「アクセルさん、何故ですか!」
そう叫んだのは、炭治郎。
血を俺に渡し終えた猗窩座は、すぐにその場を去っていった。
当然のように、俺はそんな猗窩座を黙って見送った。
炭治郎にしてみれば、そんな俺の行動が理解出来なかったのだろう。
「そうだぜ! 何で鬼を逃がすんだよ!」
伊之助もまた、俺が猗窩座を逃がした事に不満そうな様子を見せている。
善逸や杏寿郎も俺の行動が理解出来ないといった表情を浮かべている。
「落ち着け。俺にも色々と考えがある」
「……どういう理由でそのような真似をしたのか、聞かせて貰おうか!」
杏寿郎のその言葉に、鬼舞辻無惨の血が入っている試験管を空間倉庫に収納する。
そんな俺の様子に、炭治郎は猗窩座を逃がしたのとは別の意味で強烈な視線を向けていた。
「炭治郎、この血については後で話す」
「え? あ、はい!」
元気に返事をする炭治郎。
恐らく原作では、ここで炭治郎が鬼舞辻無惨の血を入手し……それによって何らかの大きな動きがあったのだろう。
そんな炭治郎から視線を外し、俺は改めて他の面々に向かって口を開く。
「まず最初に、猗窩座は鬼……それも十二鬼月の上弦の参であるのは俺も承知しているが、だからといって俺は猗窩座に対して敵意はない」
「ちょ、先生!? 相手は鬼ですよ!?」
「それは当然俺も知っている。しかし、鬼だからってだけで殺す訳にはいかないだろう? 禰豆子の件もある」
「禰豆子は人を食っていません!」
炭治郎にとって、禰豆子を猗窩座と一緒にされるのは許容出来なかったらしく、即座にそう叫ぶ。
「そうだな、悪い。だが……俺が見たところでは、猗窩座は鬼というよりも強さを求める武人といったように見えた。それは猗窩座と俺の会話を聞いていれば理解出来ただろう?」
その言葉に、一応の納得をする炭治郎達。
強さを求め、より強くなる為に強い相手、猗窩座が目を掛けた相手に鬼になれと言ってきたのだ。
それだけを見ても、猗窩座が普通の鬼と違うのは明らかだ。
とはいえ、それでも炭治郎が言うように鬼となり、そして上弦の参という地位にまで上がった以上、相応の人を喰い殺してはいるのだろうが。
だが、同時に猗窩座はただ人を喰い殺しているだけではなく、きちんと修練を積んで今のような強さを身に着けたのも事実だ。
あるいは猗窩座は鬼になる前は名の通った武術家とかだったのかもしれないな。
人が鬼になる事によって、その記憶はかなり曖昧になるという。
事実、禰豆子も記憶は曖昧になっている。……禰豆子の場合は精神退行しているという表現の方が相応しいのかもしれないが。
「そんな性格の猗窩座だ。鬼舞辻無惨の血を俺に渡した事からも、約束は守る律儀な鬼だと言ってもいいだろう。その辺を考えると……そうだな、お前達に分かりやすく言えば、鬼舞辻無惨とはまた違った意味で俺の血を使って猗窩座をこっちに寝返らせたいと思っている」
「……出来るのか、そのような事が」
杏寿郎が驚愕した様子でそう言ってくる。
戦いの中で行われた俺と猗窩座の会話は聞こえていてもおかしくないと思うんだが。
あるいは、あの時の会話は結局のところブラフであったと思われていたとか?
「出来る。ただし、俺の血は鬼舞辻無惨の血と比べても圧倒的にリスクが高い……あー、危険性が高い。その分、俺の血を受け入れて召喚獣としての契約を結んだ場合、圧倒的な力を手に入れる事が出来るが」
とはいえ、エヴァでさえそのままでは魔力が濃すぎて飲めないという俺の血だ。
猗窩座がそれに耐えられるかは……正直なところ賭けに近い。
耐えられなかった場合、どうなるんだろうな。
普通なら俺の血に耐えられない奴は死ぬが、猗窩座は鬼で高い再生能力を持っている。
俺は他の鬼をあまり知らないが、恐らく猗窩座の持つ再生能力は鬼でも屈指の実力ではないか? と思ってしまうくらいに高い再生能力を持っていたな。
だとすれば、一時的に俺の血を受け入れることが出来ずとも、再生しながら血を受け入れるといったような真似も出来るかもしれない。
「そうして猗窩座を味方に出来れば、鬼に対して今まで知る事が出来なかった情報も多数入手出来る」
これは正直なところ大きいだろう。
鬼殺隊は鬼に対して恨みを持っている者が多く、それらは情報を入手するよりも鬼を殺す事を優先する。
であれば、実際に鬼の一員……しかも上弦の参である猗窩座から聞く事が出来る情報は大きな意味を持つ。
とはいえ俺が猗窩座に抱いているのは武術家、武人といった印象だ。
それだけに猗窩座は鬼の内情について知らない事が多いような気がする。
「鬼の情報か。……だが、本当にそれは可能なのか?」
「杏寿郎が心配するのは分かるが、もし本当に召喚の契約を結ぶことが出来ればその点については心配ない」
鬼舞辻無惨の呪縛から解き放たれれば、猗窩座も素直に話をしてくれると思う。
「それと話は変わるが、俺が猗窩座を逃したのには理由がある。俺は猗窩座と戦っている時にちょっとした仕掛けをした」
「ちょっとした仕掛け? それは一体どのようなものなのだ?」
「これだよ」
杏寿郎に空間倉庫から取り出した物を見せる。
それは指先よりも更に小さく薄い、数g程度の軽さを持つ。
「これは……?」
大正時代に生きている杏寿郎は、当然ながら俺が持っている物が何なのかは分かっていないらしい。
「これは発信器という奴だ。そうだな、分かりやすく言えば遠くにいてもこれをつけた人物がどこにいるのか分かる」
「……何?」
俺の言葉に、杏寿郎は低い声を出す。
いつものように元気よく聞いてくるのではなく、その低い声は杏寿郎が俺の言葉が真実かどうかを確認する為だろう。
この世界には当然のように発信器の類は存在しない。……しないよな?
まぁ、鬼の使う血鬼術があれば発信器と同じような真似が出来るかもしれいけど。
「つまり、現在の猗窩座がどこにいるのかを確認する事が出来る。そうなると、猗窩座が鬼舞辻無惨のいる場所に行けばどうなるか……分かるだろう?」
「それはつまり、鬼舞辻無惨のいる場所が分かると?」
杏寿郎のその言葉は、これ以上ない程に真剣なものだった。
とはいえ、それは当然だろう。
鬼殺隊は今まで鬼舞辻無惨の情報を全く手に入れる事が出来なかったのだから。
唯一、炭治郎が遭遇した例があるだけだ。
「そうだ。鬼舞辻無惨がどこにいるのか分かれば、俺の影のゲートを使っていつでも移動出来る。……そんな訳で、ちょっと確認してみるか」
そう言い、発信器を追跡している画面を映像スクリーンとして空中に出す。
空中にいきなり出た映像スクリーンに驚愕の声が響き渡ったが、杏寿郎は鬼舞辻無惨がどこにいるのか分かるかもしれないという事や、ホワイトスターに行ってその技術を自分の目で直接見ている事もあってか、そこまで驚いた様子はない。
そんな映像スクリーンの中では、猗窩座に付けた発信器の反応が動いている。
まだ完全に朝にはなってないものの、太陽が完全に昇るよりも前にどこかに隠れたいという事なのだろうが……
「え?」
不意に猗窩座に付けていた発信器の信号が消える。
それに驚いた俺の声が周囲に響く。
「先生? その、光ってるの消えましたけど……どうなってるんですか?」
善逸の言葉に、何と答えるべきか迷う。
猗窩座に付けた発信器は、かなり小型ではあるがシャドウミラーの技術者が作った代物だけに性能は十分だ。
それこそ日本全国どこにいても……いや、それどころか外国にいてもその発信器の信号を探知出来ないという事はない。
考えられるとすれば……
「猗窩座に見つかって破壊されたんだろうな」
数g程度の、シール的な外見の発信器だ。
普通ならそんな物が自分の身体や服に付着していても気が付く事はないだろう。
だが、猗窩座は鬼だ。
それもただの鬼ではなく、十二鬼月の上弦の参という高位の実力者。
それを考えれば、例え数g程度の物であっても自分の身体に付着してる何かに気が付いた可能性もある。
あるが……まさか、鬼舞辻無惨の血を賭けで負けたとはいえ、勝手に俺に渡した事で鬼舞辻無惨の怒りを買って殺されたなんて可能性はないよな?
鬼舞辻無惨によって殺された衝撃で発信器も破壊されたとか。
「それって、あの鬼を逃がした意味がなかったんじゃねえか?」
「う……そうだな」
まさか伊之助の口から正論が出るとは思わなかったが、その言葉が正しいだけに俺としても反論は出来ない。
とはいえ、猗窩座からは鬼舞辻無惨の血を入手したので、個人的には何の収穫もなかった訳ではない。
「うむ! ともあれ、アクセル殿のおかげで汽車が横転したにも関わらず死者は1人も出ていないし、上弦の参と遭遇したのに誰も死んでいない! 上弦の参を殺せなかったのは残念だったが、下弦の壱は殺す事が出来た! これは目出度いと言ってもいいだろう!」
杏寿郎の声が周囲に響く。
杏寿郎としては猗窩座を殺したかったのだろうが、俺に任せると決めた以上はそれに不満は言わないつもりなのだろう。
この件を実弥や小芭内が知ったら、間違いなく責められそうだが。
けど、この件については俺の考えが甘かったのも事実だし、素直にその言葉を受け入れるしかない。
まさか、あっさりと発信器が見つかるとは思わなかったしな。
「取りあえず……こういう場合はどうするんだ? こんな大事になってしまえば、とてもじゃないけど……ってやばい! もう起きそうな奴がいる! 一旦ここを離れた方がいい!」
汽車の乗客は、下弦の壱の血鬼術によって眠っていたのだ。
その鬼が死んだ以上、当然ながら血鬼術の効果が長く続く筈もない。
ある意味では、今までその効果が続いていた事の方が驚きだったのだろう。
「む、危ないな。では一旦移動するぞ!」
杏寿郎の指示に従い、線路の近くにあった林の中に入っていく。
発信器の追跡をしているスクリーンは、取りあえず小さくして移動する。
「で、あの連中はどうするんだ? 汽車が横転し、それでも死人が1人もいないとなると、間違いなく大きな騒ぎになるぞ」
「戻レ、戻レ! カー! 蝶屋敷ニ戻レ!」
俺の言葉に杏寿郎が何かを言うよりも前に、鎹鴉がやって来てそう告げる。
一体誰の鎹鴉なのかは、俺には分からないが。
あ、でも善逸の鎹鴉でない事だけは理解してる。
何しろ善逸の鎹鴉は、そもそも鴉ですらなく雀だしな。
しかも鎹鴉と違って話せないらしいし。
ただ、善逸にとっては重要な仲間というか、友達というか、そんな感じらしい。
……尚、伊之助も鬼殺隊の剣士である以上は鎹鴉がいる筈なんだが、見た事がないんだよな。
伊之助の性格を考えれば、怖いというのもあるのかもしれないが。
「ふむ、戻るとするか。そうなれば……」
「ちょっと待て! 反応が出た!」
杏寿郎の言葉を遮るように叫ぶ。
何気にまだ出しっぱなしだった映像スクリーンに、不意に発信器の反応が出たのだ。
「ちょっ、先生!? その発信器でしたっけ? 壊されたんじゃなかったんですか!?」
突然の状況に、善逸が叫ぶ。
だが、それを俺に言われても困る。
実際に先程は不意に発信器の反応が消えたのだ。
だからこそ、猗窩座によって発信器が見つかって破壊されたのだとばかり思っていた。
しかし、破壊されたと思っていた発信器は再び反応を示したのだ。
これは一体、何がどうなってこんな事になったんだ?
「分からない。分からないが、発信器がまだ生きているのは間違いない。ただ、この位置はここから随分と離れているな」
映像スクリーンを見てその事に疑問を抱き……同時に、やはりかと納得もする。
以前から疑ってはいた。
鬼舞辻無惨が何故か山の中にある炭治郎の家にいきなり姿を現した事から、転移能力を持っている鬼がいるのではないか、と。
その予想が図らずも猗窩座の動きで証明された訳だ。
「転移能力の血鬼術を持つ鬼がいる。それが判明しただけで、今回の一件は悪くない結果だったな。……そう思わないか?」
「うむ! アクセル殿がそう思うのなら、それでいいのだろう!」
杏寿郎がそう叫ぶ。
これで鬼の秘密を多少なりとも解明したのは間違いないんだし……猗窩座を逃した一件は、何とかなるといいな。
「今回の一件を考えると、鬼もかなり焦っているのは間違いない。何しろ今回の件では下弦の壱と上弦の参という、十二鬼月の2人を出してきたんだからな」
鬼舞辻無惨が何故そこまで焦っているのか。
それは当然ながら、俺達の存在があるからだろう。
シャドウミラー、そして神鳴流。
その2つを考えれば、鬼舞辻無惨が焦るような事になるのは当然だろう。
だとすれば、これからより大きな騒動になる可能性もあるな。
それこそ今まで出て来なかった十二鬼月が出て来る可能性も否定は出来ない。
こうなると、俺としては結構頻繁に動く必要がある訳か。
「ふむ、だが……それはこちらにとっても好機ではあるな! まずは、アクセル殿が探知した場所に人を向かわせよう。もしかしたら……」
そこで言葉を止める杏寿郎だったが、その先については納得出来た。
もしかしたら、そこに鬼舞辻無惨がいるかもしれない。
そう言いたかったのだろう。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730