しのぶとの会話の後、俺はそのままホワイトスターに戻った。
藤の毒の件をしのぶがどのように判断するのかは分からない。
だが、それでも最終的には耀哉に言ってでもという俺の言葉を聞いた以上、解毒をするのは間違いないだろう。
そうである以上、まずは話を通しておく必要がある訳で……
「何だか鬼滅世界では随分とバルシェム生成チャンバーを使う機会が多いわね。マリューもそう思わない?」
「この状況を考えると、そんな風になってもおかしくはないと思うわ。だって鬼滅世界は基本的に生身で戦っている世界なんでしょう? どうしても人型機動兵器に乗って戦うよりも、生身で怪我をする可能性が高くなるわ」
そういうマリューの言葉に、レモンも仕方がないかといったように頷く。
実際、生身で戦っているからこそ怪我人が多いのは事実だが、行冥の盲目や耀哉の盲目と呪いというのを考えると、純粋に戦いの中で傷を負ってバルシェム生成チャンバーで回復をするといったような事はないんだよな。
あ、でも今回の一件……しのぶの身体が藤の毒に侵されているのは、鬼との戦いの影響と言えなくもないのか?
ただ、鬼との戦いの中でそうなった訳ではなく、姉の仇を倒す為の奥の手として自分の身体に毒を使っていた……というのが正しいのだが。
「今回治療……というか、解毒してもらうのはしのぶだ」
そう言い、しのぶについての事情は出来るだけ話さないようにしながら、しのぶの身体が藤の毒に侵されているというのを話す。
それを聞いたレモンは、少しだけ興味深そうにしている。
マリューの方は、何故そんな事をと悲しそうな表情をしていた。
2人の表情の違いは、性格によるものだろう。
「そんな訳で、何とかしてしのぶの治療……解毒だな。解毒をしたい。だからこそ藤の毒について詳しいマリューにも来て貰ったんだ」
技術班の者達の専門は、基本的に人型機動兵器についてのものだ。
だが、天才と呼ぶに相応しい者達が揃っているのを見れば分かるように、中には自分の専門分野外についての研究をしている者もいる。
マリューが藤の花の毒について調べていたのも、その関係だろう。
後は鬼舞辻無惨の血を入手してるので、そちらについて調べている者達も同様だった。
そういう意味では、マリューをここに連れて来たのは正解だろう。
マリューはシャドウミラーの技術班の中では藤の花の毒については第一人者の存在だ。
実際、マリューは以前しのぶが使っていた藤の花の毒を更に強化した毒を作っており、更にはそれを銃弾に詰め込んで使えるようにすらしている。
しのぶの解毒について、マリューの知識が必要になる可能性もあるだろう。
「私が出来ることなら、やらせて貰うわ」
「悪いな」
「いいわよ。けど……そうね。何人かと鬼滅世界とデートしたんでしょう?」
そう言い、意味ありげな視線を俺に向けてくるマリュー。
そんなマリューを見れば、一体何を言いたいのかは明らかだった。
「そうだな。じゃあ、マリューとも鬼滅世界でデートをするか。……勿論、レモンもな」
「あら、私はついでなの?」
悪戯っぽい視線をこちらに向けてくるレモン。
「いや、そんな訳はないだろ。マリューもレモンもどっちも本命だよ」
「……普通なら、そういう台詞はどうかと思うわよ?」
呆れたようなマリューの言葉。
とはいえ、その言葉の意味は俺にも十分に理解出来る。
一夫一婦制の場所では、それこそ騒動になってもおかしくはないようなやり取りなのだから。
「普通ならそうかもしれないな。けど、俺達は普通じゃない。……だろ?」
「それはそうでしょうね。私達のシャドウミラーは色々な意味で普通じゃないでしょうし」
それこそ普通に考えれば、世界の狭間に存在する国というのは信じられないだろう。
ましてや、その立地条件を利用して様々な世界と繋がり、異世界間貿易をしているのは……それを普通と言うような奴がいたら、見てみたい。
「ともあれ、デートについては問題ない。とはいえ、どこにデートに行くかってのが疑問だが」
大正時代、それも現在は第一次世界大戦の真っ只中という事もあって、観光に行くにもどこに行けばいいのかといったように迷う。
ああ、でもそれならいっそエヴァに聞いてみてもいいかもしれないな。
炭治郎達を鍛えるという事で、エヴァはかなりの頻度で鬼滅世界に行っている。
そうである以上、俺達よりもデートスポットには詳しいと思う。
エヴァが行っているのは観光で、デートスポットとはちょっと違うような気もするが……うん。まぁ、それでも似ている場所はあるのだろう。
「楽しみにしてるわね。……それで問題なのは藤の花の解毒ね」
「ああ。しのぶが言うには、やっぱり藤の花の毒を身体に入れている悪影響はあるらしい。藤の花の毒は鬼に対しては大きな意味を持つものの、人間にはそういう効果がないと思っていた……いや、そう思いたかったんだけどな」
「それはさすがに難しいわよ。でも、そうね。それでも鬼に対するよりは抵抗力があると思うわ。問題なのは、一体いつ解毒作業を行うかでしょうね」
そう言うと、マリューの視線は俺に向けられる。
具体的にいつ解毒作業をするのかと、そう態度で示していた。
「そう言われてもな。その辺はしのぶが自分で判断する必要があるし。でも、いずれそう遠くないうちにやってくると思うから、いつでも治療出来るようにしておいてくれ」
「……ちなみに、木乃香の魔法で解毒は出来ないの?」
そうレモンが尋ねてきたのは、耀哉の解呪を行ったからだろう。
ちなみに木乃香は耀哉を鬼滅世界に送っていった際に、現在の産屋敷家の面々の呪いも解呪している。
実際には呪われているのは耀哉だけで、輝利哉達は呪われていなかったらしいが、それでも念の為に。
ただ、あの呪いは代々産屋敷家を呪ってきた呪いの筈な訳で……そういう意味では、まだ他の子供達が呪われていなかったのは疑問ではある。
恐らくだが、今はまだ呪われておらず、当主になる事によって呪いも一緒に移るとか、そんな感じなんじゃないかとは思っているが。
「どうなんだろうな。魔法でやってもいいと思うけど、出来るかどうかは実際にやってみないと分からないと思う。今の状況を考えると、レモンの治療の方が信頼性は高いと思う」
魔法による治療も、十分に魅力的ではある。
それでも今の状況を思えば、やはりレモンの方がいいと思う。
そんな風に考えつつ、俺はレモンやマリューとの会話を続けるのだった。
レモン達との会話を終えると、俺はホワイトスターの交流区画を歩いていた。
今は特に何か急いでやるような事もないので、適当に見て回っていた。
とはいえ、特に何かがある訳でもない。
……そもそもの話、ホワイトスターで問題を起こすようなことがあった場合、最悪その騒動を起こした者の世界はペナルティを食らう事になっている。
最悪の場合は、それこそ異世界間貿易に参加出来なくなるといったような事にもなりかねない以上、どの世界からもホワイトスターに来る面子は騒動を起こさないような面々となっていた。
「お、アクセルじゃないか。久しぶりだな」
不意に掛けられた声に振り向くと、その視線の先には予想外の人物の姿が。
「ムウ? お前がこっちに来るのは珍しいな」
そう、そこにいたのはエンデュミオンの鷹こと、ムウ・ラ・フラガだった。
「そうか? 俺はそれなりに交流区画には来てるぞ? 寧ろアクセルの方が、こっちに来る機会は少ないと思うんだが」
「まぁ、それは否定しない」
基本的にホワイトスターにいるムウと比べると、俺は色々な世界に顔を出している。
最近では鬼滅世界の方に顔を出す事が多く、そういう意味ではムウの言葉はそれなりに正しいのは間違いないだろう。
「だろ? で、そんな風に珍しいアクセルが、ここで何をしてるんだ?」
「特に何か理由があるって訳じゃないな。ちょっと時間が出来たから、暇潰しに見て回っていた感じだ」
「ふーん、そうなのか。なら、ちょっと俺に付き合えよ」
そう言い、俺を引っ張っていくムウ。
特に何か急いでやるべき事がある訳でもないので、これは別に構わないんだが。
「俺を連れていくのはいいけど、一体どこに連れていくんだ?」
「別に怪しいところじゃないから安心しろ。特に酒を出すような店にはいかないから」
酒を出す店云々については、正直なところ心配していない。
ムウもまた、俺が極端に酒に弱いのは理解しているのだから。
弱いというか、酒を飲んだ結果として周囲に一体どんな被害が出るのかが分からない。
それこそ下手をすれば、その酒を出している店が消滅してしまうといったような可能性もあるし、鬼滅世界での一件が解決していないのに、また気が付けば別の世界にいる可能性も否定は出来ない。
俺の場合、完全に意識を失ってしまうから、自分でも何をしているのか分からないんだよな。
そういう点で、ムウも自分が被害を受けたくないから俺に酒を飲ませるといったような真似はしないだろう。
そんな風に考えている俺が連れていかれたのは……牧場。
牧場? 一体何で牧場?
「何で牧場に? ムウにしてみれば珍しい場所でもないだろ?」
「いや、そうでもないぞ? いつでも行けるからという事で、寧ろ足を運ぶのは少ない。勿論、今まで全く来たことがない訳じゃないけどよ。今日はナタルに頼まれてハムやベーコンなんかを買いに来たんだよ」
「……話は分かったが、だからってなんで俺がそれに付き合わないといけないんだ?」
別に買い物に来るだけなら、ムウだけで来てもよかった筈だ。
そこにわざわざ俺を連れてくる必要があるとは、到底思えなかった。
「何となくだよ、何となく。ただ……そうだな。敢えて理由を挙げるとすれば、最近アクセルは実働班の訓練に参加したりはしてないだろ? ちょっと前に、鬼滅世界だったか? 新しい世界の連中を連れて見学に来てたけど」
「言われてみればそうだな」
「だからだよ。たまには男同士で話してみるのも悪くないと思ってな」
そう告げるムウの言葉に、俺はそういう事ならと頷く。
ムウと話をするのは、そんなに嫌いじゃない。
ムウは何だかんだと話し上手だし、聞き上手でもあるのだから。
「分かった。そうだな。たまにはムウと話してもいいか。……で、話すのはいいから、まずは買い物をしてきたらどうだ?」
「おう、悪いな。じゃあ、ちょっと待っててくれ」
そう言うと、ムウは物販コーナー……もしくはお土産コーナーに向かう。
ハムやベーコンといった食材を買うのなら、別にわざわざここに来なくても交流区画にあるスーパーで買ってもいいと思うんだが。
それでもこうして買いに来るのは、ここで売っているハムやベーコンが普通にスーパーで売ってる奴よりも美味いからだろう。
それは当然の話でもあった。
何しろ牛を始めとした家畜の世話をしているのは、量産型Wだ。
量産型Wは、疑似記憶や疑似体験によって一流の……あるいは一流すら超えるだけの熟練の飼育技術を持っている。
そんな量産型Wによって育てられ、一番美味いところで屠殺されて肉となる。
当然だが、屠殺して肉にするにも、肉にしてからハムやベーコンといった食材にするのも、高い技術を持った量産型Wだ。
そういう意味では、同じハムやベーコンであってもスーパーで売ってるのと味が段違いなのは間違いない。
とはいえ、手間暇を掛けて仕事をしている分、当然ながら牧場で売ってる食材はどれもスーパーで売ってる食材よりも高い。
3割から、ものによっては5割くらいは高額となっている。
だが、それでもこうして買いに来る奴がいるのは、それだけ美味い証だろう。
実際、俺の家でもハムやベーコン、ソーセージ、チーズ……それ以外も色々と牧場で買ってる。
また、この牧場ではダチョウのようにちょっと珍しい動物――鳥だが――も飼われていて、そういう珍しい肉を売ってもいる。
……さすがにワイバーンの肉は売られていないが。
ワイバーンの数がもう少し繁殖したら、肉として売る事も考えるといったような意見が以前出ていたような気がする。
ワイバーンの肉を買えるのは、ここだけだ。
あ、でもネギま世界に行ってワイバーンを倒せば、それを食べられるかもしれないな。
そこまでするなら、普通にホワイトスターの牧場で肉を買った方がいいと思うけど。
「悪い、待たせたな」
そう言って戻ってきたムウは、その手にソフトクリームを2つ握っていた。
そのうちの片方を、俺に渡してくる。
ハムやベーコンがこの牧場の名物だったが、同時にソフトクリームもまたかなりの名物だ。
牧場の乳牛から搾りたての牛乳は育て方の関係もあって非常に濃厚で、その牛乳を使ったソフトクリームはかなり美味いのだ。
ある意味ではハムとかのように買って家に持ち帰るといったようなことが出来ず、この場で食べなればならないソフトクリームは、牧場の中でも最高の贅沢の1つであるのは間違いない。
そんなソフトクリームを食べながら、俺はムウと暫く話をするのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730