俺の生み出した多数の炎獣は、その全てが汽車の乗客達を守っている。
車体が肉塊になっているので、その多くに炎獣が攻撃している。
せめてもの救いは、血鬼術で眠っている乗客達が下手に身動きを出来ないという事だろう。
もし乗客が起きていた場合、当然ながら自分の周囲の壁や天井、床が肉塊と化して襲ってくるのを見て、悲鳴を上げていただろう。
それだけではなく、パニックになっていてもおかしくはない。
そのような面倒がないのは不幸中の幸いといったところか。
ただ……見た感じ汽車のかなりの部分が肉塊となってるけど、これって鬼を倒した時にどうなるんだろうな?
当然だがこれは鬼の使う血鬼術だ。
だとすれば……最悪、杏寿郎達が鬼を殺すといったような真似をした場合、汽車そのものが崩壊するといったような事になってもおかしくはないだろう。
当然それは俺にとって許容出来るような事ではない。
そのような状況で乗客を全て守れるかと言われれば……微妙なところだろう。
「禰豆子、後ろの方を頼む」
「むー!」
鬼が炎獣を察知し、それを生み出した俺を狙ったのか、それともただの偶然なのか。
ともあれ、俺の後ろの車体が肉塊と化してこちらを襲ってこようとしたのを確認すると禰豆子に頼む。
炭治郎が何かあった時の為にという事で俺につけてくれた禰豆子だったが、肉塊の対処は炎獣でどうとでもなる。
そうである以上、禰豆子のやるべき事は特になく……そういう意味でも、このタイミングで後ろから攻撃をしてきたのが助かるのは間違いなかった。
禰豆子の力で殴られた肉塊は、肉片となって吹き飛ぶ。
いやまぁ、実際にそれが本当の意味で肉片なのかどうかは分からないんだが。
「むー!」
自分の仕事が出来て満足したのか、禰豆子が嬉しそうに鳴く。
そんな禰豆子の周囲には、リスの炎獣が待機していた。
もし禰豆子に何かあったら即座に対処させるつもりだったのだが、こうして見た感じではその必要もないらしい。
禰豆子は色々な意味で特殊な鬼だが、その実力に関しても十分以上に特別なのかもしれないな。
「むー? ……むー! むー!」
リスの炎獣を見て喜び、その身体を撫でているのを見れば、そういう風には見えないが。
リスは炎獣なので、本当のリスと同じような毛があったりする訳ではない。
しかし禰豆子は、それでも満足そうにリスの炎獣を撫でていた。
先程肉塊を破壊したとは、到底思えないようなやり取り。
この辺も禰豆子らしいと言うべきか。
そんな禰豆子の様子にほっこりとして癒やされつつも、炎獣を生み出し続けるのは止めない。
既に炎獣は十分な数になっているとは思うが、だからといって炎獣を生み出すのを止めるつもりはない。
汽車がいつ今以上に変化して襲ってくるのか分からないし、あるいはこっちの可能性の方が高いが、杏寿郎達が鬼を倒した事によって汽車の車体その物が崩壊してしまう可能性がある。
その時に乗客を保護する為には、炎獣は多ければ多い程にいい。
……いっそ、炎獣を杏寿郎達の方に向かわせるか?
汽車の中で戦うのは狭くて戦いにくいのか、現在は汽車の屋根の上で戦闘が行われている様子だ。
そんな場所だけに、何かあったら手遅れになる。
呼吸を使える以上、走っている汽車の上から放り出されるようなことがあっても、死ぬような事はないのかもしれないが。
それでも万が一を考えれば、それに対処しないという選択肢は存在しなかった。
それに、汽車の外となれば犬や猫のような小型の炎獣ではなく、獅子や虎、あるいはグリフォンやドラゴンといったような炎獣であっても活躍の場がある。
「禰豆子、炭治郎達の様子は分からないか?」
「む? むー!」
リスの炎獣を愛でていた禰豆子に尋ねるものの、返事を俺は理解出来ない。
いやまぁ、この状態の禰豆子と完全に意思疎通が出来るのは炭治郎だけなのかもしれないが。
「そうか、分からないか。となると……実際に様子を見に行った方がいいと思うか?」
「むー?」
俺の問いに小首を傾げる禰豆子。
どうすればいいのかが分からないのか、それとも俺の言葉の意味をそもそも理解していないのか。
「取りあえず、屋根に上がるという認識でいいのか? 禰豆子も炭治郎が心配だろう?」
ヒノカミ神楽とかいう、未知の呼吸法とも言うべき存在を使え、主人公であるのも間違いないし、常中も使えるようになり、エヴァとの訓練も行っている。
そんな炭治郎だけに、そう簡単に鬼にやられるとは思えない。
杏寿郎もいるしな。
ただ問題なのは、あの眠らせる血鬼術だろう。
何故か夢の中で自分を殺す、自殺するといったような手段で目覚める事が出来るらしいが、それでも厄介な血鬼術なのは間違いない。
あるいは切符を媒介にしないと使えないのなら……いや、どうだろうな。
何となくだが、切符がない状態であっても普通にどうにか出来そうな気がする。
「むー!」
炭治郎が心配だという俺の言葉に、禰豆子は同意するように頷く。
やはり禰豆子も炭治郎の事が心配なのだろう。
「なら、行くか。ここで何かあっても炎獣が対処するから問題ない……って、禰豆子、注意しろ!」
その予感に、俺は半ば反射的に禰豆子に向かって叫ぶ。
「むー?」
禰豆子は一体何を言われたのか全く分からない様子だったが、それでも俺の叫びから何かを感じたのだろう。
何かあれば即座に対処出来る状況になり……そして次の瞬間、乗っていた汽車が大きく揺れる。
強風や地震で揺れたのではなく、もっと直接的な何か。
それによって汽車は激しく揺れ、そして……恐らく線路から脱線したのだろうと確信出来る程に激しい揺れに襲われる。
それはもう揺れというよりは、天地が逆さに引っ繰り返るかのようなそんな状況。
もし駅の近くでこのような事になれば、間違いなく大事故になるだろう。
そんな状況の中で、俺は床に立つのではなく空中に浮かぶ。
車両が引っ繰り返ったり、転がったりといったようなことになっている以上、どこかに立っていても意味はない。
禰豆子を抱きかかえながら、炎獣達に乗客達を守るように改めて指示を出す。
「むーっ!」
禰豆子にとっても、この状況はかなり驚きだったのだろう。
俺に抱きかかえられながら、驚きの声を漏らす。
そんな状況で、これ以上は汽車を壊さないとかそんなことを考えている余裕はないと判断し、白炎を使って汽車の窓の辺りを破壊して外に出る。
そうしながら周囲の様子を確認すると、乗客達を連れて俺と同じく汽車を突き破って外に出て来る大量の炎獣の姿が確認出来る。
うん、これって汽車が何で事故ったのか、そういう現場検証をした場合にどうなるのか……全く分からないな。
間違いなく穴だらけになった汽車は不自然だと、そのように思われてもおかしくはない。
その辺は……取りあえず耀哉に頼んで鬼殺隊の方で何とかして貰うとしよう。
鬼が起こす騒動は、大小様々だ。
鬼殺隊が政府非公式の組織であっても、当然だがその辺についてはどうにかするだけの伝手はあってもおかしくない。
今回のような一件は、そう多くはないだろうが。
「っと。……ほら、大丈夫か?」
「むー!」
汽車から脱出して地面に着地すると禰豆子を下ろして尋ねると、禰豆子は問題ないと何度も頷く。
禰豆子に問題がないことに安堵し、改めて脱線した汽車を見る。
予想はしていたものの、かなりボロボロだな。
ちなみに汽車の内部にはあの肉塊があった。
そうなると、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、あのまま汽車にいても肉塊に守られて無事だったかもしれない。
とはいえ、個人的にはあの肉塊に触りたいとは到底思えなかったが。
「後は杏寿郎達だな。……一体どうなった? 汽車があんな風になったって事は、鬼は倒したんだと思うが」
周囲の様子を確認していると、やがて汽車の先頭部分から杏寿郎達が姿を現したのが見えた。
「禰豆子! 無事だったか!?」
そんな中で真っ先にこっちにやって来たのは、炭治郎。
禰豆子の側まで移動すると、怪我をしていないかといったように心配そうな様子で尋ねる。
実際には禰豆子は鬼なので、もし怪我をしても多少の傷はすぐ回復するのだが。
それでも炭治郎にしてみれば、禰豆子は大事な妹だ。
例え回復するとしても、怪我をしていないかどうかというのは気になるのだろう。
「アクセル殿、無事だったようだな! 心配はしていなかったが!」
杏寿郎がいつものように笑いながらそう言ってくる。
「ああ。俺達は勿論、炎獣のおかげで乗客達も全員無事だ。……かすり傷といったような軽い怪我はしてるかもしれないが」
「炎獣? ……ほう! これは凄いな! 炎で出来た獣とは!」
杏寿郎が乗客達の側で待機している無数の炎獣を見て、感心したように言う。
炎柱の杏寿郎だけに、炎獣に強い興味を持ってもおかしくはない。
「俺の炎……白炎で生み出した炎獣だ。汽車の壁とかが突然肉塊になってしまったからな。それに対処する為に作った」
「なるほど! しかし、これは……乗客達に触れているようだが、問題はないのか?」
「ああ、炎獣が味方だと判断した相手には何の問題もない。肉塊のように敵だと判断されれば、また話は別だがな」
「なるほど! だが、その炎獣だったか? 出来ればすぐに消した方がいい。乗客達の目が覚めた時、近くに炎獣がいれば騒ぎになるだろう!」
そう言われ、確かにそうかと納得すると俺は指をパチンと鳴らす。
その瞬間、炎獣はその全てが白炎となって消えていった。
「ほう!」
その光景に杏寿郎が感心した様子で呟く。
全ての炎獣が白炎となって消えていく光景は、かなり印象的だった。
それを考えれば、杏寿郎が……炭治郎や善逸、禰豆子がその光景に目を奪われてもおかしくはない。
伊之助だけは、猪の被り物をしているのでどのように思っているのかは分からなかったが。
「それで話を聞くのが遅れたが、鬼は倒したのか?」
「うむ! 予想通り十二鬼月であった。それも下弦の壱という、十二鬼月の中でもそれなりの大物だ! これだけの騒動を起こした事にも納得出来たな! あるいは上弦がいるのかもしれないと、そう思っていたのだが!」
杏寿郎の言葉に、十二鬼月について以前しのぶに説明された事を思い出す。
十二鬼月というのは、その名の通り十二匹の鬼だ。
そして十二匹の鬼は上弦と下弦に分けられる。
それぞれに六匹ずつの鬼がおり、下弦の壱という事は下弦の中でも最強の鬼を倒したという事になる。
ちなみに……柱になる条件の1つに十二鬼月を倒すというのがあるが、それで柱になった者達が倒したのは、決まって下弦の鬼らしい。
鬼殺隊が上弦の鬼を倒したという記録はないらしい。
それどころか、上弦の鬼には柱も何人か殺されているらしいな。
それはつまり、同じ十二鬼月であっても上弦と下弦の間には絶対的な実力差があるということを意味している。
十二鬼月の上弦か。
一体どういう実力を持ってるのか……正直なところ、少し気になるな。
今回の敵であった下弦の壱を生け捕りにしたり、身体の一部を奪えなかったのは残念だが。
あ、でも今にして思えば汽車の中にあった肉塊って、実は下弦の壱の身体だったりしたんじゃないか?
そう思って汽車に視線を向けるが、既に下弦の壱が死んでいる以上、その肉塊も綺麗に消えている。
「上弦か。出来れば生け捕りにしたいところだな。ホワイトスターで調べれば、色々と分かるかもしれないし」
「はっはっは! アクセル殿は豪毅だな! まさか、上弦の鬼を生け捕りにしたいとは!」
「上弦の鬼は、より鬼舞辻無惨に近い鬼だ。それなら、色々と調べ甲斐もありそうだしな」
鬼舞辻無惨について分かっている事は非常に少ない。
それこそ炭治郎の得た情報が全てと言ってもいい。
そうである以上、鬼舞辻無惨について知るにはやはり実際に知っている者から聞くのが一番いいだろう。
問題なのは、鬼滅世界から出れば鬼舞辻無惨についての情報を口に出来るかどうかといったところだが……それは試してみないと何とも言えないな。
場所さえ分かれば、影のゲートで奇襲が出来る。
炭治郎が以前会った時は人間として暮らしていたらしいし。
そういう意味では、厄介な相手であるのは間違いのない事実だ。
そんな風に会話をしていると、不意に急速にこちらに近付いて来る強烈な気配を感じる。
それこそ闘気とでも呼ぶべきものを持つ、非常に好戦的な相手。
そして俺から一瞬遅れて杏寿郎を含めた他の面々も近付いて来る気配に気が付いたのだろう。
咄嗟に日輪刀を構える。
「この状況で一体誰が来たと思う?」
「この様子からすると、強敵なのは間違いない!」
俺の言葉に杏寿郎が叫び……それは他の面々にとっても同様だったのか、厳しく顔を引き締めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730