獪岳の一件はあったものの、その件は一応片付いた……片付いた……うん。まぁ、取りあえずその辺は一旦置いておくとして、ここに来た理由をムラタに事情を説明する。
「ふむ、俺達が柱の代わりに鬼と……それは悪い話ではないな」
悪い話という表現はしているものの、ムラタは獰猛な笑みを浮かべている。
鬼と戦える機会があれば、それは絶対に逃したくないと思うのは当然の話だろう。
「俺達と言った以上、他の先遣隊の面々も一緒だというのを理解は出来ているようだな。ただ、問題は……」
そこで一旦言葉を切り、少し離れた場所にいる獪岳に、そしてそこから対角線上にいて、腕を組んで沈黙したままの行冥を見る。
行冥から獪岳の過去を聞いた身として、正直なところ完全には信用出来ない。
いっそコバッタでも監視に使うか? と思わないでもないくらいには。
「獪岳は……俺が連れていく」
「本気か?」
ムラタが行冥の代わりに戦うのはいい。
だが、そこに獪岳を連れていくというのは、完全に予想外だった。
「本気だ。今の獪岳は、まだそこまでの強さはない。だが、才能という点ではかなり高い。……本人が壱ノ型を使えない事に強いコンプレックスを持っているが、それを乗り越えれば十分な戦力となるだろう」
そう言うムラタだったが、正直なところ俺は何故ムラタがそこまで獪岳に肩入れするのかが分からない。
行冥の話は当然のようにムラタも聞いていた筈だ。
あるいは子供のやった事だからと、今は気にしていないのか? ……いや、まさかな。
これがムラタ以外なら、そんな風に考えてもおかしくはない。
だが、相手はムラタだ。
それこそ一度裏切った相手は再び裏切るといったように考え、獪岳を攻撃するといったような真似をしても、俺は驚かない。
「何でそこまで獪岳に拘る? 別に才能があるからってだけじゃないだろ?」
獪岳に才能があるのは事実だろう。
また、鬼殺隊の中でも少ない雷の呼吸の使い手というのも大きいのは間違いない。
だが……言ってみれば、獪岳はそれだけでしかないのだ。
獪岳に才能はあるだろうが、鬼殺隊の中には獪岳以上の才能を持つ者なら幾らでもいる。
雷の呼吸の使い手は少ないかもしれないが、だからといって獪岳と善逸の2人だけという訳でもない。
そうなると、やはり今回のムラタの判断は色々と疑問が残る。
「そうだな。獪岳は……少し昔の俺に似ているところがある。それが理由だ」
似ている、か。
そんな風な事を聞いた覚えはあったが、正直なところ昔のムラタと今の獪岳が似てるとは、俺には思えない。
とはいえ、それはあくまでも第三者である俺から見ての話だ。
ムラタにしてみれば、そんな獪岳と自分が似ているといったように思ってもおかしくはない……のか?
「話は分かった。ただし、もし戦いの最中に獪岳が逃げ出すといったような事になった場合、その責任はムラタにあるぞ」
獪岳は鬼殺隊の剣士として、相応の実力を持つ。
だが、そんな獪岳よりも上……鬼殺隊の最高戦力である柱に、かつて自分が鬼に売った行冥がいるのだ。
ましてや、行冥は他の柱を纏める立場にいる。
獪岳にしてみれば、とてもではないがそんな状況で鬼殺隊にいたいとは思わないだろうし、先程自分を殺そうとした行冥を思えば、鬼殺隊にいたままでは殺されるかもしれないと判断し、逃げ出してもおかしくはない。
だからこそ、もし何かあったらムラタが全責任を取るという条件でもなければ、今の獪岳を鬼との戦いに連れていくといったような真似は出来ないだろう。
いっそ鵬法璽でも使うか? と一瞬思ったが、獪岳に鵬法璽を使うのはちょっと気が進まない。
そもそも、エヴァからは鵬法璽の効果が効果であるが故に、出来るだけ使わないようにしろと言われている、そんなマジックアイテムだし。
「構わん。もし獪岳が己の罪から逃げ、宿命からも逃げようとするのなら……俺が、斬る」
ビクリ、と。
ムラタの声が聞こえたのだろう。
獪岳は身体を震わせる。
ムラタとの訓練をしていた短い時間だけでも、もしムラタが斬ると言えば本当に斬ると理解しているらしい。
哀れだと思わないでもないが、獪岳の行為がこうして結果として戻ってきている以上、俺からは正直何も言えない。
獪岳が生き残る為には、それこそ俺の言った条件……死に物狂いで鬼を殺し、更には十二鬼月の鬼を殺し、鬼舞辻無惨を殺すといったような真似をする必要がある。
とはいえ、実際には十二鬼月や鬼舞辻無惨は、シャドウミラーにとっては大きな意味を持つ鬼だ。
可能なら捕らえて研究素材として使いたいという思いもある。
鬼の研究が具体的にどういう結果が出るかは、俺には分からない。
しかし、人を食わなければならない点や太陽の光に弱い点といったような事を改良出来れば、量産型Wの能力がまだ1段階上がる事になる。
あるいは……量産型Wじゃなくても、人を強化するといったような真似も出来るかもしれない。
前者はともかく、後者は正直なところあまり気が進まないのだが。
それでも『やらない』と『やれない』という2つの行為の差は大きい。
何より生まれつきの病気やその後もどうしようもない出来事で身体が動かなくなったりとか、そういう時にはそれなりに使い道はありそうだし。
「そうか。なら、獪岳の件については取りあえずは全面的にムラタに任せる。……鍛えるのなら、それこそ獪岳がもう逃げようとは考えられないくらいに鍛えてやれ」
そこまで言ってから、未だに怯えた様子の獪岳に視線を向ける。
「言っておくが、善逸はシャドウミラーの他の奴が鍛える事になる。善逸の才能はかなり高い。お前が怯えてろくに修行が出来ないようなら、あっさりと善逸に抜かれるかもしれないな」
善逸に本当に才能があるのかどうかは、正直なところ分からない。
しかし、善逸は炭治郎の仲間だ。
主人公である炭治郎の仲間である以上、当然のように相応の才能を持っている……と、思う。
ただ、問題なのは中には主人公の仲間でも、足を引っ張るだけの役割の奴とかいる事なんだよな。
炭治郎とかの話を聞く限りだと、善逸はそのタイプの可能性が高いんだが……出来れば違っていて欲しい。
取りあえず女好きなのは間違いないので、その辺でどうにかすれば善逸もきちんと戦力として活躍出来るだろう。
実際、苦い薬を飲む時に散々騒ぐのは女に嫌われると言ったら素直に苦さを我慢して薬を飲むようになったし。
「あんな奴が……俺を……?」
「あんな奴、か。……少なくても、善逸は仲間を見捨てるといったような真似はしなかった分、獪岳よりはマシだと思うけどな」
俺が聞いた話によると、善逸は最初戦いたくない、山に行きたくないと言ったような感じで駄々をこねて、それで伊之助と炭治郎に置いていかれたらしい。
だが、それでも最終的に善逸は山に向かった。
そして鬼を倒すことにも成功する。
その結果として、善逸は鬼の血鬼術か……もしくはそれ以外の何かによって蜘蛛にされかけたものの、仲間を見捨てないという一点で既に獪岳よりも上だ。
「ともあれ、お前が生き延びるには文字通りの意味で命懸けで強くなるしかない。それを忘れるな。逃げたら……」
そこで一旦言葉を止めると、地面にある影を軽く蹴る。
次の瞬間、俺の影から姿を現したのは刈り取る者。
刈り取る者が周囲に与える衝撃は大きい。
一度会っている行冥ですら驚き、反射的に構える。
ムラタもまた、咄嗟に何があっても対処出来るように体勢を整えていた。
そんな2人とは違い、獪岳は刈り取る者を見た瞬間、自分では絶対に勝てないと判断したのか、身体を震わせながら絶望の表情を浮かべていた。
「これは俺の召喚獣……まぁ、分かりやすく言えば陰陽師の使役する妖怪みたいな感じだ。俺の指示には忠実に従う。例えば、逃げ出した誰かを追って殺せといったような命令もな。分かったか? お前はもう逃げる事も出来ない。強くなって生き残るか、あるいは死ぬしかない」
俺の言葉に、無言で何度も頷く獪岳。
少しやりすぎたかと思ったが、獪岳の性格を考えれば逃げ出すといったような要素は出来るだけなくして、それで強くならなければならないという風に追い詰める必要があった。
「戻れ」
そう言うと、刈り取る者は素直に影に戻る。
暴れさせるといったような事はせず、半ば見世物……あるいは脅しにしか使っていないのだが、刈り取る者には不満そうな様子はない。
とはいえ、刈り取る者の善意――という表現がこの場合正しいのか微妙だが――に甘えているばかりなのもどうかと思う。
鬼と遭遇した場合、刈り取る者にも十分に暴れて貰った方がいいか。
「分かったな?」
念を押すように尋ねると、獪岳は必死になって何度も頷く。
それを見て、取りあえずこれで問題はないだろうと判断し、未だに構えたままのムラタに視線を向ける。
「じゃあ、獪岳については任せた。強くならなければ本気で死ぬから、徹底的に追い込んで鍛えてくれ」
「うむ」
短く頷くムラタをそのままに、次は行冥の方に向かう。
「さて、行冥がいない間の代わりを頼みに来ただけのつもりだったが、色々と大きな騒動になったな」
「うむ。……アクセル殿、感謝する」
「感謝? てっきり獪岳を殺すのを止めた件で責められると思ってたんだが」
「いや、そうではない。先程は頭に血が上っていたものの、獪岳も私の家族の1人であったのは事実。それで許せるかと言われれば、当然許せないが……それでも、今の状況を考えれば、この結果が最善だったのだろうと思う」
この結果というのは、ここで獪岳を殺すような真似はせず、十二鬼月や鬼舞辻無惨を殺すことで罪を償うという事だろう。
あの件は俺が半ば勝手に決めたのだが、それでも行冥にとっては悪い話ではなかったらしい。
「そう言って貰えると、俺としても助かるよ。……さて、それじゃあ行冥の義眼の件、それと獪岳の件も知らせておいた方がいいだろうし、耀哉に会いに行くか」
そんな俺の言葉に、行冥は涙を流しながら頷くのだった。
「構わないよ」
行冥の言葉……ホワイトスターに行って義眼を使いたいというその言葉に、耀哉はあっさりとそう言った。
それこそ、悩まずそんなに簡単に決めていいのか? と思う程に。
「いいのか? 行冥は柱の中でも重要人物だろ? そんな行冥が、どのくらいの期間かは分からないがいなくなるんだぞ? 勿論、こっちでも人を派遣して行冥の代わりに鬼と戦うようにはするが」
正直なところ、行冥の言葉は俺にとって決して悪いものではなかった。
何しろ、場合によっては鬼を捕虜にする事が出来て、色々と調べられるかもしれないのだ。
そうである以上、この状況は願ったり叶ったりといったところなのだが……それでも、耀哉がこうもあっさりと許可を出すとは思っていなかっただけに、驚いて聞き返す。
「私も目が見えないという事の苦しみは知っている。そして行冥が私と同じように目が見えないことに苦しみ、目が見えるようになった事で鬼との戦いを有利に進められるのなら、私からは何も言う事はないよ」
「お館様……」
耀哉の言葉に感激したのか、行冥の目からは涙が流れている。
行冥にしてみれば、鬼を倒す為とはいえ、ここでホワイトスターに行くのは自分の我が儘に近い。
それを耀哉があっさりと許してくれたのは、行冥にしても嬉しかったのだろう。
「私もこれからは何度かホワイトスターに顔を出すから、その時に行冥がどうなっているのか見させて貰うよ」
「は? 耀哉がホワイトスターに来るのか?」
「ああ。政治班との会談でそういう風になったんだ。ホワイトスターに行けば、私の体調は回復するだろう?」
「そうだな。ただ、この鬼滅世界に戻ってくるとまた呪いの影響で悪化するけど」
「そうだね。けど、ホワイトスターに行ってからこの世界に戻ってくると、呪いの進行が遅くなるらしい」
「……そうなのか?」
それは俺にとっても完全に予想外の言葉だった。
寧ろ、一度ホワイトスターで呪いの影響から逃れる事によって、鬼滅世界に戻ってきた時は余計に呪いの影響を受けるのではないかとすら思っていたのだ。
だが、ホワイトスターに行くのだけでも十分な回復効果を発揮するとなれば、耀哉にとってホワイトスターは何度も足を運ぶ価値があるのは間違いない。
「ああ、そうだよ。聞いた話によれば、もしかしたらある程度回復すれば、解呪の際にも治療が少なくなるかもしれないという事らしいね」
「それは、また……」
耀哉の身体が特殊なのか、あるいは鬼滅世界の者達が特殊なのか。
呼吸が使えるのが原因なのか?
……いや、耀哉は鬼殺隊を率いてはいるが、呼吸を使えるという話は聞いた事がない。
そもそも、呼吸を使えるようになるのは長期間の厳しい訓練が必要な筈で、呪いの影響で身体が弱っている耀哉には到底そんな訓練は出来ない筈だった。
そう思えば、今のこの状況は色々と特殊な事になるのは間違いないだろう。
そんな風に思いつつ、取りあえず行冥のホワイトスター行きは正式に決まるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730