鏡あきらさん、ありがとうございます。
自己紹介し、シャドウミラーの国の王だとそう告げても、目の前の男は特に驚いた様子もない。
これは俺の言ってる内容を理解していないのか、それとも理解しつつも驚きを表情に出していないだけなのか。
とはいえ、俺があの白い鬼と戦っている時に結構な驚きを見せていたのを思えば、今更驚きを隠しても意味はないと思うが。
そんな男は俺を警戒しているのか、鞘に収まった刀……日輪刀だったか? その鞘に触れており、いつでもこちらを攻撃出来る体勢を取っていた。
「俺が自己紹介をしたんだ。そっちも自己紹介くらいはしてもいいんじゃないか? それとも鬼殺隊の男と、そう呼べばいいのか? それに……こうして話をしている間にも、そっちの男は体力を消耗するんじゃないのか?」
そう言いながら、俺は地面に倒れている男を見る。
誰かを……庇っている男の隙間から見る限り、長い髪をしているようだし、恐らく女。
だとすれば、この男の仲間か、恋人か、友人か……多分、そんなところだろう。
その男は、今は自分が口を出さない方がいいと判断したのか、黙り込んで少しでも体力を回復しようとしていた。
「……」
そんな男から視線を逸らすと、日輪刀をいつでも抜けるようにしていた男が、俺の持つゲイ・ボルクに視線を向けていた。
なるほど、こっちが武器を持っているから、向こうも友好的になれないって感じか?
そう判断し、ならばとゲイ・ボルクを空間倉庫に収納する。
「っ!?」
いきなり消えたゲイ・ボルクに、驚愕する男。
血鬼術ってのがある世界ではあるが、空間倉庫的な何かはないのか?
「鬼か?」
俺がゲイ・ボルクを収納したのを見て、短くそう尋ねる男。
取りあえず、その言葉に対しては否定しておく。
「いや、違う」
リョウメンスクナノカミを吸収したので、ある意味では鬼なのかもしれないが……ああ、でもリョウメンスクナノカミは鬼じゃなくて鬼神なのか。そうだとすれば、もしかしたら俺は鬼の神として鬼を従えられる可能性も否定は出来ないな。
「ならば、何者だ?」
「そうだな。俺もその辺について詳しく……うん?」
詳しく話したい。
そう言おうとしたのだが、誰かがこっちに向かって近付いてきているのを悟る。
その速度は目の前の男と同じくらいに速い。
まだ誰か来るのか?
そうして俺が近付いて来る気配の方に視線を向けると、目の前の男もそんな気配に気が付いたのか、そちらに視線を向ける。
地面に倒れている男は、未だに何かを言ったりせず、体力の回復に努めていた。
そして……やがて姿を現した人物は、女。
その女は男を見て納得し、俺を見て不思議そうにし、地面に倒れている男を見て……日輪刀を引き抜き、一気に速度を上げてそちらに向かう。
「っ!?」
そんな女の様子を見て、男は即時に行動に移る。
ギィンッ、という甲高い音が周囲に響き、女は空中で身体を回転させながら口を開く。
「あら、何で邪魔をするんです、冨岡さん」
そして地面に着地すると、足で地面を削りながら速度を殺し……そうしながらも、日輪刀を構えたままで、何かあったら即座に反撃出来るように準備は整えられていた。
気軽にやっているが、何気にその身体能力……というか、身体を動かす技術は高い。
今の攻撃を防いだ男……冨岡とか呼ばれていた男もそうだが、鬼殺隊ってもしかしてこのレベルが普通なのか? だとすれば、かなり期待は出来そうではあるが。
「鬼とは仲良く出来ないって言ったのは冨岡さんでしょうに。だから、皆から嫌われるんですよ。……ほら、退いて下さい」
「俺は嫌われていない」
いや、突っ込むのはそこか?
そう思っていると、新しく現れた女は困ったように口を開く。
「すみません、嫌われている自覚がなかったんですね。余計なことを言ってしまいました」
「俺は嫌われていない」
「はぁ……もういいです。それより、坊や。坊やが庇っているのは鬼ですよ。危ないから退いて下さい」
その言葉に、今までじっと体力の回復に務めていた男は上半身を起こす。
さすがにこの状況で黙っている訳にはいかなかったのだろう。
にしても……鬼、か。
言われてみれば、さっきの白い鬼と似たような気配を感じる。
だが、似てはいるがどこかが微妙に違うような……そんな様子だ。
「ちっ、違います! いえ、違いませんけど、あの、その……禰豆子は妹なんです!」
その叫びに女は優しい毒で殺すと言い……冨岡が、禰豆子を連れて逃げろという。
冨岡にしてみれば、動けない2人を庇って女と戦うのは厳しいのだろう。
そうして逃げ出した男。
女はそんな2人を追おうとし、冨岡がそれを妨げようとし……そこで延々と蚊帳の外に置かれているのが我慢出来なくなった俺は口を開く。
「ここまで綺麗に無視されると、さすがにショックなんだがな。悪いけど、そこの男……冨岡だったか? そいつとは俺が話していたんだ。戦うのなら、その後にしてくれないか?」
その言葉で冨岡と向き合っていた女は、俺の方に視線を向けてくる。
「そうですね。あの鬼の少女も気になりますが、今はこちらを片付けるべきでしょうか。……貴方は一体誰ですか? 鬼……ではないですが、人とも思えません」
女が冨岡を向き合ったまま、こちらに顔を向けてそう言ってくる。
「そっちの男……冨岡だったか? そいつにも言ったんだが、俺の名前はアクセル・アルマーだ。シャドウミラーという国の王をしている」
「えっと……冨岡さん?」
俺の言葉に戸惑った様子で女は冨岡に声を掛ける。
しかし、冨岡はそんな女の言葉に対して沈黙を保つ。
あるいは、ここで何かを言えばこの女は自分を抜き去って、先程の男と禰豆子を殺しに行くのかもしれないと、そう考えているのかもしれない。
実際、この女はどこか油断の出来ないような、そんな雰囲気を持っている。
「全く、これだから冨岡さんは皆に……いえ、何でもありませんよ?」
「俺は嫌われていない」
何だか、冨岡はさっきからそれしか言ってないように思えるんだが、
「名前からして、外国の人でしょうけど……王? 今この時代に? 正気を失っているのでしょうか?」
「いたって正気だよ。……ともあれ、今のやり取りを見る限りでは、そっちの冨岡とかいう奴よりも、お前の方が話が通じそうだな」
「それはそうですよ。冨岡さんは色々と問題のある人ですから」
「……」
冨岡はそんな女の言葉に何か言いたそうにしていたものの、何も言わない。
自分でも今の状況では女に任せた方がいいと、そう理解しているのだろう。
「ともあれ、自己紹介をされた以上は私も自己紹介をする必要がありますね。私は胡蝶しのぶ。鬼殺隊の蟲柱をしております。こちらは冨岡義勇。鬼殺隊の水柱です」
「……蟲柱? 水柱? 悪いが、そこから説明してくれ。……いや、その前にまずはこれを聞いておくべきだったな。今年は何年だ?」
「は? 一体、何故そのような事を……?」
戸惑ったような声を出すしのぶ。
いやまぁ、それは分かる。
俺だって同じようにいきなり今年は何年だ? と言われれば、戸惑うだろう。
とはいえ、俺としてはこの世界が現在何年なのかというのは、是非とも知っておくべき事だ。
冨岡……いや、義勇やしのぶの様子を見る限り、間違いなく現代、いわゆる平成とかそういう年代には思えない。
義勇の髪はいわゆるチョンマゲの類ではないので、江戸時代という事はないと思うんだが。
「いいから、教えてくれ。それによって俺も色々と対応を考える必要があるんだ」
「はぁ……それは構いませんけど。今年は1915年、大正4年です」
「……そうか」
平成ではないにしろ、昭和くらいの年代かと思っていたんだが。
まさかの大正……それも4年ってことは、まだ大正になったばかりか。
「それで? 結局のところ貴方は誰なんですか? 少なくても……その辺の一般人ではありませんよね? 一般人なら、今のこの山で生きているといったような真似は出来ませんし」
誰と言われてもな。
うーん、大正か。大正の人間に異世界とか平行世界とかパラレルワールドとか、そういうのを話しても理解出来るのか?
理解出来ても、それで俺の話を信じるかどうかは、また別の話だが。
「それは俺も聞きたい。先程……日輪刀もなしに十二鬼月を殺したのはどうやってだ?」
「っ!? 冨岡さん、それは本当ですか!?」
十二鬼月? どうやらそれがあの白い鬼の名前なのか?
「本当だ。俺が見た」
「……冨岡さんのことですから、見間違いという可能性もありますが……けど、冨岡さんでも鬼に関して間違いは……いえ、そう言えば先程鬼の少女を庇ってましたね。そうすると、鬼に関する事でも判断を間違う可能性が?」
「俺は間違っていない」
「冨岡さんは黙っていて下さい。全く、口下手なんですから。それで、改めて聞きます。貴方は一体何者で、どうやって日輪刀もなしに鬼を殺したのですか?」
さて、どうする?
そう思ったが、しのぶはかなり警戒した視線を向けて……いや、違う。その目にあるのは警戒もそうだが、それ以外に希望もあるか?
だとすれば、その希望を見せてやれば、多少は交渉も出来るようになるかもしれないな。
そう判断し、俺は空間倉庫からゲイ・ボルクを取り出す。
「っ!?」
思わずといった様子で後退ったのは、俺が空間倉庫を使って何もない場所からゲイ・ボルクを取り出したからか、それともゲイ・ボルクの持つ宝具としての圧倒的な迫力を感じたのか。
「これはゲイ・ボルク。簡単に言えば魔槍だな。妖刀とかそういうのは知ってるだろ? その槍版と思って貰っていい」
もしクー・フーリンが今の言葉を聞いたら……うん。考えない事にしよう。
この世界で聖杯戦争が行われたりなんて事はまずないんだし、Fate世界に行くような真似をしなければ、その辺りを心配する必要もない筈だ。
「ゲイ・ボルク。魔槍ですか。……聞いた事がありませんね」
「だろうな。これは宝具だ」
「宝具? それは何です?」
「そうだな。お前にも分かりやすい例えで言えば……正宗とか、そんな感じだな」
「……その槍が、ですか?」
「ああ。アイルランド……って言っても分かりにくいか。イギリスの近くの国の過去の英雄が使っていた伝説の武器。そんな風に思ってくれればいい」
「意味が分かりません。英雄の武器であれば、日輪刀もなしに鬼を殺せるというのですか?」
「殺せるな。まぁ、この世界ではどうか知らないが」
「世界?」
「ああ、世界。こことは違うどこか別の世界。そんな場所から俺はやって来たんだよ」
「……やはり物狂いですか? けど、冨岡さんは間違いなくこの人が鬼を殺したと言っていますし」
色々と理解出来ないといった様子を見せているしのぶだったが、さてどうしたものだろうな。
いっそ混沌精霊としての姿を見せるか?
一瞬そんな考えが思い浮かんだが、当然のようにすぐにそれを否定する。
混沌精霊としての俺の姿を見せれば、それこそ鬼であると認識されてもおかしくはない。
とはいえ、義勇やしのぶの様子を見る限り、鬼殺隊の面々にしてみれば鬼については気配か何かで分かるらしい。
なら、俺が混沌精霊としての姿になっても、恐らく鬼とは見なされない可能性が高いものの、だからといって今この状態でそんな真似をすれば敵対行動となる可能性が高い。
なら、刈り取る者を出すか? いやいや、ここであんな威圧感のある奴を出せば……うん。いっそグリでも出した方がまだマシなような気がする。
「とにかく、ここでこうして話していても意味がないだろ。どこかゆっくりとした場所で……ん?」
シーラやマーベルの件があり、この世界に転移したと思ったら、いきなり鬼が戦闘を行っているときた。
正直なところ、色々と状況を整理したい。
それこそ、ここがバイストン・ウェルではなくオーラ力の類もないのなら、恐らくはゲートを設置する事も出来るだろうから、一旦ホワイトスターに戻るのもいいかもしれない。
そこまで考えていたのだが……不意に鴉がこっちに来たのを見て、疑問に思う。
今が夜であるというのは、特に問題はない。
一般的に鳥は夜になると目が見えなくなると言われているが、フクロウは普通に見えるし、大多数の鳥は夜でも普通に目が見えるといったようなことを、以前何かで見た記憶があった。
実際に夜に空を飛んでいる鴉というのは、そこまで珍しいものではないのだから。
だが……それでも俺が鴉を見て疑問に思ったのは、その鴉が明らかに変だった為だ。
夜目云々の話ではなく、鴉は野生動物である以上、戦いの気配には敏感だ。
少なくても、この山で行われているような戦いの最中に自分からやって来る鴉がいるとは思えない。
そして俺が訝しげな様子で近付いて来る鴉を見ているのに気が付いたのか、やがて義勇としのぶも俺の視線を追い……
「鎹鴉?」
しのぶが近付いて来る鴉を見て、そう呟く。
鎹鴉? それがあの鴉の種類なのか?
鴉と一口に言っても、分類した場合結構な種類がいる。
近付いて来る鴉が、その鎹鴉といった種類の鴉なのかもしれないと思ったが……次の瞬間、その鴉の口が開くと言葉を喋り出す。
「伝令! 伝令! カアアア。伝令アリ!」
そう、間違いなく鴉が喋ったのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730