隠とかいう連中がいる場所に俺達……いや、俺が姿を現すと、当然のように注目を浴びる。
まぁ、その気持ちは分からないでもない。
ここは日本である以上、こうして見る限りほぼ全員の髪の色が黒だ。
隠はフードというか、頭巾? を被っている者もいるので、髪の色を完全には確認出来ないので、全員が黒髪であるとは限らないのだが。
そんな中に、赤い髪をした俺が姿を現したのだから、注目を浴びない訳がない。
ましてや、俺の服装は鬼殺隊の制服とは違うのだから、尚更に。
そのような状況、隠の一人がしのぶに向かって近付いていく。
義勇ではなくしのぶに近付いたのは、やはり隠であっても義勇が話すのが得意ではないというのを理解しているのだろう。
……あるいは、しのぶが美人なので、話すとすればしのぶの方がいいと考えたのかもしれないが。
「蟲柱様、その……そちらは……」
「ああ、彼はアクセル・アルマーというらしいです。お館様のお客様ですよ」
ざわり、と。
しのぶの言葉を聞いた隠達がざわめき……そして、俺に対する物珍しそうな視線はかなり消える。
凄いな。しのぶの口から出たお館様の一言で皆が納得してしまった。
鬼殺隊において、お館様というのは絶対的な存在らしい。
……シャドウミラーに所属するエルフ達の事を考えると、俺も人の事は言えないのだが。
実際、エルフ達もこういう状況になった場合、同じような対応を取るだろうし。
しのぶに話し掛けた隠も、俺がお館様のお客様であると聞かされると、納得した様子を見せた。
「それで、これからどうするんだ? 本部とやらに行くんだろ? さすがにこの人数全員が走ってとなると……」
「いえ、怪我人が多数いるので、ここにいる人達の大半は蝶屋敷に行くんですよ」
言われてみれば、隠によって治療をされている者も多い。
このような場所で治療をするとなると、当然ながら完全な治療は出来ない。
出来るのは、精々が応急処置程度だろう。
ましてや、大正4年となると医療技術もそこまで発達している訳ではない。
あるいは鬼殺隊独自の治療方法とか、そういうのがあるのかもしれないが。
「……あれは?」
そんな中、ふと気になったのは少し離れた場所にいた集団。
人というか虫っぽい感じになっている者達。
最初は鬼なのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「あの方々は、鬼によって外見を変えられた人達です」
そう告げるしのぶの表情は、真剣でいながら悲しそうで、そして怒っているような……そんな複雑な表情だった。
そんなしのぶの様子に、何故かシーラやマーベルの顔を思い出す。
だからだろう。俺がそう次の言葉を口にしたのは。
「ホワイトスターに戻れば、多分治せるんだけどな」
「……それは、どういう意味でしょう? 本当に治せるのですか?」
俺の言葉を聞き咎めたのか、しのぶは真剣な表情で俺に聞いてくる。
「どうだろうな。実際に色々と調べてみないと分からないが、レモン……俺の国の技術者のトップに立つ人物なら、その辺はどうにかなるかもしれないな」
「本当ですか? もしそうなれば、この人達もまた鬼殺隊として行動出来ますか? 私の技術では、治せることは治せますが、前線に出るような事は難しいでしょう」
治せるのか。
それが素直に驚きだった。
見た感じでは、あそこにいる集団は外見だけではとても人間とは呼べない状況になっている。
これがレモンが治せる……もしくは木乃香の魔法で治すというのなら、まだ分かる。
しかし、それをこの時代の者に治せるというのは素直に驚きだった。
「正確には分からないとしか言いようがない。それに確認する為には、ゲートという機械……俺の国と自由に行き来する為の機械を設置して、それで一度向こうの世界に戻って聞く必要がある」
「そうなのですか? ですが、アクセルさんはここにいますよね?」
「色々とあるんだよ」
ホワイトスターからダンバイン世界に転移し、そのダンバイン世界からこの世界に転移したのだ。
正直なところ、未だにマーベルやシーラの件をどうにか出来るくらいに納得した訳ではない。
訳ではないが、それでも今の状況を思えば、まずはこっちの世界でゲートを設置する必要があった。
「そう、ですか。出来ればその色々という部分を聞きたいのですが、今はそれはやめた方がいいようですね。そのゲートというのがあれば問題はないんですね?」
「そうなるな。ただし、ゲートは一度設置したら、動かしたりしたくない」
実際にはゲートを設置した後でもゲートを動かすといったような真似は出来る。
出来るのだが、そのような真似をした場合、ホワイトスタートの間で時差が生じる可能性がある。
もっとも、今ここでこうしている現状でもホワイトスターとの間で時差が起きているのは間違いないんだけどな。
ダンバイン世界にいた時間を考えると、ホワイトスターでは一体どれだけの時間が経っているのやら。
「なら……一応、本当に一応聞きますが……アクセルさんの国の治療技術があれば、呪いも何とかなったりしますか?」
真剣な、それこそ俺の一挙手一投足を見逃さないといった様子で、しのぶが尋ねてくる。
義勇もまた、今この時は周囲の警戒よりも俺の答えを待っているように思えた。
何だ? この様子だと誰か呪われているのか? しのぶと義勇の様子からすると、よっぽど重要な人物……
「お館様とやらが呪われてるのか?」
『っ!?』
俺の言葉にしのぶと義勇が揃って息を呑む。
どうやら予想は当たっていたらしい。
というか、もしかしたら他にも候補はいたのかもしれないが、今この状況ではそのお館様とやらくらいしか候補がいなかったから、そう言ったのだが。
にしても、呪いか。
鬼がいて、血鬼術とやらがあるのを考えると、呪いくらいはあってもおかしくない。
「正確なところは分からないが、呪いなら呪いで、何とか出来る手段はあるぞ」
エヴァは回復魔法は得意じゃないって話だったが、解呪の類については出来るかもしれない。
そしてやっぱり木乃香が一番頼りになるだろう。
あ、でも呪いとかなら明日菜の力でどうにか出来ないか?
「そうだな。今こうして思いつくだけで3つの方法がある。実際に試してみないと効果があるかどうか分からないけどな」
「冨岡さん」
「ああ」
俺の言葉を聞くと、しのぶと義勇は視線を交わす。
そして視線だけでお互いの意思を確認すると、しのぶが俺を見て口を開く。
「アクセルさん、もう少しゆっくりしていくつもりでしたが、出来るだけ早く貴方をお館様に会わせる必要が出て来ました。本来なら隠が目隠しをして本部……お館様のお屋敷にお連れするのですが、今はそれどころではありません。それに、お館様のお客様として対応するように言われてますし。……全速力で走りますが、ついてこられますか?」
「問題ない」
そう言うと、しのぶは少し考えてから口を開く。
「分かりました。では、そのようにしましょう。少し待っていて下さい。カナヲに指示を出してきます」
カナヲ? とその言葉に疑問を抱いたが、しのぶが少し離れた場所でぼうっとしていた女に向かって近付き、何かを指示している。
「随分と親しそうだが、姉妹とかそういうのか?」
「いや、継子だ」
義勇が俺の問いに端的に答えるものの、そもそもその継子ってのがどういうのかが分からない。
「継子ってのは何だ?」
「継子だ」
しのぶ、戻ってきてくれ。
というか、最初に俺と話していた時はそれなりに会話が通じた筈なのに、何で急に会話が通じなくなったんだ?
それからも少し義勇と話をしたが、殆どその言葉の意味は分からなかった。
「お待たせしました」
「よく戻ってきてくれた」
義勇との会話に悩んでいたところにしのぶが戻ってきたので、思わず歓迎する。
しのぶの方は、一体何故自分がこんなに歓迎されているのか分からないといった様子で、驚いていたが。
だが、その視線が義勇に向けられると、すぐに納得した様子を見せる。
「なるほど、冨岡さんと会話が続かなかったんですね。そういうところですよ冨岡さん」
「俺は嫌われていない」
「……今は別に嫌われているとは言ってないんですけどね。もしかして、自覚ありました?」
どことなく挑発的な様子のしのぶに対し、冨岡は不満そうな様子でありながらも、それ以上は何も言わずに黙り込む。
「あら、怒らせてしまいましたか。……取りあえずカナヲに指示をしてきたので、ここの後処理に関しては問題ないでしょう。あの炭治郎という少年と禰豆子という鬼も、問題はないそうですよ」
「そうか」
少し……本当に少しだけだが、しのぶの説明に義勇が笑みを浮かべる。
義勇にとって、炭治郎や禰豆子は大事な相手なのだろう。
「では、これから走ります。最初はゆっくりと走りますが、アクセルさんに問題がないようなら、速度を上げますね。では、行きましょう」
そう言い、走り出すしのぶ。
俺もそれを追い、そんな俺の後ろを義勇が走る。
俺を守るというのもあるのだろうが、それ以上に監視的な意味もあるのだろう。
特に俺がお館様とやらの呪いをどうにか出来るかもしれないと知った以上、絶対に逃がさないといった気迫が見て取れる。
しのぶにしろ義勇にしろ、柱と呼ばれている幹部で一角の人物であるのは分かる。
隠の連中からも、かなり尊敬されていたようだったし。
そんな2人がこうも慕うお館様か。
少し興味が出て来たのも間違いないな。
とはいえ……もしゲートが繋がったとしても、この世界にどこまで介入していいものやら。
一応日輪刀や鬼、血鬼術といったように興味深い技術とかはあるんだが……ここで下手に介入した場合、現在起きている第一次世界大戦はともかく、第二次世界大戦でも日本が勝利したとか、そんな感じになりかねないんだよな。
「あら、随分と余裕でついてきていますね。では、速度を上げますよ?」
その言葉と共に、しのぶの走る速度が上がる。
俺もまたそんなしのぶの速度に釣られるように走る速度を増していき……
「驚きましたね。もう私は結構全力なんですよ? なのに、全集中の呼吸も使わずに……」
「呼吸?」
一応混沌精霊の俺も呼吸はしている。
このまま宇宙に出ても何も問題がないので、正確な意味では呼吸と呼んでいいのかどうかは微妙だが。
ただ、しのぶの口から出た呼吸という言葉は、多分……いや、間違いなく俺の認識している呼吸とはまた別の意味での呼吸なのだろう。
全集中の呼吸とか言ってたし。
多分、それが鬼殺隊の面々が鬼と戦えている理由ななんだと思うんだが。
「呼吸ってのは? 一般的な意味での呼吸じゃないよな?」
「私達鬼殺隊の者達が使う技術の事です」
てっきり隠されるのかと思ったが、しのぶの口からはあっさりとその言葉が漏れた。
「教えてくれるのは嬉しいけど、いいのか? 言ってみればそれは、鬼殺隊の門外不出の秘密なんじゃないか?」
「どうでしょう。秘密なのは間違いありませんが、隠を含めて鬼殺隊に所属する者であれば基本的に使っていますから。勿論、その習熟度には違いがありますけど」
「それは、また……」
どうやら俺が思っていたよりもかなりオープンな技術らしい。
にしても、呼吸……呼吸か。
しのぶの言っている呼吸というのが、文字通りの呼吸……人の呼吸を使ってどうにかするのなら、これは多分俺には使えない。
何しろ、俺は混沌精霊。
文字通りの意味で人ではないのだから。
そうである以上、俺がしのぶの言う呼吸という技術を習得しようとしても、多分無理だろう。
勿論それは俺の予想でしかないので、実際に試してみないと何ともいえない。
もしかしたら……本当にもしかしたらだが、俺も呼吸というのを使えるかもしれないし。
「そうか、助かったよ。呼吸ってのに興味が湧いてきた。……お館様とやらに会うのも楽しみだ。その時にもししのぶが叱られるような事があったら、擁護させて貰おう」
「あら、ありがとうございます。けれど、アクセルさんはお館様のお客様である以上、この程度のことで咎められるようなことないと思いますよ? それに……こう見えて、私はちょっと凄いんですけど、そんな私でもどうにもならないことをアクセルさんは出来るかもしれないですしね」
笑みを浮かべてそう言ってくるしのぶ。
どうにもならない云々というのは、多分……いや、間違いなく呪いに関してだろう。
とはいえ、その解呪の可能性があるとはいえ、それも絶対ではない。
そもそも、この世界の呪い……お館様というくらいだから、恐らく鬼殺隊のお偉いさんである以上、その呪いをやったのは鬼だ。
可能性としては、血鬼術とやらが関係しているのだろう。
具体的にどのような力なのかは分からないが、あの白い鬼……十二鬼月とかいう、鬼の中でも幹部格なのだろう奴の血鬼術は、それなりに使い勝手がよさそうな奴だった。
俺が見たのは少数しかないが。
出来れば、あの鬼の身体の一部でも確保しておきたかったな。
それを解析すれば、凛の使うガンドのように量産型Wに血鬼術を使わせることが出来るのかもしれないのだから。
そう思いながら、俺は走り続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730