「それは……本当かな……?」
耀哉が確認を込めて尋ねると、レモンは頷く。
「ええ。義眼の調子もいいし、耀哉も義眼の能力を十分に使いこなしている。それを考えると、もう視力の問題は完治したと考えてもいいわ。……解呪の方も終わってるから、もう鬼滅世界に戻っても構わないわ」
「……ありがとう」
レモンに向かって感謝の言葉を口にする耀哉。
レモンはそんな耀哉に向かい、笑みを浮かべて口を開く。
「アクセルから頼まれた事なんだし、治療をするのは当然でしょう? ただでさえ、アクセルには男の友達が少ないんだから」
「いや、別にそういう事はないと思うんだが」
何故かレモンがそんな風に言ってきたので、俺としてはその言葉には不満があった。
しかし、レモンはそんな俺に対して呆れたように言う。
「あのね、アクセルの友達が多いか少ないかで言われれば、それは間違いなく少ないわよ? 異論はある?」
「とにかくだ。耀哉の治療が終わったし、義眼の調子もいい。だが、解呪は成功したものの、元々ホワイトスターにいる時は呪いの影響はなかった。それを考えると、鬼滅世界に戻った時、呪いがどうなっているのかを確認する必要があるな」
「誤魔化したね」
「どうやら、そのようね」
耀哉とレモンがそんな風に会話をしていたものの、取りあえずその件についてはスルーしておく。
「そんな訳で、耀哉が戻るのなら今すぐにでも鬼滅世界に戻るが……どうする?」
「行こう」
レモンとの会話を即座に忘れたかのように、耀哉はそう言ってくる。
一瞬の躊躇もなくそう告げる言葉は、耀哉がどれだけ鬼滅世界に戻りたがっていたかというのを意味していた。
「待ちなさい。念の為に木乃香を呼ぶから。恐らく大丈夫だと思うけど、それでももし鬼滅世界に戻った時にまた呪いに掛かるような事があったら、木乃香に即座に解呪して貰う必要があるわ」
なるほど。レモンの言葉には納得出来るものがある。
それに木乃香の能力を考えると、意外と鬼殺隊の病院的な役割を果たしている蝶屋敷の面々と友好的な関係を築けるかもしれないな。
他にも木乃香が行くなら当然刹那も一緒に行くし、そうなれば神鳴流の使い手ということでも友好的な関係を築ける可能性は十分にあった。
「分かった。なら木乃香と刹那の準備を頼む。俺は耀哉と一緒に転移区画に向かう。……耀哉、どうせなら影のゲートじゃなくて、エアカーで移動するか?」
「いいのかい?」
興味深そうな様子の耀哉の言葉に頷きを返す。
耀哉がホワイトスターに来たのは、今回が2回目だ。
だが、1回目の時は勿論、2回目もここに来るまでは盲目だったので、ホワイトスターの中で一番活気のある交流区画はまだ直接見た事はない。
鬼滅世界に帰れば、鬼殺隊を動かすのは輝利哉から耀哉に変わり、そこからまた色々と忙しくなるのは間違いない。
そうである以上、しっかりと交流区画は見ておいた方がいいと、そう思ったのだ。
「ああ。一度向こうに帰れば、次からはそう簡単にホワイトスターには来れないしな。それなら戻る前に一度ホワイトスターをしっかりと見ていく方がいいだろ」
「そうしてくれると、私も嬉しいよ」
今の状況で転移区画に行っても、木乃香や刹那が来るまで待ちぼうけしないといけないしな。
であれば、待ってる時間を有効利用するのは悪い話ではない。
そうしてレモンと耀哉はそれぞれ治療に関する話をし……取りあえず耀哉の治療については終わったのだった。
「これは……凄いね。私が知っている街の景色とは随分と違う」
エアカーで交流区画を進みながら、耀哉は窓から外の景色を見てそう呟く。
「そういう風に言えるって事は、耀哉も以前は鬼滅隊の場所だけじゃなくて、普通の街中とかにも行ったりしてたのか?」
「ああ、そういった経験もあるよ。ただ、勿論産屋敷家の当主になってからそのような事は大きく減ったけどね。……それ以前に、呪いの為に簡単に出掛ける事が出来なくなったというのが正しいけど」
呪いの影響が強かったのは、耀哉にとっては色々と思うところもあるのだろう。
そう呟く耀哉の言葉は、本当に残念そうに思える。
「そういう点では、輝利哉の方が耀哉よりも先を行ってるな。何しろホワイトスターに来ただけじゃなくて、UC世界に行って月面都市で遊んだんだから」
「UC世界か。私も治療中に色々と情報を仕入れはしたんだが、私達の世界やUC世界に限らず、どこの世界でも争いというのはなくならないらしいね」
「人間がいる限り、争いのない世界というのは難しいだろうな」
そう言うものの、どの世界であっても原作のある世界であるのは間違いない。
だとすれば、スポーツ漫画や日常漫画といった世界であれば、多少の喧嘩とかはあるだろうが大規模な戦いというのはないだろう。
もっとも、そういう世界と接触した結果として、シャドウミラー的に利益があるのかどうかは分からないが。
キブツで作り出した資源を売る市場としての効果はあるのかもしれないが、そういう意味では既にシャドウミラーは幾つもの世界と取引をしており、そういう意味でわざわざ新たな市場を開拓する必要もない。
また、そういう世界だと当然ながらシャドウミラーが欲する独自の技術というのもないだろう。
つまり……ぶっちゃけ、日常系やスポーツ漫画の世界というのはシャドウミラー的に美味しくはない。
もっとも、そういう戦いとかを離れてのんびりしたいという意味では、そういう世界に別荘を持つのは悪くない話かもしれないが。
「そうか。人というのは世知辛いな」
「それは否定出来ない。……とはいえ、そういう世界にシャドウミラーが介入した結果として、平和になった世界も多いけどな」
とはいえ、この場合の平和というのはそこまで厳格なものではない。
例えばマクロス世界なんかでは俺達が介入してバジュラ戦役は終わったが、その後にもどこぞの星で独立戦争があったらしいし。
これはシャドウミラーから何人か関わったものの、俺は直接関わってないので何とも言えないが。
なお、その報酬として貰ったのが、UC世界でルナ・ジオンの首都となっているクレイドルだったりするのだが。
「平和になった世界か。鬼滅世界もそのようになればいいのだが」
「鬼舞辻無惨を倒せば、平和になるのは間違いないだろ」
もっとも、今が大正時代となると地震や第二次世界大戦があるので、それを乗り越える必要があるのだが。
そんな風に話しながらエアカーは進み……
「おっと、ちょっとあそこで買っていくか」
「うん? どうしたんだい? ……甘い香りがするね」
「クレープ屋だ。あの屋台で売ってるクレープは美味いぞ。ゴーヤクレープは別だが」
あの屋台にゴーヤクレープがあるかどうかは分からない。
まぁ、ゴーヤクレープを売っていても、別にそれを買わなければいいだけの話だしな。
「クレープ……甘味かい?」
「ああ。洋菓子、外国の甘味だな」
クレープは洋菓子だけに、外国が発祥の甘味だ。
ただ、具体的にどこで生まれた洋菓子なのかは、ちょっと分からないな。
洋菓子ってくらいだから、やっぱりフランスとかイタリアとかか?
間違ってもイギリスって事はないと思うが。
あ、でもイギリスは料理はともかくクッキーとかは美味いって話だったな。
だとすれば、クレープもイギリス生まれの可能性はあるのか。
そんな風に考えつつエアカーを停めてクレープ屋に向かう。
耀哉も恐る恐るといった様子だったが、クレープを売っている屋台……あ、これ違うな。屋台に見えてたけど、いわゆるキッチンカーって奴だ。
まぁ、クレープを売ってると考えると、キッチンカーの方がらしいとは思うけど。
「いらっしゃい。何にします?」
店員は俺を見て少しだけ驚いた様子を見せたものの、それでもすぐに注文を聞いてくる。
俺がアクセルだと理解しつつも、客は客だと判断したのだろう。
「そうだな。じゃあ俺は……このベリーベリーベリーベリーベリーベリーにするよ」
ベリーが6個もつくそれは、一体どれだけベリー押しなんだろうな。
多分6種類のベリーを使ってるとか、そういう意味だと思うけど。
ただ、写真に表示されている見本を見るとかなり美味そうなのは間違いない。
「ベリー……?」
何度もベリーと続けた俺の言葉に、耀哉は戸惑った様子を見せる。
「耀哉はどうする? チョコバナナとかはクレープの基本だけど」
「そうだね。なら、それを……いや、このチョコメロンバナナというのを貰えるかな?」
そう言って耀哉が示した写真には、確かにクレープの具にメロンが入っている。
メロンの入っているクレープってのは珍しいな。……いやまぁ、ゴーヤクレープに比べれば普通かもしれないけど。
店主は俺と耀哉の注文を聞くと、早速クレープを作り始めた。
その手際に、耀哉は感心したように眼を奪われている。
視力を取り戻した今の耀哉にとって、見るというのはそれだけ大きな意味を持つのだろう。
そうし出来たクレープを受け取り、口に運ぶと……
「これは……」
一口食べただけで、耀哉の表情には驚きの色がある。
俺もまた、クレープを口に運ぶと生クリームの甘さと何種類ものベリーの甘酸っぱさが合わさり、それをクレープの柔らかな生地が包み込んで……うん、美味い。
最近はスーパーとかでもクレープを売ってるし、それもかなり美味いクレープなんだが……それでもやはりこうして出来たてのクレープと比べると数段劣る。
ただ、男2人でクレープを食うってのは……いやまぁ、美味いからいいんだけどな。
そうしてクレープを食べたり、耀哉がお土産として煎餅を買ったりしながら、俺達は転移区画に到着する。
にしても、何でお土産の煎餅なんて売ってたんだ?
まぁ、鬼滅世界的には普通に受け入れられるのは間違いないだろうが。
「アクセル君、ちょうどウチらも今来たとこやったけど、タイミングよかったな」
転移区画には木乃香と刹那の姿もあった。
木乃香は俺を見つけるとそう声を掛けてきて、刹那は頭を下げてくる。
「タイミングが合ったようで何よりだ。……で、これから鬼滅世界に行くんだが、その件については聞いてるか?」
「当然や」
木乃香にしてみれば、自分が解呪した耀哉の件だ。
当然ながら、その辺についてはしっかりとレモンから話を聞いていたのだろう。
「ウチの魔力も全快やから、鬼滅世界に行ってまた呪われたらすぐに解呪するわ」
自信を持っているのは、一度耀哉の呪いを解呪したという自信があるからだろう。
それによって、また耀哉が呪われても何とか出来ると、そう思ったらしい。
本当にそうなるかどうかは、正直なところ分からない。
だが、木乃香が自分の力に自信を持っているというのは、解呪をして貰った耀哉にしてみれば頼もしい存在だろう。
「そっちに関しては完全に任せる。……って事でいいんだよな?」
「ああ。彼女は私を死の運命から救ってくれた人だ。そのような相手を疑うことなど出来ないよ」
「いややわ。そんな大袈裟な」
耀哉の言葉に照れた様子で呟く木乃香だったが、別にそれは大袈裟でも何でもない。
実際にもし木乃香がいなければ……いやまぁ、シャドウミラーなら最終的には何とかなった可能性が高いが、それでもやはり今のような最善の結果になったかどうかは分からない。
「ここで時間を使ってもしょうがない。準備もいいようだし……行くぞ」
そんな俺の言葉に、話を聞いていた全員が真剣な表情で頷くのだった。
転移区画からゲートを使って鬼滅世界に転移すると、俺は即座に耀哉に視線を向ける。
「耀哉、大丈夫か!?」
「何かあったら、すぐに回復するで」
「このちゃん、まずはしっかりと様子を見ないと」
そんな風に俺達が声を掛けるも、耀哉は自分の手をしっかりと握り、それを確認し……そして周囲の光景を見る。
「これが……私の世界……」
勿論、耀哉も視力を失う前にこの光景を見た事はあっただろう。
だが、それでもこうして改めて取り戻した視力にとって周囲の状況を見るというのは、耀哉にとって特別な意味があったのは間違いない。
「耀哉、感動しているところを悪いが、呪いの影響はどうなっている? ……見たところ、大丈夫そうには思えるが、本当に身体に異常はないのか?」
「ああ、問題ないよアクセル。寧ろ爽快な気分ですらある」
鬼滅世界に戻ってきた耀哉は、嬉しそうに……本当に心の底から嬉しそうに笑みを浮かべ、そう告げる。
耀哉にしてみれば、今の鬼殺隊の状況はどう思うんだろうな。
一応耀哉に無理をさせない為に、鬼滅世界についての情報は出来るだけ話さないようにしていた。
そんな状況であった以上、まずは現在の鬼滅世界の状況をしっかりと把握する必要があり……それを輝利哉から聞かせて貰う時間も必要になる。
重要なのは、青い彼岸花の件と遊郭の件、後は……俺が猗窩座と何度か接している件か?
そんな風に思いつつ、俺や木乃香、刹那は耀哉の様子をじっと眺めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730