ソ連から出るという話はすぐに決まり、翌日にはすぐ出発することになった。
ライネックの部品もソ連から出るという話が決まった日の夜にはスライムを使って軒並み回収しておいた。
大きな部品の類は当然ほぼ全て回収されていたが、部品の破片と思しき諸々はかなりの数に及んだ。
現在の地上が一体どれだけの科学技術を持っているのかは分からないが、部品の一つ二つからでも一定以上の情報を得る事は出来るだろう。
そういう意味でも、破片の類を確保出来たのは大きかった。
もっとも、スライムで確保した破片の全てがオーラバトラーの破片だとは限らないのだが。
それこそ、オーラバトラー以外の何らかの破片が落ちていても不思議ではない。
ただし、回収した破片の類は全てスライムに吸収させたので、それがどんな破片なのかというのは、この際関係ないのだが。
「ヨルムンガンド、移動を開始します! スプリガン、グランガラン、それ以外のオーラシップも、予定通りこちらに追随!」
ヨルムンガンドのブリッジに、そんな声が響く。
ブリッジクルーは素早く周囲の様子を確認していた。
「気をつけろ。このままこちらを行かせまいとして、ソ連軍が攻撃を仕掛けて来る可能性は否定出来ん!」
キブツの声がブリッジに響く。
その言葉は事実だが、だからといってこの状況でソ連軍が俺達に攻撃を仕掛けて来る可能性は低い。
ちなみにシーラにはソ連から派遣された新たな人材が昨日のうちに連絡を入れたようだったが、ニジェンスキーの衣装棚の件を出すと向こうは何も言えなくなったらしい。
ニジェンスキーにとって、この失点は大きい。
あるいはソ連が民主国家なら、失敗したとしても左遷程度ですんだかもしれないが、ソ連は共産主義の国家だ。
それこそ、現在の……そして将来のニジェンスキーが一体どのような目に遭うのか、正直予想が出来ない。
取りあえず明るい未来が待っていないことだけは確実だろう。
「包囲していたソ連軍、動く様子はありません。攻撃をする様子も今のところはありません」
「戦闘機や戦闘ヘリといった、飛行兵器の類も出撃してくる様子はありません。心配はいらないかと」
ブリッジクルーが次々に報告する。
その報告を聞く限りでは、どうやら本当にソ連は俺達をこのまま行かせる気らしい。
とはいえ、ソ連の領土から出たら核兵器を使ってくるといったような可能性もある以上は、注意が必要だろう。
そんな心配をしていたし、もし万が一何かが起こった時の為にオーラバトラー隊の出撃準備もしていたのだが、結局俺達は特にソ連軍に攻撃されるようなこともなく、ソ連の領土を出て領海も出て……そしてハワイの近くにある無人島へと到着するのだった。
「なるほど、ソ連軍が攻撃しなかったのは、これが理由だな」
ハワイに戻ってきて一段落した後、俺は再び街中へとやって来ていた。
……ただし……
「そんな、酷い……」
「何という事を」
何故かマーベルとシーラの姿も俺と一緒にあったが。
そんな2人と俺が見ているのは、ハワイの街中にあるTVでやっているニュース。
『ご覧下さい! パリの街並みが轟火によって蹂躙されています!』
キャスターが言ってるように、フランスの首都パリは現在炎に包まれていた。
一体何があったのかというのは、TVを見れば明らかだ。
パリの上空にはゲア・ガリングを始めとしてビショット軍が存在し、そんなビショット軍とゼラーナが戦っているのだから。
数としては圧倒的にゼラーナ側が不利なのだが、戦力の質という事ではビショット軍よりもゼラーナ側に軍配が上がる。
そして離れた場所ではビルバインとズワァース……ショウと黒騎士が戦闘を行っているのも、少し映る。
タータラ城では俺を倒す為に手を組んだショウと黒騎士だったが、今こうしてTVの中では戦っていた。
「どうする? 今からパリに行くか?」
「それは……でも、グランガランはともかく、私達がパリに行けば、間違いなく混乱は酷くなるわよ」
俺の問いに、マーベルはそう答える。
パリに行くだけなら、影のゲートがあるので可能だ。
とはいえ、バイストン・ウェルと比べるとかなり魔力消費が厳しいので、ヨルムンガンド、スプリガン、グランガランといった旗艦だけでになるだろうが。
俺達第3勢力の中でも数が多いグリムリーやナムワンといったオーラシップを一緒に連れていくのは、正直微妙だろう。
「ですが、このような行いを見逃すような真似は……」
マーベルの言葉にシーラがそんな風に言ってくる。
パリで戦っているのが、ソ連でグランガランに攻撃を仕掛けてきたビショット軍と、俺達を敵視しているゼラーナ隊であるというのが、この場合は痛い。
今でさえパリは大きな騒動になっているのに、もしここで俺達が行けば、それこそ今よりも大きな騒動となるのは明らかだ。
「どういう訳か、グランガランの存在はビショット軍に知られている」
それはソ連にいたグランガランに向けてオーラバトラー隊を派遣してきたのを思えば、明らかだろう。
そしてオーラバトラー隊は、グランガランを破壊、もしくは奪取するつもりでやって来たのだ。
だとすれば、現在のパリにグランガランが行くというのも難しい。
……というか、ビショットはともかく、ルーザと黒騎士がいる時点で俺達が行くと派手に暴発しそうな感じがしないでもなかったが。
「取りあえず詳しい情報に関しては、アメリカ軍の方が持ってる筈だ」
ネット全盛期になれば、政府や軍の情報網よりもネットに情報が上がる方が早く、場合によっては政府や軍もネットで情報を初めて知るといったようなことになるといった話を聞いた事がある。
だが、この世界においてはまだネットの類は一般に普及していない。
そんな時代だからこそ、情報の類はまだ民間よりも軍や政府といった方が素早く入手出来る。
ましてや、俺達が接触する相手は世界最強のアメリカ軍だ。
バイストン・ウェルの軍勢が地上に出たせいで、とてもではないが世界最強といった表現は相応しくなくなってしまったが。
「そうね。それに、私達が基地に出向くというのは、もう向こうにも連絡してあるわ。ここでパリに行ったら、アメリカ軍も不満そうな表情を浮かべるでしょうね」
マーベルの言葉に、シーラは渋々と頷き……そして、俺達はアメリカ軍の基地に向かうのだった。
「パリの戦闘は終息に向かっているらしい。とはいえ、パリの被害は甚大だがね。花の都と言われたパリだったが……」
ハワイにあるアメリカ軍の基地の中で、俺達は軍人と会っていた。
マーベルの幼馴染みのバルベラの父親ではなく、少将の階級にある人物だ。
この基地の中でも多分3本の指に入るくらいの階級ではあると思う。
俺がダーナ・オシーを渡した時にも、この男はその場にいたし。
「そうか。パリが焼かれたのは問題だったが、それでも戦闘が終息に向かっているというのは、せめてもの救いだったな。やっぱり被害は大きいのか?」
「死傷者という意味では、それこそ数え切れない程だよ。もしかしたらだが、パリの復興はもう難しいかもしれないな」
そこまで言うからには、やはりパリが受けた被害はかなり大きかったのだろう。
俺達が行けば、その被害を減らせたか?
そう思うも、すぐにそれを否定する。
恐らく俺達が行けば戦闘はより激しくなり、戦いそのものがまだ終息に向かうといったような事はなく、続いていただろう。
ビショットを操っているルーザや、そのルーザに従っている黒騎士からは、それだけ恨まれている。
とはいえ、俺は別にルーザに対して特に何かした訳ではない。
黒騎士とも初めて会った時から既に恨まれていたし……こう言ってはなんだが、理不尽だよな。
「パリという地がそのようになってしまったのは私達のせい、なのでしょうね」
「いえ、シーラ女王が関係しているとは思いません。バイストン・ウェルという世界についての話は私も聞いています。そんな中で、シーラ女王はナの国を治めていたとか。そうであれば、クの国の行動にシーラ女王が責任を感じる必要はありません」
そう言い切る軍人だったが、実際にはそれは表向きの発言でしかないのだろう。
心の中ではこれを理由にして、どこまで俺達から協力を引き出せるのかといった事を考えていてもおかしくはなかった。
「ともあれ、ビショット軍をいつまでもパリでしたか? その近くに置いておく訳にはいきません。……同じバイストン・ウェルの者として、その動きを止めたいと思います。私が知っているビショット王であれば、このような真似はする筈がなかったのですが」
ビショットではなく、ルーザが裏で糸を引いているのだから、このくらいの事はやってもおかしくはない。
ルーザは自分が選ばれた存在であり、自分の為になるのなら何をやってもいいといったような、そんな考えを持っている。
バイストン・ウェルにいた時から、そんな考えを持ってるのは理解出来たが、それが地上に出て更に強化された形だ。
ドレイク軍の兵士の中には攻撃性が高くなっている者もいたが、それがルーザの場合は極端に自分は何をやってもいいといったような考えになったのだろう。
ルーザがゲア・ガリングにいたとすると、多分ゼラーナ隊にはリムルもいた筈だから、ある意味これは親子喧嘩に近い形の戦いなのかもしれないな。
「そうですか、私達からは何も言えませんが……せめてシーラ女王達の勝利を祈っています」
そうして、他にも色々と情報を仕入れる。
ちなみにゴラオンはやはりゼラーナ隊と合流しているらしいというのが判明した。
だとすれば、パリでの戦いに何故ゴラオンがいなかったのかは、若干気になるが。
そしてウィル・ウィプスは、アメリカでワシントンを占領して以降は特に動きを見せていないらしい。
ハワイの米軍が俺達に協力的なのは、その辺りも理由にあるんだろうな。
勿論、俺がダーナ・オシーを1機そのまま渡したり、ライネックの部品――正確には破片――を渡したりといったような事も関係してるのだろうが。
ライネックが最新鋭のオーラバトラーの部品だというのは、アメリカ軍にとってかなり嬉しかったのか、レーダーであったり通信機であったりといったようなオーラバトルシップにも使える機器の類を譲渡して貰った。
基本的にバイストン・ウェルのオーラマシンの方が地上よりも性能は高いのだが、レーダーや通信機といった類に関しては地上の方が技術が上だったりする。
それもちょっとといったレベルではなく、圧倒的なまでに。
そのような機械部品の他にも、食料の類もかなり譲って貰った。
ライネックの部品だけではなく、ダーナ・オシーの件もあるんだろう。
まぁ、ダーナ・オシーは俺にとっては大量にある機体だが、アメリカ軍にしてみれば完品をそのまま貰ったのだから、前回の情報だけでは取り分が多すぎると判断したらしい。
普通に考えれば、そのような状況では無理にこちらに利益を与えるような真似をしたりせず、黙っておく。
そのような真似をした場合、俺達がそれを知った時に向こうを信じないと分かっているからだろう。
そうした場合、アメリカの首都のワシントン……正確にはワシントンD.C.をドレイク軍が占拠しているのを解放する時に手助けして貰えないと、そう思っているからか。
ハワイのアメリカ軍にしてみれば、パリに行くよりも自分達の国を開放してくれといったように思ってもおかしくはない。
もっとも、俺達には俺達の事情があるのも事実。
ビショット軍とはグランガランの件であったり、ルーザや黒騎士の件であったりで敵対したが、ドレイク軍とは現状はまだ敵対していないのだ。
街中でラウの国のオーラバトラー隊と戦っていたドレイク軍とは戦ったが、その時の戦いは俺じゃなくてマーベルだしな。
マーベルが俺の仲間だというのは知ってるので、場合によってはドレイクにその辺を知られているかもしれないが……いや、どうだろうな。
結局、あの戦いの中で生き残ったドレイク軍の兵士がどうなったのか、俺には分からない。
だが、街の住人にしてみれば自分達の住んでいる街を破壊し、家族を、恋人を、友人を殺した相手だ。
場合によっては、殺されていてもおかしくはなかった。
特にアメリカは銃の類を普通に買える国だ。
オーラバトラーに乗っていれば、オーラバリアによって戦闘機のミサイルですら防ぐが、そのオーラバトラーに乗っていない場合は当然のように銃弾が命中すればあっさりと死んでもおかしくはない。
そうなると、ドレイク軍の兵士は身を守る術はなかった。
いやまぁ、ドレイク軍の兵士である以上は生身での戦いについても訓練をしているだろうが、人数の差を考えた場合、どうしようもないだろう。
「ともあれ、俺達はこれからパリへ行き……正確にはパリにいるゲア・ガリングを人のいない場所、出来れば海上まで移動させて、接触する必要があるな。いや、接触というか戦いになる可能性は高いが」
ルーザと黒騎士がいる以上、話し合いでどうにか出来る訳がないのは間違いないのだから。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1605
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1689