「ふむ、なるほど。アクセル王から聞いた話を総合すると、やはりタータラ城はそう長く保つとは思えないな」
タータラ城から戻ってきた俺の報告に、ビショットは納得したように呟く。
前もって予想はしていたのだろうが、それはあくまでも予想でしかない。
実際に誰かをタータラ城に向かわせ、その辺りをはっきりとさせたかったのだろう。
だが、ガロウ・ランによって侵入出来るような場所は警備されており、無理をすればビショットの部下のガロウ・ランが死ぬ可能性が高い。
そんな訳で俺に依頼されたのだが、その結果は満足出来るものだったらしい。
「で、どうするんだ? 向こうが厳しいとなると、こっちもそこまで時間はないと思うが」
ラウの国側が厳しいとなると、あるいは暴発する可能性がある。
背水の陣的な意味で。
そうである以上、やはりここは下手に暴走して戦いがコントロール出来ないよりは、しっかりとコントロールした方がいいのは間違いない。
「アクセル王の言いたいことは分かるが、ナの国の件がある」
ビショットの言葉に、俺は頷く。
ナの国としては、出来ればこのままの状況でなし崩し的に停戦状態になって欲しいというのが正直なところだろう。
だが、ドレイクにしてみればここまで戦った以上、明確に向こうが降伏するか、あるいは停戦するにしてもしっかりとラウの国側から申し込んでこない限り、それを受け入れる事は出来ない。
「取りあえず停戦交渉の襲撃の件で、ナの国がラウの国に積極的に協力するといった事はなくなるだろうから、そういう意味では悪くなかったんじゃないか?」
ビショットは俺の言葉に複雑な表情で頷く。
ビショットは王であるが、フォイゾンのように自分の武力に自信がある訳ではない。
オーラバトラーを始めとしたオーラマシンの開発であったり、王としての才能であったりと、多才な人物である事は間違いないのだが。
「今回の戦争の主役は、あくまでもドレイク王だ。そのドレイク王がどう判断するかだな。……アクセル王、今回の情報はドレイク王に知らせても?」
「その辺の判断は任せる。こちらとしては、報酬を貰えれば、その情報はそっちでどう使おうが関係ないし」
そんな俺の言葉にビショットは頷き、部下にゲア・ガリングの格納庫に俺を連れていくように言うと、俺は格納庫で報酬となるライネックの予備部品を貰うのだった。
そこから更に事態が動いたのは、その日の夜の事。
恐らくはビショットから情報を聞いたドレイクがチャンスと感じて動いたのだろう。
そこまで急に動くというのは予想外だったが、現在のラウの国の現状を知ったドレイクにしてみれば、ここで無駄に時間を浪費するよりも、タータラ城を攻撃した方がいいと判断したのだろう。
ただし……
「ちょっとやりすぎじゃない……?」
現在のタータラ城がどのような状況なのかを知っているマーベルは、不満そうに言う。
とはいえ、その気持ちは理解出来た。
何しろ、ドレイクはタータラ城を攻撃する際に城……現在のラウの国の主要メンバーが揃っているだろう王城だけではなく、市街地に対しても攻撃をしたのだから。
俺が今日の昼に見てきた限りでは、タータラ城の中には多くの住人……避難民がいた。
ミの国との国境からタータラ城までの間にある村や街の住人の大半を抱え込んでいるのだから、それも当然だろう。
そんな中でこうした空襲的な攻撃を行おうものなら、兵士でも何でもない一般人にも、もの凄い被害が出ている筈だ。
俺が知っているドレイクなら、このような無意味な行為をしたりはしないんだが。
このままラウの国を占領したとしても、間違いなく住人に恨まれる事になる。
占領せず停戦になったとしても、住人達はこのようなことをしたドレイクを恨み、ラウの国全体が反ドレイクの感情を抱くだろう。
また、今までの状況ではナの国は中立……いや、停戦交渉の襲撃の件もあって、ドレイク軍に好意的な中立だったのが、一般市民も戦いに巻き込むような真似をすれば、当然ながらその好意的な中立も本当の意味での中立……もしくは、ラウの国側に味方をする可能性すらあった。
今の状況を考えると、わざわざ好き好んでナの国を敵に回す必要はない。
「一体、ドレイクは何を考えてこんな命令を出した? もしくは……ガラリアが抑えきれなくて、部下を暴走させたか?」
呟き、それが一番ありそうな可能性に思えた。
何しろ、現在騎士の筆頭となっているのはガラリアだ。
ガラリアは、オーラバトラーの操縦技術という点では、既にバーンを抜いている。
だが、部下を率いるという点では……正直、微妙だろう。
こう言ってはなんだが、兵を率いるという点ではガラリアよりも上のバーンですら、ミの国では部下を暴走させてしまった。
であれば、ここでガラリアが部下を暴走させたとしてもおかしくはないか。
「ガラリアならそんな真似をする筈はないと思うけど……取りあえず、無意味な虐殺はしない方がいいわ。止めに行きましょう」
これが、タータラ城の中でも城に対して攻撃をしているのなら、マーベルもここまで強硬に反対はしなかっただろう。
だが、現在行われているのは、市街地に対する空襲だ。
正義感の強いマーベルとしては、これをそのまま見逃すといったことが出来る訳もない。
また、正義感という訳ではないが、俺も戦いに無関係な一般市民が殺されるというのは、見ていて面白いものではない。
そうである以上、これを止めるべきというマーベルに言葉に反対する筈もなく……
「分かった。来い。ウィル・ウィプスに行くぞ。このまま俺達が戦場に出て行っても、それは戦場を混乱させるだけだ」
「……分かったわ」
不承不承といった様子ではあったが、マーベルは俺の言葉に頷く。
そんなマーベルを連れ、俺は影のゲートを使って少し離れた場所に停泊しているウィル・ウィプスに転移するのだった。
「ドレイク、どういうつもりだ?」
ウィル・ウィプスのブリッジ。
そこには鎧を着て、臨戦態勢にあったドレイクの姿があった。
本人が前線に出るといったつもりはないのだろうが、それでもドレイクにしてみればそういう気構えでいるというのを示しているのだろう。
「アクセル王か。いきなりブリッジに姿を現すというのは、どうかと思うぞ」
「それは悪かったな。緊急事態だったんだから、許してくれ。……で? あれはどういうつもりだ?」
「あれ、とは?」
その惚けたような言葉で理解する。
市街地への空襲は、ガラリアが部下を抑えきれずに暴走させたのではなく、ドレイクの命令によるものなのだろうと。
「言わなくても分かると思うが? 何だって、わざわざ市街地を空襲するんだ? 城を攻撃するのなら、そこにラウの国の重要人物達がいるのだろうから、分かる。だが、市街地を攻撃する必要はどこにある?」
ドレイクと話している俺の隣では、マーベルが厳しい視線でドレイクを見てる。
睨んでいる……とまではいかないが、それでもドレイクが迂闊なことを口にすれば、即座に反論するだろう。
「アクセル王の言いたい事も分かる。儂も本来なら市街地を攻撃するといったような真似はしたくない。だが……ギブン家の者共はここで倒してしまうべきなのだ」
あー……ギブン家関係が。
ドレイクにしてみれば、ギブン家というのは宿敵と言ってもいい。
何しろ、アの国の国王になる前、ルフト領の領主だった頃から、散々に邪魔をしてくれた相手なのだから。
それこそ、園遊会の場にいきなり乗り込んで攻撃するといったような、テロ行為と呼んでもいいような真似をした事もある。
今までは、フラオンという愚物に従っていたので、十分にその実力を発揮出来なかった。
しかし、今はもうそのフラオンがおらず、足枷もない。
それどころか、パットフットという女の下に一致団結している。……実際にはラウの国がフラオン軍とピネガン軍の残党を吸収したといった形だが。
ともあれ、パットフットと実際に会った事がないので、具体的にどのような性格で、どのような能力を持っているのかは分からない。
しかし、それでも……間違いないのは、フラオンと比べて間違いなく有能だという事だろう。
つまり、ギブン家は……そしてゼラーナ隊は、その能力を最大限発揮出来るようになったのだ。
それを阻止したいというドレイクの思いは分かる。分かるが……
「それでも、これはやりすぎだと思うぞ」
「アクセル王にとってはそのように思えるかもしれん。しかし、ギブン家以外にタータラ城の市街地には多数の機械の館が出来ているとなれば、中途半端な真似は出来ん」
「……機械の館が?」
そっちに関しては、俺にとっても完全に予想外の言葉だ。
マーベルもまた、ドレイクのその言葉に驚きの表情を浮かべる。
「だが、ビショットから連絡がいったと思うが、俺がタータラ城を偵察した時はそんな建物はなかったぞ?」
機械の館というのは、オーラバトラーを製造する施設だ。
そうである以上、当然ながらオーラバトラーが入るだけの大きさが必要となる。
タータラ城は強国であるラウの国の王都というだけあって、かなりの広さを持つ城下街ではあったが、それでもその殆どが1階建て、たまに2階建てがあり、3階建てはかなり珍しいといった感じだった。
そしてオーラバトラーを製造する機械の館ともなれば、そんな3階建ての建物と同じくらい……あるいはもっと高くても、おかしくはない。
「それはそうだろう。儂が入手した情報によれば、完全な機械の館を複数用意しているのではなく、機械の館で行われる工程を幾つにも分け、その工程によって普通の家の中で作業出来るようにしていたのだから」
なるほど。これは地上世界の工場とかと同じような手法か。
今までは、機械の館で全ての部品を作り、それによってオーラバトラーを製造してきた。
実際、今まで襲った機械の館にはオーラバトラーの生産ラインがそのまま残っており、俺はそれを入手すれば、そのままダーナ・オシーやボゾンを製造出来るようになった。
そういうのに比べて、地上では様々な部品を複数の工場で作り、その部品に特化させる事によって部品の精度を高め、そうして製造された部品を決められた製造工場に持ち込んで組み立てる……という風になっている。
……もしかして、そのような形式になってしまったのは、俺が原因だったりするのか?
ギブン領やミの国において、俺はそれなりに機械の館を襲っては、そこに存在する部品や生産ラインそのものを奪ってきた。
それをフォイゾンが知れば、当然ながらそうならないように手を打つだろう。
ドレイクが言うようにタータラ城にある普通の家が機械の館のような事になってるとすれば、当然ながらそれは一朝一夕で出来る訳ではない。
それこそ、タータラ城が包囲されるもっと前から作業を進めていないと間に合わないだろう。
であれば、今回の一件は今は亡きフォイゾンの仕事という事になる。
「つまり、普通の家と機械の館の能力を持った家が分からないから、タータラ城の市街地を攻撃したと?」
「うむ」
俺の問いに、ドレイクは素直に頷く。
ドレイクの言葉には、説得力がある。
実際にこのまま時間が経過すれば、それによってラウの国はオーラバトラーを増産して戦力を増やす事になるのだから。
それも、当然だがそのようにして作るのはダーナ・オシーやボゾンではなく、最新鋭機のボチューンだろう。
「……どうやってその情報を入手した?」
そう尋ねたのは、ドレイクの入手した情報はそう簡単に入手出来るようなものではないからだ。
それこそ、ビショットが俺にタータラ城の偵察を頼んできたように、普通の手段ではガロウ・ランがタータラ城に侵入するのは難しい程、しっかりとタータラ城の防御を固めていたのだ。
そうである以上、どうやってドレイクがこの件の情報を入手出来たのかといった事を疑問に思うのは当然だろう。
ドレイクにも子飼いのガロウ・ランはいるのだろうが、それでもそう簡単にどうにか出来るようなタータラ城ではない。
だとすれば……万が一、本当に万が一の話だが、もしかしたらドレイクが言ってるのは嘘で、実は一般住宅に偽装した機械の館などないという可能性すらもある。
もっとも、その考えはすぐに否定する。
もしここで嘘を口にしていたとしても、戦いの後でタータラ城の城下街を見回れば、そこが機械の館であったかどうかというのはすぐに分かるのだから。
つまり、ドレイクの言ってる内容は恐らく真実。
相変わらず、その情報をどうやって入手したのかは分からなかったが。
「ラウの国も一枚岩ではない。それは……」
そう言い、言葉を続けようとした瞬間、ウィル・ウィプスのブリッジにいるアの国の兵士が叫ぶ。
「王城の方からもの凄いエネルギーを探知しました……これは……来ます!」
その言葉とほぼ同時に、タータラ城の方で夜を昼と認識させるような強力な輝きが生まれ……
「タ、タータラ城の上空にいたオーラバトラー隊のうち、三割が消滅しました……」
呆然と、そんな報告がされるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1684