五飛を連れて鬼滅世界にやって来た俺は、取りあえず産屋敷家に行く事にした。
先遣隊でも何でもない、本当にイレギュラーな五飛を連れて来たのだ。
輝利哉やあまねといった面々に話を通しておく必要があるのは当然だろう。
そんな訳で産屋敷家に来たのだが……
「何だ、この不気味な壺は」
輝利哉に会いたいと言ったところ、俺と五飛はすぐに輝利哉のいる部屋に通されたのだが、その部屋には俺が口にしたような不気味な壺としか表現出来ない壺が置かれていた。
「やっぱりアクセルさんにも不気味に思えますか? 実はこれ、神鳴流の剣士の方が街中で見つけて、少し無理を言って買ってきた物なんですが……」
「何でまたこんな壺をわざわざ?」
「これを買ってきた神鳴流の剣士の方が言うには、この壺には妖気? 鬼気? とにかくそういうのがあるらしいです。正直僕には分からないんですが」
「へぇ……その辺はさすが神鳴流といったところか」
妖怪を倒す為に続いてきた剣術である以上、その手の気配には鋭いのだろう。
俺が見ても、この壺はどこか不気味な印象を受ける……生理的な嫌悪感とかまではいかないが、とてもではないが愉快な気持ちになれないのは事実だ。
だが、世の中にはそういうのを熱狂的に好む者がいる。
100人の大半がそれにNoと言っても、そんな中の数人はそれにYesと言う。
そしてその数人の中の更に1人か2人は、多くの者がNoと言う物に対して熱狂的なまでに熱中したりする。
そういう意味で、この壺は見る者が見ればしっかりとした芸術品に思えるのだろう。
「そうですね。鬼殺隊は……僕が言うのも何ですが、鬼を殺す事に特化しすぎています。もし鬼殺隊の剣士がこの壺を見ても、こうして持ってくる事はなかったでしょう」
鬼殺隊の剣士はその大半が鬼に恨みを抱いている。
そういう意味では、鬼を殺す方向に特化するのは当然だろう。
中には嗅覚が鋭い炭治郎や聴覚が鋭い善逸といった例外もいるが……例外というのは、数が少ないからこそ例外なのだ。
「それで、神鳴流が持ってきたという事は、この壺は鬼が関係していると思ってもいいのか?」
「まだ可能性の段階ですが」
「鬼が壺か。……どう思う?」
鬼と壺が微妙に合わないような気がした俺は、同行者の五飛に尋ねる。
だが、五飛は急に俺にそんな事を聞かれても、分かる筈がない。
「俺にそんな事を聞いても、分かる訳がないだろう」
「アクセルさん、そちらは?」
「シャドウミラーの実働班に所属している五飛だ。現在呼吸の訓練をしてるんだが、今のところその呼吸が上手く習得出来ないらしくてな。そのヒントをどうにかして掴もうと、鬼滅世界にやってきたんだ。それで話を通しておこうと思って来たんだが」
「なるほど。アクセルさんが問題ないと思うのでしたら、僕は構いません」
そう言って輝利哉はあっさりと許可を出してきた。
まさかここまであっさりと許可を出すとは思わなかったが。
それだけ俺を信頼してるという事なのだろう。
シャドウミラーとの間に強い結びつきを得たいという思いもあるのだろうが。
「そうか。悪いな」
「感謝する」
俺の言葉に続くように、五飛が輝利哉に向かって感謝の言葉を口にする。
五飛にしてみれば、壺よりも鬼と戦う方が大きな意味を持ってるように思えるのだろう。
それは俺にも分かる。
だが、神鳴流がこの壺を見つけてきたというのは、大きな意味を持つのも事実だ。
「で、この壺を持ってた奴は鬼と何か関係があったのか?」
「いえ。聞いた話によると、とある貿易商から特別に売って貰ったらしいです」
「貿易商……?」
その言葉は俺にとってもかなり予想外だった。
何しろ貿易商から売って貰ったという事は、それはつまりこの壺が本格的に売られているという事なのだから。
それも貿易商となると、その対象は当然ながら外国になる。
鬼の作っている壺を海外に売ってるのか?
うん、まぁ……鬼もこの世界で暮らしている以上は、金が必要になる事もあるだろう。
鬼ならそのまま欲しい何かは奪ってしまえばいいのでは? と思わないでもなかったが、それでも金で解決するのが最善なのは間違いない。
「つまり、その貿易商は鬼に協力してるのか?」
まさか鬼が貿易商をやっているとは思わない。
商人は普通なら日中に行動する必要があるのだから。
しかし、当然ながら鬼が日中に表に出るような真似は出来ない。
そうなると考えられるのは、鬼に協力している人間がいるという事になる。
「だが、そのような者がいるのか? 鬼というのは人を食うのだろう?」
五飛のその言葉は、俺にも十分納得出来るものではある。
だが、輝利哉はそんな五飛の言葉に首を横に振って否定した。
「世の中には鬼を崇めている者もいます。特に山奥のような、外界との接触が断たれているような場所で、そのような例は多いですね」
「そのような者が……?」
W世界出身の五飛にしてみれば、輝利哉のその言葉はとてもではないが信じられないのだろう。
W世界は鬼滅世界よりも圧倒的に発達しており、コロニーに住む者も多い。
その結果として、鬼を崇めるような者は五飛には理解出来ないのだろう。
「シャドウミラーの方には少し分かりにくいかもしれませんが、そういう場所もあるのですよ。……話が若干逸れましたが、現在その貿易商を調べています。鬼と繋がりがあるのなら、何とかして対処する必要があります」
「何とかと言ってもな。貿易商がしっかり行動している以上、対処するのは難しいと思うぞ。鬼殺隊が公の組織なら貿易商への対処も出来るだろうけど……可能性としては、それこそ法を無視して直接攻撃をするといったような真似しか出来ないんじゃないか?」
これが公の組織なら、国家権力を使って貿易商に対処する事も出来るんだろうが。
「その辺はもう少し考えて見ます。父上が戻ってきたら相談しようかと」
「そうした方がいい。……ああ、話すのは忘れてたが、そろそろ耀哉の義眼の移植手術が行われている頃だと思うぞ」
「そうですか。……大丈夫ですよね?」
「移植手術が大丈夫かどうかと言われれば、大丈夫だと断言出来る。レモンが手術をするんだからな」
俺の口から出た言葉に、輝利哉は安堵の息を吐く。
輝利哉にしてみれば、父親の義眼の手術はかなりの重要事だから当然だろうが。
「そうですか。……出来るだけ早くこちらに戻ってこられればいいんですが」
「耀哉もそのつもりで必死になって義眼を身体に慣らすだろうな。まぁ、耀哉の場合は行冥の時とは違って、それなりに早く戻ってこられると思うが」
行冥の場合は、ただ義眼を使いこなすだけではない。
鬼殺隊の柱として、十分な戦闘力を手に入れる必要があった。
義眼を使っての戦闘は、特に今まで目が見えない状態で戦ってきた以上、それを身体に慣らすという行為が必要となる。
そんな行冥に比べれば、耀哉は基本的に敵との戦いを行ったりはしない。
その分、リハビリが早く終わるのは当然の事だった。
とはいえ、耀哉の義眼は行冥とはまた違った意味で扱いが難しい。
相手の攻撃を予測出来るのだから、それを使いこなすのはそれなりに大変なのは間違いなかった。
「ともあれ、その貿易商は隠に調べさせる予定です」
「そうか。……さすがにそういうのだと、俺達の出番はないな。まさか量産型Wを送る訳にもいかないし」
頭部の問題でどうしても目立ってしまう量産型Wは、調査とかそういうのには全く向いていない。
これがホワイトスターとかなら、コバッタとかを使って偵察とかも出来るんだが、大正時代の鬼滅世界ではそんな真似は出来ない。
一応気配遮断のスキルを持っている俺なら、偵察が出来ない事もないんだが。
「そう何でもシャドウミラーに頼る訳にはいきませんよ。僕達で出来る事はやらないと」
「そうか。じゃあ、頑張ってくれ。……にしても、まさか壺から鬼に辿り着くというのはちょっと予想外だったな」
「あはは。そうですね。神鳴流の人達でなければ、これを見つける事は不可能だったでしょう。……そう考えると、この件もシャドウミラーに頼ってるんですね」
「いや、俺達は神鳴流との間を仲介しただけで、実際には神鳴流はネギま世界の勢力だぞ」
神鳴流をシャドウミラーの部隊の1つとでも勘違いしているのかとも思ったが、輝利哉は俺の言葉を聞いて頷く。
「勿論それは分かっています。それでもシャドウミラーの仲介がなければ神鳴流の方々を雇うような真似は出来ませんでしたから」
「そういう意味で感謝をしているのなら、まぁ、納得しておくか。……さて、五飛。行くぞ」
そう言い、俺は五飛と共に産屋敷家から立ち去るのだった。
「アクセル、先程の話だが」
鬼殺隊の隠れ里を見て回っていると、不意に五飛が口を開く。
一体何だ? と思ったが、すぐに輝利哉と話していた件だと納得する。
「壺の件か?」
「そうだ。俺がホワイトスターで聞いた話によると、鬼というのはかなり攻撃的な連中だと聞いた。そうである以上、その鬼が商売をするとなると……」
「十二鬼月の可能性が高いだろうな」
問題なのは、どのくらいの相手なのかだ。
例えば、これが純粋に強さを誇っている相手なら猗窩座との力量差から大体の地位は分かる。
だが、商売となると……かなり頭のいい鬼なのは間違いない。
純粋に鬼らしい鬼という訳ではなく、軍師系のタイプなのかもしれないな。
それはそれでかなり厄介な存在ではあるのだが。
「なら!」
「駄目だ」
五飛が何を言いたいのかは、俺にも分かる。
五飛にしてみれば、鬼と戦って呼吸を使えるようになりたいと、そう思っているのだろう。
だが、そのような真似はそう簡単に出来ることではない。
何よりも、今の五飛は鬼と戦っても……まぁ、勝てるだろうが、それはあくまでも気を使った攻撃だからであって、呼吸を使ってではない。
それ以外にも、日輪刀を持っていないのは痛いしな。
……いっそ金ぴかから奪った宝具の1つでも貸すか?
そうも思ったが、それだと結局武器に頼っての勝利でしかない。
それに相手が普通の……という表現も変だが、その辺にいる鬼なら俺もそこまで気にするような事はなかっただろうが、相手が十二鬼月の可能性が高いとなると、話は変わってくる。
特に知力の高い奴だと、正面から戦うといった真似をしない可能性もあるし。
「ぐ……」
「代わりにという訳じゃないが、これから蝶屋敷に連れていってやるよ」
「蝶屋敷?」
「ああ。この世界で俺が眼を掛けている奴がそこで暮らしている。今の時間を考えると……エヴァとの訓練をしてるのかもしれないな」
「エヴァ……か」
一瞬、本当に一瞬だったが、五飛の顔が歪む。
どうやら五飛にとってもエヴァとの訓練は相応に厳しいものだったらしい。
「どうする? 止めるか?」
「そのつもりはない。行く」
あっさりとそう告げる五飛に、俺は自分達が向かっている先を指さす。
五飛と話しながらも移動していたその先は、それこそ俺が先程口に出した場所……蝶屋敷だったのだから。
「アクセル……」
不満そうな表情を浮かべる五飛。
俺に上手い具合に掌で転がされたと、そのように思ったのだろう。
俺にしてみれば、別にそんなつもりはなかったんだが。
ただ単順に、五飛なら最終的に蝶屋敷に行くだろうと、そう判断しての行動。
そうして蝶屋敷に近付いて来ると、まだ敷地内に入っていないにも関わらず、模擬戦の気配を感じる。
「どうやらやってるみたいだな。見ていくだろう? 呼吸を使ってエヴァと戦ってる連中の姿を見学することが出来るぞ」
「行くぞ」
即座に返事をし、五飛は蝶屋敷に近付いていく。
そうして中に入っていつも訓練をしている場所に行くと……
「へぇ」
ちょうど俺が姿を現した瞬間、炭治郎が氷の矢をヒノカミ神楽……いや、日の呼吸か? ともあれ、それによって斬り捨てたところだった。
以前見た時は、氷の矢からは逃げるといった真似しか出来ていなかったと思うんだが。
そう考えると、この短期間でかなり実力が上がったな。
……当然か。
エヴァに鍛えられ、元炎柱の杏寿郎の父親に鍛えられ、現炎柱の杏寿郎にも鍛えられている。
そこまでされており、炭治郎はこの世界に主人公として高い潜在能力も持つ。
そう考えると、短時間で一気に強さが上がってもおかしくはない。いや、寧ろ当然か。
「これは」
五飛も炭治郎の動きに感心した様子を見せる。
勿論、もし五飛と炭治郎に戦ってみろと言った場合、勝つのは五飛だろう。
シャドウミラーの生身の戦闘訓練というのは、そんなに甘いものではないのだから。
しかし、それでも五飛は今の炭治郎を見て何か思うところがあったらしい。
「それなりに光るものはあるだろう?」
鬼滅世界の主人公というのもあってか、炭治郎の才能は非常に高い。
それに努力するといった事を厭わないので、その成長速度は間違いなく一級品だろう。
将来的には柱になってもおかしくないだけの才能があるのは間違いなかった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730