『そうですか、クの国が……』
ヨルムンガンドのブリッジで、映像モニタに表示されたシーラの顔が不満と疑問が合わさったような表情を見せる。いや、不満というよりも不愉快さの方が強いか?
シーラにしてみれば、クの国は勿論、アの国、ラウの国ともそれぞれ一定の距離を置いていたものの、それでも敵という認識ではなかった。
ラウの国はナの国で開発していたビルバインを半ば横流しといったような事になってしまったものの、それはあくまでもラウの国と繋がりの深かった者の仕業だ。
勿論、ラウの国も強力なオーラバトラーは欲しい以上、その件は知っていて黙っていた可能性も高いのだが。
ともあれ、シーラはラウの国に思うところはあれ、それでもラウの国と敵対とまではいってなかった。
寧ろ、今の状態で敵対するというのであれば、クの国の方に大きな理由があるだろう。
何しろ停戦交渉を襲撃した黒騎士がいて、その黒騎士を従えているのがルーザなのだから。
ビショットも、そんなルーザと手を組めば自滅するとしか思えないんだが。
恐らくその辺はルーザが上手い具合にビショットを操っているのだろう。
「取りあえずビショットが敵なのはこれで確定だ。ただ、問題なのはビショットを攻撃すれば、ドレイクが出て来る可能性が高い」
何だかんだと、バイストン・ウェルにおいてドレイク軍は最大規模の戦力だ。
まぁ、ショットを始めとした面々やジェリルとトカマクのようにドレイク軍から抜けているから、ドレイクの下には聖戦士は誰もいない。
そう考えると、ドレイク軍を敵に回すの危険度が多少は下がった気がする。
とはいえ、例え聖戦士がいなくてもドレイク軍は兵士の質が高い。
少なくても、クの国、ラウの国、ナの国……それらを含めてオーラバトラーのパイロットの練度が一番高いのは、戦い続けてきたアの国だろう。
勿論、ラウの国の中にはギブン家のようにずっと戦い続けてきた者達もいる。
それでも、人数の差というのはどうしても圧倒的だ。
また、パイロットの技量と同様、あるいはそれ以上にオーラバトラーの性能の差というのも大きい。
ズワァースはともかく、ライネックは現状最強の量産機と言ってもいい。
ライネックというだけならクの国でも使われているのだが、オーラバトラーの製造に傾けている国力を考えると、所有数はどうしてもアの国の方が多くなる。
『どうした方がいいと思いますか?』
「取りあえずビショットとは一度話しておきたいな。その結果が戦いになるのなら、戦うしかない」
そう言いつつも、恐らくビショット軍との戦いになるだろうというのは確信している。
あるいは、上手い具合にルーザと黒騎士がゲア・ガリングにおらず、ビショットだけなら、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、戦わないという選択肢もあるかもしれないが、やはりそれは厳しいだろう。
であれば、そんな小さな希望に縋るような真似はせず、最初から戦いになると判断して行動した方がいい。
とはいえ、ビショット軍にも強いパイロットはいる。
その代表格が、ガラミティ達だろう。
もしガラミティと戦った場合、ナの国の戦力では大きな被害が出る。
ビショット軍との戦いになった時、ガラミティを始めとするエース達と戦うのは聖戦士を多く有する俺達の仕事になるだろうな。
『分かりました。こちらはそれで構いません。……それと、先程ニジェンスキーから連絡がありました』
「どうだった?」
『驚いていましたね。驚愕といった表現が相応しいくらいに。あの様子からすると、やはりあの衣装棚には何らかの仕掛けがしてあったというアクセル王の予想は間違っていないかと』
「そうか」
シーラの言葉を聞いても、やっぱりなという感想しか思い浮かばない。
ニジェンスキーが持ってきた衣装棚は、多分何らかの仕掛けがあったのだろう。
具体的にはどのような仕掛けなのかは分からない。
だが、それでもソ連がとてもではないが信用出来る相手ではないと、そう納得出来る。
「そうなると、やっぱりいつまでもここにいる訳にはいかないな。TVで流れた映像の件もあるし、分かる奴にはソ連にグランガランがいるというのは分かるだろうし」
俺が最初にグランガランを見たのは、マーベルの家でだ。
後から聞いた話だと、視聴者からの映像という形で放映されたものだったらしいので、具体的にどこの映像なのかは分からなかった。
結局ハワイのアメリカ軍からしっかりとした情報を貰って、それによってこの辺りだというのが理解出来たのだ。
だが、それはあくまでも俺達……この世界の軍事事情とかにあまり詳しくない俺達だからこそ、ここがどこなのかというのを理解するのにそこまで時間が掛かったにすぎない。
実際にハワイのアメリカ軍はここの事を既に突き止めていたのだから。
『ですが、どこに行くのですか? 下手な場所に行くと、そこを戦いに巻き込んでしまいますよ?』
シーラがそう言うのは、実際にここにビショット軍が攻めて来たからだろう。
結果として、ここは周辺に何もない場所だったし、俺やショット達がいたのでこちらに怪我人は出ても死人は出ず、更にはルーザと黒騎士の情報について得る事が出来たという、まさに災い転じて福となすといったような事になったが、それは偶然の産物でしかない。
それこそグランガランやヨルムンガンド、スプリガンが街の上空とかにいた場合、その被害は洒落にならないものになっていただろう。
何しろ、オーラバトラーの兵器は地上だと圧倒的に威力が増している。
そんなのが街中で戦えばどうなるのかは、それこそアメリカで俺とマーベルが参加した戦いや、それ以外にも毎日のようにTVで流れているニュースを見れば明らかだ。
ラウの国の軍勢とドレイク軍、ビショット軍が遭遇すれば、当然のように戦いになるのだから。
俺達が地上に出てからの短期間で、一体どれだけの死人が出たのか……それを考えれば、シーラが言うように人のいる場所に行くのは難しい。
「そうだな。場所としてはヨルムンガンドとスプリガンが一時的に隠れていた、ハワイの近くにある無人島とか?」
無人島であれば、人がいない以上は戦いがあっても問題になるような事はない。
近くにハワイのアメリカ軍もいるので、そちらと協力関係を築いている俺としては、それなりにやりやすい。
とはいえ、アメリカ軍だって何の見返りもなく俺達に協力をする訳ではい。
何かを要求するのなら、当然ながらこちらもそれに相応しい代価を支払う必要がある。
今の状況では、何らかの情報を得ようとした場合は……そうだなあの戦いでライネックの部品を大量に入手出来たし、それを渡すというのはありかもしれないな。
丸々1機渡したダーナ・オシーと比べると、ライネックは部品単位での取引になるものの、ゲドより若干性能が上といった程度のダーナ・オシーに比べて、ライネックは最新鋭の量産機だ。
アメリカ軍にとっても、決して悪い取引ではない筈だった。
『他に行く場所がなければ、それでもいいかもしれませんね。ですが、ヨルムンガンドとスプリガンだけならともかく、グランガランや他のオーラシップも一緒にとなると……広さは大丈夫なのですが?』
「あー、その辺はどうだろうな。そこまで大きな無人島って訳でもなかったし」
オーラシップも、当然ながら着地する時間は必要となる。
補給の運び込みや、オーラシップの調整や修理、その他諸々といった具合に。
その辺りの事情を考えると、やはり地面にしっかりと全艦が着地出来る場所を用意した方がいいのは間違いない。
とはいえ、そんな場所を気軽に見つけるような真似は出来ない。
そうなると……いっそ、地上に着地する時はある程度のオーラシップを空間倉庫に収納するか?
いや、それはそれで面倒臭い事になるのは間違いない。
『そうなると、やはりどこか広い場所を確保するか、もしくはどこかの国と協力態勢を築く必要がありますね』
どこかの国とは言ってるものの、シーラの中にソ連と手を組むといったような事はまずないのだろう。
ニジェンスキーが一体どのような罠を仕掛けたのかは分からないものの、何かを仕掛けてきたのは間違いない。
あの衣装棚に一体どのような仕掛けがあるのかは分からないが、そのような真似をする相手と友好的に接しろという方が無理な話だ。
そういう意味では、ソ連は手を組む相手ではないというシーラの言葉には俺も同意する。
「とはいえ、そうなるとどこの国と手を組むかだな」
『アメリカはどうです? アクセル王は伝手を持っているのでしたよね?』
「伝手はあるが、アメリカ軍全部って訳じゃなくて、あくまでもアメリカ軍の一部だしな」
そう返すものの、アメリカと手を組むというのは、何気にそう悪い話ではない。
何しろ、現在俺達の勢力にはアメリカ出身の聖戦士が多数いる。
そのような者達を安心させる意味でも、アメリカと手を組むというのはありなのだが……問題は、アメリカという国をそこまで信用出来るのかといった事だろうな。
ハワイにいるアメリカ軍とは友好的に接したが、それはあくまでも1つの基地の上層部でしかない。
これがアメリカそのものとなると、自分達の利益を重視し、最悪こっちを使い捨てにするといったような真似をしてきてもおかしくはなかった。
ソ連よりマシなのは間違いないが、アメリカがこの世界において最大の国というのは間違いない。
そうした最大の国である以上、自分達の思い通りに物事を進めようとしてくる可能性もあり、完全に安心出来るといった訳ではないのだ。
『そのような事を言っても、それだとどこでも変わらないのでは?』
「それ以外の国で候補となると、イギリス、フランス、ドイツ、日本……そんなところか? いや、日本は不味いか」
日本の名前を上げたものの、すぐにそれを取り消す。
何しろ、日本はショウとガラリアが以前地上に転移した時、出た場所だ。
そこまで被害が大きくないとはいえ、それでも多少なりも日本に被害が出たのは事実だ。
それに、前回に続いてショウが日本に出ており、日本政府と協力関係を結んでいる可能性も否定は出来ない。
そしてショウにとってシーラのいるナの国はともかく、俺とショットは間違いなく敵だ。
当然のように日本政府と手を組んでいる場合、ショウの口から俺達についての情報も渡っているだろう。
……とはいえ、俺としてはショウにそこまで敵視されるのはどうかと思う。
ぶっちゃけた話、最初にドレイク軍にテロ行為染みた攻撃をしたのはギブン家で、ショウはそのギブン家に亡命したのだから。
リムルが俺を悪しきオーラ力と評しているものの、エレやシーラといった面々からは、悪しきオーラ力ではなく大いなる者や大いなる存在と呼ばれているし。
リムルにして思えば、自分の思い通りにならない相手、自分の邪魔になる相手を悪しきオーラ力と呼んでいたのだろう。
つまり、リムルにとって都合が悪いという意味で、悪しきと言っていたようなものだ。
『では、どこに行くのかは後で決めるとして、まずはアクセル王達が以前いたという場所に一時的に退避しませんか? ソ連にいると、また妙な行動をされないとも限りませんし』
ニジェンスキーがまたグランガランに来るのかどうかは、俺には分からない。
だが、あの衣装棚に何らかの仕掛けをして、それを俺達に見破られたと察しているのなら、また来るといったような事はないだろう。
それこそ、もしその状況で以前持ってきた衣装棚をそのまま返された場合、ニジェンスキーにしてみれば殺されるのと同じ事なのだから。
もしソ連から新たな接触があるとしても、それはニジェンスキー以外の人物となるだろう。
そして、ニジェンスキーの企みが見破られたかどうかを確認する為に下手に出て来ると思う。
そんな相手にわざわざ付き合ってる必要はない。
そもそもの話、ニジェンスキーとの交渉の中で既にソ連から出ていくという意思をシーラは示している。
結局その後でビショット軍が攻めて来たので、その後処理の問題もあって有耶無耶になっていたが。
「そうだな。このままソ連にいるのは、色々と不味いだろう。また何か仕掛けられる前に、さっさと出ていくか。包囲している連中はこっちに攻撃をしたりはしないだろうし」
オーラバトラー同士の戦いを見て、ソ連軍も当然ながら戦っても勝てないと判断したのだろう。
グランガランを始めとしたナの国の軍隊を包囲していた戦力は、明らかに以前よりも距離を取っていた。
そうである以上、こちらが飛び立とうとしても行動に出るのは遅れるだろうし、何より攻撃してきてもオーラバリアを突破するのは無理だろう。
そんな訳で、俺達はソ連から出て一度ハワイの近くにある無人島に向かう事にしたのだった。
……それはそうと、シャドウミラー、ショット、ナの国……これだけの勢力が集まっている以上、便宜的にではあっても何らかの名前を付けた方がいいだろうな。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1605
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1689