シルキーがギブン家に連れ去られた。
そう言ってきた兵士の言葉は、当然ながら俺を驚かせるには十分なものがあった。
というか、シルキーがいるラース・ワウはアの国の中でも最大規模の機械の館もあり、護衛の戦力も十分に用意されている筈なんだが。
「悪いな、ゼット。少しブリッジに向かう」
オーラソードライフルの検証をして貰っていたゼットにそう告げると、ゼットも即座に頷く。
「ああ、構わない。俺も行っていいか? 詳しい事情を知りたいし、何より機械の館が無事なのかどうかを知りたい」
「いいぞ。ゼットがヨルムンガンドにいるのは、ドレイクも知っている。そのドレイクと通信して事情を聞く予定だからな。ゼットがいても問題ないだろ」
ゼットはドレイク軍の中でもかなり高い地位にいる。
オーラマシンの開発者の1人なのだから、当然だろう。
「それにしても、ギブン家か。やっぱりゼラーナ隊だと思うか?」
「だろうな。ゼットも知っての通り、ギブン家のゼラーナ隊は少数精鋭だ。それに……最初に俺がビルバインと戦って以降、暫く姿を見せないと思っていたんだが、まさかこういう手段に出るとは思わなかった」
とはいえ、ギブン家にとってはそんなに悪くないどころか、かなりいい作戦なんだろうけどな。
俺のサーバインやマーベルのダンバイン、更に最新鋭量産型オーラバトラーのライネックを使っているオーラバトラー隊。
そんな戦力がドレイク軍と協力して攻撃をしてくるのだから、ラウの国としてはゼラーナ隊を出しても被害を受けるだけだと判断したのだろう。
ラウの国にしてみれば、ビルバインとショウを有するゼラーナ隊は切り札だ。
その切り札を傷付けない以上、ゼラーナ隊を出さないという選択は分かる。
そして出撃していないとはいえ、ゼラーナ隊は精鋭である以上、遊ばせておく必要はない。
そんな中でゼラーナ隊を使った作戦が、ラース・ワウの襲撃でシルキーの奪取というものだったのだろう。
「そうだな。けど、これでラウの国が新たな地上人を召喚出来る可能性が出て来た。次に儀式を行えるのは、まだ暫く先らしいが……それまでに、出来るだけ早く取り戻したいところだ」
ゼットにしてみれば、ラウの国に新たな地上人が召喚され、それが聖戦士として戦場に出て来るのは可能な限り避けたいのだろう。
実際にドレイク軍の聖戦士が大きく活動しているのを思えば、余計にそう思ってもおかしくはない。
そんな事を話しながら、俺とゼットはブリッジに到着する。
一応ヨルムンガンドはシャドウミラーの旗艦である以上、他勢力の重要人物をブリッジに入れるのはどうかという思いがないでもなかったが、それを考えるのならヨルムンガンドの設計をしたのはショットやゼット達だ。
設計図からヨルムンガンドについてしっかりと理解している以上、今更だろう。
「アクセル王」
「ウィル・ウィプスのドレイクと通信を繋げ」
近付いてきたキブツに対し、即座に命令する。
そうして改めてブリッジを見てみると、そこにはマーベルの姿もあった。
シルキーが奪われたという話は、マーベルにとっても決して他人事ではないのだろう。
ましてや、このままだとラウの国に新たな地上人が召喚されるかもしれないのだから、尚更だろう。
「ウィル・ウィプスとの通信、繋がりました!」
ブリッジにそんな声が響くと、映像モニタにドレイクの顔が表示される。
『アクセル王、事情は理解していると思うが?』
「そうだな。ゼラーナ隊によってシルキーは奪われたんだろう? だがラース・ワウは防備もしっかり固められていた筈だと思うが?」
『ビルバインという強敵がいたのではな。こちらもズワァースとライネックを何機か出したが、どちらも小破から中破のダメージを受けてしまったらしい』
「へぇ……」
ドレイクの言葉に少し驚く。
ライネックとズワァースは、どちらも最新鋭のオーラバトラーだ。
それでもビルバインを有するゼラーナ隊と戦って、撃破でも大破でもなく、小破から中破程度のダメージですんだということは、相応に技量の高いパイロットが乗っていたのだろう。
「腕利きのパイロットをそっちに残していたのは分かるが……それでも、ゼラーナ隊をどうにかする事は出来なかったか」
『そうだな。幸い、ルーザは現在クの国に行っていて、その心配はしておらんが』
「そうか」
個人的には、ルーザの身の安全はどうでもいい。
それこそ、シルキーの代わりにルーザが連れ去られた方がよっぽどよかったと思うくらいには。
シルキーは地上人を召喚出来る能力を持っているが、ルーザの場合は俺に向かって嫌味を言うくらいしかしない。
そんな2人のどっちを重視するかと聞かれれば、俺なら即座にシルキーを選ぶ。
もっとも、それはあくまでも俺ならばの話だ。
ドレイクにしてみれば、あんなルーザであっても自分の妻である以上、大事にしたいと思っているのだろう。
ルーザのどこがいいのかは、分からないが。
また、それを抜きにしてもルーザがドレイクの妻であるという事は、現在のアの国では王妃という地位にいる。
そう考えれば……まぁ、ルーザが連れ去られないのはよかったのか。
俺にとっては残念だったが。
『ちなみに防衛の戦力には、ミュージィ・ポーが大きな役割を果たした』
「……ミュージィが?」
ミュージィというのは、リムルがギブン家に逃げ込む前に家庭教師をしていた人物で、ショットの恋人でもある。
以前、機械の館にあるショットの執務室で、イチャついている光景を目にした事があった。
正直、仕事場でそういう行為をするのはどうよ? と思わないでもなかったが。
聞いた話によると、ポー家というのはそれなりに名家らしい。
まぁ、名家の出でもなければ、リムルの家庭教師になるといった真似も出来ないだろうが。
そんなミュージィが、ゼラーナ隊とやり合ったのか。
『うむ、ポー家の面々も協力してくれたおかげで、機械の館の被害はなかった』
「あー……だろうな」
考えてみれば当然なのだが、シルキーを奪うというのが最優先の目的だったのだろうが、だからといって他の目的がない訳ではない。
ギブン家やラウの国にしてみれば、ドレイク軍の中で一番大きな機械の館というのは、それを潰せれば利益も大きいだろう。
最善なのは、機械の館を襲ってそこで開発している新型のオーラバトラーだったり、部品だったり、場合によっては設計図を奪ったり……そんな真似が出来ればよかったんだろうが。
ともあれ、機械の館に攻撃をしないといった選択肢はゼラーナ隊にはなかった筈だ。
何しろ、ビルバインもいるのだから、戦力的には十分だし。
俺もミュージィには感謝しないとな。
現在ラース・ワウの機械の館では、ズワァースを改修して俺の専用機を作って貰ってるのだから。
そっちに被害が及ばなかったのは、俺にとって幸いだった。
「それにしても……機械の館が無事だったのはいいが、シルキーが奪われたのは痛いな。次の儀式の日までに取り返せるか?」
『取り返すしかあるまい』
ドレイクが強い決意を滲ませて、そう告げる。
とはいえ、その気持ちは分からないではない。
ドレイク本人が有能なのは間違いないが、それでもアの国の領主の1人でしかなかった身から、アの国の王となり、今となってはミの国をも占領し、ラウの国の王都近くまで攻め込んでいる。
これは、ショットやゼットがオーラマシンを開発したおかげであり、その2人を召喚出来たのは、シルキーの存在があったからに他ならない。
そのシルキーを奪われたのだから、ドレイクとしては何が何でも取り返す必要があると考えるのは当然だろう。
「とはいえ、どうやって取り返す? まさか、シルキーがタータラ城にいるとは思えないだろうし」
どうやってタータラ城を抜け出したのかは分からないが、ラース・ワウを襲ったゼラーナ隊が再びタータラ城に戻ってくるとは考えられない。
であれば、当然ながらどこかに隠れているといったことになるのだろうが……問題なのは、それがどこなのか分からないという事だろう。
何だかんだとバイストン・ウェルは広い。
ましてや恐獣の棲息している場所も多く、隠れる場所は幾らでもある。
そんな中からゼラーナ隊を見つけるというのは、不可能だった。
ドレイクもそれが分かっているからこそ、俺の言葉に厳しい表情を浮かべているのだろう。
「シルキーをもし見つけたとして……問題なのは、シルキーがどういう状況にあるかだな。ゼラーナ隊に奪われたという話だったが、シルキーが自分から望んでゼラーナ隊と共に行動しているのか、それとも嫌がるシルキーを強引に連れ去ったのか」
自分で言っておいてなんだが、恐らくは五分五分だろうと思う。
以前まで……水牢に封じ込められていた状況であれば、シルキーは自ら望んでゼラーナ隊と一緒に行ってもおかしくはなかっただろう。
だが、俺とマーベルからの進言……というよりは忠告か? そんなアドバイスによって、現在のシルキーは城の中を自由に出歩くといったような真似は出来ないが、それでも快適に生活出来るような状況になっていた筈だ。
そんな状況でシルキーがどう判断するか。
『分からん。だが、儂としては強引に連れていったのであって欲しいとは思うがな』
ドレイクの立場としては、そう言うしかないか。
「それで、問題なのはシルキーをどうやって取り戻すかだが……ゼラーナ隊が出て来ない事にはな」
『つまり、嫌でも出て来るようにする必要があるという事か。……アクセル王、今まではショウ・ザマのビルバインが出て来た時、すぐに対処出来るようにヨルムンガンドで待機して貰っていたが、こうなってはゼラーナ隊を誘き寄せる必要がある。明日はタータラ城への攻撃に参加して欲しい』
「だろうな。ゼラーナ隊を引き寄せるには、それが一番手っ取り早いか」
タータラ城は現在ラウの国にとって最終防衛拠点だ。
そう思うと、フォイゾンのドレイク軍を奥深くまで引き寄せて籠城し、ナの国の援軍を待ってから反撃するという作戦は失敗に終わったし、今となっては最悪の状況になってしまっている訳か。結果論だけど。
ともあれ、ラウの国にとって王都のタータラ城は絶対に陥落する訳にはいかない。
ましてや現在のタータラ城にはミの国との国境からタータラ城までの道沿いにあった村や街の住人が多数避難しているのだから。
今までの戦い、特に以前ドレイクが行った夜襲でかなりの死人は出ただろうが、それでもまだ生き残っている者は多い筈。
ゴラオンに乗せて避難させるにも、幾らオーラバトルシップのゴラオンであっても、まさか現在のタータラ城にいる全員を乗せるなんて真似は出来ないだろうし。
だからこそドレイク軍がタータラ城に攻撃をした場合、それを防ぐ為には多くの戦力が必要となり、ゼラーナ隊を呼び寄せる可能性があった。
長距離の通信が出来ない以上、伝令を出す必要があるが。
あるいは、最初からシルキーの一件が終わったらタータラ城に戻ってくるという事になっている可能性もあるが。
ともあれ、ゼラーナ隊を誘き寄せるという意味ではタータラ城の……それも市街地に攻撃するというのは悪くない手段ではある。あるんだが……
視線をマーベルの方に向けると、明らかにそこには不満の色があった。
マーベルにしてみれば、やはり一般市民を攻撃するというのは許容出来ないのだろう。
それでも即座に反対を口にしないのは、タータラ城の市街地に機械の館を分散して民家や倉庫といった建物に偽装して作られていると知ってるからか。
とはいえ、市街地を攻撃したとなるとマーベルはともかく、シーラ辺りはどう思うかだろうな。
停戦協定の襲撃で、現在のナの国は中立ではあっても、アの国側の中立だ。
しかし、それもドレイクがタータラ城の市街地に攻撃を仕掛けたという話を聞けばどうなるか。
いやまぁ、既に一度行っている以上、今更なのかもしれないが。
「ナの国はどうするつもりだ? 市街地を攻撃すれば、またラウの国側になる……とまではいかなくても、こちら寄りの態度を変える可能性もあるが」
『分かっておる』
俺の言葉に、ドレイクは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
本来なら、ドレイクとしてもナの国を敵に回すような真似はしたくないのだろう。
ましてや市街地を攻撃すると、ナの国だけではなくマーベルの機嫌も損なう可能性が高い。
それ以外にもドレイク軍の中にはそれを嫌う者は少なくないだろう。
だが……それでも、現在の状況を考えるとそれが最善の手段であるのも事実。
「無難な行動だと、タータラ城を攻撃するが市街地を攻撃せずに、城だけを攻撃するといった感じか。もっとも、今の状況でも城を拠点にしているのかどうかは分からないが」
ラウの国の主立った者達にしてみれば、城を攻撃される可能性というのは当然考えているだろう。
そうである以上、城を拠点から外すといったような真似をしても、おかしくはなかった。
そうなると、戦いの中で面倒なことになるのは確実であり……
『うぬぅ』
ドレイクの口からは唸り声が漏れるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1684