転生とらぶる   作:青竹(移住)

3243 / 4304
3109話

 耀哉の解呪が成功した。

 そう告げると、鬼殺隊……正確にはあまねや輝利哉を始めとした産屋敷家の面々と、その話を聞いてやってきた柱達は当然のように大喜びした。

 当然だろう。夫であり父である耀哉を、そして自分達が心酔しているお館様を失わなくてすんだのだから。

 特に喜んだのはしのぶだ。

 蝶屋敷を任されているだけあって、しのぶは半ば耀哉の担当医的な存在だった。

 それだけに、耀哉がどれだけ呪いによって苦しんできたのか、一番理解していたのだから当然だろう。

 そんな訳で、現在産屋敷家では宴会が行われている。

 

「よかったです」

 

 しみじみと、本当にしみじみとしのぶが呟く声が聞こえてきた。

 

「ただ……少し悔しい思いはありますね。私ではどうする事も出来なかったお館様の呪いを、アクセルさん達はこうもあっさりと治療……解呪でしたか? してしまいました」

「別にあっさりって訳じゃないけどな」

 

 俺の口から出た言葉は事実だ。

 ネギま世界でも屈指の魔力を持つ木乃香が、文字通りの意味で全身全霊の力を使い、それによってようやく解呪に成功したのだから。

 千鶴でももしかしたら……と思っていたが、千鶴の魔力量はそれなりに大きいものの、それでも木乃香には及ばない。

 それはつまり、木乃香が解呪出来なかったら耀哉の解呪は無理だったという事を意味していた。

 勿論、1度で解呪出来なければ、魔力を回復しながら何とか解呪を続けるといった方法もあるので、何とかなった可能性は十分にあったが。

 

「そうなのですか?」

「ああ。耀哉の呪いは、言ってみればこの世界そのものに呪われているんだ。そんな呪いをそう簡単にどうにか出来る筈がないだろ?」

「……では、私がどうにかしようとしても、解呪は無理だったという事でしょうか?」

「そう思う。呼吸で呪いを解呪するなんて真似が出来るのなら、どうにかなったかもしれないが」

「それは、ちょっと難しいですね」

 

 しのぶの様子を見る限り、呼吸で解呪をするといったような真似は難しいらしい。

 そういう呼吸があってもいいと思うんだがな。

 

「アクセル殿、ありがとうございます」

 

 しのぶと話をしていると、不意に行冥が近付いてきて俺に頭を下げてくる。

 以前は盲目だったので、俺の方を見るといったような事をしても微妙に視線の方向が逸れていたりしたのだが。

 そんな行冥は号泣している。

 それこそ身体の水分が全てなくなってもおかしくはないのではないか。

 そう思えるような状況だった。

 行冥と耀哉は純粋に部下と上司というだけではなく、強い信頼で結ばれている。

 とはいえ、これは別に行冥だけではなく柱達の全員が耀哉との間には強い絆があるのだが。

 行冥の場合は、自分も盲目だったからというのが大きいのだろう。

 

「気にするな。鬼殺隊が強くなるのなら、それは俺にとっても悪い話じゃない。耀哉の指揮によって鬼との戦いを有利に進められるのなら、大歓迎だ」

 

 鬼との戦いは鬼殺隊にとって大きな意味を持つ。

 その戦いの指揮を執る耀哉が万全の状態になるのは非常に頼もしい。

 これで耀哉がこの世界に戻ってきて……それで量産型Wやコバッタ、ドロといった鬼滅世界に貸し出されている諸々を十分に使って鬼を倒すといったような事になった場合、それが最善の結果となる。

 猗窩座の心を折る行為も、もう少し増やした方がいいのかもしれないな。

 

「そうですな。お館様が戻ってくれば、鬼に対する攻撃は今まで以上に強まるでしょう」

 

 そう言い、満足そうに頷いた行冥は宴に戻っていく。

 まだ他の柱とも会話をしたいのだろう。

 今日の主役は、ここにはいない耀哉だ。

 しかし、影の主役となるとそれは行冥だった。

 何しろ行冥の義眼の件は、既に全員が知っている。

 鎹鴉が知らせたり、あるいは誰か他の者達から聞いたりといったような感じで。

 だからこそ、行冥が耀哉に続く主役となっていたのだろう。

 

「獪岳の件、そこまで気にしてないのか?」

「いえ、気にしてると思いますよ。ただ、それを表に出さないだけで」

 

 俺の呟きが聞こえたのか、しのぶがそんな風に言ってくる。

 どうやらしのぶも獪岳の件は知ってるらしい。

 

「知ってるのか?」

「はい。ただ、知ってるのは柱だけです。それ以外の人達は知りません」

 

 その言葉に安堵する。

 行冥は鬼殺隊の最高戦力である柱で、多くの者に慕われている。

 そんな行冥を鬼に売ったという獪岳の件が一般の剣士達に知られれば、獪岳は鬼殺隊にいるのは難しくなるだろう。

 もっとも柱の行冥に睨まれているという時点で、鬼殺隊にいるのは難しくなるだろうが。

 

「助かる」

「いえ。……さて、私もそろそろ他の人と話をしてきますね。折角の機会ですし、情報交換をしておきたいので」

 

 そう言い、しのぶが俺の前から去っていく。

 それを見送っていると……

 

「よう、アクセル! 今回は派手にやってくれたじゃねえか!」

 

 天元が嬉しそうに俺に向かってそう声を掛けてきた。

 喜びから、もうかなり酒を飲んでいるのだろう。

 その顔は酔いと……それから興奮によって、赤くなっている。

 

「耀哉の件なら気にするな。俺達にとっても利益があるからこそやったんだ」

「それでもだよ。俺から見ればアクセルが来てから、全てがいいように転がっているような気がする。アクセルは俺達にとって幸福をもたらす人物なんだよ」

「幸福か。……同時に、鬼に対して降伏をもたらすような存在になればいんだけどな」

「く……ははは! 面白い事を言うな。だが、そうだな。そう出来たらいいと思っているし、鬼を全滅させられれば、これ以上面白い事はないだろうな」

 

 いや、俺が言ったのは鬼を降伏させるという意味で、鬼を全滅させるって訳じゃないんだが

 そう思ったが、ここで俺が何を言っても天元はそれを聞かないだろう。

 ましてや、かなり酔ってるようだし。

 うん、取りあえず俺は酒を飲まないようにしておかないとな。

 そんな風に考えつつ天元と会話をし……俺は酔い覚まし――酔ってないが――にその場から離れる事にした。

 

「ちょっと風に当たってくる」

 

 そう言い、一旦産屋敷家から外に出る。

 何人かは俺に興味深そうな視線を向けていたものの、今は宴会の会場から離れる方が先だ。

 外に出ると、空には無数の星が見える。

 隠れ里というのもあるので、星が綺麗に見えるな。

 

「……ふん、アクセルか」

 

 星を見ていると、不満そうな言葉が聞こえてくる。

 声のした方に視線を向けると、そこにいたのは蛇柱の小芭内。

 多分、柱の中で一番俺を嫌っているのは小芭内だろう。

 鬼殺隊に協力はしているのだが、それでもまだ俺を完全に信用してはいないらしい。

 疑り深いのは、そう悪い話ではない。

 だが、疑り深すぎるのはどうかと思う。

 

「小芭内は何で外に来たんだ? わざわざ俺のいる場所に来るって事は何か用件があったのか?」

 

 そんな俺の言葉に、小芭内は視線を向けてくる。

 鋭い視線を向けながら、小芭内が口を開く。

 

「お館様の事は感謝する。もしアクセルがいなければ、お館様はもっと大変な事になっていただろう」

「へぇ……」

 

 小芭内の口から出た感謝の言葉に、少しだけ感心する。

 小芭内が俺を嫌っているのは明らかであるのに、それでも俺に対して感謝の言葉を口に出来るのは驚きだった。

 

「何だ?」

 

 俺が驚きに声を漏らしたのが気にくわなかったのだろう。

 小芭内は苛立ちの籠もった視線をこちらに向けてくる。

 ……小芭内の首に巻き付いている蛇からは、俺に対する敵意は感じられないのだが。

 蛇にとって、俺は敵意を抱く相手ではないのだろう。

 

「いや、何でもない。まさか小芭内に感謝の言葉を言われるとは思ってなかったからな」

「……ふん」

 

 不満そうな様子で鼻を鳴らすと、小芭内はそのまま俺の前から去っていく。

 小芭内にしてみれば、今回の一件は色々と思うところがあるのだろう。

 それでも自分が忠誠を誓う耀哉の呪いが解呪された以上、感謝の言葉を口にしない訳にはいかなかったといったところか。

 そんな小芭内の後ろ姿を見送ると、再び星を見る。

 すると、がさりと音がして……またかと思う。

 とはいえ、柱にしてみれば俺に感謝の言葉を口にするのは当然の事なのだろう。

 そう思いながら視線を向けると、そこには杏寿郎の姿があった。

 

「はっはっは。お館様の呪いが解呪されたとなると、夜空の星も一際美しく思えるな!」

「そうか? ……で、分かってはいるけど、杏寿郎も耀哉の件か?」

「うむ! お館様の呪いを解呪してくれて、感謝する!」

 

 いつものように元気な声でそう告げる杏寿郎。

 

「何人かにも言ったけど、別に気にするな。その件は俺にとっても利益になると思ったからやっただけだ」

「それでも感謝の気持ちを抱くのは当然であろう!」

「……まぁ、感謝をするのなら、俺からは特に何も言ったりはしないけど。ただ、こうして1人ずつ感謝にやって来るのはどうかと思うから、杏寿郎が纏めて感謝しておいたって事にしておいてくれ」

「皆、自分でアクセルに感謝していると思うがな!」

「こうして夜風に当たりながら星を見ているんだ。あまりそれを邪魔して欲しくはないんだよ」

 

 そう言われると、杏寿郎も多少は納得したのだろう。

 

「では、そのように言っておこう!」

「そうしてくれ。……ああ、それと炭治郎の件はどうなった?」

「竈門少年か。彼は……父上とそれなりに友好的な関係を築いているようだな!」

「友好的な関係? 俺が聞いた話によると、炭治郎と杏寿郎の父さんは殴り合いの騒動を起こしたって話を聞いてるが?」

「うむ! それは間違いない! だが、父上は素直ではないところも多くてな! そういう意味では、竈門少年との相性はいいらしい!」

 

 殴り合って友情を築くのか。

 そう思ったが、そういう漫画……俗に言うヤンキー漫画の類が流行るのは昭和や平成に入ってからだ。

 だとすれば、ある意味炭治郎は時代の先取りをしているといったところか。

 

「そうか。それは何よりだ。それで、ヒノカミ神楽については何か分かったのか?」

「うむ! 父上から聞いた話によれば、ヒノカミ神楽というのは日の呼吸……呼吸の中でも大元とも言える呼吸らしい!」

「火?」

「違う、日……日中という意味での日だ! 言ってみれば太陽の呼吸と呼んでもいいな!」

「日の呼吸か。だから杏寿郎の呼吸は炎の呼吸で、火の呼吸じゃなかったんだな?」

「うむ!」

 

 俺の言葉に元気一杯といった様子で返事をする杏寿郎だったが、それで何で喜ぶんだ?

 その辺については、俺も特に何かを言ったりする必要はないか。

 杏寿郎が喜んでいるのなら、それはそれでいいし。

 

「で、その日の呼吸というのは強いのか?」

「強い! ただし、それはあくまでも竈門少年が日の呼吸を使いこなせればだがな!」

 

 炭治郎が主に使うのは、水の呼吸だ。

 鬼殺隊の中でも最も使い手の多いと言われている呼吸。

 それだけに、今の状況ではまだその日の呼吸を使いこなせていないという事なのだろう。

 

「他の呼吸なら育手がいる。けど、炭治郎しか使えないのなら、日の呼吸は自分だけで訓練をするしかないのか。……ちなみに柱の中には独自の呼吸の使い手もいるけど、そういう連中の助言は役に立たないのか?」

「難しいというのが正直なところだ! 独自の呼吸を使っている者はいるが、その呼吸は結局のところ日の呼吸の派生の更に派生といった感じだ」

 

 そう言い、杏寿郎は例を挙げる。

 炭治郎の使っている水の呼吸から、蛇の呼吸と花の呼吸が派生し、花の呼吸からは蟲の呼吸が派生している、というように。

 ……水から花、蟲というのは分かるけど、何で水から蛇?

 多分呼吸の事だけに、俺には分からない何らかの法則とかがあるんだろう。

 

「このような例とは違い、竈門少年の日の呼吸は呼吸の大元だ。それだけに独自の呼吸を使っている者達にとっても、日の呼吸について教えるのは難しいのだ」

 

 その事に悔しさがあるのだろう。

 杏寿郎の言葉は、いつものような元気がない。

 

「日の呼吸について教えるのは無理でも、炭治郎を鍛える事は出来るだろう?」

「無論だ!」

 

 そう叫ぶ杏寿郎。

 杏寿郎にしてみれば、せめてそれだけは……といった感じか。

 とはいえ、炭治郎はエヴァに鍛えられ、元炎柱の杏寿郎の父親に鍛えられ――これは正確には違うかもしれないが――ている。

 そう考えれば、ここで更に杏寿郎に鍛えられるといったようなことになった場合、一体どうなるんだろうな。

 勿論、それは炭治郎がその特訓に耐えられればの話だが。

 

「なら、炭治郎を鍛えるのを頑張ってくれ」

 

 この世界の主人公だろう炭治郎だけに、恐らく将来的には鬼舞辻無惨と戦う事になる。

 いや、鬼舞辻無惨だけではなく、十二鬼月と戦う事になってもおかしくはないだろう。

 それだけに、炭治郎には時間のある今のうちに出来るだけ強くなって欲しかった。

 炭治郎にしてみれば、今はまさに地獄の毎日だろう。

 それは分かっているが、それを承知した上でも出来るだけ頑張って欲しいと思うのは当然だ。

 

「うむ! 任せておけ!」

 

 俺の言葉に、元気一杯に杏寿郎が叫ぶのだった。




アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1730

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。