「先生……分かっていました。分かっていますけど、それでも俺……先生が羨ま憎い!」
目を血走らせ、血涙を流しながら善逸が言う。
いや、羨ま憎いって何だよ。
羨ましいや憎たらしいなら意味は分かるが、羨ま憎いってのは善逸の造語か?
とはいえ、そんな風に思う気持ちも分からないではない。
千鶴と話を終えた俺が蝶屋敷に顔を出すと言うと、何故か千鶴も一緒に来るという事になった。
政治班の仕事はいいのか? と思わないでもなかったが、千鶴の能力を考えれば問題ないのだろう。
政治班を率いるエザリアも、千鶴は有能だと太鼓判を押していたし。
ともあれ、そんな訳で千鶴を引き連れて蝶屋敷に来たのだが……機能回復訓練を終え――今日もカナヲには敵わなかったらしい――てエヴァとの訓練をしていた善逸が、千鶴を引き連れて姿を現した俺を見てこんな風になった訳だ。
善逸がこんな風になる気持ちも分からないではない。
千鶴は優しそうな美貌の持ち主だし、何といってもその巨乳は俺の恋人達の中でもトップクラスだ。
それでいて戦闘訓練にもしっかりと参加しているので、垂れるといったような事は全くなく……いわゆる、ロケットおっぱいというのが相応しい代物となっていた。
そんな千鶴だけに、女好きの善逸のセンサーが発動してもおかしくはない。
「羨ましいが憎たらしいか、はっきりしろ。けど、そうだな。善逸も強くなれば千鶴みたいないい女を恋人に出来るかしれないぞ?」
「あら、アクセル君たら。今日は私が料理当番の日だったし、アクセル君の好物でも作ってあげようかしら」
いい女と評されたのが嬉しかったのか、千鶴は笑みを浮かべてそう言う。
笑みは笑みでも、時々見せる黒い笑みではなく、心の底から俺の言葉を嬉しく思っているような笑みだ。
千鶴は優しそうに見えるし、実際に優しいのは間違いないんだが、女の勘が鋭いというか……年齢の事とかを考えていると……しまった。
ギギギ、という音が鳴りそうな様子でこちらに視線を向けてくる千鶴。
「アクセル君、どうかした?」
「いや、何でもない。それよりも落ち着け。伊之助が驚いているぞ」
善逸ではなく伊之助が黒い何かを発した千鶴の存在に驚き、野生の勘で危険でも感じたのか後ろに跳んで千鶴と距離を取り、警戒した様子を見せている。
「あらあら」
警戒心全開といった様子の伊之助だったが、それを見ても千鶴は笑みを浮かべているだけだ。
ちなみに千鶴から危険な何かを感じたのは野生の勘だった為か、炭治郎と善逸は千鶴を見ても特に何か反応した様子はなかった。
エヴァは……うん、まぁ。俺と千鶴の関係については十分に知っているので、やれやれといったような様子を見せている。
「エヴァ、訓練の邪魔をして悪いな」
「ふんっ、構わん。そろそろ休憩しようと思っていたしな。それに……この3人はアクセルに言いたい事があったようだしな」
「俺に?」
「うむ。私は少し休憩するから、お前達は話していろ。……茶々丸、お茶と団子の用意をしろ」
「分かりました。今日はごま団子を用意してあります」
「ほう、ごま団子か。昨日の三色団子もなかなかだったから、期待出来るな」
そう言いながら、エヴァは茶々丸を引き連れて俺達から離れていく。
相変わらずだなと思いつつ、未だに血の涙を流しながらこちらを見ている善逸……ではなく、炭治郎に声を掛ける。
「炭治郎、俺に言いたい事ってなんだ?」
「あ、はい。その……俺達、3人全員常中を習得出来ました」
「へぇ……それは」
常に全集中の呼吸をするという常中というのは、かなり難易度が高いと聞いている。
それをこの短時間で習得したというのは……勿論炭治郎達の努力の結果であるのは間違いないが、それと同時に主人公補正的なものもあるんだろう。
ダンバイン世界の主人公であるショウは、主人公だからというのもあってか高い才能を持ち、最終的には聖戦士最強といった強さを持つようになったし。
それでも俺に抱かれた結果力を増したマーベルが、勝利する事は無理でも防御に徹すればそれなりに長時間戦えるようになっていたが。
そんな風に主人公補正というのは、主人公が持つ才能という点であるのかもしれないな。
「それで、機能回復訓練はどうなった?」
「何とかなりました。これは、きよちゃん達のおかげです」
きよちゃん? と一瞬誰の事なのかは分からなかったが、すぐに蝶屋敷で働いていた3人の子供達であると思い出す。
「あの3人か。……ちなみに、具体的にはどうやって協力して貰ったんだ?」
常中を習得するとなると、普通に考えれば常中のやり方を教えるといった方法があるが、まさかあの3人が常中を使える訳がない。
だとすれば、一体どのような協力をしたのかが気になり、尋ねる。
するとそんな俺の質問に、炭治郎は笑みを浮かべて言う。
「寝ている時に常中が切れたら、きよちゃん達に布団叩きで叩いて貰って起こして貰うんです」
「おおう……また、随分と……」
きよ達が常中を使える訳ではないと思っていたものの、思っていたよりも根性的な協力だったのに驚く。
とはいえ、きよ達が出来るのはそういう事だけなんだろうから、そういう意味ではおかしくないだろう。
「善逸と伊之助も同じように他の2人に起こして貰いながら常中を習得しました」
「善逸はともかく、伊之助は寝ている時に起こすと怒ったりするんじゃないか?」
善逸の場合は元々そこまで気が強い訳でもなく、あるいは起こしたのが少女達であるというのを考えれば、怒ったりはしないだろう。
そんな善逸に比べると、伊之助は気が短い。
もし眠っているところを叩かれて起こされるといったような真似をすれば、それこそ相手が誰であっても突っかかるのは間違いないだろう。
「そうですね。最初はそうでしたが……それでもそのままだと自分だけ常中を習得出来ないとなってしまうと言われたんですよ。それに、善逸は……えっと、その……」
「炭治郎?」
「しのぶさんが……」
あ、何となく炭治郎が何を言いたいのかを理解出来てしまった。
しのぶは当然のように善逸の性格を知っている。
そうである以上、美人と呼んでもいいしのぶが善逸にどういう風に言ったのかは何となく想像出来てしまう。
しのぶもそういう面ではそれなりに狡猾というか……そんな感じだしな。
とはいえ、善逸に対して本当の意味での色仕掛けの類はしていないだろうが。
というかこれは俺の勘だが……しのぶは多分、男を知らない。
この場合の男を知らないというのは、当然だが男という存在を知らないという意味ではなく、男に抱かれたことがないという意味だ。
あの美貌の持ち主で、更には柱という鬼殺隊の最高幹部の1人である以上、言い寄れる者はそう多くはない筈だ。
「しのぶの件は分かった。ともあれ、常中を習得出来たのはお前達にとって大きな意味があるのは間違いないだろう?」
「はい、そうですね。正直なところ、これで一気に戦力が上がったと思います」
自信満々に言う炭治郎。
真面目な炭治郎がここまで言うのだから、実際にかなり戦力が上がっているのは間違いないのだろう。
「なら、エヴァとの模擬戦は以前よりは戦えるようになったのか?」
間違っても、エヴァに勝てるのかとは言わない。
何しろ、エヴァは実弥や行冥といった柱を相手にしても圧勝してるのだ。
常中を習得したばかりとはいえ、まだ剣士としては未熟な炭治郎達が3人で攻撃しても、それでどうにかなるとは思えなかった。
そして事実、俺の言葉に炭治郎は少し困ったように笑う。
「先生、師匠は強すぎますって! 一体どうすれば勝てるんですか!?」
俺と炭治郎の会話を聞いていた善逸は、そう言ってくる。
エヴァとの訓練で余程叩きのめされているのだろう。
「それは……」
「猪突猛進、猪突猛進、猪突猛進!」
と、何故かそんな会話の中に伊之助が突っ込んでくる。
一体何があったんだ?
「あらあら、そんな事をしては駄目よ?」
伊之助の前に進み出た千鶴が、突っ込んできた伊之助に触れたと思うと、次の瞬間には伊之助は地面に倒れる。
何だったか……エヴァ曰く、空気投げとかなんとかそんな技だった気がする。
合気道? いや、柔道だったか? とにかくそっち系の技で、かなり難易度が高いらしい。
しかしエヴァとの訓練を重ねてきた千鶴にしてみれば、その難易度の高い技も普通に使いこなせるようになっていた。
千鶴がこの手の技を好むのは、相手を無力化出来るが、それでいて大きな怪我をさせなくてもいいというのが大きいだろう。
合気道や柔道の類は、相手を投げたりするものの、力の入れ加減やちょっとした動作によって殆どダメージを与えるようなことをなくしたりといったような真似が出来る。
今回も伊之助を投げはしたものの、千鶴の性格を考えれば伊之助にダメージは殆どないだろう。
それでも投げられた伊之助が動かないのは、自分が一体どうやって投げられたのかが理解出来ないからか。
「えっと……先生……?」
「何だ?」
恐る恐るといった様子で尋ねてきた善逸に、俺は特に動揺した様子もなくそう返す。
千鶴のような、一見して優しそうな相手が伊之助をこうもあっさり投げて無力化するとは思わなかったのだろう。
「いや、あの……分かりますよね?」
言葉に出来ない様子の善逸だったが、何を言いたいのかは大体分かる。
善逸は千鶴の優しげな様子から、まさか伊之助を相手に圧倒出来るとは思っていなかったのだろう。
「言いたい事は分かる。だから、こう言おう。シャドウミラーの幹部陣は、ほぼ全員がエヴァとの模擬戦を行っている。それこそ、善逸達がやってる模擬戦よりもよっぽど厳しい模擬戦をな」
善逸達は、素質はあるのかもしれないがまだ弱い。
そんな善逸達が行っている模擬戦と比べて、シャドウミラーの面々が行っている模擬戦はかなり厳しい。
それこそエヴァもそれなりに本気になる事があるのだから、それがどれだけ激しい模擬戦なのかは想像出来るだろう。
「あんなに優しそうなのに……」
「言っておくが、千鶴は優しいだけじゃないぞ」
優しいのは間違いないが、それだけで政治班としてはやっていけない。
勿論好んで戦いを引き起こしたりはしないが、百戦錬磨の政治家や官僚、あるいは交渉を担当している者達とやり合ってるのだから。
「そうなんですか?」
「ああ。……善逸はモテる為に強くなるのもそうだが、女を見る目も必要だな。それがないままただ強くなると、それこそ女のいいように利用されるだけだぞ?」
圧倒的な強さを持ちながら、女には騙されやすい男。
悪賢い女、あるいは悪女と呼ばれるような者達にしてみれば、そんな男はいい駒だろう。
あるいは女ではなくても、善逸を利用したいのなら女を用意していいように操るといった手段もある。
そう言うと、善逸はかなりショックを受けた様子だった。
とはいえ、世の中にはそういう人物がいるのは間違いない。
そして強くなれば、当然そのような者達から目を付けられる。
……しのぶの一言でやる気を出したのも、ある意味似たようなものだろう。
しのぶの場合は善逸を利用しようなどとは考えていなかったので、被害らしい被害を受けることはなかったが。
それはあくまでもしのぶが柱の1人で、善逸が鬼殺隊の剣士だからだ。
同じ組織の者だから、善逸にとってプラスになるように動いたにすぎない。
「それは、一体どうやればいいんですか?」
「こればかりは人によって違うしな。色々な相手に会って、話して自分なりの感覚を磨くしかない」
そう言うものの、俺の場合は以前は原作知識があったから、それに助けられた部分がある。
また、念動力によって俺に危害を加えようとしている相手がいれば、そちらに対処も出来るという強みがある。
そういう意味では、善逸と違って俺はちょっとしたズルをしてるのは間違いない。
「はい、立って。……いい? いきなり突っ込んでいくような真似をしては駄目よ?」
伊之助に言い聞かせるように千鶴が告げる。
伊之助はそんな千鶴に何も言えなくなっていた。
千鶴には逆らわない方がいいと判断したのだろう。
「うわぁ……伊之助が……」
千鶴と伊之助の様子を見て、善逸が唖然とした様子を見せている。
善逸の目から見て、あの光景に色々と思うところがあるのだろう。
「言っておくが、千鶴に逆らったりしたら後が怖いぞ」
「えっと……はい。それはその、分かります」
善逸が俺の言葉に頷いた瞬間、伊之助と話していた千鶴の視線がこちらに向けられる。
「あら、アクセル君。何か妙な事を言ったかしら?」
「いや、特に何も言ってない。なぁ?」
「はいぃ!」
善逸は千鶴の発する謎の迫力に押されるようにして、即座に頷く。
……善逸だけではなく、炭治郎までもがそんな千鶴の様子に数歩後退って何故か『禰豆子、兄ちゃん頑張るからな』とか言っていた。
千鶴のこの謎の迫力は、あるいは鬼に対してすら効果が発揮されるのではないか?
そんな風に思いつつ、取りあえず話を誤魔化すのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730