「そう言えば、アクセルとマーベルはTVを見てるか? 俺達が知らないオーラバトルシップが1隻、あっただろ?」
これからどう行動するのかという話をしている中で、不意にトッドがそんな風に言ってくる。
トッドの言うオーラバトルシップについては、どんな奴のことかは容易に想像出来た。
「あの城というか、塔が台座ごと浮かんでるような奴か?」
「そうそう、それだ。あれについて何か情報を持ってるか?」
「多分だけど、ナの国のオーラバトルシップだな」
あっさりと答えた俺に、トッドは意表を突かれた様子を見せる。
まさか、謎のオーラバトルシップについてこうもすぐに情報を得られるとは思ってもいなかったのだろう。
「ナの国の……本当か?」
「絶対に確実って訳じゃないけどな。ただ、俺がナの国に行っていたのは知ってるだろ? その時、キッス家のガロウ・ランがナの国でもオーラバトルシップを建造中だという情報を得た事がある。それが具体的にどんなオーラバトルシップなのかというのは分からないが、ここに来て未知のオーラバトルシップがいるとなれば、ナの国の可能性が高い」
実際に確認した訳ではないのだが、それでも可能性として一番高いのはやはりナの国だ。
ナの国とは友好関係を結んでいるし、いっそ向こうに合流してもいいのかもしれないな。
そうなると、合流する先として考えられるのは、何だかんだと結構な数がある事になるか。
もっとも、やはり最優先なのはヨルムンガンドだが。
「ナの国か。……ショウのビルバインを開発したのはナの国だって噂があるの、知ってるか?」
「可能性として間違いじゃないだろう」
ナの国はラウの国と……そしてギブン家と技術的な協力をしていた。
ボゾンの発展系であるボチューンは開発したのは、ナの国の力があってこそだ。
だとすれば、ボチューン以外にビルバインを開発していてもおかしくはない。
開発は出来るのだろうが、何故それをショウに与えたのかといった事は疑問だが。
ナの国は、当初……俺がドレイクの使者として交渉に行くまでは、ラウの国と協力態勢にあったのは事実だ。
だが、その後の停戦交渉において、黒騎士の乗ったボゾンが停戦交渉に乱入した。
当初は黒騎士の正体はショウではないかと思っていたのだが、ショウと黒騎士が同時に出て来た事により、それは否定された。
そして何より……
「地上に転移する前のタータラ城での戦い……黒騎士はボゾンじゃなくて、ズワァースに乗っていた。その上で、ショウと協力して俺に攻撃を仕掛けてきた。これは一体どういう事だと思う?」
ナの国のオーラバトルシップの話から、いきなり黒騎士について話が飛んだのに驚きつつも、トッドは頷く。
「停戦交渉の時はボゾンに乗っていたから、ラウの国側の戦力だと思っていた。それがタータラ城での戦いでは、ズワァースに乗っていた、か」
ズワァースというのは、ドレイク軍の中でも最新鋭の機体だ。
最新鋭の機体ということでは、生産性がそれなりに高いライネックもあるが、ズワァースは生産性度外視とまではいかないが、それでもライネックとかに比べると非常に生産性は悪く、その分性能が高い機体だ。
当然ながら、そんな高級機である以上は管理も厳しい。
停戦交渉を襲ったボゾンなら、ボチューンというより最新鋭の機体も出来ているので、それなりに入手しようと思えば出来るかもしれない。
それこそ、影のゲート、気配遮断、空間倉庫といったスキルを持つ俺なら、幾らでもボゾンを奪えるだろう。
だが、それはあくまでも俺だからだ。
俺の持つスキルがない場合、オーラバトラーをそう簡単に奪うといった真似は出来ない。
そして……ズワァース。
これは最新鋭機だけに、奪うというのはかなり難しい。
それこそ、ドレイク軍の中に黒騎士と通じている者がいなければ、奪取は不可能だろう。
黒騎士がどこの所属なのか、全く分からなくなったな。
それこそ、俺を狙っているというのは間違いなかったが。
そうなると、一般的に考えればやはりラウの国側の所属となるんだが……
「結局、黒騎士を捕らえてみないと駄目か」
「出来るのか? アクセルのサーバインでも倒せなかった奴だろ? ショウと一緒にいたとなると、そんな2人を一緒に相手にする必要があるし」
「そう言われてもな。向こうが襲ってくる以上、こっちは迎撃する必要がある。……まぁ、それをやるにしても、オーラバトラーを用意する必要があるが」
最悪、ニーズヘッグ、サラマンダー、ミロンガ改辺りを使えば対処は可能だと思うが、出来ればシャドウミラーの機体は使いたくない。
……いっそ、オーラバトラーに変化を与えるという意味では、ありなのかもしれないが。
ショットやゼットは、ズワァースをオーラバトラーの最終形と認識している。
そこに、全く未知の技術であるシャドウミラーの機体を見せれば、あるいはショットやゼットも別の観点から新しいオーラバトラーのアイディアとなる可能性は十分にあった。
「へぇ、アクセルの世界の機体か。出来れば見てみたいな」
「オーラバトラーよりも大きいから、今の状況で見せるのはちょっと難しいな」
一番小さなニーズヘッグですら、全高15m程の大きさだ。
オーラバトラーが7m前後と考えると、倍近い。
オーラバトラーが大量に地上に出ている中で、ニーズヘッグを出してみせれば……間違いなく大きな騒動となる。
サラマンダーはVFなので戦闘機形態のままなら……うん、それはそれで未知の戦闘機として問題になりそうだな。
サラマンダーのVF形態は戦闘機なのだが、当然ながらこの世界の戦闘機とは大きく違う。
一体何世代先の技術を使っている機体なのか……といったように思っても、おかしくはない。
トッドは元空軍のパイロット候補生だったので、サラマンダーを見れば興味を抱いてもおかしくはなかった。
「取りあえず難しいな。……話を変えるが、トッドが転移した場所は家の近くだったんだよな? なら、アレンも家の近くに出てると思わないか?」
出来ればアレンとも合流したいと思い、そう告げる。
アレンはトッド程ではないにしろ、オーラバトラーの操縦に長けている。
また、元軍人だという事もあり、部下を指揮する能力にも長けていた。
それを鼻に掛け、他人を見下すといった様子が難点だが。
「どうだろうな。俺やマーベルの件を思えば、アレンも実家の側に出てもおかしくはない。問題なのは、俺がアレンの実家がどこにあるのかを知らないって事だな。まさか、軍に聞く訳にもいかないし」
「だろうな。間違いなくトッドとアレンは軍からマークされている筈だ」
バイストン・ウェルに召喚されたのなら、行方不明になっているというだけですんだかもしれない。
だが、トッドがオーラバトラーに乗って戻ってきたというのは、母親だったり、知り合いだったりに見られている。
そんな状況でトッドが軍に連絡してアレンの住所を聞いたら、どうなるか。
それは考えるまでもなく明らかだろう。
逆探知とかそういうのをやって、どこから電話をしてきたのかを調べ、すぐに人を派遣する。
取りあえず、マーベルの家でそのような真似は絶対に出来ない。
もしやるとすれば、影のゲートで遠く離れた場所に移動して、それを使って陽動させるようにとか、そんな感じだろう。
もしくは、影のゲートで基地に忍び込んでアレンの住所を調べるか。
当然ながら、軍の警備は厳しい。
バイストン・ウェルと違って監視カメラとかそういうのもあるから、気配遮断は殆ど効果がないんだよな。
まぁ、そういうのは直接コンピュータの置かれている部屋に影のゲートで転移してしまえばいいのかもしれないが。
「ちなみに、ジェリルはどうするんだ?」
「止めておいた方がいいだろ」
トッドの疑問に、考えたりもせず即座に答える。
ジェリルは、聖戦士として考えれば攻撃に特化しているとはいえ、それなりに有能な存在だった。
しかし、性格が問題だ。
もしジェリルを仲間にした場合、ジェリルは自分勝手に振る舞うだろう。
……それ以前に、ジェリルの性格からして俺達と行動を共にするとは思わない。
ジェリルにしてみれば、マーベルは自分と同じ女の聖戦士でありながら、明らかに自分よりも格上の存在だ。
トッドもまた、以前模擬戦をやった時にジェリルにとってトッドの存在は面白くないらしく、思い切り攻撃をしていた。
俺もまた、マーベルと親しいという関係でジェリルからは嫌われている。
「ジェリルが駄目となると、トカマクも駄目か」
ショウやトッドと一緒に召喚されたトカマクは、オーラバトラーの機体特性とも言うべきオーラソードを使った近接戦闘に才能がなかった。
代わりに、オーラショットやフレイボムといったような遠距離攻撃を使って仲間の援護をするという才能に長けている。
攻撃特化のジェリルと、援護特化のトカマク。
当然のようにこの2人の相性はよく、更には性格的な問題でもジェリルがトカマクを引っ張っており、俺が知ってる限りだと、この2人は付き合っていた筈だ。
トカマクの援護特化という才能は、何気にオーラバトラーのパイロットとしては珍しく、出来れば一緒に行動して欲しいんだが。……ジェリルと別行動になると、難しいだろうな。
トカマクはロシア……いや、ソ連か。そっち方面の出身だったし、ヨーロッパにいるジェリルと合流するのは難しくなさそうだ。
いや、ジェリルを見つけるのは難しいか?
一瞬そう考えたが、ジェリルの性格を考えれば、レプラカーンで好き放題に暴れているのは間違いない。
だとすれば、トカマクがニュースでジェリルの姿を見つけるのも難しい話ではないだろう。
ただでさえ、ジェリルはレプラカーンという、火力偏重の機体に乗っており、そのレプラカーンの数は多くない以上、トカマクがジェリルを見つけるのも難しくはない筈だった。
というか、大量に火器が装備されているレプラカーンを、後方からの援護に特化したトカマクが乗るのはともかく、攻撃特化のジェリルが近接戦闘に向いているとは言えないレプラカーンに乗っているってのは、どういう意味だ?
レプラカーンの上位互換というか、進化形のライネックとかなら、まだ納得も出来るんだが。
「そうなると、結局ここにいる俺達3人だけか。……今更ドレイク軍に戻ってもなんだし、取りあえず俺はアクセル達と行動を共にするよ」
トッドのその言葉に、俺はマーベルを見る。
俺はトッドと一緒に行動しても構わないが、マーベルはどうだ? といった意味を込めての視線だったのだが……
「そうね。どのみちヨルムンガンドかショットに合流するつもりだったから、それは別に構わないわ。出来ればもう少しアクセルと一緒の時間を楽しみたかったけど」
「マーベル、お前……随分と性格が変わってないか?」
マーベルの口から出た言葉は、トッドにとっても驚くべきものだったのだろう。
まぁ、普段のマーベルは凜々しいというか、そういうのを表に出さないといったような……そんな性格をしてるしな。
それが俺と付き合うようになったら、即座にこういう態度になったのだから、以前からマーベルのことを知っているトッドが驚いてもおかしくはない。
「しょうがないじゃない。アクセルには恋人が10人以上いるのよ? そんな相手を恋人にしたんだから、私もしっかりと自分の存在をアピールしておいた方がいいのよ。……正直、もしアクセルじゃなかったら、きっと私の方からアクセルに告白する事はなかったでしょうね」
「あー……うん、そうか。それはアクセルが悪いな、うん。なぁ、アクセルもそう思うだろ? マーベルの気持ちにもっと早く応えていれば、こういう事にはならなかったんだから」
「それに関してはノーコメントで」
取り合えず、そんな風に話を誤魔化す。
ともあれ、トッドが俺達と行動を共にしてくれるというのは、俺にとっても嬉しい出来事だ。
聖戦士筆頭というのは、トッドの実力を端的に示している。
バイストン・ウェルに召喚された聖戦士の中でも、トッドは間違いなくトップ3に入る。……その中でも最下位だろうけど。
聖戦士の中で1位は、誰の異論もなくショウ。2位がマーベルで、3位がトッド。
トカマクはともかく、アレンやジェリル辺りその番付に不満を抱くかもしれないが、俺が見た感じではそんなところだ。
ちなみにアレンとジェリルでは、攻撃という一点においてはジェリルだが、総合的な能力となればアレンに軍配が上がる。
ただし、ジェリルがトカマクと組むとトッドにも勝てる可能性があるし、マーベルも油断すると危ないのは間違いない。
そういう意味では、この順位もそこまで当てになるようなものではないといったところか。
そんな風に思いつつ話をしていると……
『マーベル、マーベル! ちょっとTVを見てごらん、もしかしてマーベルが言っていたヨルムンガンドというのは、これじゃないかい!?』
部屋の外から、マーベルの母親の声が聞こえてくるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1600
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1688