シーラとキスをした後、俺達はそのままグランガランに戻ってきた。
正直なところ、何故あのような真似をしたのかといったことが聞きたかったのだが……シーラは俺が何かを言うよりも前に、グランガランに戻るとカワッセに声を掛けて仕事に戻った。
いや、シーラが……聖少女、聖女王、聖王女と様々な呼ばれ方をするシーラが、自分から男にキスをしたのだから、その意味は分かる。
分かるのだが、シーラの性格を考えると俺とマーベルの関係を知った上でああいう真似をするのか? といった疑問があった。
蝶よ花よといった訳ではないだろう、それでも王族として箱入りで育てられてきたシーラだ。
当然のように、その貞操観念はかなり高いだろう。
それこそ、身体や唇を許すのは自分の結婚する相手だと、そのように認識していてもおかしくはない。
とはいえ、嵐の球の一件が終わった後で頬にキスはされているのだが……いやまぁ、キスをする場所として、頬と唇ではその意味は大きく変わってくる。
それだけに、余計にシーラの行動に混乱したのだが。
混乱とはいえ、シーラが何故あのような真似をしたのかといった事は理解出来る。
そもそも、シーラがキスをしてきた時点でその意味は明らかなのだから。
そうである以上、シーラに対して何らかの返事をするべきなのか、それともシーラの方から言ってくるのを待つべきなのか……
「どう思う?」
「あのね、それを私に聞く時点でシーラの本当の気持ちを分かってないじゃない?」
ヨルムンガンドにある俺の部屋で、マーベルがそう言ってくる。
とはいえ、ベッドの上で身体を重ねた後の気怠い雰囲気でのピロートーク……といった訳ではなく、ソファに座って紅茶を飲みながら話していた。
「そう言ってもな。シーラに好意を抱かれているのは知っていたけど、それは友人としての好意……もしくは同格の同盟者に対する好意だと思っていたんだよ」
ナの国はバイストン・ウェルにおいても大国だ。
それこそ、アの国を中心とした国々と比べても、明らかに格上だと判断出来る程の。
そんな国の女王をしていたシーラにとって、異世界の国王という立場にいる俺は、言ってみれば同格と思えるような相手だった。
だからこそ好意を抱かれていると思っていただけに、男女の愛情的な意味で俺に好意を抱いているというのは予想外だったのだ。
「あのね。シーラは言ってみれば箱入りのお嬢様なのよ? 正確には女王様だけど」
「箱入りの女王様……なんというか、もの凄く強烈な印象を与える言葉だな」
こういうのをパワーワードというんだったか? ……違うような気がする。
「ましてや、シーラを嵐の球で助けたのよ? そんなシーラがアクセルに好意的になるのは当然だと思わない?」
「そういうものか?」
「そういうものなのよ。それにシーラはああ見えて乙女っぽいところもあるわ。それだけに余計にね」
乙女っぽい……そう言えば、嵐の球で助けた時も、エルが何かそれらしい事を言っていたな。
「そういうものか」
結局俺の口から出たのは、数秒前と全く同じ言葉。
とはいえ……
「シーラの背中を押したのは、マーベルだろ?」
「ええ」
予想外にあっさりと、マーベルは俺の言葉に頷く。
てっきりもっと隠すのかとばかり思っていたんだが。
「何でそんな真似を? 俺はそういうのに慣れてるけど、マーベルは違うだろ?」
ホワイトスターに恋人が10人以上いる俺にとっては、複数の恋人がいるのはおかしな話ではない。
寧ろ、自然だと言ってもいいだろう。
だが、マーベルは違う。
これで実は中東とかの妻や恋人が多数いるような国の出身ならともかく、マーベルの出身はアメリカだ。
一夫一婦制の国だけに、マーベルがわざわざ自分と付き合っている俺とシーラをくっつけようとするのは、驚きでもあった。
「何で……と言われても。そうね。色々と理由はあるけど、私達の存在をアクセルに刻みつけておきたい。決して忘れて欲しくなかったから、かしらね」
「それはどういう意味だ? 別に今回の件が終わったところで、それで俺とお前の関係がどうにかなったりはしないぞ。いやまぁ、マーベルの父さんは未だに俺とマーベルの関係に完全に納得してる訳ではないけど」
一応、マーベルを頼むとマーベルの父親に言われはした。
だが、あれはこれからマーベルが戦場に向かうからこそ、渋々……本当に渋々出て来た言葉だというのは、間違いなかった筈だ。
母親の方は俺とマーベルの関係を全面的に賛成してくれているんだが。
ともあれ、それでもマーベルの父親は俺とマーベルの間を本気で引き裂こうといったような真似はしない。
そして俺もまた、マーベルと離れるつもりはなかった。
問題なのは、時間だろう。
俺とレモン達は、全員が不老であり、永遠の時を生きる。
だが、マーベルは普通の人間でしかない以上、残りの人生はどんなに頑張っても80年くらいだろう。
そうなると、マーベルにも時の指輪を渡した方がいいのか?
もしくは、シャドウミラーで使っている受信機か。
とはいえ時の指輪は装備すれば普通に効果を発揮するし、ある意味で俺の恋人の証のような代物だ。……婚約指輪や結婚指輪という表現も間違ってはいないと思うが。
しかし、マーベルの両親達は違う。
時の指輪の数も問題である以上、使うのは受信機になるだろう。
だが、受信機を使うにはゲートが必要になる。
正確にはただゲートがあればいいだけではなく、ホワイトスターと繋がっているゲートだ。
今のこの世界では、それが出来ない。
地上に存在するオーラ力が、いつ消えるのか。
というか、オーラ力が原因でゲートが繋がらないというのは、あくまでも俺の予想でしかない。
実際には、もっと別の理由でゲートが繋がらないといった可能性もあるのだから。
「どうして、か。……正直なところ分からないわ。ただ、何というか……そうしないといけないと、そう思うのよ。自分でも不思議な程にね。根拠はないけど、確信はあるといった感じかしら」
マーベルのその言葉は、すとん、と俺の中に入った。
言っている意味がこれ以上ない程に理解出来た為だ。
何故なら、俺も同じような感覚を覚えることがあるのだから。
ただし、俺の場合は念動力によって自分の危険を察知するといったような感覚だったが。
同じような感覚ではあっても、俺とマーベルのそれは実際に違うのだろう。
事実、俺の場合は念動力でそのように感じているものの、マーベルに念動力はない。
可能性があるとすれば、オーラ力の影響だろう。
何しろオーラ力はファンタジー世界の産物だ。
半ば予知染みた力があってもおかしくはない。
事実、シーラやエレの2人は俺を見て力を感じ、大いなる存在と評している。
……ちなみに同じような感じでリムルが俺を悪しきオーラ力と言っていたが、あれは単純に自分にとって不都合な相手、気に入らない相手だからこそ、そのように言ってるのだろう。
ああ、でもエレは霊力と言っていたから、実はオーラ力と霊力は違うのか?
もしくはオーラ力と霊力は同一のもので言い方が違うというだけの可能性もある。
ただ……そうなれば、それはそれで疑問に思う。
マーベルは始まりの聖戦士と呼ばれているものの、オーラ力という点ではそこまで突出して強い訳ではない。
ショウには確実に負けているし、ジェリルやバーンのようにハイパー化するだけのオーラ力がある訳でもなかった。
そんなマーベルが、半ば超能力染みた力に目覚めた理由……
「あ」
その理由に思い当たり、そんな声を漏らす。
「どうしたの?」
「ちょっと確認するけど、マーベルが一種の超能力染みた感覚を覚えるようになったのって、俺と初めて寝た時以来じゃないか?」
「……そう言われればそうね」
マーベルは若干頬を赤くしながらも、俺の表情がからかうようなものではなく、真剣に聞いていると理解したからなのだろう。
少し考えて、それに頷く。
それを聞いた俺は、やっぱりなといった感じだった。
UC世界での事だが、俺がニュータイプに触れると、その相手と精神空間的な場所で相手と触れあったり、そこまでいかなくても何らかの影響があるといったような事があった。
それが、この世界のオーラ力でも起きたのでは? とそう思ったのだ。
個人的には、ニュータイプ能力とオーラ力というのは似て非なる物といった感じがする。
ニュータイプは感覚的なもので、オーラ力は肉体的なものといったような印象がある。
そういう意味では、全く似ていないと思うのだが、それでも俺の中では似ているといったように思えるのは間違いのない事実だった。
そうである以上。オーラ力を持つ者が俺と触れた場合、そこに何らかの影響があってもおかしくはない。
とはいえ、セイラとの場合は抱くとかそういうのではなく、単純に接触しただけでニュータイプ能力が極端に上がった。
それに比べると、マーベルとは直接触れあった事は何度もあったが、実際に俺が抱くまでオーラ力に影響はなかった。
これは、ニュータイプ能力とオーラ力の違いなのか、もしくは本人の持っている素質の違いなのか。
その辺は分からないし、ニュータイプやオーラ力以外にも今まで特殊な力と接触した事はあるが、同じような事は起きていない。
この辺は相性とかそういうのもあるのか?
そんな疑問を抱きつつ、俺はマーベルとの会話を続ける。
「とにかく、マーベルはシーラの背中を押す……もっと言えば、俺とシーラをくっつけた方がいいと、そう思った訳だな?」
「そうなるわ。ああ、勿論だからといって私がアクセルと別れるつもりはないわよ?」
「だろうな」
俺が現在シーラに好意を抱いてるのは、間違いない事実だ。
だが、その好意が恋や愛といったものかと言われれば……どうだろうな。
勿論、シーラは女として十分に魅力的なのは間違いない。
事実、シーラとデートをした時、多くの男がシーラの美貌に目を奪われていたのだから。
それでも、マーベルとシーラのどちらを選ぶかと言われれば、恐らく俺は深く悩んだ結果として、マーベルを選ぶだろう。
「あら、そこはもう少し喜んでくれてもいいと思うんだけど?」
「それくらいは俺もマーベルに愛されていると、そう思っているからな」
「ふーん。とにかく、私はそうした方がいいと思ったから、こういう風に行動した。そしてアクセルがシーラとそういう関係になっても、私が身を退くといったような事がないというのは言っておくわね」
「それは……喜んでいいのかどうか微妙だな」
「あら、喜べばいいじゃない。元々アクセルには恋人が複数いるんでしょう? なら、そこに私とシーラが含まれるだけよ」
あっけらかんと言うマーベルに少し驚く。
マーベルの性格や育ってきた環境から考えると、やはりそのように思うといったことは珍しいのは間違いない。
だが、本人がそれでいいと言い張っている以上、こちらとしてもそれに対して不満を言うつもりがないのも事実だった。
あるいは、これで俺がシーラに何も魅力を感じていない……あるいはシーラではなくリムルが相手であったりすれば、マーベルが何と言おうと俺はその言葉に頷くような真似はしなかっただろう。
だが、その相手がシーラとなると……うん。
「普通、シーラのような美人に言い寄られれば、嬉しいでしょう?」
「それは否定しない」
その辺に関しては、男としてある意味で当然の結果ではある。
ではあるのだが……それでもやはり色々と思うところがあるのは、間違いのない事実でもあった。
「でしょう? なら、後はアクセルがシーラを受け入れるかどうかよ。その辺に関しては、シーラ任せにしないでアクセルから行動しなさいね。女としては、やっぱり男の人から告白されたいものなのだから」
「……その割には、マーベルの場合は色々と違ったけどな」
「それはしょうがないじゃない。あの時のアクセルを放ってはおけなかったんだし」
自分の行動を思い出したのか、マーベルの頬が薄らと赤くなる
地上に出て来て、何故かゲートを設置出来ずにショックを受けていたあの時……もしあの時、マーベルが俺を励まし、慰めなければ、一体どうなっていたか。
勿論、それでもいつまでも落ち込んでいるといったような事はなかったと思うが、それでもああやってすぐに立ち直れたかと言えば、その答えは否だ。
そういう意味ではマーベルに感謝しているが、俺と結ばれたあの展開がマーベルの望んでいたものと違うのは、間違いのない事実。
それでもマーベルが俺の為を思ってしてくれた事には、感謝しかない。
「ありがとうな」
「何よ、急に。らしくないわよ」
素直に感謝の言葉を口にしたのに、そんな風に言われる。
いやまぁ、今の行動が俺らしくないと思われてしまっても、仕方がないとは思うが。
そんな風に考えつつ、俺はマーベルと一緒に恋人同士の時間を楽しむのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1690
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1706