急速に近付いてきた闘気の持ち主を迎撃すべく、この場にいる全員が構える。
いっそ俺が前に出てこの闘気の持ち主と戦うか?
そう思ったものの、炭治郎達に任せた方がいいかもと考え……そんな風に考えている間にその闘気の持ち主が姿を現す。
どん、と。
構えている俺達の前に闘気の持ち主が着地する。
異様なのは、身体中に……いや、顔にも入れ墨が入っている事だろう。
実際にはそれが本当に入れ墨なのかどうか、俺には分からない。
分からないので、取りあえず入れ墨であると認識して動く事にする。
そして入れ墨以上に目立つのが、その目だろう。
片方に上弦、そして片方には参。
これはつまり、この鬼が上弦の参であるという事を意味しており、この鬼が十二鬼月であると示していた。
その上、上弦の参……つまり、十二鬼月に所属する十二匹の鬼の中でも、3番目の強さを持つのだろう。
そんな鬼は、こちらを注意深く……そして興味深そうに見ている。
何だ? 鬼にしては珍しいな。
俺が知ってる限りだと、鬼というのは人を見下したりはするものの、興味深そうには見ない筈だ。
あ、でもそう言えば俺が初めてこの世界に来た時に戦った鬼について炭治郎から聞いた話によると、禰豆子に……というか、妹という存在として禰豆子に強い興味を持っていたらしい。
とはいえ、その鬼が興味を持ったのはあくまでも鬼の禰豆子だ。
それに比べると、現在俺の前にいる鬼は明らかにこっちを興味深そうに見ていた。
「ふむ、なるほど。強者が多いな。今日はいい日だ」
こちらを見ながら、鬼はそう呟く。
この状況でそんな事を言えるのは、一体どうなんだろうな。
自分の実力に余程の自信があるからこそ、そんな風に言えるのかもしれないが。
とはいえ、十二鬼月が出て来てくれたのはありがたい。
「杏寿郎」
日輪刀を手に、1歩前に出ようとした杏寿郎を止める。
杏寿郎はそんな俺の言葉に疑問の視線を向けるが、そんな杏寿郎よりも更に俺が1歩前に出ると、取りあえずこの場は俺に任せると決めたのだろう。
「お前が上弦の参の鬼か。……名前は?」
「猗窩座だ。お前は……? なるほど、鬼殺隊の異分子というのはお前の事か」
上弦の参、猗窩座。
そう名乗った鬼は、どうやら俺の事を知っていたらしい。
さて、どこで俺の情報が漏れたのやら。
俺がこの世界に転移してきた時に戦った下弦の鬼か、あるいはムラタと共に赫刀を試そうと思った時か。
その辺りの事情は分からないが、猗窩座が俺について知っているのは間違いないらしい。
「異分子か。鬼舞辻無惨が口にしたにしては、随分と上手い事を言うな」
実際、俺がこの世界の異分子である以上は間違いない。
何しろ俺は異世界の存在である以上、この世界では正真正銘の異分子なのだから。
「……お前は一体誰なんだ?」
「アクセル・アルマー。鬼殺隊の協力者にして、鬼に……鬼舞辻無惨に滅びをもたらす存在だな」
「何だと?」
俺の言葉が面白くなかったのだろう。
猗窩座は苛立ちの視線をこちらに向けてくる。
「聞こえなかったのか? 俺は鬼舞辻無惨を滅ぼす者だ」
「戯れ言を」
俺の言葉を信じていないのか、あるいは動揺を表情に出さないようにしてるのか。
その辺りの理由は俺にも分からないが、それでも俺の前に立ち塞がる猗窩座はそれなりの実力の持ち主と言ってもいい。
「そうか? なら、試してみるか」
「何?」
「掛かってこい。少し俺の実力を見せてやる。どうやら鬼舞辻無惨はお前を通して俺の存在を把握してるらしい。その鬼舞辻無惨を殺すに相応しい実力を持ってるのを示してやろう」
「面白い!」
おう?
何故か俺の言葉に猗窩座は嬉しそうに叫ぶ。
てっきり鬼舞辻無惨を滅ぼす云々という話を聞いて怒るのかと思ったが、まさかこんな反応を示すとは思わなかった。
とはいえ、この猗窩座の反応で何となくその性格を理解した。
恐らくこの猗窩座の性格は、純粋な戦士なのだろう。
強さを求め、自分がどこまでも強くなる為に訓練をするような、そんな性格らしい。
イザーク……いや、違うな。ムラタに近い性格か。
となると、これはもしかして行けるか?
猗窩座の性格を詳細に分かった訳ではないにしろ、俺との戦いを楽しみにしているのは間違いない。
そうなると、ここで上手い具合に行動すれば猗窩座を下してこっちの部下にする事も出来る……か?
とはいえ、本当にそのような真似をするには猗窩座の中にある鬼舞辻無惨の血をどうにかする必要がある。
血……血か。
俺の血を使うか?
俺の血を使って召喚魔法の契約を結んでしまえば、俺の意に反する事は出来ない。
とはいえ、俺の血と鬼舞辻無惨の血が接触した場合どうなるのか、ちょっと疑問だが。
その辺をどうするのかは、猗窩座と戦いながらこれからどうするべきなのかを考えた方がいいか。
「杏寿郎、炭治郎達もだ。この猗窩座の相手は俺に任せてくれ。この類の性格をしている奴と戦うのは、俺にとって珍しい事じゃない」
「分かった、任せよう!」
真っ先に俺の言葉に同意したのは、杏寿郎。
杏寿郎にしてみれば、俺に任せておけば安心だと思っているのだろう。
とはいえ、今の状況を考えれば本来なら杏寿郎は自分が鬼と戦いたいと思っているのかもしれないが。
ここで素直に俺に任せてくれた辺り、杏寿郎は俺の実力を信頼してくれているのだろう。
あるいは耀哉辺りに色々と言われているのか。
杏寿郎が俺に任せると言った以上、炭治郎達は何も言えなくなる。
伊之助はそれでも不満そうにしていたものの、杏寿郎はそんな伊之助の様子には気が付いていないのか、あるいは気が付いていても動かないと思っているのか。
炭治郎達が止めると思っているのかもしれないな。
とにかく、猗窩座の相手が俺に任されたのは事実。
であれば、俺がやるべき事は1つだけだ。
「来い、上弦の参の実力……確認させて貰うとしよう」
「面白い! 術式展開、破壊殺・羅針!」
俺とやる気になったのか、猗窩座は不意に自分の周囲に魔法陣……いや、魔法陣じゃないか。とにかく血鬼術による何かを展開する。
ちょっと珍しい血鬼術だな。
いや血鬼術というよりも、魔法陣っぽいのが周囲に広がっているのを思えば魔法に近いような気もするな。
「行くぞ」
ゲイ・ボルクを出そうかと思ったが、この手の戦闘狂は自分の得意分野で負けた方が大人しくこっちの要求に従うのがパターンだ。
そうである以上、俺もゲイ・ボルクを出したり魔法を使ったりといったような真似はせず、素直に素手で戦ってやった方が、勝った時にこっちの要求に従わせやすいだろう。
「来い」
そう言った瞬間、猗窩座は地面を蹴って俺との間合いを詰める。
その動きを見て感心した。
身体能力の高くなった鬼が力任せに地面を蹴って間合いを詰めるのではなく、きちんと自分の修練された動きだった為だ。
俺が最初にこの世界に来た時に戦った十二鬼月の鬼も、以前ムラタと一緒に赫刀の実験をした鬼も、双方共に修練はしていなかった。
……下弦の鬼は十二鬼月だけあって、血鬼術には優れていたが。
一瞬で俺との間合いを詰めた猗窩座は、拳を放ってくる。
その一撃もまた、きちんとした修練を詰んだ結果であるのは間違いなかった。
ましてや、そこに鬼の身体能力が加わっているとなれば、その威力は強力で人の頭部くらいなら容易に破壊出来るだろう。
……普通なら、だけどな。
俺の頭部に向かってくる拳を左手で叩いて攻撃の威力をそらしつつ、右手を猗窩座の脇腹に叩き込もうとするが……鬼の勘か武人の勘か、とにかく猗窩座は俺の一撃を見抜いて左膝を上げる事で防御しようとするが……
バキ、と。
鈍い音が拳を伝わって聞こえてくる。
「ぐっ!」
足の骨……特に膝というのは、かなりの頑丈さを持つ。
そんな膝を折られた事に驚いたのか、猗窩座は一度距離を取る。
膝の骨を折られたというのに、驚きだけで痛みを見せる様子もない。
この辺りはさすが上弦の参といったところか。
「やるな」
距離を取った猗窩座の口から出たのは、そんな感嘆の言葉。
俺を見る目には、どこか熱いものがある。
……その視線の熱さが、異性――この場合は同性――に恋するようなものではなく、自分と互角に戦えるだけの実力を持っている相手がいる事の歓喜であるのはせめてもの救いか。
「お前もな。まさかあの一撃を防がれるとは思わなかった」
「それは寧ろこちらの台詞だ。俺の羅針をこうも容易く潜り抜けくるとは」
羅針を潜り抜ける、か。
その羅針というのは、先程の血鬼術の事だろう。
だとすれば、あの羅針というのは相手の攻撃を察知するような、そんな能力を持ってるのか?
「まだやるのか?」
「当然だろう。だが……そうだな。アクセルだったか。お前は強い。しかし強いが故に惜しい。……鬼になる気はないか?」
「……は?」
猗窩座の口から出たのは、俺にとって完全に予想外の言葉だった。
戦うだけならまだしも、まさか鬼になるように言ってくるとは。
「アクセルだけではない。そこのお前。柱だろう? お前も十分な強さを持っているのが分かる。お前も鬼になるつもりはないか?」
そして更に驚いたのは、杏寿郎までをも鬼にならないかと誘った事だ。
鬼と鬼殺隊、十二鬼月と柱。
どこからどう考えても天敵と呼ぶべき間柄なのに、何故か猗窩座は杏寿郎にも鬼にならないかと誘ったのだ。
それでいて、炭治郎達には見向きもしない。
それどころか、そこに炭治郎達がいるというのすら全く気が付いていないように思える。
「そのつもりはない!」
杏寿郎が猗窩座の言葉に対し、即座に否定する。
それを見た猗窩座は、残念そうにしながら俺に視線を向けた。
猗窩座にしてみれば、現在正面から戦ってい俺が一番興味深い存在なのだろう。
「アクセル、お前はどうだ?」
「鬼になるには、鬼舞辻無惨の血を貰わないといけない筈だろう? そうなると、俺は一旦鬼舞辻無惨のいる場所まで行くのか?」
「アクセル殿!?」
杏寿郎の驚きの声が周囲に響く。
とはいえ、もし鬼になる為に鬼舞辻無惨のいる場所に行けるのなら、そのまま鬼舞辻無惨を殺すなり捕らえるなりすればいい。
それが無理でも、鬼舞辻無惨の本拠地がどこにあるのかを知る事が出来る可能性があった。
「心配するな。上弦のうちの何人かは、あの御方の血を貰っている」
あー、なるほど。
鬼舞辻無惨の名前を出さなくても、あの御方とかそういう風に表現するのはOKなのか。
名前はともかく、それ以外に鬼舞辻無惨を示すような表現が出来ないと鬼同士の会話とかでも困るしな。
にしても、鬼舞辻無惨の血か。
正直なところ、それは是非欲しい。
鬼舞辻無惨という鬼の始祖とも言うべき存在の血を入手すれば、レモン率いる技術班にとってかなりの結果を出すだろう。
「鬼舞辻無惨の血!?」
と、俺と猗窩座の会話を聞いていた中で、不意にそんな叫び声が周囲に響く。
それが猗窩座の気に触ったのか、猗窩座は炭治郎に向かって距離を詰め、拳を振るう……直前、その右手を俺に止められた。
「アクセル、何故邪魔をする! こいつは俺とお前の至高の戦いに水を差したんだぞ!」
「悪いな。それでも炭治郎は俺の仲間だ。殺させる訳にはいかないんだよ」
そう言うと、炭治郎を殺すのは諦めたのか猗窩座は手から力を抜く。
それを確認し、俺もまた猗窩座の拳を離す。
炭治郎から離れていく猗窩座を見ながら、今の炭治郎の言葉を考える。
炭治郎が叫んだのは、鬼舞辻無惨の血というものだった。
それはつまり、炭治郎にとって鬼舞辻無惨の血は是非とも欲しいのだろう。
考えられる可能性としては、鬼舞辻無惨の血を使えば禰豆子を人間に戻せるというものか?
いや、だが鬼舞辻無惨の血を使われて禰豆子は鬼になったんだと考えると、それはおかしい。
となると……多分、原作ではここで炭治郎が鬼舞辻無惨の血を入手していた、のか?
だとすれば、俺が介入したせいで本来の流れとは違う展開になっている可能性も否定出来ないか。
そうなると鬼舞辻無惨の血は絶対にここで入手する必要があるな。
「猗窩座、ちょっと賭けをしないか?」
そんな俺の言葉に、猗窩座は不思議そうな視線を向ける。
一体この状況で何を? といった感じなのだろう。
それでも即座に否定しなかった事を考えると、多少は興味を持ったといったとろか。
「賭けとは?」
「これから俺がお前と戦う。もしその戦いでお前が勝ったら、俺はお前の持つ鬼舞辻無惨の血を使って鬼になろう」
「先生!?」
善逸が俺の言葉を聞いて半ば反射的に叫ぶ。
そんな善逸の様子を手で押さえ、猗窩座との会話を続ける。
「その代わり、俺が勝ったら俺に鬼舞辻無惨の血を寄越せ」
「……何?」
俺の口から出たのが賭けを持ち掛けた以上に予想外だったのか、猗窩座の口からそんな言葉が漏れた。
てっきりもっと違う内容……それこそ鬼舞辻無惨についての情報や、鬼舞辻無惨がどこにいるのかといった事を言われるのかと思ったのだろう。
そっちも欲しいが、炭治郎の様子を見る限りでは鬼舞辻無惨の血は必須らしい。
であれば、まずはそれを入手した方がいいのは間違いない。
「どうする? 俺との賭け……受けるか?」
そう告げる俺の顔を、猗窩座は真意を確かめるようにじっと観察するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730