「禰豆子、取りあえず他の3人にも炭治郎に使ったのと同じ血鬼術を使って、眠りから目覚めさせてくれないか?」
「むー!」
炭治郎を起こした事で自信がついたのか、禰豆子は善逸のいる方に向かう。
いや、何で善逸?
普通なら炭治郎の横にいる杏寿郎じゃないのか?
近くにいるという点もそうだし、何より杏寿郎は柱で高い戦闘力を持つ。
この眠らせるといったような能力を持つ鬼についても、今までの経験から相応の対処法を理解出来るだろう。
……なのに、何故か禰豆子が向かったのは善逸。
これは、多分だが親しい順番に目覚めさせようとしてるのか?
禰豆子の感覚は分からないが、今の禰豆子は一種の幼児退行をしている状況だ。
禰豆子の態度からそれは理解出来るだろう。
だからこそ、ここで善逸に向かったのも無理はない。
禰豆子の血鬼術はそれなりに自由に使えるのか、すぐに善逸の身体が燃え上がり……
「うわああああ! え? あれ? 禰豆子ちゃん!? あれ、だって、えっと……」
思い切り混乱した様子を見せる善逸に、何故か禰豆子は満足した様子を見せていた。
何だかんだとこの2人は仲がいいんだよな。
エヴァとの訓練で折れ掛けた心を禰豆子とのやり取りで癒やされていたらしい。
ちなみにエヴァの従者の茶々丸に対しても興味津々な様子の善逸だったが、そっちについての進展は特にないらしい。
それでもエヴァとの訓練で怪我をした時は茶々丸に治療して貰っていたらしいが。
「それで、炭治郎。こういうのを聞くのはどうかと思うが、眠っている時はどういう感じだったんだ?」
「え? アクセルさんは眠らなかったんですか?」
「ああ。俺の場合は魔力……取りあえずそういう力によって、敵の血鬼術の効果が発揮しなかったらしい」
俺の魔力は何だかんだとPPを大量に投入してかなりの数値まで上がっている。
元々混沌精霊であるというのも影響しているので、そんな俺を血鬼術でどうにかするのは……不可能という訳ではないだろうけど、難しいのは間違いない。
「そうですか。羨ましいです」
最後の羨ましいという場所だけ俺に聞こえないように小さく呟く炭治郎だったが、生憎と俺には普通に聞こえている。
混沌精霊の五感はかなり鋭いしな。
まぁ、それでも嗅覚では炭治郎に、聴覚では善逸に及ばないのだが。
炭治郎は自分の羨ましいという言葉が俺に聞こえているとは全く思わない様子で説明を続ける。
「幸せな……そう、凄く幸せな夢を見ていました」
「……幸せな夢?」
「はい。家族がまだ生きていて、禰豆子も鬼ではなくて。そんな何でもない日常の」
「それは……予想外だな」
血鬼術を使って眠らせた以上、それは当然ながら鬼がやった事だ。
具体的には今まで80人以上を……最低でも80人以上を食っている鬼が。
そんな鬼が相手を眠らせ、見せる夢が幸せな夢なのか?
鬼なら、それこそ相手がショックを受けるような悪夢を延々と見せるといったような真似をしてもおかしくはないんだが。
あるいは、眠らせることは出来ても夢の内容までは自由に出来ないという可能性もあるな。
「そうですね。でも、夢は夢です。夢の中では何か違和感があったんですが、それでも幸せな毎日でした。ただ、不意に自分がもう1人現れてこれは夢だと言って……そうしたら禰豆子の炎で鬼殺隊の制服や日輪刀を身に纏って、最終的に日輪刀で自分の首を斬ったら起きました」
「……は?」
話の流れが完全に予想外だったので、自分でも知らないうちにそんな間の抜けた声が出る。
当然だろう。実際に話の流れが全く理解不能だったのだから。
不意に自分がもう1人現れてこれが夢だと言った。これは分かる。
炭治郎の無意識の部分が、これは夢であるとそう主張したのだろう。
禰豆子の炎で制服や日輪刀を取り戻したのも……この時点でかなり理解不能に近いが、兄を思う禰豆子の血鬼術が効果を発揮したと思えば、分からないでもない。
だが、そこまでいって何故日輪刀で自分の首を斬る?
何をどうすればそういう結論になるのか、俺には全く理解出来なかった。
「えっと、一応念の為にもう一回聞かせてくれ。自分の首を斬る……つまり、夢の中で死ぬ事によって現実に戻ったのか?」
「はい、そうなります」
俺の聞き間違いじゃなかったか。
にしても、何で夢の中で死ねば目が覚めるんだ?
あ、でも夢をもう1つの世界だと考えれば、その世界から脱出するという意味で死ぬというのはあり……なのか?
色々と穴のある予想ではあるのだが、取りあえずそういう風に納得しておく。
半ば無理矢理自分を納得させているような感じだが。
というか、その話が本当だった場合……もしかして善逸とかも夢の中で自分の首を斬るなり何なりして起きてるのか?
「って、落ち着け!」
「ぐがあああああっ! 俺に続け、俺に続け、俺に続けぇ! 猪突猛進、猪突猛進、猪突猛進!」
俺が炭治郎と話している間に禰豆子の炎に包まれた伊之助が起きたのかと思ったのだが、起きたと思った瞬間にいつもの口癖と共に走り出そうとする。
善逸は咄嗟にそんな伊之助を回避するものの、このままだと状況を全く理解していない伊之助が汽車の中を破壊するかもしれないと判断し、そのまま伊之助を押さえつけた。
「炭治郎、伊之助を!」
「あ、はい。分かりました! 伊之助、しっかりしろ。俺の声が聞こえるか!?」
「はっはっは。こうも容易く鬼の罠に掛かってしまうと! 柱として不甲斐なし! 穴があったら入りたい!」
そんな俺達をよそに、禰豆子は自分の仕事をしっかりとこなしていたらしい。
言葉とは裏腹に、いつもの快活とした様子の杏寿郎の声が周囲に響く。
にしても、善逸達に比べて随分と目が覚めるのが早かったな。
この辺、やっぱり一般の隊員と柱の違いといったところか。
「杏寿郎、目覚めたか」
「うむ! 竈門禰豆子のおかげでな!」
そう言う杏寿郎の様子からは、柱合会議の時に禰豆子を殺すべきだと言っていた人物には思えない。
耀哉が殺さないようにと命令した以上、杏寿郎の性格からすればそれを破るといった真似はそうそうしないのだろうが。
「そうか。……で、現在の状況についてはもう理解しているよな? この状況に対処するには、どうすればいいと思う?」
「鬼を見つけて首を落とす。……ただし、このような大規模な事を行う以上、その辺の雑魚ではあるまい。恐らく十二鬼月が出て来たと考えるべきか」
「となると、多分鬼舞辻無惨もこっちの様子を気にしてるだろうな」
ムラタが赫刀の試し斬りの相手として、戦った鬼。
その鬼に鬼舞辻無惨の事を聞くと、頭部が破裂した。
あれが元々鬼に仕込まれていた血鬼術なのか、それとも鬼舞辻無惨が何らかの手段――恐らくは視覚を通して――こちらの状況を把握して鬼を殺したのかは分からない。
だが、恐らくは……あくまでも俺の予想だが、鬼舞辻無惨がこっちの状況を把握していたように思う。
鬼は無数にいるのに、何故あの時だけ? と思ったが……まぁ、赫刀という今までの鬼殺隊とは全く違った攻撃方法があるのを知れば、その情報を集めようと考えるのも当然の話だろう。
そんな俺の予想が当たっていると考えると、この汽車の罠は明らかに俺達を待ち受けているもので、そのような真似をしている以上は当然ながらこっちの情報を少しでも得ようとしていてもおかしくはない。
「うむ。出来れば鬼舞辻無惨の情報を何か得られればいいのだが。今のところ、向こうの情報は竈門少年から得られたものだけだからな」
「そうする為にも……さて、これからどうすればいいと思う?」
「前です! 前から強烈な鬼の臭いがしてきます!」
と、嗅覚に意識を集中していた炭治郎が不意に叫ぶ。
どうやらその鋭い嗅覚で鬼のいる場所を感じたらしい。
「うむ! では、鬼を倒しに行くとしようか。皆……」
「杏寿郎、待て!」
「ぬ? ……なるほど、やってくれる」
杏寿郎の命令が出されるよりも前に、俺はその存在に気が付いた。
汽車の座席、壁、床、天井……あらゆる場所が、不意に蠢き始めたのだ。
「ちょ、ちょちょちょちょ……何これ何これ何これぇっ!」
善逸の口から上がる悲鳴。
「落ち着け、エヴァとの訓練で何を学んできたんだ。この程度の事で動揺するな」
「だって、先生! 師匠との訓練ではこんな気持ち悪いのを経験する事はありませんでしたよぉっ!」
悲鳴を上げながら叫ぶ善逸。
その言葉を聞いて、納得する。
エヴァとの訓練においては模擬戦を行っていたものの、エヴァにしてみればこういう風な攻撃はしなかったのだろう。
エヴァに聞けば、あくまでも出来なかったのではなくしなかったのだと、そんな風に言うだろうが。
「とにかく、このままだと不味い。……杏寿郎、こういう戦闘は俺の方が得意だ。残念だが……本当に非常に残念だが、鬼の相手はお前に任せていいか?」
こういう戦闘は俺の方が得意だという言葉に、杏寿郎は即座に頷く。
「分かった! では、この場はアクセル殿に任せよう! では、他の者は鬼を……」
「あ、待って下さい。アクセルさん、禰豆子もこういうのには向いてると思いますから、一緒に連れていって下さい」
「むー?」
炭治郎の言葉に、禰豆子が首を傾げる。
禰豆子本人はどっちでもいいのだろう。
とはいえ、今のこの状況で問答をしている暇はないか。
「分かった。出来れば鬼殺隊の方から1人欲しかったけどな」
戦力としては、こういう場合は俺だけで十分なのは間違いない。
だが、相手は鬼……それも恐らくは十二鬼月だ。
そうである以上、鬼についての知識を持っている者がいれば俺としても色々とやりやすい。
それに……杏寿郎に鬼を任せるという事は、当然ながらその鬼は殺されるだろう。
柱の杏寿郎に、エヴァとの訓練で実力を増した炭治郎達。
常中という、柱に必須の技術をも身につけた3人が柱の杏寿郎と戦うのだ。
とてもではないが、相手が十二鬼月の鬼であっても生き残れるとは思えない。
個人的には、出来れば十二鬼月を1匹は確保したいのだが……杏寿郎達が戦う以上、それもまた難しい。
「じゃあ、とにかく……杏寿郎、鬼は任せた!」
「おう! アクセル殿もそちらは任せた! 行くぞ!」
いつものように叫び、杏寿郎は炭治郎達を引き連れて車両を出ていく。
それを見送った俺は、禰豆子に向かって声を掛ける。
「これから俺の魔法……いや、禰豆子に分かりやすく言えば血鬼術か。その血鬼術を使って、乗客を攻撃しようとしている汽車の車体……触手? 瘤? 血管? 内臓? とにかくそんな感じの奴を排除する。禰豆子は俺の側にいて、敵が何か妙な行動をしたら対処してくれ。いいか?」
「むー!」
頑張るとでも言いたげに頷く禰豆子。
そんな禰豆子に見せるように、俺は手を上げ……次の瞬間、俺の手は白炎へと姿を変える。
そして白炎と化した腕からは、無数の獣型の炎……炎獣が姿を現す。
犬、猫といったような小さな動物を中心として、鳥の炎獣も複数。
ここが汽車の中である以上、獅子や虎といったような巨大な炎獣を生み出すような真似は出来ない。
そうして姿を現した炎獣達は、自分のやるべき事を理解しているかのように――実際に理解しているのだが――動き出す。
まず最初に向かったのは、この車両にいる乗客達。
その乗客達を呑み込もうとするかのように動いた……面倒だから呼称は肉塊でいいか。その肉塊に向かって体当たりをしたり、牙で噛みついたり、爪で引っ掻いたりといった真似をする。
炎獣は俺の白炎で出来ている獣だ。
当然その身体に触れるということは、白炎に触れるという事になり……車体から生えていた肉塊は、次から次に炭や灰と化していく。
「むー!?」
驚きの声を上げる禰豆子。
俺の腕が白炎になり、延々と炎獣を作り続けているのに驚いているのか、それとも炎獣がいとも容易く肉塊を葬っているのに驚いているのか。
禰豆子は自分の周囲にいる炎獣……猫の炎獣にそっと手を伸ばす。
炎獣が肉塊を燃やしているのを見たのに、随分と大胆な真似をするな。
そんな禰豆子の行動に驚きつつも、俺は何も言わない。
炎獣はある意味で俺の分身でもある。
つまり、もし禰豆子が触っても仲間を傷つけるような真似はしないのだが。
「安心しろ。この炎の獣……炎獣は、俺が生み出した存在だ。禰豆子は勿論、眠っている乗客達にも危害を加えたりはしない」
「むー」
俺の言葉をどこまで理解出来ているのか分からないが、とにかく禰豆子が納得した様子なので視線を周囲に向ける。
大量に……それこそ今現在でも生み出され続けている炎獣は、この車両だけではなく他の車両にも向かっている。
当然ながら炎獣に扉を開けるといったような真似は出来ないので、扉は破壊されていたが。
というか、扉の一部が肉塊になっているのを見れば、炎獣がそこを破壊するのも当然の話だった。
「取りあえずこれで肉塊は何とかなるが……ただ、いつまでもこのままって訳にはいかない。頼むぞ」
杏寿郎達が出来るだけ早く鬼を倒すように期待しながら、炎獣を生み出し続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730