「構わないよ。それで赫刀の秘密が分かるのなら、蜜璃に協力させる価値は十分にある。それに、蜜璃が必要なのは赫刀になるかどうか……行冥のように何日も担当地区からいなくなるという訳ではないのだろう?」
部屋の中でお茶を飲みながら、耀哉はそんな風に俺に言ってくる。
耀哉にしてみても、赫刀については少しでも多くの情報を知りたいのだろう。
赫刀が鬼殺隊の剣士にとって有益な武器となるのなら、それを全面的に進めるといったつもりでいるのは間違いない。
それ自体は別に自然なことなので、問題はないだろう。
耀哉にしてみれば自分の率いる鬼殺隊を最優先するのは当然の話なのだから。
「悪いな。……これ、お茶菓子として食ってくれ」
すぐに許可を出してくれた耀哉に、感謝の意味を込めて空間倉庫からどら焼きを取り出す。
耀哉が飲んでいるのは紅茶ではないので、洋菓子ではなくどら焼きを選んだ。
このどら焼きはペルソナ世界のスーパーで購入したものだ。
スーパーで売ってるどら焼きの中でも、ちょっとお高いどら焼き。
和菓子の専門店で売っているどら焼きに比べると味で劣るかもしれないが、それでも味のレベルという点で考えるとかなり高い。
大正時代で食べられる料理として考えれば、とんでもないくらい美味くなる筈だ。
「ちなみに、あまねとかに見つからないようにな」
「え?」
俺が何を言ってるのか分からないといった様子の耀哉だったが、輝利哉がUC世界に行った時の事を考えれば、俺のその言葉は決して間違ってはいない筈だ。
もしあまねに見つかれば、恐らく耀哉に羨ましそうな視線を向ける事になるだろう。
そういうプレイをしたいのなら、話は別だが。
「そのどら焼きは耀哉にやったんだから、それをどう使うのかは耀哉が決めるといい。そのままお茶菓子として食べてもいいだろうし、あまねに渡してもいいし」
「ふむ。アクセルがそこまで言うのなら興味があるね」
そう言い、耀哉はテーブルの上に置かれたどら焼きを手で探して掴み、口に運ぶ。
「ほう」
その一口で十分に美味いと思ったのだろう。耀哉の口からは感嘆の声が出た。
ちょっとお高いどら焼きなので、粒あんが真ん中に少し入っているだけではなく、結構な量がある。
その為、一口目だけでも十分に生地と粒あんを楽しめたのだろう。
「満足出来たみたいだな」
「そうだね。このどら焼きというお菓子は本当に美味しい。……全てが終わってシャドウミラーと本格的に取引が出来るようになったら、こういうお菓子を取引してもいいかもしれないね」
「目の付けどころは悪くないと思うぞ」
「そうね。他の世界だとそうでもないけど、この鬼滅世界だとシャドウミラーで……もしくは他の世界から輸入したお菓子というのは、十分商品になると思うわ」
凛も俺の言葉に同意する。
政治班だけに、この辺の感覚は俺よりも鋭いのだろう。
「大正時代のお菓子というのは、まだ発展途上よ。そんな中で平成の世界を含めた未来のお菓子を持ってくれば、間違いなく売れるわ。ただ……この場合、売れすぎるのが問題になるかもしれないわね。そこまで売れていて完成度の高いお菓子があれば、当然だけど他からの注目は大きくなるわ」
「それは……少し困るね」
困ったようには見えないが、耀哉がそう呟く。
実際、他のお菓子を作っている会社に注目されれば困ることになるのは間違いない。
この場合厄介なのは、どのようにしてお菓子を作っているのかといったように製作過程を見せて欲しいと言われる事だろう。
お菓子の全てを輸入してきている以上、当然ながらそれを作っている場所を見せられる訳もない。
かといって、他国から輸入しているといったように言った場合、それはそれで調べられると問題となってしまう。
「その辺は耀哉が……もしくは輝利哉が上手くやるしかないだろうな。まぁ、どのみちこの話は鬼舞辻無惨を殺した後の話だ。今すぐどうこうといったようには、考えなくてもいい」
「そうだね。その為に赫刀についての調査は頼むよ」
耀哉のその言葉に頷く。
耀哉にとっても、今はどら焼き云々よりも鬼舞辻無惨や鬼との戦いに全戦力を向けるべき時なのだろう。
その為に、今はまず赫刀についてしっかりと調べる必要があるのは当然だった。
「分かった。蜜璃が協力してくれれば、何とかなるかもしれない。……もっとも、蜜璃でも無理だと赫刀はやっぱり鬼滅世界以外の世界出身者でないと出来ないって事になるかもしれないが」
ただ、炭治郎が何となくそんな現象を起こした……かもしれないというのがあったので、もしかしたら、本当にもしかしたらだが、鬼滅世界の者でも赫刀に出来る可能性はある。
「蜜璃の担当地域は……ここでいいんだな?」
耀哉から貰った地図を見て、確認の意味を込めて尋ねる。
とはいえ、耀哉は目が見えない。
そうである以上、ここでいいんだよな? と言っても、素直にそれを理解出来るかどうかは別だった。
しかし、そんな中で耀哉は躊躇なく頷く。
「ああ、その地図のある場所で間違いないよ」
そう言い切れるのは、部下の仕事を完全に信じているからか。
それは素直に凄いと思う。
……いやまぁ、部下の仕事を信じるという意味では、俺も負けていない。
シャドウミラーにいるのは優秀な者が多い。
だからこそ、部下の仕事を全面的に信じるといったような真似も俺は出来る。
政治班や技術班なんか、その最たるものだろう。
技術班は暴走する事も多いが。
生活班は……明日菜を含めて何気に多くの者が所属している。
木乃香や刹那といった面々もそうだし。
最近だとステラが明日菜と一緒に仕事をしているのを見たな。
そういう意味だと、ステラはまだ仕事を始めたばかりだし、本人の性格もちょっと天然気味なので、完全に安心するといったような真似は出来ない、か?
明日菜が一緒にいるのを考えると、何かあっても大丈夫だとは思うけど。
「分かった。じゃあ、この地図を頼りにさせて貰うよ。……凛、行くか」
「ええ」
凛が短く頷き、俺と凛は部屋から出て影のゲートを使って転移するのだった。
「さて、この辺りだけど」
影のゲートで転移した俺と凛は、地図を見ながら進む。
まさに田舎といったような場所だ。
「何と言うかこう……和む景色ね」
周囲の様子を見ながら、凛がしみじみと呟く。
その言葉は俺も同意だった。
大正時代だからこそというのもあるのだろうが、田舎の景色というのはどこか見ていて安心出来るものがある。
だが、これが昭和、平成といったように時代が進めば、木は切り倒され、山は崩され、川は埋め立てられ……といったような事になってもおかしくはない。
本当にそのようになるのかどうかは、また別の話だが。
「こういう景色も……ああ、あそこだな」
喋っている途中、一軒の家の前で蜜璃が何らかの作業をしている光景を見つける。
その周囲にはこの村の住人達が集まって、感心したように見ている。
蜜璃は桃色の髪をしている。
大正時代の田舎ともなれば、そういう明らかに日本人とは違う髪の毛をしている者が田舎にいれば、疎まれて……あるいは村八分といったような状態になってもおかしくはないのだが、あの様子を見る限りそんな事はないらしい。
この村の住人が開放的なのか、それとも蜜璃がその明るさで村人の警戒心を解いたのか。
そのどちらもありそうだな。
「どうする? 今は何かやってるみたいだし、あれが終わってから蜜璃に会いに行くか?」
「そうね。……って、あの子凄いわね。かなり頑丈そうな木をあっさりと切ってるわよ」
蜜璃が何をやってるのかを見た凛が、驚きと共に言う。
ちなみに蜜璃の様子に驚いている凛だが、当然ながら身体強化をすれば蜜璃と同じような真似が出来る。
いや、蜜璃よりも更に強い力を発揮出来るだろう。
それでも凛が驚いたのは、蜜璃が身体強化をしていない状態であのような事をやってるからだろう。
とはいえ、柱は全集中――呼吸による身体強化――を常に行う常中という技術がある。
それを思えば、蜜璃も常に身体強化しているのは間違いない。
「そういう力を持ってるからこそ、蜜璃に赫刀が発現出来るかどうか試して貰おうという事になったんだろ」
「そうね。……でも……あの格好はどうなのよ?」
凛が蜜璃を見てそう言う。
うん。まぁ、凛が何を言いたいのかは分かる。
蜜璃の着ている鬼殺隊の制服は、胸の部分が菱形の形に開いているのだ。
また、蜜璃は大正時代とは思えないくらいに豊かな双丘をしているので、いつ零れ落ちてもおかしくはない。
あの制服で鬼と戦っているとなると、それこそ戦いの中で零れ落ちるんじゃないか?
というか、蜜璃の周囲に集まっている男の何割かは、そんな蜜璃を見たいという欲望で集まっているんじゃないか?
まぁ、蜜璃の身体に誘惑されて襲い掛かっても、それこそ蜜璃の力を考えれば返り討ちに遭うだけだろうが。
「鬼殺隊の中にもそういう方向の女好きがいるんだな。善逸とならいい組み合わせになりそうだ」
「男って……」
凛のジト目に気が付かない振りをしていると、やがて蜜璃が離れた場所から様子を見ていた俺達の存在に気が付く。
すると蜜璃は驚きの表情を浮かべ、周囲の村人達に何かを言ってこっちにやって来た。
「アクセル王、どうしたんですか?」
そう言いながらも、何故か蜜璃の目には期待の色がある。
好意的な視線で見ている以上、悪い意味での期待ではないんだろうけど。
恋柱というくらいだし、蜜璃はもしかしたら恋多き女なのかもしれないな。
いや、恋人が10人以上いる俺がそんな事を言っても説得力はないかもしれないが。
「蜜璃、お前にちょっと用事があってやって来たんだ」
「きゃーっ、わ、私に用事ですか!?」
「……あのね、何か期待しているのかもしれないけど、それは多分違うからね。全く、アクセルったら何でこうも女誑しなのかしら。やっぱり私がついてきてよかったじゃない」
凛のその言葉に、蜜璃は残念そうな様子……は全く見せず、凛に対しても好意的な視線を向けている。
好意的な視線を向けてくれるのはいいんだけど、相手を選ばずといった感じなのか?
「あの、貴方はもしかしてアクセル王の恋人ですか?」
「え? ええ、そうよ」
凛も蜜璃の勢いというか、予想とは違う反応に戸惑った様子を見せながらも、俺の恋人であると認める。
「凛が考えていたのとは違っただろう?」
「……そうね。まさかこういう展開になるとは思っていなかったわ。アクセルの事だから、別の世界に行く度に新しい女を引っ掛けてくるのかと思ったけど」
そう言われると、俺も反論がしにくい。
ダンバイン世界ではマーベルとシーラの2人とそういう関係になったし。
ただ、UC世界や鬼滅世界ではそういう事はしていない……筈だ。
「ん、コホン。それで蜜璃に会いに来た理由だが、ちょっと手伝って欲しい事があるんだ」
「手伝って欲しい事ですか?」
「ああ。勿論蜜璃が恋柱で、この辺りを任せられているのは知っている。けど、今回頼むのはそう時間は掛からないし、耀哉からも許可を貰っている」
「お館様から!?」
いや、何故そこで驚く?
蜜璃は恋柱なんだから、要望する際には耀哉の許可を貰うのは当然だろうに。
「ああ。そんな訳で、蜜璃にはちょっと俺と一緒に来て欲しい。もしこの実験が成功すれば、鬼殺隊にとって大きな力になるだろうし」
そう言われると、蜜璃は真剣な表情で頷く。
「分かりました。私で出来る事なら何でもします」
即座にこういう言葉が出て来る辺り、蜜璃が仲間思いであるという事の証だろう。
この村で慕われているように思えたのも、こういう性格が関係しているのは間違いない。
「そうか。なら行くぞ。影のゲート……俺の使う魔法で移動するけど、ここで移動するとかなり目立つ」
「というか、今の時点で随分と目立ってるけど」
そう告げてくる凛の視線を追うと、その視線の先には先程まで蜜璃の周囲にいた村人達が俺と凛をじっと見ている。
どこか怪しんでいるように見えるのも、きっと気のせいではないだろう。
蜜璃がこの村に馴染んでいる以上、俺達が蜜璃を騙す為に、もしくは危害を加えるのではないかと心配しているのだろう。
髪の毛が日本人らしくなかったり、非常に高い身体能力を持っており、それを維持する為に食事が大量に必要だったりと、この時代としてはかなり生きにくい蜜璃だったが、この村はその辺を全く気にした様子がない。
最初からそういう開放的な村だったのか、それとも最初は疎んじられながらも蜜璃が持ち前の人懐っこさで打ち解けていったのか。
その辺は正直なところ俺にも分からない。
しかし、現在の蜜璃が村人に仲間だと思われているのは、間違いのない事実だった。
「皆、ちょっと出掛けてくるね!」
村人達に向かって蜜璃が大きく手を振ると、村人達もまたそんな蜜璃に向かって大きく手を振る。
どうやら、蜜璃の様子から取りあえず顔見知りであるというのは認識されたか?
そう思いながら、俺は凛と蜜璃の2人と共に村から移動するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730