取りあえず、停戦交渉が行われていた場所にカワッセ達をそのままにしておく訳にもいかず、俺は影のゲートでヨルムンガンドに戻る。
……当然だが、影に沈む感触はカワッセ達にとっても初めてのものだったらしく、多くの者が悲鳴を上げていたが。
ドレイクの兵士がまだ少し向こうに残っていたので、一緒に来るのかと聞いたが、自分達はすぐに脱出してドレイクの援護をするというので、残してきた。
そんな訳で、こうしてヨルムンガンドのブリッジに戻ってきたのだが……
「それで、状況は?」
「混乱しています。特にラウの国側ではフォイゾン王を殺したのを許せないといった者や、停戦交渉を襲撃したのはボゾンだったので、まずはそのボゾンを捕らえるのが最優先だといったように」
だろうな。
何しろ、停戦交渉の場にラウの国側の戦力であるボゾンが突入したのだ。
それを操縦していた黒騎士というのが、誰なのかは分からない。
状況証拠や、その技量から恐らくショウではないかと疑ってはいるものの、確実にショウが黒騎士だという証拠がある訳でもない。
ましてや、その襲撃やその後の戦いでフラオン、ピネガン、フォイゾンといった主要メンバーが軒並み死んでしまっているのだから、混乱するなという方が無理だろう。
これを企んだのがフラオンなのかはどうかは分からない。
ショウの件と同じく、それが一番可能性が高いと思ってはいるが、こちらもまた証拠はない。
それこそ、やはり黒騎士を捕らえなければ、今回の襲撃の事情ははっきりとしないだろう。
「ドレイクの方はどうなっている? ビショットと一緒に撤退に成功したとカワッセからは聞いてるんだが。……だよな?」
「はい。護衛と共に脱出したのを確認しました」
カワッセが、俺の言葉にそう返してくる。
だとすれば、いっそオーラバトラーで迎えに行った方がいいか?
そう思った瞬間、ちょうどそのタイミングでブリッジクルーの1人が叫ぶ。
「ウィル・ウィプスから通信! ドレイク王です!」
なるほど。どうやら無事にタータラ城を脱出して、ウィル・ウィプスに戻ったらしい。
ここからタータラ城まではそれなりに距離がある。
だとすれば、オーラバトラーで運ばれたのか?
馬車で移動となると、まだここまで到着するには早いし。
「出せ」
その言葉と共に、映像モニタにドレイクの顔が表示される。
隣にはビショットの姿もある事から、ビショットはゲア・ガリングではなくウィル・ウィプスに避難するのを優先したのだろう。
そうして改めてドレイクとビショットを見てみると、ドレイクの顔には血を拭いた跡がある。
恐らく逃げる時の戦いで護衛の兵士が怪我を負った時の血だろう。
ドレイク本人が怪我をした訳ではないのは、今のドレイクを見れば明らかだ。
『アクセル王、事情は……なるほど。儂らが脱出した後で、あの屋敷に行ったのか』
言葉の途中でそう告げたのは、俺の側にカワッセの姿があったからだろう。
停戦交渉の場を襲われた現状で、カワッセがヨルムンガンドのブリッジにいるとなれば、俺が助けた以外にないのだから。
「ああ、大体理解している。……その上で聞きたいんだが、黒騎士ってのは誰の手の者だと思う?」
『こちらを明確に狙ってきたことから考えて、ラウの国側の誰かなのは間違いないだろう。儂やビショット王も、兵士達がその身を以て守ってくれなければ生きて戻ることは出来なかった』
「だとすると……一番可能性が高いのは、やっぱりフラオンか?」
『同意見だ』
後先を考えない性格をしているフラオンと、高い操縦技術を持つオーラバトラーのパイロット。
黒騎士という奴を見たことがないので、実際にどれくらいの技量なのかというのは分からないが、こうして多くの者が腕利きだと言っている以上、それは間違いないのだろう。
「もっとも、それを企んだのがフラオンだとすれば、自分の企みで死んでしまったのは間抜けだけどな」
『……死んだのか? フラオンが?』
既にドレイクは、フラオンを完全に見限っている。
王であるとも、ましてや主君であるとも思っていない。
その為、フラオン王ではなくフラオンと呼び捨てにしていた。
「ああ。俺がカワッセを助けに行った時は、フラオン、ピネガン、フォイゾンの3人が揃って全員死んでたな。……ドレイクやビショットが脱出した時は違ったのか?」
『どうだったか。あの時は逃げるのに必死であったから、そこまで覚えておらん。だが、そうなると殿として残った兵士達が最大限に実力を発揮したのだろう』
「この場合は、頑張ったと言って褒めるのが正しいんだろうが……正直なところを言わせて貰えば、フラオンとピネガンはともかく、フォイゾンは怪我をさせる程度にして生け捕りにして欲しかったな」
フラオンとピネガンは、アの国とミの国が既にドレイクの手にあるので、死んでもそこまで問題はない。
……エレの事を考えると少し思うところはあるが、これが戦争である以上は仕方のないことだろう。
だが、フォイゾンが死んだのは、この場合痛い。
国王……それもお飾りとかではなく、人望と実力とカリスマを持っている、そんな国王が死んだのだ。
それを示すかのように、現在のラウの国は混乱状態に陥っている。
国王がいなくなった以上、アの国とラウの国の戦争はどうなるのか。
戦争を終わらせられる人物がいないのだから、どうしようもない。
あるいは、俺が知らないだけでフォイゾンは自分が死んだ後、誰に王位継承させるのかを決めていたのか?
ただし、俺が知ってる限りではフォイゾンの血縁者となるとパットフットとエレしかいない。
しかし、その2人をフォイゾンが王位継承者として認めるとかと言われれば、フォイゾンの性格を考えると難しいだろう。
だとすれば、血の繋がらない優秀な人物を養子に?
可能性としてはあるが、伝統や血筋を重要視するフォイゾンが、王の直系の血筋ではない者を王位継承者にするか?
結論としては、その辺は全く何も決まっていない可能性が高かった。
『そう言われても、黒騎士とかいう相手に襲われて、こちらも生き残るので必死だったのだ。アクセル王の言いたい事も分かるが、それに対応するだけ余裕はなかった』
『うむ。ドレイク王の言う通り。……正直、まさかラウの国側であのような真似をしてくるとは思わなかったので、完全に意表を突かれたのは事実だ』
「ビショットの言いたい事も分かるが、向こうにしてみれば敵を率いている国王2人を倒す絶好のチャンスだったんだ。こういう手段に出るというのも考えておいた方がよかったな」
『そうは言うが、アクセル王。まさかナの国というこの周辺で最大の強国が仲介に入って行われた停戦交渉だというのに、そのような状況でまさかあのような真似をするとは思わんだろう? 今回の一件は、こう言ってはなんだが……完全にナの国の顔を潰した形だ。違うかな?』
ドレイクに視線を向けられたカワッセは、表情を変えないままに頷いて口を開く。
「ドレイク王の仰る通り、今回の一件はナの国としても満足出来る話ではありません。ありませんが……このような真似をすれば、ナの国を敵に回してしまう可能性が高いというのは、当然ながら向こうも知っている筈。なのに、何故このような真似を?」
『向こうには、その辺りについても考えられない者がいる。全てが自分の思い通りに出来ると信じており、それが許容されなければ怒り出すような者がな』
ドレイクが誰の事を言っているのかというのは、俺にも分かる。
いや、俺だけではなくカワッセを始めとしたナの国の者以外には、ヨルムンガンドのブリッジにいる全員が理解出来ただろう。
つまり、今回の一件がフラオンの仕業だと仄めかしているのだろうと。
実際、今回のように考えなしのような真似をする人物と言われれば、最初に思い浮かぶのはフラオンなのは間違いない。
ピネガンは俺達に負けてミの国を追い出されたが、国王としてはそれなりに優秀な人物だ。……まぁ、他国の、それもラウの国という大国の王女と駆け落ちして国交断絶され、それが原因となって国内にレジスタンスを結成されるという大ポカをやってはいるが、色恋沙汰以外ではオーラバトラーの先進性を見出し、国内に機械の館を複数作ってダーナ・オシーを量産するといったような真似もしている。
フォイゾンも、伝統と血筋の件で頭が硬いとはいえ、それでもラウの国という大国を率いてきた人物だ。
ピネガンとフォイゾンの2人なら、今日の停戦交渉を襲撃するなどといった真似をすれば、ナの国という大国を敵に回すというのは十分に理解しているだろう。
ただでさえラウの国だけでアの国とクの国を敵に回すというのが厳しいのを知っている以上、ナの国までをも敵に回すというのは自殺行為でしかない。
あるいは黒騎士の襲撃でカワッセ達を全員殺し、その罪をドレイク達になすりつけるつもりだったのか。
その辺りについての詳しい考えは、既に向こうが全員死んでしまっている辺り、想像するしかない。
「フラオンに仕えていた、ギブン家の連中なら何か知ってるんじゃないか? 特に、俺はその黒騎士って奴は見た事がないので何とも言えないが、フラオンの部下でそれだけ腕の立つ奴となると、ショウくらいしか思い浮かばないし」
『儂もそう思いはしたのだが、黒騎士の姿に変装をし、更にはダンバインではなくボゾンを使っていたのは何故だ? フラオンの部下で……いや、ラウの国側であれだけの技量を持つ者といえば、ショウ・ザマしかいないと思われる。そうなれば、当然疑われるだろうに……であれば、わざわざそんな誤魔化しをする必要があるのか?』
日本では疑わしきは罰せずといったような事もあるが、ここは日本ではない。
それどころか地球でもなく、バイストン・ウェルというファンタジー世界だ。
最悪、疑わしいので処刑といったようなことがあってもおかしくはない世界。
ショウも当然のようにそれが分かっているだろうし……だとすれば、今回の黒騎士の一件はやっぱり疑問が残るな。
とはいえ、それを知っていた可能性が一番高いフラオンが死んだ以上、ギブン家くらいしか多少なりとも情報を持ってる者達はいないのだが。
ドレイクにしてみれば、可愛がっていたリムルがそんなギブン家と行動を共にしているのだから、色々と思うところもあるだろう。
『一つ、聞きたい。停戦交渉をラウの国側から妨害した……いや、それどころかこちらの命を狙ってきたが、これからナの国はどう動くつもりなのだ?』
ドレイクのその言葉に、カワッセは数秒沈黙した後で口を開く。
「正直なところ分かりません。今回の一件、普通に考えればラウの国側の暴走と言ってもいいでしょう。ですが、それはそれで疑問が残ります」
『疑問?』
「はい。こう言っては何ですが……今回の襲撃において、ドレイク王やビショット王も危険な目に遭ったのは間違いないでしょう。ですが、最終的に一番利益を得たのは、ドレイク王やビショット王になるのでは?」
『……ほう。それは、儂やビショット王が狙ってこの事態を引き起こした。そのようにも聞こえるが?』
「勿論、私はそのような事を思ってはおりません。ですが、世の中には結果だけを見るような者もいます。そのような者達を説得するのは、少し時間が掛かるかと」
カワッセの言葉が真実なのかどうかは、俺には分からない。
あるいは表向きそのようにしているとしても、理解は出来る。
何しろ、カワッセはナの国という看板を背負ってこの場にいるのだ。
そうである以上、ここで安易にドレイクの言葉に同意するような真似をした場合、最悪の結果になりかねなかった。
「ともあれ、まずカワッセはナの国に戻った方がいいんじゃないか? 今回の一件をシーラに知らせる必要があるだろ? 向こうにしてみれば、まさかこんな結果になるとは思わなかっただろうし」
今回の一件、誰が仕組んだのかは分からない。
いや、黒騎士の一件から考えるとフラオンが一番怪しいのは間違いないが、証拠がないんだよな。
フラオン本人も死体になってるし。
「で、カワッセはナの国に戻らせるとして……ドレイクはラウの国に対してどうするつもりなんだ?」
『迷っているというのが正直なところだな。停戦交渉を妨害してきた以上、改めて停戦交渉をといったような事は考えられない。ナの国には悪いがな』
ドレイクの視線を向けられたカワッセは、何も言えない。
実際、今回の一件を考えた場合、普通はアの国とラウの国の停戦など夢のまた夢だ。
寧ろ俺としては、この状況でドレイクが即座にラウの国に攻め込まないという時点で十分に配慮していると思う。
何しろ、ドレイクやビショットも停戦交渉の場で命を狙われたのは間違いないのだから。
普通なら報復として、即座にラウの国に……そうだな、俺が知ってるドレイクは苛烈な性格をしている。
そんなドレイクが、この状況でラウの国を攻めないというのは、違和感がある。
あるいは、ナの国から停戦についての話を貰ってきた時に言った、ドレイクとの同盟を破棄すると言ったことが影響しているのかもしれないが。
それでも完全に腑に落ちるといったような事はないまま、俺は会話を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1684