その日、蝶屋敷からそこまで離れていない場所にある広場には何人もの鬼殺隊の剣士達が集まっていた。
当然ながら、鬼殺隊の剣士は日本中で鬼と戦っているので、ここにいる鬼殺隊の剣士が全員といった訳ではない。
しかし、現在この周辺にいてある程度余裕のある鬼殺隊の剣士は、多くがここに集まっている。
勿論剣士だけではなく、隠といった後方でサポートをするような者達も。
ちなみに集まっている者の中には、ムラタと獪岳の姿もあった。
獪岳がこの短時間でどこまで強くなったのかは、正直なところ俺にも分からない。
分からないが、それでも顔つきは以前見た時とは違う。
今日ここに集まったのは、ニーズヘッグで宇宙に向かうというのを、鬼殺隊の前で行う為だ。
もっとも、ここまで鬼殺隊の剣士が集まってきたのは、俺が宇宙に行くといったような事だけが理由ではなく……
「私の子供達、今日は集まってくれてありがとう。鬼殺隊を率いる者として、今日行われる一件は鬼殺隊としても大きな意味を持つだろう。日輪刀を製造する為の鉱石は幾らでも必要だ。それを大量に入手出来たとすれば……それは鬼殺隊として大きな意味を持つ」
ざわり、と。
そんな耀哉の言葉を鬼殺隊の剣士達はざわめきながら聞いていた。
鬼殺隊の剣士の中には、それこそ耀哉の顔を初めて見る者もいるだろう。
中には耀哉の顔が呪いによって影響を受けている事に驚いている者もいる。
それでも騒がずに大人しく耀哉の話を聞いているのは、耀哉が持つカリスマ性によるものだろう。
不思議と耀哉の声は聞いていてどこか心地いいんだよな。
そういう意味では、今回の一件で耀哉が皆の前に出たのは決して悪い話ではない……筈だ。
「アクセル君、そろそろじゃない?」
耀哉の言葉を聞きつつ鬼殺隊の者達の様子を見ていた俺に、美砂がそう声を掛けてくる。
「そうだな。耀哉の演説も終わるし、俺も準備をしておくか」
「気を付けて。……アクセル君の事だから、宇宙に行くくらいで何か危険があるとは思えないけど」
「でも、美砂。アクセル君よ? 宇宙に行けば行ったで、何かトラブルに巻き込まれるとか、考えられない?」
円のその言葉に、美砂は何も言えなくなる。
いやまぁ、俺も自分がトラブルメーカーというか、トラブルを引き寄せるような性格をしてるのは分かってるので、円の言葉に対して何も言えないが。
「この世界で宇宙に関わる何かはそう起きたりはしない……と思う。もし何かがあっても、俺は美砂や円のいる場所に戻ってくるから、心配するな」
「もう、馬鹿」
円が顔を赤くしてそう言うのを聞く。
何気に円は未だにこういうのには慣れてないんだよな。
それはそれで可愛いと思うが。
「ほら、アクセル君。円とイチャついてないで」
美砂の言葉に耀哉を見ると、丁度そこでは耀哉が俺を呼んでいるところだった。
「じゃあな」
円と美砂にそう言い、耀哉の側に向かう。
「では、アクセル。お願いするよ」
「任せておけ。別に演説とかそういうのをしなくてもいいだけ、楽だしな」
短く言葉を交わし、耀哉から少し離れた場所……不自然に開けたその場所に移動する。
そんな俺の一挙手一投足を、鬼殺隊の者達が見てる。
あ、この近くにある蝶屋敷を拠点にしているしのぶだけではなく、実弥を始めとして他の柱も結構来てるな。
柱にとっても、今回の一件はそれだけ重要だという事か。
そう考えつつ……俺は空間倉庫の中から、ニーズヘッグを取り出す。
ざわり、と。
そんなニーズヘッグの姿を見て、周囲にいた多くの者達がざわめいた。
とはいえ、それも分からないではない。
ニーズヘッグは迫力のある……というか、凶悪な外見をしているしな。
明らかに主人公が乗る機体ではなく、ラスボスが乗る機体といった感じだ。
鬼という存在と戦い続けている鬼殺隊の者達にしても、ニーズヘッグの存在は鬼とはまた違った意味で圧倒的な迫力を抱く。
UC世界においては月の大魔王の異名を持つ俺の機体としては、これ以上ないくらいに相応しいだろう。
「これは……凄いね……以前見たのも特徴的だったが、これはそれとは違う。姿を見る事は出来ないが、感じられる迫力は圧倒的だ」
耀哉がニーズヘッグを見て――視力はないが――そんな風に言ってくる。
以前見たというのは、多分ダーナ・オシーだろう。
まぁ、ダーナ・オシーとニーズヘッグを一緒にするといった真似は到底出来ないが。
「これはシャドウミラーの象徴、俺の専用機だしな」
実際、シャドウミラーが新たに入手した技術は基本的にニーズヘッグで試して、それから他の機体に使うという感じになっているし。
とはいえ、オーラマシンについてはどうだろうな。
オーラバトラーは半ば生体兵器的な感じであり、それは技術班にとってかなり興味深い技術なのは間違いない。
しかし、それは技術的に珍しいという意味であって、オーラバトラーの技術をシャドウミラーの機体に流用出来るかと言われれば難しい。
いやまぁ、無理に流用しようとすれば、そのような真似も出来るだろう。
だが、科学技術によって作られたシャドウミラーの機体に生体兵器のオーラバトラーの技術を流用しても、かなりチグハグな印象になるような気がする。
ああ、でもオーラコンバータを副動力として使うというのはありか?
ニーズヘッグは、ブラックホールエンジン、時流エンジン、トロニウム・エンジンの3つの動力炉を持ってるので、オーラコンバータは必要ないだろうが。
というか、俺の場合はオーラコンバータを使えば大惨事になるから、マジックコンバータか。
エネルギー的には全く困っていないので、もしオーラコンバータを使うとなると、ニーズヘッグを経由しないで、直接他の機体に搭載されるといったような事になるかもしれないな。
「じゃあ、行ってくる」
「ああ、気をつけて」
耀哉と短く言葉を交わし、俺はニーズヘッグに向かう。
不意に浮かび上がった俺の姿に、驚きの様子を見せる鬼殺隊の面々。
血鬼術や呼吸でも、多分空を飛ぶといったような事は難しいんだろうな。
驚愕の視線を向けられながらも、俺はニーズヘッグのコックピットに入る。
そして俺の指紋や眼球、更には念動力についてニーズヘッグ側で精査され、動力炉が起動する。
『おおおおおおおお』
コックピットの向こう側から聞こえてくる、そんな驚きの声。
見ている者達にしてみれば、ニーズヘッグの起動というのがそれだけ衝撃的だったのだろう。
まぁ、無理もない。ここが大正時代だと思えば、人型機動兵器が実際に動くのを見るのは、一体どれだけ時代の先取りをしているのやら。
いや、場合によってはこの鬼滅世界の未来においては戦車や戦闘機といった兵器は開発されても、人型機動兵器の類は開発されない可能性もあるな。
その辺はこの世界の選択だし、シャドウミラーがこの世界に対して興味を抱いたのは、あくまでも生身の戦闘技術に関してだったり、それに付随する装備品の類だ。
そう考えれば、鬼滅世界が人型機動兵器を開発しなくても、そこまでおかしくはない……と、そう思う。
「システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド生成開始」
そう言うと、再びコックピットの外から驚きの声が聞こえてきた。
ニーズヘッグが転移フィールド……光の繭に包まれたのを見て、周囲にいる者達も驚いたのだろう。
大丈夫だとは思うけど、転移フィールドが珍しいからって触ったりしないよな?
転移フィールドは転移する為に必要である以上、もし転移フィールドに触れていたら……最善の結果でも、生身で宇宙空間に転移するといったような感じになりかねない。
いや、最善は転移フィールドに触れていた腕だけがニーズヘッグと一緒に宇宙に行く事か?
そうなれば当然のように、地上に残った者は腕が切断されるといった感じになるだろうが。
ともあれ、そんな馬鹿な真似はしていないだろうと判断し……
「転移」
呟き、転移した瞬間、既にそこは地上ではなく宇宙空間だった。
それも、太陽がかなり近い位置にある。
とはいえ、ニーズヘッグには影響がない距離ではあるが。
複数のバリアを持つニーズヘッグだけに、太陽の熱もそこまで問題はない。
とはいえ、それでも念の為ということで、バリアの出力を上げておく。
後は……太陽の光を常に浴びている岩塊の類を探すだけか。
そういう意味でも、太陽に近付きすぎるといった真似は出来ないんだよな。
当然ながら、太陽に近付きすぎた場合、その岩塊は燃える。あるいは溶けるか?
そこまでの熱気がなく、それでいて太陽の光を常に浴びている岩塊を探す。
そのまま30分程が経過し……
「あった」
ニーズヘッグのレーダーに岩塊の反応があった。
その岩塊を見つけると、そちらに近づいていき……そして、ニーズヘッグのコックピットを開けて、外に出る。
外は当然のように宇宙空間だが、混沌精霊の俺にしてみればそんなのは関係ない。
それこそ地上で空を飛んでいた時と同じ感覚で宇宙空間を移動する。
宇宙服やパイロットスーツの類もなく、生身のままで宇宙に出られるってのは混沌精霊になった利点の1つだよな。
「っと!」
そんな風に宇宙空間を移動していたのだが、岩塊が思った以上の速度で移動しているので、慌ててそれに触れて空間倉庫に収納する。
ニーズヘッグのコックピットから見ると止まってるように見える岩塊だったが、当然ながら宇宙空間では動いている。
これがデブリ帯と呼ばれているような場所なら、あまり動いたりもしていないんだが。
空間倉庫に収納される一瞬でニーズヘッグからかなり離れてしまった。
ニーズヘッグまでの結構な距離を移動し、コックピットに戻る。
「取りあえず、これで1個と。……そう言えば収納出来たという事は、生物はあの岩塊にはいなかったんだよな」
直径二十mくらいの大きさを持つ岩塊だったが、俺はそれを普通に空間倉庫に収納出来た。
もし宇宙生物といったような存在が岩塊にいたら、それを収納するような真似は出来なかっただろう。
普通に考えてそんな事は有り得ないんだろうが、有り得ないという事が有り得ない。
BETAやバジュラ、それ以外にも今まで色々と地球外生命体は見てきた。
それだけではなく、この世界には鬼が存在している以上、宇宙生物がいてもおかしくはない。
それに、そこまでいかなくても、例えば昆虫なんかは宇宙からやって来た生物が地球で繁殖したという説もあるくらいだ。
それだけ昆虫と他の生物は違いがあるらしい。
その説が正しいのかどうかは、正直なところ俺にも分からない。
分からないが、宇宙生物は意外と身近にいるのかもしれないな。
「っと、あった」
ニーズヘッグのモニタに再び宇宙空間に浮かんでいる岩塊が表示され、コックピットから出てそれを空間倉庫に収納する。
いっそ、もっと集めてから纏めて空間倉庫に収納した方がいいのかもしれないが……そうなると、集めた岩塊がどこかに飛んでいかないように注意する必要がある。
それはそれで面倒ではあるんだよな。
そんな風に考えつつ、三時間程。
何だかんだと結構な量の岩塊を集める事に成功する。
これだけ集めればそろそろいいか?
最初に集めた直径二十m程もある岩塊が一番大きかったが、それでも何だかんだと結構な量の岩塊を入手出来ている。
問題なのは、この岩塊に日輪刀を作る為の金属である猩々緋砂鉄や猩々緋鉱石があるかどうかだよな。
これだけ岩石を入手しておいて、実は全部ただの岩でしたという事になったら、さすがに洒落にならない。
いやまぁ、太陽の近くにあった岩塊というだけでも、普通に考えれば学術的な価値は高いんだろうけど。
「まぁ、その辺は実際に調べて貰わないと意味がないか。……システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド生成開始」
システムXNを起動し、ニーズヘッグが転移フィールドに包まれる。
そして、転移フィールドが完成したところで……
「転移」
呟き、システムXNで転移する。
転移先は数時間前にニーズヘッグがいた場所。
戻ってきた……のはいいんだが、そこには俺が予想もしていなかった展開が広がっていた。
俺が宇宙に行っていたのは、数時間。
てっきり俺がシステムXNを使った時にいた者達は、もう全員いなくなっているのだろうと、そう思っていたのだ。
だというのに、今こうしてここに戻ってきたところ、そこにはまだ大勢の鬼殺隊がいたのだ。
さすがに身体の弱い耀哉は産屋敷家に戻ったらしく姿は見えなかったものの、それでもまだこれだけの人数がいた事に驚く。
「これはまた……一体どうなってる?」
呟きつつも、ニーズヘッグのコックピットから外に出る。
外に出ると、当然ながらそこにいた者達は多くの視線をこちらに向けていた。
今まで集まっていた者達が何をしていたのかは、実のところ俺には分からない。
宴会の類をしたりもしていなかったので、恐らくただ話をするといったような真似をしていたのだろう。
それくらいは理解出来たので、取りあえず口を開く。
「ただいま」
そう、告げたのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730