ヴェルビンに強い興味を示したショットは、当然ながらヴェルビンの改修は自分に任せて欲しいと言ってきた。
ズワァースがオーラバトラーの最終形と判断していたショットにとって、ヴェルビンという存在は驚きに満ちていたのだろう。
俺もそんなショットの言葉に否と言うつもりはなく、改修を任せた。
何だかんだと、ショットはゼットと並んでオーラマシンの第一人者だ。
そうである以上、ショットが改修をしてくれるのなら、そこに任せないという選択肢はない。
それに改修作業もオーラコンバータをマジックコンバータに変えて、ショットクローを前腕部に内蔵させ、複合兵装の盾を持った時のバランス調整を弄るといったような感じで、そこまで難しい話ではない。
……寧ろ、ヴェルビンの解析の方に全力を尽くすといった感じだろう。
とはいえ、改修がそう難しい話ではないからとはいえ、それでも相応の時間は必要となる。
マジックコンバータへの換装をするにしても、まずはマジックコンバータをヴェルビンに乗せられるように色々と細かい部分を弄る必要がある。
また、ショットクローを内蔵するとなれば、それこそ腕の辺りを大々的に弄る必要があった。
それらに関しては、幸いヨルムンガンドに機械の館があるので問題はない。
もし機械の館がなければ、改修するのに数倍の時間が必要になったというのはショットの言葉だ。
そういう意味では、ヨルムンガンドは大いに役立ってる形だな。
実際、バイストン・ウェルにいた者の多くが地上に転移させられた現状、当然だがバイストン・ウェルにあった機械の館というのは、ここでは使えない。
つまり、現在のヨルムンガンドにある機械の館は、現状地上に唯一存在する機械の館となる。
とはいえ、別に機械の館というのは何か魔法的な効果がある設備という訳ではない。
地上の技術を使えば、それこそヨルムンガンドの機械の館より高性能な製造施設を用意する事は可能だろう。
勿論、バイストン・ウェルと地上では色々と違うので、慣れるまでに時間は掛かるだろうが。
ともあれ、そんな訳で俺達が何をやってるのかとなると……
「そのニジェンスキーだったか? そいつに会うのに、俺も一緒でいいのか?」
シーラからの提案に、俺はそう尋ねる。
シーラと交渉をしているソ連の人間。
そのニジェンスキーとかいう人物との交渉に、何故か俺も参加して欲しいとシーラに要請されたのだ。
「ええ。アクセルは……いえ、シャドウミラーでしたか。シャドウミラーは、これから私達と行動を共にするのでしょう? であれば、私達が交渉している相手にも会っておいた方がいいと思ったのです。構いませんか?」
「シーラがそう言うのなら、俺も別に構わないが……それはそれとして、向こうが不愉快になる可能性も否定は出来ないぞ?」
一応、そう言っておく。
ニジェンスキーという人物にしてみれば、これまで自分はシーラと交渉をしてきたのだ。
そこに当然俺のような存在が姿を現せば、面白くないと思ってもおかしくはないだろう。
「構いません。ソ連との関係は、これからアクセル達にも関わってくるのでしょうし、そうでなくてもアクセル達から話を聞いた限りでは、ソ連という国は信頼出来ません」
現在の俺達には、アメリカ出身の者が多い。
それだけに、敵対国家であるソ連について悪い話がされるのは当然の事だろう。
あるいは、グランガランの周囲を軍で包囲するといったような真似をしなければ、もしかしたらシーラもマーベル、トッド、アレン、ショット、ジャバといった面々の話を完全に信じるような真似もしなかったかもしれないが……現在の包囲されている状況を考えれば、ソ連を信じろという方が無理だろう。
「分かった。なら、こっちからは俺だけの方がいいだろうな」
「そうですね。アメリカでしたか。ソ連と敵対している国の人間がいれば、向こうも不必要に態度を硬化させるかもしれません」
シーラのその言葉に頷く。
今の状況を思えば、ソ連をここで暴発させるような真似は出来るだけさせたくない。
もし本当に暴発しても、対処出来る戦力は十分にあるのだが。
戦闘機のミサイルもオーラバリアで防げる以上、それこそ核爆弾とかを持ってくるしか対処は出来ない。
さすがに核爆弾ならオーラバリアも突破出来るだろうし。……もしかして、核爆弾もオーラバリアで防げたりするのか?
そんな疑問を抱きつつ、俺はシーラと共にニジェンスキーと面会をする準備を始めるのだった。
「シーラ女王、この方は?」
グランガランにやって来たニジェンスキーは、俺の顔を見て訝しそうな表情を浮かべる。
今までの交渉はシーラがやっていたところに、急に俺が姿を現したのだから驚くなという方が無理だろう。
「アクセル・アルマー王です」
「アクセル王、ですか? あの……グランガランの側にあるオーラシップでやって来たのですか?」
「そうなる。シャドウミラーの王、アクセル・アルマーだ」
取りあえずバイストン・ウェルの人間ではないというのは隠しておいた方がいいだろう。
バイストン・ウェルという世界があり、それ以外にも別の異世界があるというのは、そのように納得するのは難しいだろうし、納得すればしたで、そちらに興味を持たれても困る。
「初めまして、ソ連の特使としてシーラ女王と交渉を任された、ニジェンスキーと申します。……それで、アクセル王は一体何故ここに?」
「俺達はバイストン・ウェルにいた時も、ナの国と友好的な関係にあった。そんな中で地上に出て、それでナの国がソ連という国にいることが判明したから会いに来た。これからは一緒に行動する予定だ」
「それは……いえ、しかし……」
「ニジェンスキーには悪いと思いますが、ナの国としても頼りになる友人は欲しい」
「私どもでは不足だと?」
少しだけ不満そうな様子を見せるニジェンスキー。
しかし、俺はそんなニジェンスキーに向かって口を開く。
「それは仕方がないだろう。地上の兵器ではオーラバトラーを傷付けるような真似は出来ない。それは今までの一連の出来事でよく分かっているのでは?」
バイストン・ウェルにいた者達が地上に出てから数日……当然ながら、今まで何度も地上の軍隊とバイストン・ウェルの軍隊が戦いを行っている。
だが、オーラバトラーの前にはミサイルを使っても無意味だというのは、既にかなり知られていてもおかしくはなかった。
「そう言われると、何とも言えませんな。……ああ、そうそう。これは我が国の民俗工芸品です。友好の証として持ってきました。受け取って貰えるとありがたいですね」
そう言うニジェンスキーの様子に、若干の違和感を抱く。
この状況で友好のプレゼント?
いやまぁ、ナの国とソ連の関係は、ただでさえいいものではなかった。
そんな中で、いきなり俺達という第三者が姿を現したのだ。
それを思えば、こうして少しでも好感度を上げてナの国との関係を友好的なものにしようと考えるのはおかしな話ではない。
おかしな話ではないのだが、それでもどこか違和感があるのは間違いなかった。
そもそもの話、ニジェンスキーはガロウ・ランであると、そうシーラによって認識されている人物だ。
そんな人物が、わざわざ友好の証としてプレゼントを持ってくるか?
普通に考えれば、とてもではないが信じられない。
……とはいえ、今はどうこうするつもりはないが。
「ナの国はこれからどうするのですか? アクセル王という同胞がやって来た以上、今までのようにはいかないでしょう。もしよろしければ、我が国が協力しますが」
「いえ、その必要はありません。ソ連の人達も私達がいつまでもここにいると迷惑でしょうから、ここから去らせて貰います」
「そんな必要はありません。我が国は、新たな友人との関係を歓迎します。だからこそ、こうして贈り物を持ってきたのです」
そんな風に言うニジェンスキーだったが、その目には本当に心から友好を求めるような色はない。
あるのは、こちらを油断させ、少しでも自分達が美味いところを奪おうとしているような、そんな光。
ニジェンスキー本人は、自分がそのような目でこちらを見ているのは気が付かれていないと思っているのかもしれないが……何だかんだと、俺は今まで多くの人物を見てきている。
シーラもシーラで、女王として人を見る目はある筈だった。
これは、俺達が……というより、バイストン・ウェルがファンタジー世界だからと侮っているのか、それとも本当にそれを隠し通せると考えているのか。
その辺りは俺にも分からなかったが、決して友好的な関係になりたいと思う相手でないのは明らかだった。
「お話は嬉しいですが、私達がここにいれば敵が襲ってくる可能性はあります。それに……何より、私達を包囲しておくような方と友好的にやっていけるとは思えません」
「それは誤解ですとも。先程アクセル王が仰ったように、オーラバトラーというのはとてつもない兵器です。それこそ、地上の兵器は一切通じないような……それだけ強力な兵器である以上、私達としてはいざという時の為に備える必要があります」
「いざという時というのは、どのような意味です? 私達がソ連を攻撃すると?」
「いえ、そのようなことは考えていませんとも、ですが、ナの国には敵がいるのでしょう? そのような敵がやってきた時、それに対処する戦力は必要となりますので」
「その割には、包囲している戦力の銃口や砲口といったのはナの国側に向けられているが? ニジェンスキーの言う通り、このグランガランに攻撃してる相手を警戒しているのなら、銃口や砲口がグランガランに向けられているのは明らかにおかしいだろう」
「それは……仰る通りですが、未知の存在への対処は、どうしても必要となります」
そんなに素直にボロを出していいのか? と思うも、ニジェンスキーにしてみれば今の言葉は別に失言だったとは思っていないのだろう。
ナの国に攻撃をする敵への対処だと言ったその口で、ナの国への対処でもあると、そのように言った内容であったにも関わらず。
「ともあれ。このままではお互いに相手を信頼することも出来ません。私達はすぐにでもここから移動します」
「……どうしても、ですか?」
暗に考え直した方がいいと、そう告げるニジェンスキー。
とはいえ、シーラの態度はそんな脅しでどうにかなる訳でもなく……
「はい、どうしてもです」
「そうですか、残念です。では、私はこの件を上に報告する必要がありますので、この辺で失礼します」
「忘れ物だぞ」
立ち去ろうとしたニジェンスキーに対し、友好の証として持ってきたという……これは衣装棚と言うのか? それともタンスか?
ともあれ、それを渡そうとするが……
「ひぃっ!」
何故かいきなりニジェンスキーの口からはそんな悲鳴染みた声が上がる。
俺が片手で持ったのが、そんなに驚きだったのか?
「どうした?」
「え? あ、いえ。まさか、その重量を片手で持つとは思っていなかったので。アクセル王の身体能力は一体どうなっているのでしょう?」
「そういう身体能力を持っている、としか言えないな。……それで、この忘れ物はどうするんだ?」
「いえ、それは友好の証として差し上げた物ですので」
そう言い、ニジェンスキーは去っていく。
そんなニジェンスキーの様子に、やはり疑問を抱き……ニジェンスキーが部屋から出て行ったのを見て、ふと気が付く。
衣装棚から、何らかの音が聞こえてくるのを。
何だ?
これは衣装棚であり、こんな音……時計の音? がするようには思えない。
ニジェンスキーが急いで帰ったのを見ると……これは、何らかの罠か?
そんな疑問を抱き、シーラに声を掛ける。
「シーラ、この衣装棚はちょっと怪しい。取りあえず俺が預かっておいていいか?」
俺の言葉に、シーラは少し疑問を感じたものの、やがて頷く。
「ええ。ニジェンスキーが持ってきた友好の証ですが、マーベル達から聞いたソ連という国の性格を思えば、完全に信用するような真似は出来ませんしね」
その言葉に頷き、衣装棚を空間倉庫に収納する。
もしこの衣装棚が何らかの罠であった場合……考えられるのは、時間になったら毒ガスを噴射するとか、あるいは爆発するとかだろう。
だが、空間倉庫の中に収納してしまえば、そのような時限式の罠には何の意味もなくなる。
空間倉庫の中に収納された瞬間、時間の流れは停まるのだから。
そうである以上、当然時限式の罠であっても意味はない。
後はこの衣装棚を適当な場所に捨てて攻撃するなり、あるいはソ連の領土のどこか適当な場所に置いておくなりしておけばいいだろう。
その結果としてどうなるのかは、俺には分からない。
分からないが、それでも今の状況を思えば念には念を入れておいた方がいいのは、間違いのない事実だった。
「なら、そういう訳で」
そう言い、衣装棚を空間倉庫に収納する。
一瞬にして姿の消えた衣装棚のあった場所を見ていると……
「シーラ様、大変です! クの国のものと思われるオーラバトラー隊がこちらに向かっています!」
部屋の中に飛び込んできた兵士が、そう叫ぶのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1605
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1689