巨大化したハイパーズワァースは、ゲア・ガリングを内部から破壊していく。
俺はそんなゲア・ガリングの内部で動き回っていたのだが、そうなれば当然のようにハイパーズワァースは俺を追ってくる。
ゲア・ガリングの内部の通路は、オーラバトルシップだけあってかなり広く作られている。
オーラバトラーであっても、多少狭いが移動出来る程度には。
そして……俺に憎悪を抱いているバーンは、当然ながら俺の乗っているズワウスが移動すれば、それを追ってくる。
ゲア・ガリングの中はズワウスが移動する事は可能だが、ハイパーズワァースが移動するのは不可能だ。
そうなると、当然ながらゲア・ガリングの内部を破壊しながら追ってくる。
このままゲア・ガリングの内部を移動していれば、そう遠くないうちに沈むだろう。
それは俺としても賛成出来る事ではあったが、その前にやっておくべき事があった。
確かこっちだったな。
やるべき事をする為に、以前ここに来た時の道順を思い出しながら進み……
「あそこだな」
呟き、ズワウスを突っ込ませる。
そうして俺が突き破った扉の向こうにあったのは、ブリッジ。
そう、ビショットとルーザがいるブリッジだ。
『なっ!?』
ブリッジにオーラバトラーが突っ込んでくるとは思いもしなかったのか、ビショットの口から驚きの声が漏れる。
あるいは、オーラバトラーが突っ込んでくるとしても、それはゲア・ガリングの外から突っ込んでくるのであって、内側から突っ込んでくるのは予想外だったといったところか。
そんな驚きの様子を見せているのを尻目に、俺はズワウスのコックピットから出る。
当然機体をこのままにしておけば、ハイパーズワァースによって破壊される可能性もあるので、空間倉庫に収納しておく。
そこまでやって、ようやくビショット……ではなく、ルーザが叫ぶ。
「何をしているのです! その男を殺しなさい!」
そんなルーザの声で我に返ったのか、何人もの兵士……騎士か? ともあれ、長剣を引き抜いてその切っ先をこちらに向けてくる。
「そんな物で俺をどうにか出来るとでも思っているのか?」
「何が……望みだ、アクセル王」
俺の言葉に答えたのは、騎士達ではなくビショット。
先程までは唖然としていたものの、こちらも恐らくはルーザの声で我に返ったのだろう。
「何を? それは決まっているだろう? この期に及んで俺が欲しい物は1つだけだ。……いや、正確には2つだけだな。2人分だし」
その言葉でビショットは俺が何を言ってるのかを理解したのだろう。
表情を強張らせる。
「さて、そんな訳で俺はお前達が大事にしているものを貰おう。大事な大事な……たった1つしか持っていない、命をな」
「無礼者! 何を言うのですか!」
ようやく俺が何を欲しているのかに気が付いたのだろう。ルーザは金切り声で叫ぶ。
通信を送った時に、その辺についてはきちんと説明したつもりだったんだがな。
まさか、今のような状況になっても自分が死ぬと思っていなかったのは、驚きだった。
「何をって、決まってるだろう? お前の……」
命を貰う。
そう言おうとした瞬間、ズワウスが壊した扉どころではなく、壁を壊してハイパーズワァースがブリッジに入ってきた。
入ってきたというか……身体の一部を突っ込んできた? といった方が正しい。
それ自体は問題ない。
最初からそれを目的としていたのだから。
だが……左腕が切断され、右腕だけになってゲア・ガリングの中を進んでいたハイパーズワァースは、その右手を伸ばしたままブリッジに突っ込んで来たのだ。
オーラソードを握ったままの状態であった為か、その勢いのままにブリッジに突っ込み、ブリッジの中でも中央にある玉座にいたビショットとルーザは、その巨大なオーラソードによってあっさりと潰されてしまう。
「えー……」
これは完全に予想外だった。
いやまぁ、ブリッジに突っ込んでくるのは理解していたが、それでも中にいる者達に配慮するだろうと、そう思っていたのだが。
何しろ、バーンは黒騎士としてルーザに仕えていたのだ。
そうである以上、ルーザはバーンの主という事になる。
そんな主のいる場所に突っ込むのだから、多少は配慮するだろうと。
しかし、バーンの俺に対する憎悪は予想以上であり、結果として俺がいるのなら何も問題はないといった様子で突っ込んできた。
その結果が、ビショットとルーザの死亡。
もしかしたら生きているのか? と思わないでもなかったが、ビショットとルーザは完全にオーラソードによって潰されており、首やら上半身やらがその辺に散らばっており、内臓も撒き散らかされている。
このような状況で生きているとなれば……それこそ人間ではないだろう。
俺が殺そうと思っていた相手だけに、これは完全に予想外だった
一応、本当に一応念の為にと思ってステータスを表示してみるが、撃墜数は変わっていない。
やはりビショット達を殺したのはバーンであると、そう認識されたのだろう。
バーンを誘導してここまで連れて来たのは俺なので、もしかしたらと思ったんだが。
まぁ、いい。今の俺にとって撃墜数というのはそこまで意味があるものではない。
PPも結構な数が溜まっているので、何かあった時にはそれを使えばいいだろうし。
ビショットはともかく、バイストン・ウェルにいた時から俺を敵視していたルーザは、出来れば自分の手で殺したかったのだが。
それが出来なかったのは、残念だ。
とはいえ、今の状況でそのような事を考えても意味はない。
「ルーザのような地雷女に騙されたとはいえ……せめて、安らかに眠れ」
一時的には友好的な存在だったビショットにそう言う。
するとそれを待っていたかのように、巨大なオーラソードが横薙ぎに振るわれた。
恐らく、ブリッジの中にズワウスの姿がなかったので、俺を一瞬見失ったのだろう。
その結果として、攻撃に移るのが遅れたのだろう。
とはいえ、その一撃はハイパー化している状態に相応しく、ブリッジにいた大勢を一瞬にして殺した。……俺は跳躍して回避したが。
幸いにも、ハイパーズワァースが突っ込んできた影響で天井は破壊されており、ゲア・ガリングの外に出られるようになっている。
空に向かって飛び、ゲア・ガリングの装甲の上で空間倉庫からズワウスを取り出してコックピットに乗り込む。
そのタイミングで、ハイパーズワァースはゲア・ガリングの天井を破壊するような形で外に出てきた。
あ、もうこのゲア・ガリング、海中に向かって落下しているな。
出来ればこの残骸は欲しいところだけど、人が乗っている以上はどうしようもない。
それを残念に思いながら、俺はズワウスでゲア・ガリングの装甲を蹴って完全に離れる事に成功した。
そして俺が離れれば、当然のようにハイパーズワァースもこちらを追ってくる。
まるで蛹が羽化するかのように、もしくは卵が孵るかのように、ゲア・ガリングを破壊しながら、その内側から姿を現すハイパーズワァース。
その結果として、ゲア・ガリングは既に完全に破壊されてしまい、その残骸が海上に降り注いでいた。
当然その残骸の中にはゲア・ガリングに乗っていた者達もいるのだが、だからといって俺がそれを助けるような真似が出来る筈もない。
俺が海に落ちた連中を助けるなんて真似をすれば、間違いなくハイパーズワァースはそんな俺を狙って攻撃してくる。
もしそんな事になった場合、ハイパーズワァースの攻撃によって海に落ちた面々の多くが死んでしまうだろう。
そうならないようにする為には、やはり自分で何とか助かって貰うしかない。
『アクセルゥッ!』
ハイパーズワァースから聞こえてくる、怨念の込められた声。
オープンチャンネルで聞こえてくるその声は、こちらの戦力だけではなくビショット軍のオーラバトラー隊にもしっかりと聞こえていたらしく、ビショット軍のオーラバトラー隊の動きが止まる。
あるいは、バーンの声ではなくゲア・ガリングが……ビショット軍にとっては本拠地とも呼ぶべき存在が破壊された事で、ショックを受けたのかもしれないが。
これが普通に破壊されたのなら、もしかしたらそこまで気にするようなこともなかったかもしれない。
しかし、ビショット軍の誰もが、まさか内部から破壊されるといったようなことは想像もしていなかっただろう。
ハイパー化という現象を知っていれば、また話は別だったのだろうが。
『アクセル、ハイパー化!?』
マーベルのダンバインからの通信が入る。
ハイパーズワァースの姿を見て、ジェリルとの戦いを思い出したのだろう。
「ああ。黒騎士……いや、バーンのズワァースがハイパー化した」
『え? 黒騎士ってバーンだったの?』
「そうなる……っと!」
ハイパーズワァースから放たれたオーラキャノンの一撃を回避する。
その一撃を俺は回避したものの、回避されたオーラキャノンの一撃は、真っ直ぐに飛び……何と、ビショット軍のブル・ベガーに命中して巨大な爆発を生む。
普通のオーラバトラーが使う兵器でも、その威力は下手をしたら核兵器並と言われている。
そんな中でハイパーズワァースのオーラキャノンの一撃が巻き起こす爆発はそれこそ天変地異か何かではないかと、そんな風に思ってしまうくらいの巨大な爆発だった
当然の話だが、そんな爆発があれば攻撃が命中したブル・ベガーだけではなく、周囲に存在していた他のブル・ベガーやナムワンといったオーラシップにも爆発の被害は及び、誘爆する形で周囲に巨大な爆発が幾つも生まれることになる。
「これはまた……随分と俺の役に立ってくれるな」
『あのね、冗談を言ってる場合じゃないでしょ。あんな攻撃を食らったら、こっちの被害も馬鹿にならないわよ!』
今の攻撃はマーベルにとっても予想外だったのだろう。
焦った様子でそう告げてくる。
こうして悠長に会話する事が出来ているのは、やはりハイパーズワァースの存在によって……そして数隻の自軍のオーラシップを破壊されたビショット軍が、どうすればいいのか迷っているからだろう。
しかし、そんな混乱もすぐに終わる。
変わってビショット軍のオーラバトラー隊に宿ったのは、怒り。
最初は数騎のライネックがハイパーズワァースに向かって突撃し、それを見たビアレスやアルダム、もしくはタンギーが続く。
ビショット軍にしてみれば、ハイパーズワァースは敵でしかないのだろう。
あるいはバーンが……いや、ビショット軍にしてみれば、黒騎士が乗っているというのすらも分かっていない可能性がある。
俺にしてみれば、ビショット軍同士の戦いは寧ろ願ったり叶ったりといったところなのだが。
『おい、アクセル。ビショットとルーザはどうしたんだ? ゲア・ガリングがあの様子だとすると、もう死んでいるように思うけどよ』
俺とマーベルがいるのを見て、トッドのビアレスがやって来ると、そう通信が入る。
「ブリッジにハイパーズワァースが突っ込んできた時の騒動で死んだよ。バーンも、まさか自分がビショットやルーザを殺すとは思っていなかったんだろうな」
『バーン? 黒騎士じゃ……おい、まさか……』
トッドは俺の言葉に、事情を理解したのだろう。信じられないといった様子を見せる。
無理もない。ショウやトカマクと一緒に召喚されたトッドは、何だかんだとバーンとの付き合いがあった。
そうである以上、まさかそのバーンが黒騎士だったというのは予想外だったのだろう。
「正解だ。……さて、そろそろビショット軍も全滅に近い。このままだと、今度はヨルムンガンドの方に向かいかねないから、ちょっと俺が行って片付けてくるよ」
『ちょっ、おい!』
トッドの通信を切ると、ズワウスをハイパーズワァースのいる方に向ける。
ビショット軍はかなり数がいたのだが、ハイパーズワァースと比べれば、大人と子供……あるいは象と蟻といったところか。
ただし、蟻も数万匹の群れになれば象を倒す事も出来るのだが。
残念ながら、ビショット軍は数万機といった数のオーラバトラーは用意出来ず、ズワウスの映像モニタではハイパーズワァースに向かって突っ込んでいったオーラバトラーの殆ど……いや、全てか? 全てが撃墜されていた。
中には勘がいいのか、もしくはハイパーズワァースの姿に恐怖したのか分からないが、他の者達と違って攻撃を行わず、それによって幸いにも生き残っている者もいた。
生き残っている連中は、ヨルムンガンドで使ってもいいな。……あくまでも大人しく降伏するのならだが。
そんな風に思いつつ、ハイパーズワァースから見えないように上空に向かう。
ビショット軍との戦いに集中している為か、バーンは俺に気が付いた様子はない。
ハイパー化は、オーラバトラーをパワーアップするのは間違いないが、同時にダメージも与える。
俺がジェリルと戦った時も、ジェリルは死ぬ寸前に近かった。
だからこそ……このハイパーズワァースもそう遠くないうちに自滅すると分かってはいるが……
「せめてもの手向けだ、死ね!」
上空からオーラソードを構え、マジックコンバータを全開にして真っ直ぐ降下していく。
ハイパーズワァースはそんなズワウスの存在に気が付かず……次の瞬間、ハイパーズワァースの中心に存在する本物のズワァースをオーラソードの一撃がコックピット諸共破壊するのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1690
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1706