえ、俺から見てもドレイクとビショットの要望は受け入れ可能なものではある。
何も国土の全てを寄越せとか、もしくはラウの国の国家予算に数倍する金を寄越せとか、そんな風に言ってる訳ではないのだから。
それを思えば、やはりここはドレイク達の要望を聞き入れた方がラウの国に利益があるのは間違いない。
後はプライドの問題をどうするか、だな。
今の状況を思えば、フォイゾンがそれを受け入れる可能性はかなり少ない。
だからといって、ナの国がラウの国に協力するのではなく停戦に回ったとなれば、ドレイクからの提案を不用意に蹴る訳にもいかなくなる。
ましてや、ドレイクやビショットの提案を、カワッセはある程度妥当なものであると、そう認識しているのだから。
後は、実際の停戦の場でどうやってフォイゾンに今回の件を認めさせるかだが……その辺に関しては、俺がどうこう考えても仕方がない。
実際に停戦の交渉に挑む者達に任せるしかなかった。
そうしてカワッセはドレイクやビショットからそれぞれの要望を聞き、ここまでの戦いについてどのようなものだったのかを聞くと、ウィル・ウィプスから出てタータラ城に向かった。
ドレイクとビショットから話は聞いた。
次は、フォイゾンから……あるいはフラオンやピネガンといった面々からも話を聞く必要があるという事なのだろう。
当然の話だが、ナの国からここまで一緒に来た俺は、そんなカワッセと行動を共にはしない。
……ヨルムンガンドでタータラ城に向かえば、それは間違いなく攻撃だと判断して向こうに極端な行動をさせるようになる可能性があったし。
「それで、停戦交渉についてだが……俺はどうする?」
カワッセが去り、ドレイクとビショットだけになったところで尋ねる。
基本的に、俺はこの戦いにおいて傭兵的な存在でしかない。
特に今回はいつものようにドレイクと協力をするのではなく、ビショットに雇われているといった形になっていた。
だからこそ、ドレイクではなくビショットに尋ねたのだが……
「アクセル王には、停戦交渉に参加しないで貰いたい」
そう、きっぱりと言われる。
いや、参加するなと言われれば俺もそれに否とは言わないが、それでもまさかこうもはっきりと言ってくるとは思わなかった。
「本当にいいのか? ドレイクは部下が多数いるが、ビショットはゲア・ガリングだけだろう? 何かあった時、危険だと思うんだが。それに、俺は元々今回の戦いではビショットに雇われてるんだし。……ここ最近は、ナの国に行ったりしてたけど」
そう尋ねるも、ビショットは問題ないといったように頷く。
「停戦交渉では、あくまでもこの戦いに主力として参加している者達が出る場ですからね。アクセル王の場合は私に雇われているという形である以上、交渉には参加しない方がいいでしょう」
ビショットの言葉は、納得出来る面がある。
あくまでも俺はビショットに雇われているという形で行動しているのだ。
「ドレイクはそれでもいいのか?」
「うむ。ビショット王の言ってる事は、儂も同意見だ。それに……アクセル王が停戦の場に出て来ると、ラウの国が色々と騒ぐ可能性も高いのでな」
「あー、なるほど」
フォイゾンは血筋や伝統といったものにうるさいというのは、俺も知っている。
そもそも、ドレイクがラウの国を攻撃すると決めたのも、ドレイクがミの国を占領し、ラウの国と隣接するようになった為に、フォイゾンが領主という立場から一気に国王になったドレイクを攻撃してくる可能性が高いと判断したのが大きい。
そうである以上、俺が停戦交渉に参加するのをフォイゾンが面白く思わず、不満を口にしてもおかしくはない。
最悪、そのせいで停戦交渉が駄目になるといった可能性もある。
……一応、俺もシャドウミラーの王といった立場ではあるのだが、シャドウミラーがあるのは世界の狭間で、何故かゲートが繋がらないこの状況においては意味がないしな。
一応マーベルやキッス家といった面々がいるが、国どころか領主を名乗るのすら、この人数では問題になってもおかしくはない。
そんなフォイゾンだけに、ドレイクやビショットが言うように、停戦交渉には参加しない方がいいか。
これがナの国の仲介でなければ、ラウの国の騙し討ちを疑うところなのだが、ナの国がいる中で、フォイゾンもさすがにそのような真似はしないだろう。
そう思い、俺は頷き……そして数日の時が流れ、停戦交渉の日がやって来るのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1684