ようやく姿を現した、ゲア・ガリング。
そのゲア・ガリングからの通信に、俺は笑みを浮かべて口を開く。
「随分と遅い到着だったな」
そう言いながら、ライネックを斬り裂く寸前だったオーラソードを一旦退く。
ただし、退きはするもののオーラソードを鞘に入れるような真似はしない。
今こうして言葉を交わした限り、ビショットは以前話した時とそう違いはないように思える。
だが、ソ連でビショット軍の兵士から聞いた話によれば、ビショットはルーザによって籠絡されており、半ば言いなりに近い状態だと聞いていた。
そのような相手を前にして、俺が武器を納めるといったような事は出来ない。
『こちらにも色々とあるのだよ。だが……一体何故このような真似を? 私はアクセル王と友好的な関係を築いていると思っていたのだが?』
「そうだな。バイストン・ウェルにいた時はそうだった。だが……地上に出てからは、俺に向かってビショット軍が攻撃を仕掛けてきた。それを考えれば、ビショットを味方という風に認識するのは難しいな」
『は? 一体何を……』
俺が何を言ってるのか分からないといった様子のビショット。
どうやらソ連での戦いについては、何の情報も得られていないらしい。
だとすれば、あの戦いでビショット軍は1人も逃さずに捕らえるなり、殺すなりした。
そのように思っても間違いはないらしい。
「ソ連……と言っても理解出来ないか? グランガラン……バイストン・ウェルでは見た事がなかった、塔を持ったオーラバトルシップ。お前はその奪取を命じただろう? その時、俺達もあそこにいた。そしてナの国の女王シーラと、交渉をしていた」
『な……』
そこまで言われ、ようやく事態を理解したのだろう。
信じられないといったような、驚愕の表情を浮かべ……やがて口を開く。
『待って欲しい! 私はアクセル王と敵対するつもりはない! あの戦いは……そう、言ってみれば誤解なのだ! まさかあの場所にアクセル王がいるなどとは、思ってもいなかった。私がアクセル王と友好な関係を望んでいるのは、バイストン・ウェルの出来事で十分に理解して貰えると思うが?』
「バイストン・ウェルでなら、そうだったかもしれないな。ビショット、お前に自覚があるのかどうかは分からないが、バイストン・ウェルから地上に出た事で兵士の中には攻撃的になっている者もいる。お前もそうじゃないのか?」
そう尋ねると、ビショットは即座に首を横に振る。
『そんな事はない。私は普通だ』
自分で普通だと言う奴程、普通じゃないんだけどな。
酔っ払いは自分は酔ってないって言うし。……いや、この場合は若干それとは違うか?
「そうかもしれないな。だが……グランガランの一件で捕らえたお前の兵士は、面白い事を言っていたぞ? 現在、ゲア・ガリングにはドレイクの妻のルーザがいるらしいな?」
『っ!?』
決定的な俺の言葉に、ビショットは息を呑む。
現在、ズワウスの映像モニタに映っているのはビショットだけだ。
それはゲア・ガリングのブリッジにルーザの姿がないのか、あるいはブリッジにルーザがいても俺にそれを見せないようにしていたのか。
そんな俺の考えは……どうやら後者だったらしい。
アップになっていたビショットの顔が小さくなると、ブリッジにある玉座の隣にある椅子にルーザが座っているのが見えた。
何も知らない者がこの光景を見れば、恐らくルーザをビショットの妻と認識するだろう。
……それが嬉しいかどうかは、また別の話だが。
ビショットにしてみれば、それは嬉しいのだろう。
そしてルーザの側には全身を黒い服や鎧、兜やマスクで覆った者の姿もある。
なるほど、あれが黒騎士か。
以前黒騎士と戦った時の通信では、何故か映像を出さず声だけでのやり取りだった。
ああいう姿をしていたんだな。
まさに黒騎士という名前が相応しい。
黒騎士というのは、偽名や通り名といったようなものだろうが。
俺を恨んでいる……いや、強烈な憎しみを抱いている以上、あのマスクの下には恐らく俺の知ってる顔があるのだろう。
『久しぶりですね、アクセル』
ルーザの口から出た言葉は、嫌悪感に満ちている。
俺をどう思っているのか、それは今の一言を聞けばそれで十分だった。
「そうだな。ドレイクの妻のお前が、何故ビショットのゲア・ガリングにいるのかは分からないが」
『私がクの国に赴いている時に、地上に出たのです。か弱い女の身をビショット王が心配して、こうして私を保護して下さったのです』
か弱い、ね。
俺から見れば、毒婦という言葉が一番似合うんだが。
ともあれ、ここで少し揺さぶってみるか。
「そうか。なら、俺がドレイクにこの件を知らせようか?」
『なりませんっ!』
考えるまでもなく、即座に却下してくるルーザ。
そこまで本音を隠さずに行動するのは……王妃としてどうなんだ?
そう思わないでもなかったが、今はそれよりも前に折角向こうが馬脚を現してくれたのだから、それに乗ろう。
「何故だ? この状況をドレイクに知られると、何か不味い事でもあるのか? まぁ、その様子を見る限り、あるんだろうな」
ルーザは本質的には自己中心的な女で、後先の事を考えているとは言えない。
それは今のやり取りを見れば明らかだろう。
『それをアクセルに言う必要はありません。ですが、私のことを言うのは禁止します』
「禁止すると言われてもな。……正直なところ、お前が禁止をしたところで、何の意味がある? お前が俺をどうにか出来ると本気で思ってるのか? それとも……籠絡したビショットやそこの黒騎士とやらに命じて、俺を殺すか?」
『ぐっ……』
呻き声を上げ、憎悪に満ちた目で俺を睨むルーザ。
しまった、少し言いすぎたか?
とはいえ、元々ルーザには思うところがあった。
それを考えれば、この結果はそうおかしなものではないだろう。
「どうした? お前が何かするつもりなら、受けて立つぞ? ただし、その場合……俺を敵にした事を後悔しないといいがな」
『アクセル王、その辺で止めてくれ』
ビショットが不意に会話に割り込んでくる。
ビショットとしては、今の状況に対して色々と言いたい事もあるのだろうが……こうしてルーザとの会話に割り込んでくる辺り、やっぱりルーザに操られているといった様子なのは間違いない。
「まさか、ここでビショットが割り込んでくるとは思わなかったな。だが、今のお前の状況からして、ドレイクにこの件が知られるのは不味い。それは違うのか?」
『それは……』
不満そうな様子を見せつつも黙るビショット。
ビショットにしてみれば、この状況で自分が何を言っても意味はないと理解しているのだろう。
だが同時に、ルーザの件がドレイクに知られるような事になれば不味いというのも理解している。
『アクセル王、私達の友好的な関係を傷付けるのはどうかと思うが?』
ビショットのその言葉は、俺に何とか退いて欲しい。そのような思いからのものだったのだろうが……
「生憎と、俺はここで退く気はない。それに俺がこうしてここにいるのは、イギリスという国からの要請を受けての事でもある。……ビショット。パリを焼いたのは失敗だったな」
ヨーロッパの国々は、表面上は友好的にしていても、結局は別の国同士ということもあって、心の底から信頼しているという事はない。
もっとも、国家に真の友人はいないという言葉もある以上、それはある意味で当然の事なのかもしれないが。
だが、そんな状況であっても、パリを焼くといったような真似をしたビショットは、ヨーロッパ各国から危険視された。
それこそ、ここで倒さなければ自分達にも被害が及ぶのではないかと、そんな風に思ってしまうくらいには。
だからこそ、今回の戦いは無事に成立したのだ。
勿論、イギリスの女王が持つ一種のカリスマ性があったのも、間違いない事実だったのかもしれないが。
『地上人の指示に従っているのか!?』
『ほほほ。本性が現れましたね。ビショット王、あのような者はいるだけで不愉快です。とっとと始末してしまった方がいいかと。自分の力に余程自信があるのか、こうして1人で最前線まで出て来たのです。そうである以上、ここで倒してしまえば問題ないでしょう』
『ぐ……いや、なるほど。ルーザ殿の言う事も間違っていない。アクセル王よ、地上人などに従っているという事は、既に誇りを失ったも同然なのだろう。であれば、この上は素直に人生という舞台から退いて貰いたい』
これは……ルーザがビショットを誑し込んだという話は聞いていたが、実際にこのやり取りを見ると、その言葉が真実であると納得してしまう。
以前まで……それこそバイストン・ウェルにいた頃のビショットであれば、俺の力を完全にではないにしろ知っている筈であり、それを思えばこうも簡単に俺と敵対しようとは思わなかった筈だ。
ビショットも俺の力については十分に理解していたからこそ、俺に色々な贈り物をして友好的な関係を築こうとしていたのだから。
しかし、今となってはビショットは俺を殺そうとしている。
俺の力を知っていれば、ビショットはそんな真似をしたりは出来ないだろう。
……誑し込まれたからといって、別に洗脳された訳ではない。
バイストン・ウェルにいた時の事は当然覚えているのだろうが、それでもこうした判断をするというのは……単純に判断力が低下しているといった感じなのか?
もしくは、ルーザの影響と地上に出た事による影響が関係してるのか?
「お前がそういう判断をするのなら、それでもいい。こちらも受けて立とう。だが……その結果は、お前が自分で選んだものだ。そうである以上、後で泣き言を聞くような真似はしないぞ」
『アクセル王。君は王ではあるかもしれないが、私もまた王なのだ。そうである以上、君に負けるとは考えてはいない』
「そうか。なら、好きにしろ。それがお前の決断だ。俺としても、ビショットを殺すのは残念だが……ルーザを殺すのは望むところだ」
『何をっ!?』
自分が殺されると、そう断言されたからだろう。
ルーザは我慢出来ないといった様子で叫ぶ。
何だ? もしかして、この状況で自分が殺されるとは思っていなかったのか?
ビショットと共に俺と敵対した以上、まさか自分が助けられると、そう思っていた訳でもあるまいに。
今まで俺に敵対的な言動をしつつも見逃されていたのは、あくまでもルーザがドレイクの妻であった為だ。
バイストン・ウェルであれば、そのような状況であっても俺がルーザを殺すといったような真似はしなかっただろう。
だが、ここはバイストン・ウェルではなく地上だ。
ましてや、ビショットやルーザの様子から考えて、ドレイクはルーザが地上にいるというのを知らない。
そのような状況で俺と敵対したのだ。
そこで自分が殺さないといったように判断するのは、甘いとしか言いようがない。
向こうが何を考えているのかは、俺にも分からない。
分からないが、それを俺が考慮する必要はない。
「ビショット、ルーザ……お前達は俺と敵対したんだ。そうである以上、お前達の未来は決まった」
そう言うと同時に、行動に移る。
俺とビショットの会話から、こちらが危険だと判断していたのだろう。
先程俺が倒し損ねたライネックが、オーラソードを手に突っ込んでくる。
そんなライネックに対し、俺も真っ正面から突っ込み……こちらにむ向かって振るわれるオーラソードの一撃を回避しながら、反撃の一撃としてオーラソードの一撃を放つ。
その一撃は、あっさりとライネックの胴体をコックピット諸共上下に切断した。
背後で起きた爆発は全く気にせず、そのままゲア・ガリングに向けて進む。
当然ながら、ビショットもこの状況になれば俺との戦いは避けられないと判断したのだろう。
ゲア・ガリングから多数のオーラキャノンが発射され、それだけではなく次々オーラバトラーも出撃してくる。
ゴラオン隊との戦いで結構消耗している筈だし、ヨーロッパの軍によってそれなりの数を誘き寄せ、ショットのスプリガンによる攻撃でもかなり撃破した。
しかし、それでもゲア・ガリングからは多数のオーラバトラー隊が出撃してくる。
当然だがブル・ベガーやナムワンといったオーラシップもいて、そこから出撃してくる敵や、オーラシップからの射撃もあった。
しかし、俺はそんな相手の援護射撃は気にせず、まずはオーラバトラー隊との戦いに入る。
注意が必要なのは、あくまでも俺の役目はビショット軍をスプリガンやグランガランのいる海上まで誘き寄せる事であって、ここで本格的に戦うというものではない。
つまり、ここで全力で戦うのではなく、俺がやるのはあくまでも程々の戦いを行い、そして勝ち目がないと判断し、逃げるというものだ。
ルーザや黒騎士の存在を俺に把握され、更にはその件をドレイクに流すといったようにも誘導している。
そのような状況である以上、ビショットとルーザは俺を逃がすといったような真似は出来ないし、黒騎士は俺を憎んでいる以上、こちらも逃がすといった真似は出来ない筈だ。
そんな風に思いつつ、俺はオーラソードを構えたままビショット軍に突っ込むのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1640
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1696