「おらああああああっ! 猪突猛進、猪突猛進、猪突猛進!」
「ふんっ、甘いな」
伊之助が突っ込んでいった動きを、五飛はあっさりと回避し、足を引っ掛ける。
ただし、その足を引っ掛けるというのもただ足を伸ばしただけでは、伊之助は野生の勘で回避する。
いや、それどころか伸ばした足を踏みつけるといったような真似をしてもおかしくはなかった。
それでも五飛は伊之助の足をあっさりと引っ掛けて転ばせることが出来るのだ。
とはいえ、それも当然の話だろう。
伊之助は呼吸こそ使っているものの、戦闘そのものは独学に近い。
しっかりと誰かに戦い方を習ったりしていないのだから。
……そういう意味では、しっかりと育手によって鍛えられた炭治郎や善逸と互角にやり合えている時点で非常に高い才能を持っているのは間違いないのだろう。
しかし、そんな伊之助だからこそしっかりと訓練を詰んできた五飛には敵わない。
五飛の習得している、いわゆる中国武術というのは数千年もの間磨き抜かれてきた武術なのだ。
ましてや、W世界においてはコロニーで生活するようになっても、しっかりと鍛え続けていた。
それだけに、五飛と伊之助では引き出しの量が違いすぎる。
勿論野生の獣のように戦う伊之助だけに、武術を習ってきた者には思いも寄らない行動をする可能性もあったのだが。
「先生……またとんでもない人を連れて来ましたね……」
五飛と伊之助の戦いを見ていた善逸が、しみじみといった様子でそう言ってくる。
これで五飛が男ではなく女なら、間違いなく喜んでいたのだろうが。
「言っておくが、無理に連れてきたんじゃないぞ。五飛がこの世界に来たいと言って、それで俺が渋々連れてきたというのが正しい」
「あの様子を見ると、そんな風に思えますけどね。それで、あの人はどうするんですか? もしかして、師匠みたいに毎日こっちに来て鍛えるとか……?」
「いや、そんな事はないな。五飛は他人を鍛えるよりは自分を鍛える方を優先するような奴だし」
自分を鍛えるという意味では、五飛が自分よりも弱いが呼吸を使える相手と戦うのは悪い話ではないと思うんだが。
「そうですか」
俺の言葉に善逸は安堵した様子を見せるのだが……
「そこで喜んでいていいのか? 炭治郎はエヴァや杏寿郎、杏寿郎の父親から鍛えられているし、伊之助は見ての通り五飛であっても、誰であっても正面から戦いを挑んでいる。それに比べると、善逸はエヴァだけとしか訓練をしていないよな?」
「それは……」
「お前は女にモテたい為に、強くなりたかったんだよな? なのに、その強さを求めないというのはどうなんだ?」
その言葉に、善逸は少しショックを受けた様子を見せる。
善逸が本気で強くなろうとしているのは分かるのだが、それでも今の状況を思えば自分が強くなるのを最優先にする必要があった。
「強くなりたいという気持ちが薄れていた……?」
「どうだろうな。その辺の本当のところは結局お前じゃないと分からないと思う。善逸が自分でそう思うのなら、そうなんじゃないか? 女にモテたいのなら、自分で努力をするんだな」
善逸をどうにかするとなれば、やはり女にモテるというのを使った方がいいよな。
こうして見たところ、善逸はやる気に満ちているのは分かる。
今後の事を思えば、善逸達には強くなって貰わないといけない。
汽車の件が終わってからは、特に騒動らしい騒動はない。
だが、遊郭の一件や、鬼が関係していると思われる壺を扱っている貿易商。
その辺の状況を考えれば、事態は密かに……だが確実に動いているのは間違いない。
それが分かっているからこそ、俺としても善逸達には強くなって貰う必要がある。
この世界の原作において、今の状況で炭治郎、善逸、伊之助達が具体的にどのくらいの強さを持っていたのかは分からない。
分からないが、それでも今の状況を考えれば原作よりも弱いという事はない筈。……ないと思う。……ないといいな。
原作知識がないと、こういう時に困る。
ただ、エヴァという師匠がいるのを考えると、この時点で原作よりも弱いということはないと思うんだが。
あ、でも汽車の一件で俺が猗窩座と戦ったのは、炭治郎達の強さに影響しているのかもしれないな。
もしかしたら、本当にもしかしたらの話だが、原作では炭治郎達が猗窩座と戦い、それによって実力を伸ばしていた可能性がある。
とはいえ、猗窩座は上弦の参だ。
それを考えれば、さすがに炭治郎達が勝てるとは……ああ、でも杏寿郎がいたのを思えば……待て。そもそも杏寿郎が調べる件に炭治郎達を連れていくといった事にしたのは、俺がそう主張したからだ。
だとすれば、もしかしたら原作では炭治郎があの汽車の一件に関わるような事はなかったのか?
「先生? どうしました?」
「いや、善逸達には少しでも強くなって欲しいと思ってな。……言っておくが、お前がモテるモテないというのは全く関係ないぞ。ただ純粋に、これからの鬼との戦いを考えての事だ」
「え? ちょっと待って下さい先生。先生がそんな風に言うって事は、もしかしてあの汽車の時みたいな一件がまたあるって事じゃないですよね!?」
「どうだろうな。可能性はある。……俺が知ってる限りだと、現在鬼殺隊は2つの件を調べている。とはいえ、それはあくまでも俺が知ってる件だけであって、俺が知らない事も色々とあるだろうが」
遊郭と貿易商に関しては、俺が多少なりとも話を聞いたからこそ、それを鬼殺隊が調べていると理解出来るが、俺が知らない何かを鬼殺隊が調べている可能性は十分に理解出来る。
そもそもの話、シャドウミラーと鬼殺隊は協力体制にあるが、だからといって自分達の組織の秘密を全て言わなければならないという訳ではない。
もしそんな事になったら、それこそシャドウミラーの秘密は一体どれだけ教えればいいのやら。
「そう、ですか。それで、先生が知ってる2つが危険だと判断したんですか?」
「ああ。それこそ汽車の一件のような大きな騒動になってもおかしくないくらいにな」
「それって……冗談ですよね?」
冗談であって欲しいと心の底から思っている様子で善逸が尋ねてくるが、俺は首を横に振る。
「片方はともかく、もう片方は間違いなく十二鬼月が関わっていると思う」
遊郭の方は女が行方不明になっているという事から、普通の鬼の可能性がある。
だが、壺は……鬼が貿易商に関わっているのだ。
貿易をして金儲けをしている鬼である以上、明らかに普通の鬼とは違う。
そうである以上、その鬼は十二鬼月の可能性が高い。
下弦と上弦のどちらかは分からないが、上弦の鬼だった場合は猗窩座級の敵がやって来る可能性も否定は出来ない。
「そんな、本当ですか!?」
善逸が驚きの声を発する。
下弦の壱を倒し、上弦の参を直接自分の目で見ているのを思えば、善逸がそんな声を発するのは納得も出来るのだが。
「あくまでも可能性としてだが、十分に高いと思う。そういう戦いに巻き込まれる事を考えれば、鍛えておいた方がいいだろうな」
本来ならまだ下っ端の炭治郎達がそういう大きな戦いに関わる必要はないのだが、主人公だけに巻き込まれそうなんだよな。
そして炭治郎が巻き込まれれば、当然ながら炭治郎の仲間の善逸達も巻き込まれるだろう。
実際には、蝶屋敷を拠点にしながらも炭治郎、善逸、伊之助の3人がそれぞれ別に依頼を受けるというのも珍しい話ではないらしいのだが。
「戦いに……分かりました。今までよりも真剣に訓練します」
訓練はいつも真面目にやれよ。
そう思ったが、何も言わない。
……ただし、離れた場所でお茶を飲みながら伊之助と五飛の戦いを見ていたエヴァは、その口元に獰猛な笑みを浮かべていたが。
善逸の未来が無事である事を祈ろう。
そんな風に思うのだった。
「で、伊之助との戦いはどうだった? 伊之助は獣の呼吸とやらを使えるらしいけど」
「よくわからん。だが……伊之助か。あいつは妙に回避能力が高いな」
蝶屋敷から離れ、俺と五飛は会話をしながら歩く。
だが……伊之助の回避能力が高い?
俺としては特にそんな印象を持ってはいなかったんだが。
「あくまでも俺の印象だが、攻撃をしようとして動き出した時には、もう回避の体勢になってるというのが何度かあった」
「なるほど」
五飛が言うのなら、それは嘘ではないだろう。
生真面目な性格の五飛だけに、自分の攻撃が偶然回避されたからといって、それを誤魔化す為にそんな風に言ったりはしない。
五飛の生真面目さは、イザークにも負けない程と評すれば分かりやすいか。
「考えてみれば当然なのかもしれないな」
「何がだ?」
「炭治郎は嗅覚が異常に鋭い。それこそ相手がどんな感情を抱いているのかといったような事さえ、臭いとして嗅ぎとれる。そして善逸は聴覚が非常に鋭い。そんな2人と一緒にいるんだから、伊之助も何か突出した能力があってもおかしくはない」
伊之助の持っている能力が、具体的にどのような能力なのかは俺にも分からない。
嗅覚、聴覚となると……味覚、視覚、触覚のどれかの可能性が高いだろう。
味覚……はまずないと思ってもいいよな? 五飛の何かを味わって攻撃を回避したというのは、ちょっと想像出来ないし。
そうなると、視覚と触覚のどちらか。
攻撃を回避するとなると、視覚の可能性が高いか。
けど、伊之助が特別に目がいいといったような話は聞いた事がない。
集中するとその瞬間だけ視覚が高くなるとか、もしくは相手の動きが遅く見えるとかか?
「そのような能力を持っていても、あのような性格では宝の持ち腐れだがな」
「猪突猛進一筋だしな」
「才能そのものはかなりある。だが、本人がそれを活かそうとしていない。いや、活かそうとはしてるのだろうが、俺達には予想外の形でその才能を活かそうとしている感じか」
しみじみと呟く五飛の言葉に、そういうものかと納得し……
「ん? あれは……」
五飛と話しながら歩いていると、道の先からこちらに向かって歩いてくる凛と綾子の姿を見つける。
そんな2人を見て、五飛は一瞬微妙な表情を浮かべていた。
まぁ、凛と綾子はW世界でも俺と一緒に行動していたしな。
五飛ともそれなりに付き合いはある。
ちなみに五飛、以前は女は甘いから戦うなといったような主張をしていたのだが、シャドウミラーに来てからはそんな主張は木っ端微塵になってしまった。
当然だろう。シャドウミラーの幹部には女が多くいて、その多くが五飛よりも強いのだから。
向こうからやってくる凛と綾子の2人も、生身での戦いに限定すれば五飛よりも圧倒的に上だ。
MSに乗っての戦いは……綾子はトールギスⅢに乗っていて、五飛とも互角以上に戦える。
しかし、凛の場合は下手にMSとかに乗せようものなら、MSが壊れてしまうんだよな。
……そういう意味では、凛は五飛の機体に近付けばそれで勝利になる可能性もある。
「あら、随分と珍しい組み合わせね」
近くまでやってきた凛が、俺と五飛を見てそう告げる。
綾子もまた言葉には出していないものの、珍しそうにこっちを見ていた。
「そうだな。正直なところ俺も珍しい組み合わせだとは思う」
俺と五飛は、相性という意味ではけっしてよくはないのだから。
強くなりたいと思っているのはいいのだが、その生真面目さが俺とは合わない。
猗窩座はそれなりに冗談を受け入れたりするんだがな。
「でしょう? で、何で五飛がここに?」
「呼吸の習得の為のヒントを得ようと思ってな」
「ああ、呼吸ね。……そう言えばアクセルは習得出来ないんだっけ? ちなみに私と綾子も無理そうね」
「何?」
凛の口から出たのは、かなり予想外の言葉だった。
そんな俺の様子に、凛は複雑な表情を浮かべながら口を開く。
「まず、私は呼吸を使おうとすると魔術回路と干渉しあって無理ね。ネギま世界で気と魔力が反発するという、あんな感じかしら。咸卦法みたいに上手くいけばどうにか出来るかもしれないけど」
「魔術回路か。そう言われると納得だな。で、綾子の方は?」
「私は半サーヴァントというのが影響してるみたいね。アクセルの血の力はそれだけ強かったという事かしら」
「それは、また……」
そう言う綾子だったが、あの時は綾子を助ける為の手段としては半サーヴァントにするしかなかったのは間違いない。
「呼吸を使えるようになるのは、結構少ないらしいな。……そういう意味では、五飛はまだ呼吸を習得出来るだけ可能性は高いんだよな。そういう意味だと、五飛は俺達よりも上になるかもしれないな」
俺の言葉に、五飛は複雑な表情を浮かべる。
呼吸について俺達よりも上になれるというのに、五飛にとっては素直に喜べないのだろう。
「ふん、今に見ていろ。しっかりと呼吸を使いこなせるようになってみせるからな!」
そう叫ぶ五飛。
それを示すかのように、五飛はこの日から暫くの間鬼滅世界に泊まり込むのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730