嘴平伊之助。
それがどうやら、猪の被り物をしている人物の名前らしい。
名前からすると男か。
本来なら身体や顔を見れば男か女かは分かるんだが、布団から出ているのは顔だけで、その顔も猪の被り物に覆われているとなれば、男女の判断は難しい。
あるいは声を発すれば、その声で分かったかもしれないが……生憎と伊之助は特に声を発する様子もなかった。
「外見はかなり個性的なのに、随分と大人しい性格をしてるんだな」
「違いますよ師匠! 伊之助は普段はもっとこう……そう、猪突猛進といったような奴です!」
猪だけに、猪突猛進なのか?
ふとそんな疑問を抱くが、善逸の言葉と今の伊之助は全く違うように思えた。
「伊之助だったな。俺はアクセルだ」
「ゴメンネ、弱クッテ」
「……は?」
いや、挨拶に対してそういう反応ってどうなんだ?
というか、声も聞きにくいな。
「あ、その、アクセルさん。伊之助は喉を痛めてるらしくて」
炭治郎の言葉で納得し、同時に何となく善逸が猪突猛進だとか言っていたのに、このような様子なのを理解する。
伊之助は本来なら自分の力に自信があったのだろう。
だが、あの山……俺が転移した山での戦いにおいて、負けてしまったのだ。
自分の強さに自信を持っている者程、それが折られた時には大きな衝撃を受ける。
その結果として、今のような状況になっているのは間違いなかった。
「そうか。なら、今は俺が何を言っても多分意味はないな。伊之助がこの後立ち上がれるかどうかは、それこそ本人次第だ。ここで立ち上がれれば、新たな強さを手に入れられる……かもしれない」
「……本当?」
聞きにくい声だったが、伊之助は間違いなくしっかりとそう言ってくる。
この様子を見る限り、やはりまだ完全に折れているといったような状態ではないのだろう。
伊之助がどんな相手に負けたのかは、分からない。
あるいは俺が倒した十二鬼月の鬼にあそこまでダメージを与えたものの、それでも結局負けてしまったのか。
とにかく、伊之助はまだ見込みがあるのは間違いなかった。
心の弱い奴の場合は、この時点で立ち上がるといったような真似は出来ないし。
「ああ、その為にはまず身体を治す必要があるけどな」
「ウン、頑張ル」
そう言い、静かになる伊之助。
喋って体力を消耗したりせず、今は黙って少しでも体力を回復しようとしているのだろう。
「で、何でこの伊之助は猪の被り物をしてるんだ?」
「さぁ? 初めて会った時からこうだったので」
炭治郎もその辺については分からないらしい。
そういう部族の習慣とか?
いやいや、日本にそういう部族がいるとは思えない。
ああ、でも今は大正時代である以上、田舎とかには妙な風習が残っていたりしてもおかしくはないのか。
夜這いとかも、この時代は普通にあったらしいしな。
夜這いか。善逸にとって、この風習はそんなに悪いものではないような気もするが。
とはいえ、今の善逸は蜘蛛になりそうになった影響で、手足が短くなっている。
この状況で夜這いをするといったような真似は、まず不可能だろう。
「では、私はこれで失礼しますね。色々と忙しいので」
自分の役目は終わったと判断したのだろう。
しのぶはそう言ってくる。
十二鬼月との戦いの一件で、鬼殺隊は大きなダメージを受けている。
そうした怪我人の治療を、しのぶは行っているのだ。
「ああ、呼んで悪いな。頑張ってくれ。……疲れたら、これでも食ってくれ」
そう言い、チョコを渡す。
ペルソナ世界のコンビニやスーパーで普通に売っているチョコ。
とはいえ、大正時代の鬼滅世界にしてみれば、このチョコはとんでもない美味さだろう。
……具体的に日本にいつくらいにチョコが入ってきたのかは分からないが、一般的になったのは昭和とかその辺の筈だ。
そして平成時代のペルソナ世界で売ってるチョコは、非常にレベルが高い。
スーパーやコンビニで100円程度で売ってるチョコは、他国の者にしてみれば信じられないレベルの高さらしいし。
そんなチョコだけに、大正時代のこの鬼滅世界では、それこそお偉いさんであっても食べることは難しいような味であってもおかしくはない。
「これは?」
「チョコだ。甘いから、疲れている時にはちょうどいい」
食べすぎると太るぞと言おうかと思ったが、女に対してそのような事を言うのは自殺行為だし、何よりも柱のしのぶが普段どれだけの訓練をしているのかを考えれば、摂取したカロリーは普通に消費出来る筈だし。
「チョコですか。以前食べた事がありますが、随分と違いますね」
「へぇ、食べた事があったのか。……まぁ、このチョコは俺の持ってきたチョコだしな」
正確には俺が別の世界……この鬼滅世界よりも進んだ時代で買ったチョコだと言いたいのだが、現在ここにいる中で俺についての詳細を知ってるのはしのぶだけだ。
いやまぁ、俺が転移してきた現場にいた炭治郎は、俺が何か普通ではないと気が付いてる可能性も否定は出来ないが。
耀哉、その辺はどうするんだろうな。
いずれ鬼滅隊の内部でしっかりと情報を知らせるようになるのは間違いないが。
具体的に、それがいつになるのかは分かったものではないだろう。
「ありがたく貰いますね」
しのぶは俺の言ってる事が分かったのか、チョコを受け取る。
そうして笑みを浮かべて頭を下げると、アオイと共に部屋から立ち去った。
「さて、しのぶとアオイはいなくなったが……そう言えば炭治郎、禰豆子はどうしたんだ?」
この病室にやって来て、ふと気になった事を尋ねる。
柱合会議の時にいた、禰豆子。
その禰豆子は……正確には禰豆子の入っている箱は、ここにはない。
妹思いの炭治郎だけに、てっきりここに禰豆子がいるのかと思ったんだが。
「ああ、禰豆子は別の部屋です。今はぐっすりと眠っている筈です」
「そうなのか。炭治郎の事だから、禰豆子と一緒にいる方がいいと言うのかと思ったけど」
「そうですね。出来ればそれがいいんでしょうけど、この蝶屋敷なら皆が優しい人ばかりですから心配はいらないかなと。勿論、何度も様子を見に行ってますから、別に会えないって訳じゃないですしね」
そう言い、笑みを浮かべる炭治郎。
俺をいい奴だと認識したのもそうだが、炭治郎ってちょっと人が良すぎないか?
少なくても、俺は俺自身をそんなにいい奴だとは思っていない。
……というか、それこそ戦争の中だから仕方がないとはいえ、俺が今までどれくらいの命を奪ってきたのかを思えば、とてもではないが俺をいい人だと認識するとは思えないんだが。
「それより、師匠。師匠はどうやってたくさんの女の人とそういう関係になったんですか!?」
鼻息も荒く尋ねてくる善逸。
善逸は顔立ちは決して悪くない。
絶世の美形といった訳ではないが、平均以上の顔立ちはしている。
金髪なのは大正時代として考えれば万人受けはしないかもしれないが、それでも世の中には金髪でもいい。いや、寧ろ金髪の方がいいという者も少なからずいる。
であれば、本来なら善逸もそれなりにモテてもいいと思うんだが。
それが今の状況でモテないというのは……
「がっつきすぎってのがあるんだろうな」
自慢じゃないが、俺は決して女心に詳しい訳じゃない
だが、俺の目から見ても善逸は女に対してがっつきすぎているように思える。
女にしてみれば、そんな男は出来れば遠慮したいだろう。
世の中には色々な趣味の者もいるので、中には女にがっつくような男が好みだという者もいる可能性はあるが、それはあくまでも少数派だと思う。
「がっつきすぎですか?」
「ああ。女にしてみれば、そういう男はあまり好みじゃない筈だ。そういう意味では、炭治郎とかは人気がありそうだよな」
禰豆子という美人の妹がいる影響もあるだろうし、元々の性格が優しいというのもあるのだろう。
それだけに、炭治郎は女にしてみれば接しやすく、好感を抱くには十分だろう。
もっとも、その好感が異性としての好感なのか、友人としての好感なのかでまた話は変わってくるのだが。
「炭治郎……」
俺の言葉を聞いた善逸の口からは、とでも善逸が発するとは思えないような威圧感のある声が出る。
「え? ちょっ、待ってくれ善逸。俺、女の人に言い寄られた事なんてないぞ!?」
それは苦し紛れの言葉のように思えたが、同時に真実のようでもあった。
とはいえ、炭治郎の性格を考えれば女に言い寄られていてもそれに気が付かないとか、そういう感じになってもおかしくはないが。
「本当だろうな?」
「あ、ああ。本当だ。炭を売っていた時とか、人の多い場所に出掛ける事は多かったけど、それだけだ」
「なら許す」
いや、お前何様だ。
そう突っ込みたくなったものの、善逸にしてみればそれは本当に心からの言葉だったというのが、俺にも理解出来る。
「ともあれ、だ。女にモテないのなら、さっきから何度も言ってるようにがっつくんじゃなくて、もうちょっと余裕を持て。そうすれば善逸にも女が寄ってくると思うぞ」
「それ以外に、気の弱さを何とかするのが先だと思うけど」
俺の言葉に、炭治郎がそう言ってくる。
気の弱さ? 俺が見た感じ、善逸はかなり強気な性格をしているように思えたんだが。
最初に俺の存在を察知した時は、布団にくるまって隠れていたけど。
「善逸は気が弱いのか?」
「弱いっていうか、鬼は怖くないですか!? だって鬼ですよ!? 怖いですよね!?」
立て板に水といった感じで、自分の意見を口にする善逸。
ある意味、鬼が怖いというのは普通の人間らしい感覚ではあるんだろうが……
「なら、そもそも何で鬼殺隊に?」
「う……」
言いにくそうにしている善逸だったが、それでも少しずつ語ったところによると、簡単に言えば女に騙されてしまったらしい。
それで借金があり、それを育手に引き取られたとか。
ある意味善逸らしい動機だな。
他の多くは、鬼に家族や友人、恋人といった者達を殺されたことによって、その恨みから鬼殺隊に入っている。
とはいえ、中には善逸のような理由で入ってくる者もいるらしい。
十人十色って表現もあるし、それを考えれば不思議でも何でもないか。
「うーん、ヘタレだと女も不満を抱く奴は多いだろうな。自分を守って欲しいと思っている女も多いし」
これがもっと先の時代なら、女も自分が守られてばかりではなく、それどころか自分が守るといったような者も出て来る。
実際、しのぶや蜜璃のように女でも鬼殺隊で柱になっている者もいるのだから。
その辺を考えても、やはり善逸がヘタレである限り、女にモテるというのは難しい。
優しい男はモテるというのは事実だが、優しいだけではモテないというのもまた事実。
例えばデートをしている時にチンピラに絡まれたりした時、優しい男と強い男のどちらが頼りになるのかは明らかだ。
勿論、出来れば優しくて強い男の方がいいのは間違いないのだろうが。
何よりこの時代だと、モラルの類は低い。
チンピラに絡まれた時に恋人を連れていた場合、その恋人にとって最悪の結末となる可能性も十分にあるのだ。
「ぐ……そ、そういうものなんですか……?」
「俺が知ってる限りではな」
「そうですか。女の人とあんな事やこんな事をする為には、強くならないといけないんですか」
しみじみと呟く善逸。
善逸の女好きが間違いないのなら、女にモテる為に強くなるといったようなことが出来てもおかしくはない。
とはいえ、それでも生来のヘタレであった場合は、それを自分でどうにかする必要があるのも事実だが。
とはいえ、性格というのはそう簡単に変えられるものではない。
「善逸が女に言い寄られるようになるかどうかは、これからどうなるかに掛かってるだろうな」
「師匠! 俺、強くなります!」
そう断言する善逸だったが、何故か炭治郎は若干呆れの込められた視線を善逸に向けていた。
「まぁ、善逸の事はいいとして……炭治郎、禰豆子についてもう少し詳しい話を聞かせてくれないか?」
「え? それは別に構いませんけど……っ!? もしかして、アクセルさん!」
炭治郎が何を言いたいのか理解したが、俺はそれに対して首を横に振る。
「いや、別に禰豆子に手を出そうとは思っていないから、安心しろ」
「そうですか。けど、それはそれで兄として複雑な思いが……禰豆子は美人だって評判だったんですよ?」
ならどうしろと?
それこそ口説けとでも言ってるのかと思ったが、これは炭治郎が単純に妹思い……シスコンなだけだろう。
とはいえ、炭治郎の言いたい事も分かる。
実際俺が禰豆子を見た回数はそんなに多くないものの、まだ幼いながらその顔立ちが整っているのは間違いない。
将来的には間違いなく美人になるだろう。
しかし……だからといって今の状況で俺が口説くかと言われれば、その答えは否だ。
俺が禰豆子に興味を持っているのは、純粋に鬼としての禰豆子という意味でだ。
「そうだな。将来的には美人になるかもしれないが、今の俺とではちょっと年齢差がありすぎるだろ?」
現在の俺は20代の姿をしている。
10代半ば、もしくは10歳くらいの年齢になれば、また微妙に話は違うかもしれないが。
とはいえ、そんな事をするつもりはなかったが。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730