スプリガンが離れていく光景がヨルムンガンドのブリッジにある映像モニタに表示される。
『本当によかったのですか? スプリガンはオーラシップよりも機動力は高いですが、火力という点では明らかに劣っています。そのような状況でビショット軍の前に向かうなど……』
こちらも同じく映像モニタに表示されているシーラが、心配そうに呟く。
シーラとショットはそこまで付き合いがある訳ではない。
だが、それでも一緒に行動している以上、仲間意識の類はあるのだろう。
あるいは、オーラマシンを開発したという点でショットを評価しているのかもしれないが。
ただし、オーラマシンがバイストン・ウェルに広がった結果、俺達は地上に放逐されてしまった訳だが。
「ショットもその辺は十分理解した上での行動だろうな。それに、ガラバとブブリィがある。あの2機だけで、オーラバトラー数十機分の戦力として考えられる筈だ」
これは大袈裟でも何でもなく、純然たる事実。
ガラバとブブリィの性能は非常に高く、そして乗っているパイロットもジャバとミュージィの2人だ。
ジャバは、それこそ聖戦士としてバイストン・ウェルに召喚されてもおかしくないだけの実力を持っており、ミュージィも武家の家柄である事を示すように、能力の高いパイロットだ。
それこそ……聖戦士として呼ばれたトカマクを相手にしてもジャバとミュージィは普通に勝利するだけの技量を持っている。
ジャバは若干調子に乗るところがあるので、その辺が少し心配だが。
それ以外にもミュージィの家族であったり、ドレイク軍の兵士がオーラバトラー隊として戦力になっている。
ドレイク軍の兵士ではあっても、現在はショットに忠誠を誓っているらしいので、そういう意味ではヨルムンガンドに乗っているドレイク軍の兵士と同じなのだろう。
「スプリガンそのものはそこまで強力ではないが、ウィングキャリバー並の機動力を持っているんだから、逃げるのは難しくないだろう。そしてもし追いつかれても、十分対応出来る戦力がある。ゲア・ガリングが直接追ってくれば戦力的に足りないかもしれないが……」
『それはまずないでしょう』
「だろうな」
シーラの言葉に俺も同意する。
ゲア・ガリングは、機動力が低い。
もしスプリガンを追おうとしても、とてもではないが追いつくような真似は出来ないだろう。
それにゲア・ガリングがスプリガンを追ってきてくれるのなら、それはこちらにとって有利な事になる。
そのまま海まで移動して、そこで戦えばいいのだから。
「そんな訳で、ショットのスプリガンを心配する必要はない。今はただ、ショットを信じて待っていればいい」
『そう、ですね。少し残念ですが。……こうなると知っていれば、ゴラオンのように戦闘向きのオーラバトルシップにしたのですが』
残念そうな様子のシーラを見て、丁度いい機会なので尋ねてみる。
「なんでグランガランはそういう……動く宮殿というか、塔というか、そんな感じにしたんだ? その形だと、ある程度の戦闘力はあっても、それはあくまでもある程度でしかないだろ?」
『それですか。……正直なところ、私はグランガランを戦場に出すつもりはありませんでした。一種の象徴としてグランガランを開発させたのです』
「象徴……それはまた。それならグランガランの武装がそこまで整っていないのも理解出来るな」
武装が貧弱と言いそうになったが、何とか取り繕う。
とはいえ、実際グランガランの武装は貧弱なのは間違いない。
勿論、それはあくまでもオーラバトルシップとしてはの話であって、対空砲であったり連装オーラキャノンであったりと、多数装備されている。
グランガランに近付こうとする敵は、ハリネズミのような対空砲火でかなり難しいだろう。
だが、連装オーラキャノンはそれぞれ別の場所に装備されているので、一点に火力を集中するといったような真似は出来ない。
それは設計上の大きなミスだと思っていたが……そもそもが象徴としてグランガランを開発したのなら、そのような状況にも納得は出来た。
『まさか、このような状況になるとは……予想外でした』
「だろうな。というか、そもそもこんな状況になると予想出来る奴は普通いないだろ」
バイストン・ウェルに地上人を召喚するのは、実際にこの目で見ているので理解出来る。
だが、3人を召喚するだけでも、シルキーはかなり消耗していた。
そんな状況で、バイストン・ウェルにいるオーラマシンに関係のある者達が全員地上に追放されたのだ。
具体的にどのくらいの人数なのかは分からないが、それでも数千人といった単位ではないだろう。
数万人単位は間違いない筈だ。
そのような状況である以上、それを予想しろというのが無理だ。
地上からバイストン・ウェルに召喚出来る以上、その逆も当然可能ではあるのだろうが、その結果として消耗は相当なものになった筈だし。
『ショット・ウェポンに相談してはいるのですが……』
「ああ、やるべき事はやってるのか。とはいえ、その様子からするとすぐに解決するといった訳にはいかないみたいだけど」
『ええ。グランガランは完成しているオーラバトルシップで、下手に武装を追加した場合は、艦のバランスが悪くなると。それでも一応改善案は考えてみると言っていましたが、時間的な余裕はないらしいですしね』
そう言われると、俺からは何も言えなくなる。
実際にショットが忙しいのは俺が関係している件が多数あるのだから。
具体的には、サーバインの修理やヴェルビンの改修、ズワウスの整備、ブブリィの製造指揮。
勿論、その全てをショットだけでやる訳ではない。
ゼットも仕事をしているし、それ以外にも技術者は多い。
それでも、やはり今の状況を思えばショットがグランガランの改修にまで手を回せないのは間違いない。
そもそも、ヨルムンガンドやウィル・ウィプスと違い、グランガランはナの国で開発されたオーラバトルシップである以上、ショットはその開発に関わっていない。
ましてや、ああやっていきなり転移させられた以上、設計図の類もあるかどうかは分からない。
そのような状況でグランガランの強化案を作れというのは難しいだろうし。そもそも材料をどうするのかといった問題がある。
グランガランを強化する以上、当然ながら恐獣の素材が必要となる。
一応俺が結構な数を持っているものの、それを使うのは色々と不味い。
そもそも、俺の空間倉庫に入っているのは本来ならホワイトスターへの土産としてだ。
いつホワイトスターに戻れるのか分からない以上、今の状況でそのような真似をする訳にいかないのは間違いない。
そうなると、地上にある素材や兵器でグランガランを強化する必要があるのだが、それもまた難しい。
いや、機動力の増強なら出来るだろうが。
ともあれ、グランガランを強化するにしても相応の時間が必要となるのは間違いない。
「そうなると、やっぱりグランガランは今のままの方がいいのか。ここで下手に改造すれば、悪影響があるだろうし」
『そうなりそうですね』
これがヨルムンガンドやウィル・ウィプス、ゲア・ガリングといったオーラバトルシップであれば、ショットやゼットといった者達の協力もないままで多少の改修は可能かもしれない。
だが、グランガランの場合は艦の中央部分に塔が建っている。
そしてそれぞれに伸びた部分でバランスを取っている形だ。
オーラバトルシップとしてのバランスは、決していいとは言えない。
そのような状況で素人考えによってグランガランを改修した場合、大きくバランスが崩れて塔の部分が倒れ込むといったような事になってもおかしくはなかった。
「それなら……」
「アクセル王、レーダーに反応! スプリガンです! かなりの数の敵を引き連れてきました!」
俺が何かを言うよりも前に、ブリッジクルーの叫び声が周囲に響く。
グランガランの方でも同様にスプリガンの反応を探知したのか、騒がしくなっているのが分かった。
「どうやら、第一段階成功だな。後は、やってきた敵を倒す」
『そうですね、こちらも出撃準備を整えます』
厳しく引き締まった様子で呟くシーラに頷く。
「この話については、ビショット軍との戦いが終わってからだな。……出来ればもう少し話していたかったが、今はそんな余裕もないらしい」
『え? ええ、そうですね。では、楽しみにしています』
『あー、シーラ様の耳真っ赤に……』
ブツリ、と。
最後にベルの声が聞こえてきたようだったが、シーラはその言葉の途中で通信を切った。
向こうで一体何があったのかというのは若干気になるものの、こっちも今はやるべき事が多い以上、そちらに構ってばかりはいられない。
「キブツ、オーラバトラー隊を発進させろ。ショットが危険を冒してまで敵を引き連れてきたんだ。そうである以上、ここで敵を逃がすといった真似は絶対に出来ないぞ。追ってきた敵は全て殲滅する。……出来れば部品は欲しいから、鹵獲でもいいけど」
「は! 出撃の命令は私にお任せ下さい。アクセル王は出撃の準備を」
キブツに向かって頷き、俺は影のゲートを使って格納庫に向かうのだった。
「へぇ、また随分と多くの敵を引き連れてきたな」
遠くに見えるスプリガン。
そのスプリガンの後ろには多数のオーラバトラーの反応がある。
スプリガンの周囲にはガラバとブブリィがそれぞれ1機ずついるが、どうやらオーラバトラー隊は出撃していないらしい。
多分、オーラバトラーではスプリガンの移動速度についていけないからだろう。
それでもスプリガンの格納庫や装甲とかに立つなり座るなりして、射撃武器で敵を攻撃するといったような真似は出来ると思うんだが。
そのような真似をしていないのは、単純に思いついていないか、もしくはそのような真似をすればスプリガンの高速移動の邪魔になるか、といったところだろう。
『アクセル、こっちの準備はいつでもいいわよ。向こうがこっちに気が付くよりも前に、攻撃をした方がいいんじゃない?』
「マーベルの言いたい事も分かるが、今この距離で向こうが逃げ出したら、ビショット軍の戦力を可能な限り減らすといった真似は出来ない。幸い、ビショット軍のオーラバトラーはまだこっちに気が付いていないようだし、ならこっちは万全の状態で待ち構えればいい」
恐らくはスプリガンに攻撃をするのに集中しており、他に目を向けていないのだろう。
そうなると、黒騎士やガラミティといったエース級は派遣されていないか?
ビショットにしてみれば、何かがあった時は即座に対処出来るよう、本当の精鋭は手元に残しておいたといったところか。
「全機、ショットからの合図が来るまで、迂闊な攻撃はするなよ。ここで急いで攻撃して、その結果敵の大半を逃すなんて真似をしたら、恥だぞ」
その言葉に、それぞれ返事が聞こえる。
特にトッドはやる気に満ちていた。
グランガランを始めとしたナの国の部隊は連携を重視して戦うらしく、隊形を整えている。
ナの国には、精鋭と呼べるのはシーラの近衛くらいで、他の者達は全般的にレベルが低い……訳ではないが、突出してレベルが高い者はいない。
平均的なレベル前後の兵士が集まっているといった形だ。
その分、純粋に戦力として計算出来るのは大きいのだが。
やがて、スプリガンがこちらとは違う方に向かって進み……
『今だ!』
スプリガンのショットから、そんな声が周囲に響き渡る。
スプリガンが真っ直ぐ俺達のいる方に向かってこなかったのは、少しでも俺達の存在を敵に見つからないようにする為だろう。
今はスプリガンの撃墜に夢中になっているビショット軍でも、スプリガンの向かう方向に俺達が待ち構えているのを見れば、我に返る可能性が高い。
その辺を考えて、こちらから離れた場所にビショット軍を牽引したのだろう。
「全機攻撃開始!」
俺の合図と共に、オーラバトラー隊は出撃する。
それ以外にも多数のオーラシップやヨルムンガンド、グランガランによる攻撃が行われ、遠距離攻撃が一斉に行われる。
当然ながら、遠距離から放たれた攻撃は、敵に向かって移動するオーラバトラー隊に命中しないように調整されていた。
ズワウスから少し離れた場所を飛んでいく砲撃。
その砲撃は、スプリガンを追っていたビショット軍のオーラバトラー隊に向かって降り注ぐ。
とはいえ、かなりの遠距離……それも移動している敵に向かっての砲撃だ。
命中率は決して高くはない。
高くはないが、それでも敵の注意を惹き付けるという意味では、こっちの作戦通りだった。
ビショット軍も、ここにきてようやく自分達が誘き寄せられた……それこそ、自分達は狩る側ではなく狩られる側だと気が付いたらしいが、そんな状況であっても撤退はせず、こちらに迫ってくる。
普通なら数機は撤退してもおかしくはないんだが。
これも多分、地上に出た影響で攻撃的になっているからか。
ともあれ、こうしてやってきた相手である以上、こちらとしても丁度いいので、攻撃を開始するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1605
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1689