「アクセルさん、何で俺達にそこまでしてくれるんですか?」
機能回復訓練の褒美についての話が終わり、その後は適当に話をしていると、不意に炭治郎がそんな風に尋ねてくる。
「何でそこまで、か」
俺にしてみれば、炭治郎がこの世界の主人公であると半ば確信しており、善逸と伊之助はそんな炭治郎の仲間だからというのが理由なのだが、まさかその辺について話す訳にもいかない。
「そうだな。俺がこの世界に来た時に初めて会ったのが炭治郎だった。……正確には、禰豆子を庇っていた炭治郎という表現が相応しいか。だから、というのもあるな」
「……嘘ではないようですけど、本当でもない……?」
鼻を鳴らして何かを嗅ぎ分けるようにしながら、そう炭治郎が言ってくる。
鼻って……もしかして、臭いで俺が嘘を吐いているのかどうか分かるのか?
嗅覚が鋭いとは聞いていたものの、これはちょっと予想外だな。
ちなみに五感が鋭いという点では善逸もそうなんだが、善逸の場合は俺が最初に遭遇した時、俺から聞こえてくる音が人とも鬼とも違うという事で驚いていた。
もっとも、それからすぐに師匠や先生といって俺を慕うようになってきたのだが。
チョロい、と。そう思ってもおかしくはない。
「そうだな。それだけが真実ではないが、真っ赤な嘘という訳でもない。ただ、言える事と言えない事があるって感じだな」
これもまた間違いではない。
炭治郎はこの世界の主人公ではあるが、鬼殺隊という括りで見た場合は柱でも何でもない、剣士の1人でしかないのだ。
そうである以上、柱合会議で話した内容であったり、ホワイトスターで色々と決まった内容といったものを話す事が出来ないのは事実。
「そうなんですか。……とにかく、禰豆子の件もある以上、機能回復訓練は頑張ります」
これも若干の矛盾だな。
炭治郎達に話す事が出来ないような諸々があるのは間違いないのだが、禰豆子を調べるとなると、当然だがホワイトスターに行く必要がある。
禰豆子を調べるとなると、当然だが炭治郎も俺達に完全に任せるといったような真似はせず、自分も行きたいと言う筈だ。
それを断るのは難しい。
炭治郎の禰豆子への思いは、俺も理解している。
それこそ炭治郎がホワイトスターに行かず、禰豆子だけを調べるといったような真似は許容出来ないと思われた。
……というか、それ以前に禰豆子が炭治郎がいない状況で大人しく検査を受けるかといった疑問もあるし。
鬼という存在についてまだ殆ど何も分かっていない以上、禰豆子の検査は慎重に行う必要があった。
出来れば、禰豆子以外の鬼を捕らえるといったような真似が出来ればいいんだが、今のところそれは難しいんだよな。
人を食った鬼と、人を食っていない鬼。
この2つの違いをしっかりと把握する必要もあるだろうし、そうする事によって鬼という存在についてもっと詳しく知る事が出来る。
「禰豆子の為にも頑張れ。そうすれば……うん?」
炭治郎と話していると、不意に病室に近付いて来る気配を感じる。
しのぶか? と思ったものの、その気配は明らかにしのぶとは違う。
とはいえ、全く見知らぬ相手でもなく、俺にとっては覚えのある気配。
そう思って視線を向けると、俺から少し遅れて炭治郎や善逸、伊之助もそちらに視線を向ける。
善逸は音で、炭治郎は臭いで分かったんだろうが、伊之助はどうやって分かったんだろうな。野生か?
「御免」
そんな声が聞こえ、病室の中に入ってきた相手を見て、俺は驚く。
「行冥? 柱は自分の担当地区に戻ったって話を聞いてたけど、どうしたんだ?」
「うむ。アクセル殿に少し話があって来たのだ。少しよろしいだろうか?」
行冥は、鬼滅世界……大正時代として考えた場合、間違いなく巨躯と呼ぶに相応しい。
天元もそうだが、この時代にこの身体の大きさというのは驚きだよな。
とはいえ、天元と行冥では巨躯ではあっても、その種類は違う。
天元の場合は背が高いが、速度を重視したような鍛え方をしているのに対し、行冥は力を優先した……それも見せかけの筋肉ではなく、実戦でしっかりと使えるような、そんな筋肉だ。
「俺は構わないぞ。……そんな訳で、悪いが俺はこの辺で帰らせて貰うよ」
「はい、先生。またお土産期待してますね!」
即座にそう言ってきたのは、善逸。
グラビア雑誌は、善逸にとって非常に大きなものだったのだろう。
「その土産は、善逸だけで見るんじゃなくて炭治郎や伊之助にも見せてやれ」
炭治郎も女に興味を持つ年齢だ。
伊之助は……猪の被り物をしているから、具体的に何歳くらいなのかは分からないものの、声や話している内容を見れば、恐らく炭治郎とそう違いはないと思う。
とはいえ、炭治郎は禰豆子の一件で女に興味を持つような余裕はなく、伊之助は……女に興味を持たない性格をしていてもおかしくはない。
それでも少しは女に興味を持たせるようにした方がいいのは間違いない。
「えー……分かりました……」
完全に納得した様子ではなかったものの、それでも善逸は最終的には頷く。
別に善逸もずっとグラビア雑誌を見ている訳ではないのだから、その辺は問題ないと考えたのだろう。……いや、善逸の性格を考えれば、それこそ止める者がいなければ1日中グラビア雑誌を見ていてもおかしくはないな。
「一応言っておくが、善逸がああいう雑誌を持ってるのを女に……それもアオイのような生真面目な女に見られたら、間違いなく好感度は駄々下がりだから気をつけろよ」
「わ、分かりました!」
うん、この様子だと注意しておかなければ、間違いなく1日中見ていたな。
とはいえ、もうこうして注意をしたのだから、それでも善逸が自分の欲望に負けるのならそれまでの話だ。
「待たせたな、行冥。行くぞ」
「うむ」
善逸達を病室に残し、行冥と共に部屋を出る。
「で、どこで話す? 他の連中に話を聞かれたくないんだろ?」
あの病室の側で話した場合、善逸には筒抜けになってもおかしくはない。
「その辺は任せるが、蝶屋敷の外に出て欲しい」
そう言われ、目的の見舞いも終わったことだし、これ以上は蝶屋敷にいる必要もないので素直に外に出る。
「どうする? いっそ、このままここで話すのが問題だとしたら、ホワイトスターにでも行くか?」
ホワイトスターと繋がっているゲートは、蝶屋敷のすぐ近くに設置されている。
現在は量産型Wとコバッタが護衛をしているので、鬼滅世界の住人がホワイトスターに自由に転移するといったような真似は出来ないが、当然ながら俺がいれば全く問題なく転移出来る。
「いや、それには及ばない。ただ、周囲にあまり人がいない場所ならいいのだが」
そう言われ、蝶屋敷から少し離れた場所に移動する。
ゲートが設置されている場所とは反対側なので、鬼殺隊の剣士がちょっと顔を出すといったりはしないだろう。
「それで? 蝶屋敷からここまで離れて……何を話したいんだ?」
行冥からは殺気や悪意の類を感じたりしないので、こちらに危害を加えてくるといったような事はまずないだろう。
「アクセル殿、私に目をくれぬだろうか?」
そう言い、深く頭を下げる行冥。
なるほど。だから誰もいない場所に来たかったのか。
行冥は鬼殺隊の中でも柱の1人だ。
それもただの柱ではなく、鬼殺隊の中でも最強と言われており、年齢的にも他の柱よりも上なので纏め役のような立場だろう。
耀哉が鬼殺隊を率いる者であるとすれば、行冥は鬼殺隊の実働班を率いる者といった感じか。
当然そのような人物だけに、鬼殺隊の剣士達からの信望も厚い。
そんな行冥が俺に向かって頭を下げているのを見れば他の者がどう思うか。
それは考えるまでもなく明らかだろう。
シャドウミラーの協力を得て、これから鬼との本格的な戦いになるかもしれない今この時、行冥が俺に頭を下げているのを見れば間違いなく士気は下がる。
それだけではなく、鬼殺隊はシャドウミラーの下部組織になるといったように思う者が出て来てもおかしくはない。
行冥がどこまでその辺について考えたのかは、俺にも分からないが。
「目を、か。それはホワイトスターで俺が耀哉に言っていた、視力が戻る義眼の事か?」
そう尋ねると、行冥は頷く。
「うむ。シャドウミラーの力は強い。それは風柱を圧倒した異世界の鬼を見れば明らかだ」
正確には吸血鬼だし、何よりエヴァはシャドウミラーの中でも生身での戦闘に限定した場合は最強クラスなんだが。
とはいえ、実際にシャドウミラーのメンバーは柱以上の力を持つ者は多い。
それこそ、先遣隊としてやって来た面々は全員が柱以上の実力者なのは間違いない。
「しかし、この世界の事である以上、シャドウミラーに頼り切るという訳にもいかない」
「だろうな」
正確には、それ以外にも鬼殺隊としてやって来た行動である以上、無惨を殺すのならシャドウミラーではなく自分達が……といったような思いもあるのだろう。
「だからこそ、強くなれる手段があるのなら、それを躊躇うつもりはない」
他の柱達は、そう簡単に更なる強さを得るといったような真似は出来ないだろう。
だが、行冥は違う。
盲目というだけで、大きなハンデを負っているのだ。
というか、その状況でも鬼殺隊最強と言われている辺り、行冥の実力の凄さが理解出来る。
「話は分かった。けど……いいのか? 行冥が今のように強くなったのは、目が見えないからというのも関係している筈だ」
勿論、行冥のその筋骨隆々の身体から生み出される力も、行冥が強い理由だろう。
しかし、目が見えないということは、視覚がない分、それ以外の感覚が鋭くなるという話を聞く。
心眼を使えているようなもの……というのは、少し大袈裟か?
「目が見えない状況での戦い方が、現在の行冥の戦い方の筈だ。だというのに、そこで急に目が見えるようになったりした場合、もしかしたら今の戦い方が全く使えなくなるかもしれないぞ?」
「それでも、目が見えるようになりたいのだ!」
そう言い、行冥の目からは涙が流れる。
相変わらず行冥はよく泣くよな。
とはいえ、行冥が強くなる……それは即ち、鬼殺隊最強の人物が更に強力になるという事を意味している。
鬼滅世界において、鬼と戦う鬼殺隊の戦力が強化されるというのは、俺にとっても悪い話ではない。
事実、先遣隊が戦闘訓練を行っているのは、鬼殺隊の戦力強化という一面を期待してのものなのだから。
「分かった。俺は構わない。だが、当然だがそのような真似をする為には行冥がホワイトスターに行く必要があるだろうし、義眼を付けたから今日すぐに動けるといったような真似は出来ない。リハビリ……いや、機能回復訓練と言った方が正しいか? それを行う必要がある。そして機能回復訓練は恐らくそれなりに時間が必要になる筈だ」
これが、あるいは以前は目が見えていたというのであれば、話は別だろう。
だが、行冥は生まれた時から盲目だったと聞く。
そうである以上、行冥に義眼の手術を行って視力を取り戻しても、行冥の身体がすぐにそれに対応出来るかと言われれば……正直、微妙なのは間違いない。
リハビリをしてる間、行冥が担当している地区をどうするのか。
これが1日や2日なら……いや、いっそ魔法球を使うか?
そう思うも、すぐに却下する。
技術班はかなり自由に使っているし、レモンを始めとした俺の恋人達も俺に抱かれた翌日は体力を回復する為に使っているし、政治班も1時間で2日の休暇という事で多用している。
そんな風に多数使っているものの、魔法球というのはシャドウミラーの最重要機密であるのは間違いない。
そんな場所に行冥を連れて行くのは、さすがに少し難しい。
「む……時間が問題なのか」
「そうなるな。まさか、身体が自由に動かないのに柱として活動するなんて真似をする訳にもいかないだろう?」
そう言われると、行冥は素直に頷く。
自分でも色々と無茶を言ってる自覚はあるのだろう。
とはいえ、だからといって義眼を諦めるつもりはないのだろうが。
「そうなると、耀哉と相談をする必要があるな。行冥の担当地区に誰か別の戦力を送る許可を貰う為に。幸い、戦力は余ってるし」
先遣隊の面々に鬼と戦わせ、場合によっては鬼のサンプルを確保する絶好の機会でもある。
「本当にそのような真似が!? ……感謝いたす」
俺の言葉を聞いた行冥は、再び目から涙を流す。
本当に今更の話だが、実はこれって行冥の目の病気で涙が出やすくなってるとかじゃないよな?
単純に行冥が感激して涙もろいというだけなら、問題はないんだが。
「そんなに泣くな。……取りあえず、耀哉に話を通すよりも前に先遣隊としてやって来てる連中……そうだな。ムラタに話をしておくか」
先遣隊の中で、最もやる気のある……いや、殺る気のあるムラタだ。
行冥の代わりに鬼との戦いを任されると知れば、間違いなくやる気を見せる筈だった。
ムラタに鍛えられている獪岳が、そのやる気で厳しい訓練に巻き込まれなければいいけど。
そんな風に思いながら、俺は行冥を連れてムラタに会いに行くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730