転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2943話

「そろそろ停戦交渉が始まってる頃かしらね」

「だろうな。タータラ城でやってるから、俺達にはあまり関係ないけど。……ただ、間違いなく揉めてると思うぞ」

 

 停戦交渉そのものは、タータラ城で行われている。

 ただし、タータラ城とはいえ城ではない。

 タータラ城というのは、エルフ城やドレイク城と同じく周辺の城下街も含めての名前だ。

 停戦交渉が行われているのは、そんな城下街の中にある屋敷の一つで、と聞いている。

 

「そうでしょうな。フォイゾン王にしてみれば、ドレイク王達から突きつけられた条件は自分達が負けたというのを示すようなものでしょうし」

 

 俺とマーベルの会話を聞いていたキブツが、そう口を挟んでくる。

 実際、その言葉は決して間違っているとは思えない。

 フォイゾンにしてみれば、ドレイクやビショットの出してきた条件を全て呑むというのは、実質的な負けに等しい。

 勿論、ナの国が仲介役になって停戦交渉を行っている以上、普通に戦って負けるといったような状況に比べると、悪くない条件にはなっているのだろうが。

 

「ともあれ、この停戦交渉が纏まれば一連の戦乱もようやく終わる事になりそうだな」

 

 この一連の戦乱……ギブン家がルフト家にテロ的な攻撃をしてきたのが始まりなのか、あるいは国同士という規模で考えればフラオンがギブン家の口車に乗って、更にはミの国まで引き入れてルフト家を攻撃したのが始まりなのか。

 その辺はそれこそ後世の歴史家辺りに任せればいいと思うが、この戦いに殆ど最初から関わっていた俺にしてみれば、やはりギブン家のテロ攻撃からといった印象が強い。

 そうして一連の戦いが終わり……うん? 戦いが終われば、それからどうすればいいんだ?

 

「なぁ、今回の停戦で戦いが終わったら、俺は……いや、俺達はどうすればいいんだ? 結局のところ、俺達はドレイクやビショットに雇われた傭兵的な存在だったし、戦いが終われば、俺達の役目は特にないと思うんだが」

「それは……そうね……」

 

 マーベルもまた、戦後の事については何も考えていなかったらしく、少し困ったように呟く。

 ガロウ・ランの盗賊や恐獣の退治といったような仕事は……いや、駄目だな。

 ドレイク軍もビショット軍も、ラウの国との戦争が終われば、この戦争に使っていた戦力をそのままそちらに回せる。

 ガロウ・ランは何の問題もなく倒せるだろうし、恐獣も……ルグウのような特殊な存在ではない限り、オーラバトラーを複数使えば倒せる筈だ。

 そうなると、それこそ俺達がやるべき仕事はない。

 

「俺達はシャドウミラーという勢力だけど、国とかある訳じゃないしな。まぁ、ドレイクとの同盟関係は結ばれたままだし、オーラバトラーの模擬戦相手とかは出来そうだけど」

「あるいは……クの国やラウの国、ナの国の隣接している場所はどこの勢力のものでもないんでしょう? なら、そこを領地にしてみるとか? 住人を集めるのは大変そうだけど」

「それは……ん? ちょっと待った。俺やキブツはともかく、マーベルの場合は地上に戻るって選択肢もあるんじゃないか? シルキーの力で戻れるかどうかは分からないけど」

 

 そう言うと、マーベルは意表を突かれた表情を浮かべる。

 どうやら地上に戻るといったようなことは全く考えていなかったらしい。

 とはいえ、今までが今までだ。

 そんな風に思っても、この場合はおかしくない。

 

「でも、私達はトッド達と違ってシルキーに召喚された訳じゃないのよ? なのに、シルキーの力で地上に戻れるのかしら?」

「その辺は、実際に試してみないと……」

「あ……その、すみません……」

 

 俺とマーベルの会話に、申し訳なさそうに……本当に心の底から申し訳なさそうにしながら、キブツが口を挟んでくる。

 

「どうした?」

「いえ、その……ですね。今の今まですっかり忘れていた事ですし、成功しなかったので本当なのかどうか分かりませんが……実は、ギブン家でもナックル・ビーというエ・フェラリオに協力して貰い、地上人の召喚を行っています」

 

 キブツの口から出て来たのは、そんな言葉だった。

 それを聞き、俺は驚くと同時に納得する。

 そもそもの話、ギブン家は地上人のショット達が開発したオーラマシンによって不利になったし、聖戦士としての実力を持つ地上人は一騎当千の力を持つ。……まぁ、実際に1000機のオーラバトラーを相手にすれば、勝つのは難しいだろうが。

 ともあれ、地上人の存在によってピンチになったギブン家が、地上人には地上人をといった感じで地上人の召喚を行うといった真似をしても、不思議ではない。

 

「それで成功しなかったというのは……つまり、召喚した人物がギブン家の前に来なかった訳か」

「はい」

 

 その言葉を聞いて、大体の成り行きについては納得出来た。

 恐らくはそのナックル・ビーというエ・フェラリオがオーラロードを開いてマーベルを召喚したのはいいのだが、そのマーベルがオーラロードを通っている途中に、ゲートを使ってこの世界にやって来た俺とぶつかって――物理的な意味ではなく、概念的な意味で――俺と一緒にエルフ城の側に出た、と。

 アの国の内部だったのは、せめてもの幸運か?

 フラオンに指名手配されるような事になったけど、ゲドを見たからルフト領に行くつもりになった訳だし。

 

「そう考えると……複雑な思いね。もしアクセルと会ってないと、私はギブン家に召喚されて、ギブン家の戦力になっていた可能性もあるんだもの」

「それは……嫌だな」

 

 マーベルの言葉に、しみじみと呟く。

 俺が見たところ、ギブン家の行動というのは正当性がない。

 宣戦布告もなく、相手が園遊会……一種のパーティをしているところに攻撃を仕掛けて来るといったような、テロ行為染みた真似をしてるのだ。

 まぁ、その園遊会はオーラバトラーで恐獣と戦ったりといったような真似もしていたので、そういう意味で対処するのも可能だったのだが。

 その後も、自分達だけでは敵わないからとフラオンを戦いに引き入れ、更には……これはギブン家が考えたのかフラオンが考えたのかは分からないが、ミの国まで戦いに引き入れるような真似をしている。

 それが現在の状況に繋がっていると思えば、ギブン家に召喚されなくてよかったというのは、本当に……心の底から思っても当然の事だろう。

 俺にしても、転移の途中でオーラロードに接触をするといった真似をしたのはいいが、その結果エルフ城の近くに転移出来たというのは、不幸中の幸いだったのは間違いない。

 ショウやアレン達の様子を見る限り、オーラロードで召喚された場合、複数人が同時に聖戦士として召喚される事も珍しくない。

 つまり、場合によっては俺もマーベルと同様に地上から召喚された聖戦士といった扱いになって、ギブン家に協力するといった未来もあった訳だ。

 うわぁ……といった感想しか思い浮かばない。

 

「そうなると、最終的にドレイク軍と協力する事になった今の状況は、俺達にとっては不幸中の幸いだった訳だ」

「そうね。でも……」

 

 そうして、マーベルが何かを言おうとした瞬間、ブリッジにいたキッス家の1人が、緊張した様子で叫ぶ。

 

「な……報告です! タータラ城で行われていた停戦交渉に、オーラバトラーが突入したとの事です!」

「何っ!?」

 

 その報告に、キブツは驚きの声を発する。

 当然だろう。そのような事をした場合、これは間違いなく停戦交渉は中断される。

 もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、周辺の警備をしていたオーラバトラーが操作を誤って停戦交渉の会場に突っ込んだといった可能性もあるが……正直なところ、例えそうであっても最悪の結果なのは間違いない。

 とにかく、今は詳しい情報を得るのが第一だ。

 

「確認しろ。停戦交渉の会場に突っ込んだのは、どちらの勢力のオーラバトラーだ」

 

 すぐにそう指示を出す。

 これがラウの国のオーラバトラーなら、何も問題はない。

 いや、勿論問題は大ありなのだが、ドレイク軍やビショット軍のオーラバトラーが突っ込んだ状態と比べれば、まだマシだ。

 だが、ドレイク軍やビショット軍のオーラバトラーだった場合、それはドレイク達にとって大きなマイナスとなる。

 

「キブツ、マーベル、すぐに戦力を出すようにしろ。俺は一足先に停戦交渉の会場に向かう。ただし、出来るだけ戦いにならないようにしろ。それとこっちは可能であればでいいけど、ドレイク軍やビショット軍とラウの国が戦いになりそうなら止めてくれ」

 

 そう言い、影のゲートを展開する。

 ヨルムンガンドが浮かんでおらず、地上に停泊した状態だったのは運がよかったな。

 もし浮かんでいたら、一度影のゲートでヨルムンガンドの外に出て、そこから地上に降りて、再度影のゲートを使うといった真似をする必要があったのだから。

 そんな風に思いながら、影のゲートで停戦交渉を行っていた場所に転移し……

 

「アクセル王!?」

 

 出た場所では、完全に戦闘状態になっていた。

 現在はドレイクの護衛とやって来た者達とフォイゾンの護衛と思われる者達が戦いを行ってはいるが、肝心のドレイクとビショットの姿がない。

 代わりにという訳ではないが、俺のすぐ近くにはカワッセやナの国の兵士、文官といった者達の姿がある。

 

「ドレイクやビショット達は?」

 

 肝心の2人やその部下達の姿がどこにもない事に疑問を抱き、カワッセに尋ねる。

 

「既に脱出してしまいました」

「なるほど。で、カワッセは何で脱出しないんだ?」

 

 建物の屋根が崩れているのを見ながら、そう尋ねる。

 多分、あそこにオーラバトラーが突入してきたのだろう。

 

「我々は今回はあくまでも中立です。どちらと行動を共にする訳にもいかないのですよ。幸いな事に、戦っている者達もこちらには手を出してくる様子はありませんし。ただ……」

 

 そう言い、カワッセの視線は少し離れた場所に倒れている死体に向けられる。

 その死体を見て……

 

「おい、マジか」

 

 思わずそんな声が漏れてしまうのは、そこにあった死体が見覚えのある者達の死体だったからだろう。

 フラオンとピネガンという、アの国とミの国の元国王2人。

 また、その近くにはもう1人の死体が並べられている。

 この流れからすると、まさか……

 

「あれ、実はフォイゾンの死体だとか、言わないよな?」

「その通りです」

 

 カワッセのその言葉に、うわぁ……といった思いを抱く。

 つまり、今回の騒動によって、フラオン、ピネガン、フォイゾンといったように……待て。

 ドレイクと敵対している国王や元国王といったような連中だけが死んで、ドレイクとビショットは無傷……かどうかは分からないが、それでも生きている?

 それは、幾ら何でも出来すぎじゃないか?

 俺の心の中に、1つの疑惑が思い浮かぶ。

 

「カワッセ、ここにオーラバトラーが飛び込んできたという話だったが、そのオーラバトラーは何だ? ドラムロか?」

「いえ、ボゾンです」

 

 ……違う、か。

 これで突入してきたのがドラムロ、もしくはビランビーやビアレス、レプラカーンといったような、ドレイク軍やビショット軍のオーラバトラーなら、もしかして今回の一件はドレイクの仕業か? とも思ったのだが。

 だが、それがボゾンとなると……突撃してきたのは、ラウの国の人員となる。

 いやまぁ、ラウの国の人員ではなくてもフラオンやピネガンの部下といった可能性も否定は出来ないが。

 というか、今までの行動を思えばフラオンがそのように命じた可能性は高い。

 フラオンにしてみれば、ここでドレイクとビショットを殺すことに成功すればこの戦争は自分達の勝利だと、そう思ったのだろう。

 そして、それは決して間違っている訳ではないのが厄介なところだ。

 これが地上であれば、軍を率いている者が殺されるというのが大きな被害になるのは間違いないが、それでも指揮する者が変わるだけだ。

 しかし、このバイストン・ウェルはファンタジー世界である以上、軍を率いる者が殺されれば、意味はない。

 ましてや、それはドレイクやビショットといった国王でもある。

 そう考えると、意外とここで襲撃をしてくるというのは悪い選択ではなかった……のか?

 まぁ、結局はその命令をした可能性が高いフラオンがピネガンやフォイゾンを道連れにして死んでいるので、全く意味がなかったが。

 

「それで、襲ってきたボゾンは? 捕らえたのか?」

「いえ、黒騎士と名乗ったパイロットは凄腕で、ラウの国のボゾンや……それどころかボチューンまでをも倒して、撤退しました」

「黒騎士? それが敵か?」

「はい。もっとも、コックピットから出たところを見ましたが、顔全体を隠していたので男であるとしか思えませんでしたか」

 

 男で、ボゾンはともかく、ボチューンすら倒すだけの実力を持つパイロット……おい、それってもしかしてショウだったりしないよな?

 フラオンの部下で、それだけの実力を持つ男のパイロットとなれば、俺にはショウしか思い浮かばないんだが。

 とはいえ、それは向こうも分かってる筈だ。

 そうである以上、ショウも顔を隠したところで意味があるとは思えないんだが。

 今回の一件、正直なところかなり不可解だ。

 ともあれ……これで、停戦がご破算になったのは間違いのない事実だった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1684

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