育手というのは、文字通りの意味で鬼殺隊の剣士を育てる者だ。
基本的には元柱、あるいは柱には及ばなくても相応の実力者がなるらしい。
そして鬼殺隊というのは、いつでも人手は限界ギリギリだった。
……そう、しかしそれはあくまでもシャドウミラーと鬼殺隊が接触するまでの話なのだが。
量産型Wやドロ、そして何と言っても神鳴流。
そのような者達が戦力として数えられるようになったおかげで、育手も今までよりは忙しくなくなった。
とはいえ、そうなればそうなったで、育手が現在育てている剣士の卵達をもっとしっかり、じっくりと育てるという方面に向かうのだが……そんな中でも、俺達にとって育手は重要な人物だった。
何しろ俺達が鬼殺隊に協力している理由のうち、育手を借りるという条件があったからだ。
鬼殺隊にとっても、育手というのは重要な意味を持つ。
それだけに、そう簡単に俺達に貸す訳にはいかなかったのだが……それがようやく貸し出される事になった。
「紹介します。鱗滝左近時さんと、桑島慈悟郎さんです。それぞれ元水柱、元鳴柱という方達で、アクセルさんとも縁のある方ですよ」
輝利哉の紹介に、まず最初に動いたのは鱗滝。
天狗のお面を被った老人と思しき人物が俺に頭を下げてくる。
「鱗滝左近時と申す。アクセル殿には、炭治郎や禰豆子、義勇が世話になっていると聞きます」
言葉遣いが丁寧なのは、元からそういう言葉遣い……いや、違うな。次期産屋敷家当主の輝利哉の前だからというのもあるし、炭治郎や禰豆子の件があるからだろう。
義勇に関しては、正直俺はそこまで世話をした覚えがないんだが。
ただ……うん。育手なのはいいんだが、何で天狗のお面を被ってるんだ?
刀鍛冶達もひょっとこのお面を被っていたが、鬼殺隊ではお面が流行っていたりするのか?
「炭治郎は真っ直ぐでいい性格をしている。それに……もしかしたらだが、大元の呼吸である日の呼吸を使えるかもしれない、鬼殺隊の中でも最重要人物の1人だ。そして人を食わない鬼の禰豆子は、鬼という点で炭治郎よりも重要度が高いかもしれない。義勇は……まぁ、俺はあまり話した事はないけど、この世界に来た時に遭遇したのが義勇としのぶだったから、鬼殺隊と友好的な関係を築けたんだ」
もし俺が最初に遭遇したのか義勇やしのぶではなく、小芭内や実弥であった場合、シャドウミラーと鬼殺隊は敵対関係になっていた可能性も否定は出来ない。
あるいは鬼と協力……いや、これはないな。
鬼にとって人間は食い物という認識だ。
そうである以上、この世界は最悪シャドウミラー、鬼殺隊、鬼の三つ巴での戦いになっていた可能性がある。
そうなれば、恐らく最終的にシャドウミラーの1人勝ちになっていただろう。
いやまぁ、そうなれば鬼殺隊を倒すのはともかく、神出鬼没の鬼の対処が遅れるだろうが。
そう考えると、もし最初敵対しても最終的には手を結んでいた可能性があるのか。
ただしその場合、鬼殺隊はシャドウミラーとの衝突で結構な損害を受けていた可能性がある。
例え呼吸を使えたとしても、バッタやメギロート、イルメヤといった無人機を相手にしてしまえば、対処するのは難しい。
そのような最悪の状況にならなかったのは、義勇としのぶのおかげなのは間違いない。
「そう言って貰えるのはありがたいです」
再び頭を下げる鱗滝。
そして鱗滝がそのまま後ろに下がると、次に前に出て来たのは桑島。
鱗滝に負けない程……いや、鱗滝以上に頭を下げる。
「アクセル殿。あなたのお陰で……お陰で……」
涙を流し、それ以上は何も言えなくなる。
行冥じゃないんだから。
そんな桑島を見て、これ以上言葉を続けられないと思ったのか、輝利哉が口にする。
「桑島さんは、アクセルさんがよく一緒にいる善逸さんや、その……」
そこで言いにくそうにしている輝利哉だったが、何となくその言葉の意味が理解出来た。
善逸の師匠であるという事は、当然ながら善逸の兄弟子でもある獪岳の師匠でもある。
そしてこの様子からすると、獪岳と行冥の間にある因縁についても既に知っているのだろう。
桑島にしてみれば、まさか獪岳にそんな過去があるとは思ってもいなかったといったところか。
「話は分かった。けど、その辺についてはあまり気にする必要はない。俺にとっても色々と予想外ではあったが、それでも結果的に大きなプラスになったのは間違いないんだから。ただ……それでも恩を感じてくれているのなら、シャドウミラーの面々に呼吸を教えるのを頑張ってくれ」
育手の中で鱗滝がやって来たのは、勿論水の呼吸の使い手だからというのが大きい。
鬼殺隊の中で最も多い呼吸が、水の呼吸なのだ。
それだけに、当然のように水の呼吸を覚えられる者は多いだろうと思ったのだ。
桑島は……こう言うのもなんだが、今回の件を聞いて自分から進んでやってきた。
善逸から聞いた話によると、随分と昔気質な性格をしているらしい。
その為に、善逸や獪岳の件の恩返しをする為にやって来たのだろう。
雷の呼吸は使いこなすのがかなり難しいらしいが、使いこなせばかなりの強さを持つ。
特に速度という点では呼吸の中でもトップクラスらしいし。
とはいえ、その辺は個々の実力差もあるので、絶対とは言えないのだが。
「全力で当たらせて貰います」
「出来る限りの事はしましょう」
鱗滝と桑島の2人が揃って俺に頭を下げてくる。
さて……そうだな。ホワイトスターに行く前に、まずはこの辺を聞いておくか。
「2人共、見てくれ」
そう言うと鱗滝と桑島が俺の方に視線を向けてくる。
その視線を感じながら、腕を白炎にする。
『っ!?』
この光景は予想外だったのか、揃って驚く2人。
「見ての通り、俺は人間じゃない。精霊……いや、この世界だと何て表現すればいいんだ? 妖怪? それだと鬼だしな。妖精? ちょっと違うか。……とにかく、人間ではない。それでも呼吸を習得する事は出来るか?」
その質問に、鱗滝と桑島はお互いに視線で意思交換し……やがて鱗滝が口を開く。
「恐らく難しいでしょう」
結果的に鱗滝が口にしたのはそんな内容だった。
予想はしていたので、特に驚いたりがっかりしたりはしなかったが、それでもやはりかという思いはある。
「一応聞いておくが、それは俺が人間ではないからか?」
「はい。呼吸はあくまでも人の使う技。そうである以上、人ではないアクセル殿が呼吸を習得するのは無理かと」
その言葉を聞いて納得すると同時に、ふと思う。
「なら、鬼はどうなる? 鬼が呼吸を使えるという事はないのか?」
一般人が鬼になっただけでも、その身体能力は非常に高くなる。
それこそ、呼吸を使える相手と正面から戦えるくらいに。
そんな鬼が呼吸を使えたら、もの凄い強さになるのは間違いない。
「鬼が……呼吸を……? 正直なところ分かりません。しかし、鬼は元人間である以上、人間の時に呼吸を習得していれば、使えるかもしれません。また、鬼は身体構造そのものは人と違いがありません。であれば、鬼が呼吸を使えてもおかしくないかと」
なるほど、確かに鬼の身体の作りは人間と違いない。
白炎で構成されている俺の身体と比べれば、間違いなく鬼の身体の方が人間に近いだろう。
であれば、俺が呼吸を使えないというのは間違いないし、同時に鬼が呼吸を使える可能性があるのも事実か。
「もし鬼が呼吸を使える場合、それはかなりの強さを持つよな?」
「どうでしょう。その者の才能にもよりますから」
つまり人間であった時にどれくらい呼吸を使いこなせているか。もしくは、鬼になってからも呼吸の訓練をしっかりしている者なら強くなるのか。
そうなると、鬼というのはかなり有利だよな。
猗窩座を見れば分かるように、鬼になれば不老となる。
その状態のままで延々と訓練をする事が出来るのだから、年を取る人間に比べれば圧倒的に有利だ。
だからこそ、猗窩座は俺に鬼になれとか言ってきたのだろう。
とはいえ、問題なのは鬼になるとかなり享楽的な性格になる。
そんな性格でまともに訓練をしたりといったような真似が、果たして出来るかどうか。
考えられる可能性としては……
「俺は上弦の参の鬼と何度か戦っている。その上弦の参……猗窩座は、鬼になってもしっかりと訓練を重ねている奴だった」
言ってみれば、ムラタ的な性格。
自分が強くなるのが優先されており、だからこそ鬼になっても延々と訓練を重ねる事が出来るのだ。
「つまり、上弦の参よりも上位の鬼の中に呼吸を使う鬼がいると?」
鱗滝のその言葉は、出来れば信じたくないといった様子だった。
実際、鱗滝にしてみれば呼吸を使う鬼というのは考えたくないのだろう。
「あくまでも可能性だ。もしかしたら猗窩座みたいに呼吸以外の訓練を重ねていた奴とか、もしくは全く違う理由で強い奴とか、才能だけで上にいる……といったような奴がいてもおかしくはないし」
今度猗窩座に遭遇したら、その辺を聞いてみてもいいかもしれないな。
鬼舞辻無惨の情報は何も言えなくなっているようだったが、それ以外の十二鬼月についての情報となれば、それなりに知っていてもおかしくはない。
「なるほど。それは正直なところ予想外でしたね。ですが、可能性がある以上は考える必要があります」
俺と鱗滝の会話を聞いていた輝利哉が、そんな風に言う。
輝利哉にしてみれば、もし俺の言ったように鬼が呼吸を使うとなると、色々不味いというのは十分に理解出来ているのだろう。
だからこそ、今回の一件は後で対策を練る必要があると考えているらしい。
……耀哉辺りなら、その可能性は十分に理解していてもおかしくはないんだが。
「ともあれ、いつまでもここで話している訳にもいかない。そろそろ育手の2人をホワイトスターに連れていくことにするけど、問題はないよな?」
「はい。……色々と大変かもしれませんが、頑張って下さい」
輝利哉の言葉の後半は、明らかに育手の2人に向かってのものだった。
ホワイトスターはそこまで言う程に大変な場所か?
いやまぁ、俺にとっては普通の場所だが、大正時代の……それも鱗滝達は老人だ。
……いや鱗滝は天狗のお面を被ってるからしっかりと顔を見ることは出来ていないのだが。
ただ、それでも柱を引退して育手になったという事を考えれば、若くはないだろう。
そんな風に思いつつ、俺はホワイトスターに向かう準備をするのだった。
「ここが……ホワイトスター……」
ホワイトスターの交流区画をバスで進んでいると、窓から見える景色に桑島が唖然として呟く。
鱗滝も声には出していないものの、窓から見える景色に驚きを隠せていない。
大正時代の鬼滅世界からホワイトスターにやってきたのを考えると、このような状況になってもおかしくはないと思うが。
以前柱達が来た時も、同じように驚いていた。
それを考えれば、今のこの状況はある意味で当然なのだろう。
とはいえ、バスもいつまでも走っていられる訳ではない。
目的の場所に到着すれば、当然ながら停まる必要がある。
「そろそろ目的地に到着するから、降りる準備をしてくれ。世話役として量産型Wをつけるから、何か分からない事があれば量産型Wに聞けば分かると思う」
そう声を掛けるが、俺の声が聞こえているのかどうか。
それでもバスの速度が遅くなってくれば、やがて鱗滝達もそのことに気が付く。
「お前達の住居に到着したから、降りてくれ」
育手として、シャドウミラーの面々に呼吸を教えるという事は、当然ながらホワイトスターで訓練をする必要がある。
毎日のように鬼滅世界から通ってくる事も不可能ではないだろう。
だが、それでもホワイトスターに住んだ方がいいのは間違いない。
それに鬼滅世界から通うとなると、鬼殺隊の隠れ里に住む必要があるし。
あ、でも炭治郎や善逸にしてみれば、そっちの方が鱗滝や桑島に会えるからいいのか?
……まぁ、炭治郎はともかく、善逸は桑島に会っても本心はともかく、表向きは嫌そうにしそうだが。
でもエヴァの訓練をやってると考えれば、今はもう逃げなくてもいいのか?
善逸が桑島の下にいる時に逃げようとしていたのは、あくまでも訓練が厳しかったからだって話だし。
ともあれ、それ以外にも理由は諸々あるものの、育手の2人にはホワイトスターで暮らして貰う事になる。
人はともかく、混沌精霊の俺が呼吸を覚えるのが無理となると、量産型Wやエルフとかってどうなんだろうな。
エルフはともかく、量産型Wは呼吸を覚えると全ての個体が呼吸を使えるようになるので、大きな意味を持つんだが……ちょっと難しそうな気がするな。
何しろ量産型Wは純粋な人というか、人型の機械と呼ぶべき存在なのだから。
とはいえ、ガンドのような魔術やネギま世界の魔法とかも使えるようになっているのを考えると、もしかしたら……本当にもしかしたらといったように思ってしまうのは仕方がなかったが。
自分達が住む場所を見て驚いている2人の育手を見て、俺はそんな風に思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730