オーラバトルシップ。
それは、国の象徴とも呼ぶべき規格外――あくまでもバイストン・ウェル基準で考えればだが――の戦略兵器と言ってもいい。
実際に第二次世界大戦前後は戦艦の類が戦略兵器として扱われていたのを考えれば、オーラバトルシップが同様の存在として認識されてもおかしくはない。
それだけに、1隻を作るにも多くの金や資源、人手といったものが必要になる。
実際、クの国のゲア・ガリング、ラウの国のゴラオンを見れば、その辺は分かりやすいだろう。
アの国がドレイクのウィル・ウィプスと俺のヨルムンガンドという2隻のオーラバトルシップを作る事が出来たのは、アの国は他国にオーラマシンを売って大量に稼いでいたというのが大きい。
また、フラオンが自分勝手に重税を掛けていても、それでも何とか生きていく事がで出来ていたように、アの国は元々豊かな国だ。
……ハワ、ケム、リ、ク、ミという5ヶ国に周囲を囲まれているにも関わらず、それでも国としてやってこれたのは、その辺も理由にあるだろう。
そうである以上、フラオンを半ば着の身着のままで追放し、フラオンが溜め込んでいた金や資源の類をオーラバトルシップの建造に回せたというのも、この場合は大きかった。
普通ならドレイクがオーラバトルシップを建造するといって人を集めても、進んでそれに従うような者は少ないのだろうが……何しろ、ドレイクはフラオンを追放した英雄だ。
ましてや、ドレイクが治めるルフト領はオーラマシンによってガロウ・ランの盗賊達の多くは捕縛か殺されるかされており、税率もそこまで高くはなく、暮らしやすい領土として有名だった。
そんなルフト領の話を聞き、移住を希望する者も後を絶たなかった。
他の領主にしてみれば、自分の領地から人がいなくなるという事は、自分の収入が減るのだから、それを許容しなかったが。
ともあれ、そこまで慕われていたドレイクだからこそ、オーラバトルシップを2隻も建造するといった真似が出来たのは間違いない。
そうなると……現在マーベルの家のTVに映し出されている、城……いや、塔と表現した方がいいか? その塔が地面から生えている……そう、分かりやすく言葉にすれば忍者が使うマキビシのような形をしていると表現すればいいか。
とはいえ、マキビシといった表現とは違い、どこか優雅さすら感じられるその外見は、かなり特徴的だ。
「アクセル、あのオーラバトルシップ……何だと思う?」
正確には、どこに所属するオーラバトルシップか? と聞きたいのだろう。
マーベルはバイストン・ウェルで常に俺と一緒に行動していた。
それだけに、普通の兵士よりは多くの物を見ている。
だからこそ、初めて見るオーラバトルシップに驚いたのだろう。
マーベルの両親も俺が何と答えるのかを見ている。
「さて、どこの所属かと言われれば、考えられる可能性は幾らかある。俺達を転移させた奴の言葉を信じる限りでは、オーラマシンに関わる奴を全て地上に転移させるといったような内容だった」
オーラバトラーに少しでも関わった者全員を転移させるとなれば、例えばオーラバトラーに使う素材を売って糧を得ていたリの国の住人達や、ケムやハワといったようにドレイクからオーラバトラーを買っていた国の住人も含まれる。
ただ、そこまでするとなると、それこそ全ての住人を転移させる必要がある以上、恐らくはオーラバトラーを開発出来る国……それも国民全員ではなく、それに直接関わっているような者、というのが予想出来た。
その辺りについて説明すると、マーベルも頷く。
「でしょうね。シルキーがオーラロードを開いた時は、3人を召喚するだけで力を使い果たしていたわ。だとすると、オーラマシンに関わる人達だけを転移させるにも、一体どれだけの力が必要になるのか……」
実際に自分の目でシルキーがオーラロードを開いているだけに、マーベルにしてみればその意見は当然だろう。
「それでも、多くの者が地上に転移してきたのは間違いない。……現在、バイストン・ウェルでどうなっているのかは全く分からないけどな」
ドレイクを始めとして、国王達も地上にやって来たのだ。
それはつまり、現在バイストン・ウェルにおいて幾つもの国で国王がいなくなっているということを示していた。
これが地上の国家であれば、国王……首相や大統領といった代表者がいなくなっても問題はないが、バイストン・ウェルでは地上よりも大きな権力を持つので、その国王がいなくなったのは大きな問題になる筈だった。
「その件はともかくとして、あのオーラバトルシップだ。考えられる可能性としては3つ。1つ、ケムやハワのようにアの国からオーラマシンを輸入していた国がオーラバトルシップを建造していた。2つ、クの国やラウの国が2隻目のオーラバトルシップを建造していた。そして3つ……俺はこれが一番可能性が高いと思うが、ナの国で開発されていたオーラバトルシップ」
以前ナの国に行った時、キッス家配下のガロウ・ランがナの国でもオーラバトルシップを開発しているという情報を持ってきている。
そしてナの国は国力という点では一番高い。
それこそ、ミの国を併呑したアの国よりも、純粋な国力や領土といった点では上だろう。
それだけに、ナの国で開発していたオーラバトルシップがあのマキビシのような存在なのではないかと、そう思えた。
「ナの国が……」
ナの国という言葉に、微妙な様子を見せるマーベル。
マーベルとナの国の女王のシーラは、微妙に相性が悪いんだよな。
その辺の事情を考えれば、マーベルの今の様子は理解出来ないでもない。
「まぁ、あくまでもそういう予想ってだけだ。実際にあのオーラバトルシップに接触してみないと、何も分からない。出来れば一度あのオーラバトルシップに接触してみたいな。それにヨルムンガンドにも」
特に、ヨルムンガンドとの接触は必須だ。
サーバインが精神コマンドを使った影響で結構なガタがきている。
そうである以上、ヨルムンガンドにある機械の館でオーバーホールをする必要がある。
現状では、サーバインに乗るのは不可能ではないものの、戦闘になった場合にどうなるのかは全く分からない。
ショウや黒騎士といった連中に襲撃されれば、空中分解してもおかしくはなかった。
そうなっても俺が怪我をするといった事はないが、それでもサーバインは出来るだけ確保しておきたい。
ホワイトスターの技術班への土産という意味でも。
ただ、そうなると俺が何に乗るのかといった問題になるんだよな。
いっそニーズヘッグとかミロンガ改とか、サラマンダーとかに乗るか?
とはいえ、それはそれで目立ちすぎるしな。
だが、オーラバトラーはマジックコンバータがないと乗れない。
ショットも恐らく地上に出てるから、合流出来ればズワァースの改修が終わってるかもしれないが。
とはいえ、この状況でショットがどこにいるのかを探すのは難しい。
ショットもアメリカ人だって話だったし、トッドやアレンと一緒にアメリカに転移してきていてもおかしくはない。
いざという時の為の戦力を確保する為にも、出来ればショットやトッド、アレンといった連中と合流したいところだが、どうだろうな。
アメリカ出身だというのは知ってるが、どこに住んでいたのかといったような事は分からない。
特にトッドやアレンは空軍の人間だったんだから、転移した場所……空軍の基地かどこかに転移したのか、もしくはマーベルみたいに実家に転移したのかも分からなかった。
ネットとかがあれば、オーラバトラーが転移してきたという情報を素早く入手出来るんだろうが、この世界ではそれは無理なんだよな。
いっそ、ゲートを設置してホワイトスターに連絡を取った方がいいか?
だとすれば、それこそすぐにでも味方を見つける事は出来るし、敵も倒せる筈だ。
少し考え、やがてそうした方がいいだろうと判断する。
「マーベル、ちょっといいか?」
「え? 何?」
「ちょっと2人で話したい事があるんだけど」
「待ちなさい」
俺がマーベルを呼ぶと、マーベルの父親が即座にそう声を掛けてくる。
「うちのマーベルと一体どんな話をするつもりだね?」
「あー……いや、さっき言ったように、俺は異世界で国の代表をしているんだ。そして異世界にある国と連絡を取る為には、ゲートという転移装置を使う必要がある。だから、どこかにゲートを設置出来ればと思って」
「それなら、マーベルではなく私に聞くべきではないかね?」
まぁ、その言葉は正しいんだろうが、何故かマーベルの父親は俺に当たりが強いから、出来ればマーベルを通して話をしたかったんだよな。
マーベルの母親は、そんな父親と逆で俺に友好的なんだが。
「あー……どこか使ってもいい場所ってある?」
マーベルの家では牧場をやっているらしく、かなり広い土地を持っている。
そうである以上、俺の言葉にマーベルの父親は深く息を吐いてから立ち上がる。
「来なさい」
そう、告げるのだった。
「嘘……だろ……?」
マーベルの家の牧場の中でも、人目につかない場所。
そこには俺が空間倉庫から取り出したゲートが設置されていたものの、ホワイトスターとの連絡は出来なかった。
それは、バイストン・ウェルでゲートを設置した時と同じ感覚だ。
しかし、これは一体……何がどうなってこんな事に?
そう考え、オーラ力の影響か? と考える。
正体は未だに分からないが、バイストン・ウェルにいた大勢をオーラロードを使って地上に召喚するといった真似をしたのだ。
現在の地上では、オーラ力が色々と影響を与えていてもおかしくはない。
確証はなかったが、俺としてはその可能性が当たっていて欲しいと思うのが正直なところだ。
出なければ、俺がホワイトスターに戻る為にはレモン辺りからどうにかして迎えに来て貰うしかない。
一応ニーズヘッグに内蔵されているアギュイエウスはゲートとリンクされているので、それを使えば帰れる可能性はあるかもしれないが……いや、無理か。
オーラ力によってゲートのリンクが妨害されているのなら、それこそアギュイエウスであってもホワイトスターに戻るのは難しい。
そうなると、やはりこれはレモン達が迎えに来るのを待つしかないのか?
いや、ゲートが繋がっていない限り、時間の流れが違うというのは今まで十分理解している。
だとすれば、それこそ明日にでもレモンが来るかもしれないが、それが1年後、5年後……場合によっては、10年後、100年後といった事になってもおかしくはない。
ホワイトスターに帰るだけなら、本来はニーズヘッグのシステムXNを使うといった手段がある。
だが、現在のこの世界においては、システムXNですらオーラ力の影響かホワイトスターに戻ることが出来なかった。
それは、実際にニーズヘッグを使ってみた以上、明らかだ。
「アクセル……」
側にいたマーベルが心配そうに言ってくるが、俺はそれに何と言葉を返せばいいのか分からない。
正直なところ、自分でも思う以上にショックを受けていたのは事実だ。
これが最初から無理だと思っていれば、そこまでショックを受ける事はなかっただろう。
だが、バイストン・ウェルでは無理でも、地上に出ればゲートを使える。
そう思っていたのも事実だ。
「悪い、少し1人にしてくれ」
そう言い、俺はゲートを空間倉庫に収納すると、その場から離れるのだった。
夜……俺はマーベルの家の敷地内にある草原の上で寝転んで星空を見ていた。
マーベルの家からは大分離れているので、家の中の生活音の類は聞こえてこない。
本来なら、すぐにでもヨルムンガンドを探したり、アメリカにいるだろうショット、トッド、アレン達と合流したりと、やるべき事は多数ある。
あるのだが……それでも今は不思議と何もしたくないという思いの方が強かった。
本当に、自分でも不思議に思うくらい気落ちしているのだ。
そんな中、周囲に誰もいない草原に寝転がって星空を見ているというのは、どこか気落ちした気分を晴らすという意味でも悪くなかった。
悪くなかったのだが……
「1人にしてくれと、そう言ったと思うが?」
近付いてきた気配の主……マーベルにそう告げる。
だが、マーベルはそんな俺の言葉を無視し、俺の横に座る。
「ここは私の家の敷地内よ? なら、私がここにいてもいいんじゃない?」
「好きにしろ」
何となく言い返す気分でもなく、マーベルが隣に座るのを待つ。
そして……
「ねぇ、アクセル」
そう声を掛けてくるが、俺はそれに答える代わりにマーベルに視線を向ける。
「アクセルが自分の国に帰れないのは、残念だと思うわ。けど……こう言ったらなんだけど、少しだけ喜んでいる自分もいるのよ」
「……そうか」
「ええ。アクセルには待ってる人がいるのに、酷い女でしょ? でも……それでも、私はアクセルと一緒にいられるのが嬉しい。バイストン・ウェルでもそうだったけど、地上に戻ってきたからか、余計にそう思うわ」
マーベルは俺の頭に手を伸ばし、撫でながらそう言ってくる。
「だから……少し、そう少しだけでいいから、この戦いが終わって、アクセルが自分の国に戻るまで……その時間を私にちょうだい」
そう言いながら、マーベルは俺に唇を重ねてくる。
俺はそれを受け入れ、月明かりの下でマーベルを抱きしめて深い口づけを交わし……マーベルがそっと頷くのを見てから、マーベルの服を脱がすのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1600
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1688